[3858] MS-Officeとインフルエンザと

投稿:  著者:  読了時間:19分(本文:約9,100文字)


《仕事以外の時間をきっちり作る方法!》

■ネタを訪ねて三万歩[120]
 MS-Officeとインフルエンザと
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[422]
 「Photoshopで最初にやりたかったこと」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■ネタを訪ねて三万歩[120]
MS-Officeとインフルエンザと

海津ヨシノリ
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150225140200.html >
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もうすぐ3月なんですよね。なんだかとっても不思議な感じです。今年は年明けから色々とバタバタしていて、気が付けばという感じです。

もっとも1月末にインフルエンザにかかってしまい、2月上旬はほとんど自宅待機でした。それでも軽症だったようで、ほとんど苦痛は伴わず、部屋に籠もっていることの方が辛い拷問のような状態でした。

しかし、こんな時に選んだレンタルビデオが珍しく外れまくりだったのには笑ってしまいました。何処かのネジが緩んで判断が鈍っていたのでしょう。

そんな状態でも、今年はちょっと必要に迫られて、年明けからMS-Office三昧の状態になっていました。

私はMS-Office 2010と2011のユーザーでしたので、最新ではありませんが、取り立てて環境的には困らなかったのです。しかし、2013でなければならない状況が見えていたので、思い切ってアップデートするか考えあぐねていました。

正直に言うと最新情報はスルーしていたので、この時点では本当に悩んでいました。互換ソフトであれば一桁違う出費で済んだからです。

結局、最終的にはMS-Accessの使用も考慮しなくてはならない流れが見えてきたので、互換ソフトは選択肢から消えました。

あとは出来るだけ出費を抑えるためにはどうしたらいいのかと、片っ端からネット検索していて、初めてMS-Office365を知りました。そう言えば何か案内来ていたな〜という間抜けな話ですが、悩む問題ではありませんでした。

ところか、このMS-Office365には危険な誘惑が潜んでいたのです。正規中国語版MS-Office365は、日本語版の半額程度で5台までインストール可能。登録時に中国経由での処理が必要で、少し面倒であったので私は断念しましたが、日本語としてもインストール出来るのは魅力ですね。

あたり前ですが、要するに中身は変わらないのです。ただし、今後のアップデートに関してはどうなるのかが曖昧でした。ところが、2倍近い日本語版もAmazonのクーポンがタイミング的に色々ついて、何だかんだで中国語版と大差がなくなってしまったのには思わず苦笑い。

さて、MS-Office365の利点は何と言ってもMacintoshとWindowsのどちらにも2台まではインストール出来ること。今までは個別に購入していましたので、これは本当に助かります。

最終的にはMS-Accessの利用はペンディングになりましたが、私にとってはよい買い物でした。ちなみにインストールしたマシンを変更したい場合はAdobe CCと同様にアクティベートを外して新しいマシンで再インストールだけです。

実質月額1000円というのは、初めてMacintosh SE用にMS-ExcelとMS-Wordを買った時の価格から考えると、本当に驚喜ではなくて凶器としか言いようがありません。

さて、ここまで書くと恐らくMacintoshユーザーならiWorkのPagesとNumbers、Keynoteは使わないのですか? と突っ込みが入りそうですが、趣味の範囲なら問題ないですが、アップル製品は日本語組版を考慮していません。

具体的に説明すると、本来、句読点や引用符が持っている二分(半角)の幅を活用できないのです。というかベタのままなので、句読点の次に括弧が来ると全角1文字として処理されてしまうので、なんとも間の抜けた状態になってしまいます。

しかし、MS-Officeではそんなことはなく、しっかりと二分幅を活用してくれます。もうこれだけでも気分は全然違いますね。仮に細かい部分がクリアされたとしてもMS-OfficeからみたらiWorkは互換の範囲ですので、残念ながら候補からは外れてしまいます。

Apple製品はヒラギノフォントをデフォルトにしていることで見栄えがいいのですが、他のフォントに置き換えると粗が見えてしまいます。

まっ、それでもKeynoteは魅力的なので、Illustratorで組んだ文字データを配置したりして誤魔化していますが、出来ればこの点をAppleに期待したいのですね。無理かもしれませんが。

ちなみに、私は色々問題山積のOS X Mavericksは避けていますので、PagesとNumbers、Keynoteは最新ではありません。「最新環境ではガッツリ修正されているよ」という突っ込みを期待したいです。

とにかく、そんなの気にしないというプライベート的な用途であれば問題ないのでしょうが、怖いのはそういった流れが広まってしまうと、それが正しい流れになってしまうことですね。

組版ルールも時代とともに少しずつ変化していますので絶対と言うことはありませんが、それでも日本人として日本語は正しく使いこなしたいですからね。しかし、そんな私もネット上ではかなりアバウトな表現を多用していますので人のことは言えませんね。

余談ですがFBでは海外の友人向けに簡単な英文を併記しているのですが、その英文を考えるための日本語を考えるので、その後の日本語表記が妙なことになったりしています。

相手が日本語を翻訳機に掛けてもグチャグチャになるのは明白。なにせ正しい文語ではないですからね。翻訳ツールでの日本語は完全に異端です。

"May the force be with you" を色々な言語で訳してから英語に戻す実験で確信しました。翻訳ソフトは信用できないと……。ですから、頑張って辞書片手にタイピングします。

例えば、「街中で不思議なオブジェを発見しました。」という文章を書きたいのですが、直訳すると "I discovered a mysterious object in downtown." と、変な感じになってしまいます。

そこで、「私は不思議なアートオブジェを私の街でみつけました。」とぎこちない日本語を作ってから "I found a mysterious art object in my town." と訳します。頭の中は既にグチャグチャです。ちなみに私の英語はインチキですから突っ込みはなしです。

さて、そんな私が昔ネット上で注意された表現に「ありがとうございます!」があります。今の私は「ありがとうございます(^o^)」です。

何がいけないのかというと「!」が高圧的に感じるという意見を複数の方から頂きました。私としては「ものすごくありがとうございます」的な意味での「!」だったのですが、文字だけで表現することの難しさを痛感しました。

これが小説のような長文であれば、前後の文脈からニュアンスを読み取ることが出来ますが、紋切り型の文章がメインのネット上では注意が必要です。先の例で顔マークを使わないのであれば「ありがとうございます。とてもうれしいです。」でしょうね。

さて、具体的に今後はどんな用途にMS-Officeなのかは、まだオブラートに包ませておいてください。ところで、今までの私はMS-Officeの中では一番頻繁にMS-Excelを使っていました。学生の成績処理です。簡単な関数処理ですがとても重宝していました。

次がMS-Wordですね。これは色々な書類がほぼ100%、MS-Wordで支給されるからです。大学関係だけでなく仕事関係でもほぼ確実にMS-Wordです。これは無視できないですからね。頂いた資料にデータを入力し、体裁を整えて再送は今では必修ですからね。


■今月のお気に入りミュージックと映画

[Hooked on a Feeling] by Blue Swede in 1974(U.S.A)

邦題「ウガ・チャカ」。1969年にB.J.トーマスが放った曲のカバー。2014年の映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で主人公のピーターが重要なシーンにSONYのウォークマンで聞く名曲。劇中のカセットテープがとても新鮮に感じました。

Guardians of the Galaxy: Awesome Mix Vol.1 - Soundtrack
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[Guardians of the Galaxy]by James Gunn in 2014(U.S.A)

邦題「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。マーベルコミック原作のSFアドベンチャー。主人公のピーターは人間(実は人間とエイリアンのハーフ)ですが、緑色の女性戦士ガモーラ、怪力戦士ドラックス・ザ・デストロイヤー、木のヒューマノイドであるグルート、そしてアライグマに遺伝子改造されたロケットというユニークなキャラクターたち。

もう会話のシーンだけでも楽しめます。CGシーンも大満足。ところで、エンドクレジット後の場面で登場するハワード・ザ・ダックは、次回作のキー・キャラクターでしょうか? 期待が膨らみます。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」MovieNEX予告編
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

1月の終わり頃に風邪をひいてしまい風邪薬で誤魔化そうとしたのですが、取り敢えず医者に行くことにしました。しかし、熱は38度5分ありましたが実感もなく、食欲は平常通り、喉が少し痛いだけで咳もなく、全身に痛みもないので風邪ですよ、風邪。馬鹿は風邪ひかないということでもう何年も風邪を本格的にひいていなかったので、ちょっと嬉しかったりしました。

ちなみに、インフルエンザの症状は、高熱、全身倦怠感、食欲不振、関節痛、筋肉痛、頭痛。対して風邪の症状は発熱も軽度であり、くしゃみやのどの痛み、鼻水・鼻づまりということでしたので、どう考えても風邪。

ところが主治医からの第一声は「インフルエンザA」でした。とりあえず薬と解熱剤、そして咳止め(?)を頂いて一週間安静にしていたのですが、何が改善されたのか分らないほど普通の状態なのに、外出も出来ずにストレスは溜まってしまいました。

まっ、重症ではなかったのは運が強い証拠かも知れませんね。もっと別の部分で強運に成りたいのです……。しかし、こんな時に借りたDVDが外ればかりでウンザリしてしまいました。そのうち大ハズレ映画特集でもしてみることにします。

で、取り敢えず本を読んでも頭に入らないほど落ち着かないのでfacebookで騒いでいたら、関西の友人から「関西にきてください〜」とラブコールが入ったので「スポンサー捜します」とレスポンスしたら13分後に、大阪DTPの勉強部屋から「スポンサー」宣言が入り、一気に大阪行きが確定してしまいました。

昨年は正直10年ぶりぐらいに仕事関係が外れの年でしたので、今年はこれを引き金に巻き返したいですね。実は大阪に私が出かけた年って、今までとても縁起がいいんですよ。

yoshinori@kaizu.com
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■グラフィック薄氷大魔王[422]
「Photoshopで最初にやりたかったこと」他、小ネタ集

吉井 宏
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●Photoshopで最初にやりたかったこと

GIGAZINE:「Photoshop 1.0」で画像加工する貴重なムービーを見て感じる技術の進歩
< http://gigazine.net/news/20150220-first-photoshop-demo/ >

デザイン事務所時代の80年代後半、「フェリーの空撮からジャマな波頭を消すだけ」の写真レタッチに、レスポンスとかいうシステムを使うとウン十万円かかるって聞いたことがある。だから、そういった画像処理が個人所有のパソコンでできること自体がものすごいことに思えた。

Macがあこがれだった上京直後の1991年頃、田町駅近くのアップルのショールームに何度も通ってた。Photoshopで興味があったのが「スタンプツール」。画像の一部を採取して他の部分に移し替えるブラシ。

何をやりたかったかというと、絵具でマチエールというか絵肌のサンプルをいろんな色でたくさん描いて、スキャナで読み込んでライブラリにしておく。その絵肌をスタンプツールで複製しながら描けば、ほとんど絵具で描いたように見える絵が描けるんじゃないかと。あるいは、選択範囲でマチエールを切り抜いて使うとか、そういうことを考えてた。

当時、アナログタッチで描けるPainterみたいなソフトはなかった。あるにはあったけど、1億円くらいするクオンテル・ペイントボックスというシステムだけ。Mac導入後3か月で出会ったPainterはそんなことをMacでやりたかった僕にとっては「ど真ん中!」なソフトだったのでした。

そういえば、「絵肌サンプル+スタンプツール」を試したこと一度もないやw

●ハードディスクの壊し方

パソコンのハードディスク(HDD)を簡単なやり方で物理的に破壊しデータを読めなくして廃棄する方法
< http://matome.naver.jp/odai/2139169549931602301 >

へー!! 以前デジクリにも書きましたが、秋葉原のソフマップのHDD破壊サービスで十数個処理してもらったことがある。その後、やはり十数個くらい不要HDDが溜まってきたので、またソフマップ行かなきゃと思ってた。そんな簡単に処理できるのかー。いいこと知った。

さっそくやってみた。シールを剥がしてキリ状のドライバーを突っ込み、金槌で叩く。ちょっと強く叩かないと割れないですけど、実に簡単だった。シールを剥がさなくても、シールに突き刺して釘と金槌でOK。2.5インチHDDにも同じ形のシール部分がありますね。
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なぜこんな簡単な方法が常識になってなかったんだろう? HDDはいかにも頑丈に見えるから手ごわく思ってたけど、シールという弱点が用意されていたとは。SSDなんか見た目ヤワだから、金槌でぶっ叩けばOKだろうな。

●ハズキルーペとMacBook Pro

十分な画面解像度があるMacBook Proなのに、ペンタブを使うと画面からの距離が遠くなるから見かけのサイズが小さい。で、思いついた! ハズキルーペを使ったらどうなんだろ? 倍率1.6倍。快適かもしれない!

メガネショップで試してきた。ダメでしたw 確かに大きく見えるけど、メガネをかけた上からルーペするとピントが合う距離の範囲が狭い。ペンタブを使う距離ではボケる。おまけに、メガネとルーペが重なった部分しか見えないから視界が狭い。ルーペしたまま左右を見ると、視界が大きく移動するのでグラッとなって酔いそうになる。

う〜ん。このルーペは正面で手に持った本を読んだりする本来の用途に限られそう。

●iTunesの不満な点

Appleからサービスについてのアンケートのメールが来た。フィッシング詐欺を疑う習慣になっちゃってるから、本物のように見えても念のため答えないでおくw

Appleへの不満で最も大きな点は、iTunesのユーザーインターフェイス。ストアもプレイリストもなんであんなメチャクチャにしたわけ? どこに何があるかまったくわからないし、ポッドキャストを聞くのにも迷いまくり。iTunesで曲を探すのが苦痛!

あと、タイトルバーがない! 見た目スッキリしたかもしれんけどめちゃくちゃ使いにくくなった。気にせず上部をどこでも掴んで動かせばいいんだけど、一瞬「ここは触っちゃダメ」とか思っちゃう。

●仕事以外の時間をきっちり作る方法!

12月後半からのいくつかの仕事のバタバタにようやく区切りがついた。一週間くらい息をつけるはず。12月からTDWも2個しか作ってないし他にやりたいことやモノ減らしの続きもやりたい。作りかけの立体作品も仕上げたい。映画も観たい。

まあ、一か月半みっちり仕事だけしてたわけじゃなく、忙しい時でも「仕事3:それ以外 1」くらいの割合か。で、1〜2日くらい仕事以外のことに取りかかって夢中になってる時に、仕事の続きをしなくちゃいけなかったり新しい仕事の話が来ると、「今これやってるのにぃ〜!」的な感情が出てきてしまって困る。マジ困る。気持ちを切り替えられずに逆にストレスになっちゃう。

で、思いついた。「仕事してる時間」と「仕事以外をやってる時間」が「3:1」としたら、「3日:1日」じゃなくて「3時間:1時間」と捉えたらどうなんだ? と。つまり、×3で一日分としたら「9時間:3時間」。

例えば「一日に8時間以上は絶対に仕事しない」とか決める。はみ出し不可だから集中するし効率上がる。そしたら一日の中で5〜6時間は他のことができるようになるから、「今これやってるのにぃ〜!」はなくなる気がする。

つまり、たまに時間ができてやってる好きなことを中断されるのがイヤなら、毎日十分な時間を取ってやればいいっていう仕組み。

ぜひやろう!

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

iPhoneに機種変更して以来、一年以上持ち歩いてたモバイルバッテリーの付属アダプタがiPhone用じゃなく、単に充電ケーブルだった〜!

調べたら、iPhone用のアダプタは付属してなく、純正のUSBケーブルを使うらしい。まあ、一度も使う機会がなかったわけだが。

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii >

・ハイウェイ島の大冒険
< http://kids.e-nexco.co.jp >

・INTER-CULTUREさんの3Dプリント作品販売
< http://inter-culture.jp/Buy/products/list.php?category_id=63 >

・App Store「REAL STEELPAN」
< https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8 >


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編集後記(02/25)

●「是非に及ばず」といえば織田信長である。その意味は「仕方がない」という“あきらめ”の心境をいうと解釈されてきたが、「本能寺の変 四二七年目の真実」を書いた明智憲三郎は、「信長公記」にある「是非に及ばず、と上意候。透をあらせず、御殿へ乗り入れ」をこう解釈する。つまり、上意(命令)であった。そして直ちに御殿に入り戦闘態勢をとった。あきらめた人のすることではない。「是か非か論ずる必要はない。それよりも即刻戦え」という意味だ。おお納得できる解釈。つい最近「是非に及ばず」をタイトルにした二冊の本を続けて読んだ。まずは羽山信樹作である(小学館文庫、2000)。

「是非に及ばず 異聞信長記」元本は1991年に新人物往来社から発行された。筆者は太田牛一の全16巻におよぶ「信長公記」の優れた読み手であり、全編を読み了わると信長という稀代の天才児の姿がくっきりと立ち現れてくるという「信長公記」の手法を借りて、長編小説を書いてみようと思い立つ。信長をテーマにした読み切り12本の連作である。羽山流の「信長公記」解釈といってもいい。最初は信長が19歳で初めて人を斬ったエピソードを含めた「政秀切腹の事」で、視点はもちろん信長にあてられている。ところが、それ以降は周囲の人物に視点が移動していく。別の視点から信長に光があてられるわけだ。

信行惨死・権六改心、義元最期、龍興退散、六角落城・光秀仕官、義景七転八倒、浅井滅亡、足利滅亡、鹿之助七難八苦、波多野謀死、勝頼会者定離、明智日向守逆心と続き、それぞれどんなエピソードを表しているのかはよくわかる。だが、今まで読んだ時代小説とはちょっと違う。出来事と人物像に筆者の新しい解釈が加えられているからだろう。もちろん、それぞれに信長の思想や行動がベースにあり、一話だけ読んでも面白いが、全部読み終わると、多角的な照射で立ち現れてきた信長像がしっかりと見える。なんとなく、これって3Dプリンターみたいだなと思った。

12本のうち「鹿之助七難八苦の事」だけが、わたしの知らない話だった。山中鹿之助について初めて詳しく知った。また、斎藤龍興や武田勝頼についても、わたしの抱いてきたイメージとは違い、とても切ない。信長の光秀への冷遇と、それに対する光秀の憤悶の構図はよくわかる。信長、信忠、そして家康を屠るのは容易で、すべての織田軍団は即座に信長の弔い合戦に立ち上がる余裕はない。決行ののち素早く畿内を掌中に収ることができれば、勝てる。票読みすると間違いなく勝てる。ところが……。「明智日向守逆心」はおなじみの世界で、信長像は従来とあまり変わらなかった。ところが二冊目は……。(柴田)


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします