[3835] カセットテープが好き!

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よくわからんなあ。昭和に逆戻りだ。》

■わが逃走[153]
 タイポ収集の巻 その1
 齋藤 浩

■もじもじトーク[12]
 カセットテープが好き!
 関口浩之

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  怒りのブドウ球菌 電子版 〜或るクリエイターの不条理エッセイ〜
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◎デジクリから2005年に刊行された、永吉克之さんの『怒りのブドウ球菌』が
電子書籍になりました。前編/後編の二冊に分け、各26編を収録。もちろんイ
ラストも完全収録、独特の文章と合わせて不条理な世界観をお楽しみ下さい。
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■わが逃走[153]
タイポ収集の巻 その1

齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20150122140200.html
>
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謹賀新年。

さて、先日ハードディスクの整理をしていたところ、「文字」を記録した写真がけっこうあることに気づいた。

デザイナー目線というより、コレクター的視点で集めた「文字」である。ざっと並べてみたらそれなりに面白かったので、ここでひとつ見せびらかそうと思った次第。

旅館よしつね
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/001 >

ドロップシャドウ。パソコンで作るインチキな影ではなく、これは本物。背景が波打っていれば当然のことながら影も波打つ。あたりまえのことが新鮮に見えてしまうのは、"作り物"を見慣れてしまったということか。

でんわ でんぽう
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/002 >

子供の頃はよく見かけたような気もする。が、あまり記憶にないということは、とくに気にもしなかったということだろうか。こうしてじっくり見ると無駄のないシンプルなデザイン。必要最低限の文字情報を優先順位に応じて強弱をつけ、図像を中心に配置している。情報伝達の基本だ。

水ドウ
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/003 >

なぜドウがカタカナなのかは謎。そして、なぜ水が筆文字でドウがゴシック体なのかも謎である。文字が陰刻表現なのは、これがもし陽刻だと文字が削れてしまうから。だよねえ。それだけはわかる。


< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/004 >

力強く美しい。おそらく手作り。書家のセンセイが書いた文字を分厚い板に写し取って彫り込み、削っていったのだろうか。

エッジの処理にムダがない。かっこいい。オレも夏休みの工作かなんかで作りたくなってきた。作るなら「壺」だな。壺という字は思いきり壺の形をしているから、昔から好きなのだ。

どうでもいいけど映画「ブレードランナー」の夜の街のシーンにも「壺」という意味不明のネオンサインが登場し、なんだかわからんけどかっこいいと刷り込まれて久しい。

整堂骨鍼灸...
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/005 >

切り文字にペンキ塗って乾かしてるところに遭遇。バラして見ると模様に見える。外国人が見る日本語の印象が少しわかるかも。

コロンビア
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/006 >

なんといっても、雨どいに重ねるように「ア」を設置する意図がわかりません。まあ可読性は落ちますが、結果的にとても印象的にはなっていると言えなくもないけど。日本コロムビアの和文ロゴに似ているのはご愛嬌か。

どうでもいいけど、ウチの近所の商店街にある『雀荘ジョイ』は洗剤のロゴと瓜二つ。

高崎競馬場
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/007 >

発見したときの感動を今も覚えている。超地球的存在の意思によるレタリングもしくは"フィルター"効果とでも言おうか。可読性を維持しつつ、ここまでオリジナリティのあるタイポグラフィに仕上げた"神サマ(=自然の力)"ってやっぱりすごいや。

トヨタ指定サービス
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/008 >

旧正式ロゴ。バブル期のCIブームのとき現在のロゴ(楕円Tマーク)に統一されたように記憶している。

楕円Tマークは全ての車種のエンブレムとして適用され、ようやく日本企業もグローバルなビジュアルコミュニケーションを意識し始めたなーと思ったら、それもつかの間、何故か車種ごとに異なるデザインのものが装着されはじめて現在に至る。

よくわからんなあ。昭和に逆戻りだ。

中途半端なCI計画に何億円も払うんだったら、いっそのことこのカタカナのトヨタマークのまま突き進んだ方が、今にして思えば相当クール! だったかもしれない。と思うのだがいかがか。

スプライト
< https://bn.dgcr.com/archives/2015/01/22/images/009 >

こうして見ると、和文ロゴが極めて秀逸。オリジナルの英文ロゴが、やや長体がかったローマン体をベースとしているのに対し、和文はあえて平体を採用し欧文のリズムを表現、イメージの統一を図っている。

上下につけられたアルファベット風のセリフも違和感なく馴染んでおり、"読む"以前に"見る"だけで商品が伝わる工夫が随所に見られるすばらしい設計。

そしてこのシンプルなイラストの効果も高い。わずかな色数と適切な省略でシズル感を伝えている。この略画が見る者の持つスプライトの印象、記憶と融合し、近所の酒屋さんへと走らすわけだ。

看板やビルボードのビジュアル表現が"全部語っちゃう"CGのような写真になって久しいが、いま改めてこういった表現の可能性を再考する時期に来ているのではなかろうか、と思うのだった。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
>

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[12]
カセットテープが好き!

関口浩之
< https://bn.dgcr.com/archives/20150122140100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口です。

今年も、文字やフォントにまつわる話題を中心に隔週木曜に寄稿しますので、お付き合いください。よろしくお願いします。

もじもじトークでは、自分の趣味に関連した天体観測、IT、オーディオなどのネタもときどきお送りいたします。

本日のテーマは「カセットテープ」のお話です。

みなさん、カセットテープを製造している(もしくは製造していた)メーカー名、何社言えますか?

では、僕の手持ちのカセットテープを写真を何本か掲載します。
< http://goo.gl/apGRnv
>

写真掲載したのは4社のみですが、僕が使用したことのあるメーカーを書きだしてみました。

富士フイルム、日立マクセル、DENON、That's、SCOTCH、SONY、TDK、YAMAHA、TEAC、AKAI......まだまだあると思います。

●音楽はステレオの前で聴くもの?

時代はさかのぼりまして、小学生の頃(1970年前後)、自宅に家具調のステレオシステムがありました。センターにレコードプレイヤーとアンプが鎮座し、両側にスピーカーが備え付けてあるタイプです。

アンプの中を覗くと真空管が入ってました。まだトランジスタが普及してなかった時代ですからね。

当時の録音装置は、オープンリールぐらいしかなかったような気がします。なので、音楽を聴くときは、家具調ステレオシステムの前で聴くしかなかったのです。そういうものだと思ってました...。

ソファーは、当時、応接セットと呼ばれてましたね! 網々の白のレースが掛かってましたw 家族揃って応接セットに座って音楽鑑賞です。なんか素敵ですね。そういえば、カラーテレビも家具調だったような気がしますw

その後、ハンドヘルドタイプのカセットレコーダーが我が家にやってきました。当時のステレオシステムやテレビには、外部出力端子がなかったので、ピンコード接続ではなく、スタンドマイクで録音しました。

1970年代、音楽を楽しむにはレコードを買って聴くか、ラジオかテレビから流れてくる音楽を聴くしかなかったのです。

でも、小中学生のおこづかいでは、レコードはめったに買えません。そこで、テレビやラジオから流れてくる音楽をメディア(カセットテープ)に残して、自分の部屋で楽しむということに対してすごく貪欲だったと思います。

録音中に「ごはんできたよ〜」と雑音が入っても(笑)、悲しいけど、それはそれで楽しかったです。

●カセットテープ、最強の時代へ

1980年前後に群馬から東京に上京し、ひとり暮らしをはじめました。上京してまず最初にしたことは...、秋葉原のオノデンに足を運んで、三洋電機の「おしゃれなテレコ U4」を買いました!

やぁ〜、正真正銘のラジカセです。CDプレイヤーなんぞ、付いていませんw

FMがステレオ音声で聴けて、なおかつ、カセットテープに音楽がステレオ録音できる! 音楽好きな僕としては、もう涙がちょちょぎれました。

ラジカセ本体にタイマー録音機能がなかったので、てんとう虫の形をしたタイマー装置でエアーチェックをバンバンしたのを鮮明に覚えてます。テントウ虫の形をしたタイマーとは「あと何時間したら電流ながしますよ」というタイマーです。

●カセットテープにはいろいろな規格がある

ノーマルテープ、クロームテープ、メタルテープの3種類ありましたね。さらに、ドルビーBタイプやドルビーCタイプという、ドルビーノイズリダクションシステムをカセットデッキに搭載したものが流行りましたね。

最近のラジカセやカセットデッキには、dolbyシステムのセレクターが付いたのはあまり見かけませんが...。

我が家には、現役のカセットデッキ「パイオニア T-WD5R」とインテリア用(駆動ベルト切れ)の「ティアック ff-55」がありますが、しっかり、dolbyシステムに対応しています。

だけど、持ってるカセットテープが、dolby onなのかdolby offなのか、カセットレーベルに印付けるのを忘れてました。

カセットテープが好きな理由を並べてみました。

・1980年代のカセットテープのデザインが素敵
・パッケージングも素敵だったりする
・爪を折ると録音できなくなる
・セロハンテープ貼ると書き込み可能に
・鉛筆でテープのたるみを調整できる
・レタリングでオリジナリティあるタイトルができる
・FMステーションのインデックス素敵だった
・思ったより劣化が少ない

●MDってメディアの登場

そういえば、MDってメディアありましたよね。MiniDiscの略ですよね。

引越しをする度にカセットテープは少しづつ古いのから処分してましたが、20年ぐらい前は1,000本ぐらいまで溜まってしまいました。

ラックにきれいに並べるのがかっこいいと思ってましたが(自己満足w)「邪魔だよ〜」「聴かないテープ沢山あるんじゃない」という意見もあり、200本ぐらい残して処分しました。

残したカセットテープは、アメリカ西海岸で一年間仕事して時(1985年頃)に録りためたエアーチェックものと、日本のFM局の特集番組のエアーチェックものが中心です。

米国FM局の番組はDJトークがかっこいいのと、CMがなかなか素敵なんです。英語なので、BGMで流して仕事するのにもちょうどいいですし。

なぜ大量処分に踏み切れたかというと...、その頃「これからMDの時代がくるぜ〜」という感じがして、ヤマハのMDレコーダーとMDウォークマンを購入したのです。聴きたくなったらCDから録音し直しすればいいやと思ったので。

しかし、新品のMDカセットが100枚ぐらい、今でも押入れの中に眠ったままです。MDで音楽を聴いたのは4〜5枚だけでした。僕にとって、MDの時代はいつの間にかやって来て、いつの間にか去って行ってしまいました。

●なぜ、カセットテープが好きなの?

新たにカセットテープに録音することはほとんどありませんが、30年前に録音したカセットテープを、今でもウォークマン(カセットテープタイプ)で聴くのが好きなのです。

何が良いかって? なかなか表現が難しいです。言葉にするとこんな感じです。

・ダイナミックレンジが広い気がする
・奥行き感がある
・デジタルデジタルしていない
・あったかみがある
・テープヒスノイズが心地よく感じる時がある

意見には個人差がありますので(笑)、結局は自分が心地よいと思う環境にて、好きな音楽を楽しめるってところが大事ですよね〜!

いまだに、現役で活躍してるウォークマンが5台あります。かなり変態かもしれませんw

もちろん、ITガジェット好きなので、iPhoneで音楽聴きますし、音楽専用プレーヤーも10種類ぐらい買って使ったことがあります。それぞれ、素敵で楽しいです。

でも、なぜか、カセットテープで音楽を聴く機会が今でも一番多いってことは、単にカセットテープと相性がいいのだと思います。

たまには、アナログ感覚の音楽素材を聴くのもいいかもしれませんよ。

【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/
>

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。


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編集後記(01/22)

●佐野洋子「死ぬ気まんまん」を読んだ(光文社、2011)。作者は2010年11月に乳ガンで没、72歳。なんという潔いタイトルなんだ。この本はエッセイ「死ぬ気まんまん」、対談「佐野洋子×平井達夫」、ホスピスで見聞きした"死"を描いた1998年の「知らなかった」、関川夏央による佐野洋子の思い出「『旅先』の人」の四編からなる。この本の基本形はすでに2009年秋にはできていた。まだ原稿を書くつもりだから急ぐことはない、と佐野がいうので進行を止め置いたと夏川は書く。だが、原稿はあがってこなかった。これが佐野洋子、最後の本になる。惜しい人をなくした。もっと読みたかった。

「死ぬ気まんまん」はガンの転移で余命二年を宣告された佐野の日常、交友、幼時の思い出などが独自の視点で綴られでじつに興味深い。「わたしは闘病記が大嫌いだ。それからガンと壮絶な闘いをする人も大嫌いだ。ガリガリにやせて、現場で死ぬなら本望という人も大嫌いである」という人だから、期待通りの展開だ。イングリッシュグリーンのジャガーに乗り、ほとんどエントツ状態の喫煙、終日ソファーに寝っころがって、テレビかビデオを見ているのがしみじみ幸せだったが、「私はなまけ者だと、胸がザラザラする」。

本人は死ぬのなんか何とも思っていないのに、余命平均二年と言われたのですっかりその気になって言いふれまわると、周りの世間がセーターを裏返したように優しくなったので、これを使わせていただいて何が悪かろう、と実に醜い心になり、「私はガンが再発したあと、卑怯な奴になった」と歎く。「私は今が生涯で一番幸せだと思う。七十歳は、死ぬにちょうど良い年齢である」といいながら、「私は死ぬのは平気だけど、痛いのは嫌だ。痛いのはこわい。頭がボーッとして、よだれを垂らしていてもいいから、痛いのは嫌だ」。もうじきその年齢に達するわたしも同感だ。いつ死んでもいいけど痛いのは嫌だ。

だが、それ以前の自分を描いた「知らなかった─黄金の谷のホスピスで考えたこと」では、まず壮絶な痛みとの闘いが描かれる。そのすさまじさは死んだ方がましという感じだ。「でも私は見たところ五体は満足な、ただなまけている汚い女のようにしか見えない。私は見栄っぱりだから、これ以上言わない」と超絶やせ我慢を通す。ホスピスで出会った人たちの描写はユーモラスだがこわい。夕方、夕陽に照らされた山の木の葉が、毎日毎日ぞっとするするように美しくなって迫ってくる。ヤバいと思った佐野は、14日目にホスピスから家に戻る。この短編、夏川がいう佐野の「よるべなさ」全開が切ない。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00IHQILFK/dgcrcom-22/
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「死ぬ気まんまん」


●ようやく出口が......。(hammer.mule)