わが逃走[151]ドイツの階段の巻
── 齋藤 浩 ──

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気がついたら師走である。ついこの前、今年も半分過ぎてしまった...とか、日がずいぶん短くなったなあ、と思っていたらもうすぐ冬至ではないか!もちろん年賀状も作っていなければ大掃除の準備もしていない。

実はここ数週間は、この数年で最も忙しく、なんか窓の外が明るくなったり暗くなったりしているなあと思っていたら数日経過していたとか、そんな日がしばらく続いていたのだ。

それも昨日で一段落したので、心を落ち着かせるために撮りためた『趣味の構造美』の写真でも整理しようかと思う。

今回は10月のドイツ旅行での階段の写真をまとめてみた。

階段に心惹かれて数10年、今回の旅でも行く先々で、見つけると同時に撮ってしまうという、ほとんど"習性"のようにシャッターを切ったが、憧れの異国の地ということもあり、かなり舞い上がった状態であったため、芸術点は低いかも。

今回はあくまでロケハンであり、次回のための記録、ということにしておこう。

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シュタイナウ

壁面から飛び出した部分を上ると、いつのまにか壁面が削られた空間にいるシアワセ。プラスとマイナス、陰と陽を意識できる気持ちよさ。これぞ階段。




見た感じはケーキのような印象だった。積み上げた後に余った部分をカットしたのだろうか。残りの"カステラの切れ端"の行方が気になるところ。撮影時は気づかなかったが、よく見たらカタツムリが写っていた。

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シュタイナウ

城壁近くの路地

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シュタイナウのお城の階段

お城の部屋が分譲されており、この階段の上は一般の住居だそうだ。

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シュタイナウの城下町の階段

石畳や煉瓦塀との対比がイイ。エッジの丸さが好み。

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シュタイナウ

色が美しかった。扉の素材感とコンパクトなマイナスの空間が秀逸。

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ドレスデン

川のほとり、夕陽があたる美しい階段

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ラーデブルク

おそらく以前はここまで線路が敷かれていたのではなかろうか。ということは、この煉瓦がちらっと見えている部分はプラットホームということになる??

この煉瓦"チラ見せ"は、なっちゃったのであり演出ではない。日本ではフェイク壁紙やインチキ住宅の外壁でこういう表現を見るけど、これは正真正銘ホンモノ。

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ドレスデン

旧共産圏と再建された中世の建物が混在する旧市街に、複雑怪奇な外階段を発見。電停の近くだったので滞在中毎日見上げたのだが、結局構造は理解できず。

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デッサウ

バウハウスにて。さすがとしか言いようのない美しさ。こういった計算されつくしたプロダクトも良いが、「上れりゃいい」としか考えずに、その場のノリだけで作られた階段も味わい深いので困ったものだ。

デッザウはわずか数時間の滞在だったので、次回は朝からじっくり見学したい。

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エアフルト

こういう白に対してこういう緑を配置するセンス! グレイッシュな色彩が構造と調和する。

エアフルトは中世の面影を残す小さな町で、写真はゲラ川のほとりからクレーマー橋への路地。比較的平坦な印象のドイツでも、水のあるところには階段が多いの法則。

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エアフルト

クレーマー橋の橋桁部分にある小さな扉への階段。いちばん下の段が半円を描く。ドイツの工業製品における機能的かつシンプルな形状は、こういう詠み人知らずなデザインの流れをバウハウス的理論によって"再発見"されたもの??

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エアフルト

柱を中心に螺旋階段......が途切れてる! 上から確かめようと思ったのだが、立入禁止だった。おそらく画面下の階段とは作られた年代が違うのだろう。そうなると、当初の姿がどうにも見てみたくなる。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。