[3863] プリンターとスキャナの話

投稿:  著者:  読了時間:18分(本文:約8,600文字)


《あっ! 3月末でデジクリ連載が丸10年!》

■ローマでMANGA[85]
 ボローニャのジュセッペ・パルンボ
 midori

■グラフィック薄氷大魔王[423]
 「透過原稿をスキャンする」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■ローマでMANGA[85]
ボローニャのジュセッペ・パルンボ

midori
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150304140200.html >
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90年代に講談社のモーニングが、海外の作家の書き下ろし作品をのせるという前代未聞の企画を遂行していたときにローマで「海外支局ローマ支部」を請け負って、そのときのことを当時のファックスをスキャンしつつ、それをもとに書いているシリーズです。

という前口上が使えなくなってきた......。

「アモーレ」と「ユーリ」のイゴルトを皮切りに「不思議な世界旅行」と「ミヌス」を掲げたヨーリが参加し、海外組、特にヨーロッパの作家が増え始めた。モーニング編集部に、日本語のわかるピエルアランというフランス人編集者が加わった。

ピエルアランの知り合いのフランス圏漫画家達に声をかけて、「ピエルアランと友達」というタイトルの短編ページがモーニングに誕生した。

そこにイタリア人漫画家が参加した。今回の主役ジュセッペ・パルンボだ。
< http://www.giuseppepalumbo.com/ >

宮崎駿監督が「天空の城 ラピュタ」の着想を得たところと言われ、メル・ギブソン監督の映画「パッション(受難)」が撮影され、ユネスコの世界遺産に登録されて有名になったマテーラの出身。

年代はイゴルト、ヨーリと同年代で、南イタリア・サルデーニャのカリアリ出身のイゴルト、オーストリアと国境を分ける町でドイツ語を話す北イタリアのメラーノ出身のヨーリと同じようにボローニャに居を構える。

パルンボがモーニングとコンタクトを取った頃、パルンボはすでにプロの漫画家として活躍しており、イタリアで唯一漫画家として生活できる「ボネッリ出版」の「マルティン・ミステレ」で作画をしていた。

この頃、私に息子が誕生し、パワーPC搭載の一体型コンピューターPerformaを手に入れ、ここから直にファックスを送ったりした頃なので、かなりの通信文がPerformaとそれに外付けていたHDにあって、いまや幻となっている。

だから、ここから、かなりの部分、私内蔵HD「記憶」に頼ることになる。

●パルンボの日本デビューはヒゲもじゃオジさん

ピエルアランとコンタクトを取ったパルンボは、キャラクターをひとつ作り上げる。友人の一人をモデルにしたという超長髪、ヒゲもじゃのキャラが床屋に挑み、追いかけっこをしつつ、結局のところ、遊びつつ散髪をした、というドタバタギャグだ。

床屋で髪を切る話だからタイトルは「CUT」。で、このキャラクターの名前にもなった。

(↓ここでその話が読めます)(ヨーロッパ式に読み方向を反転してます)

< http://issuu.com/giuseppepalumbo/docs/10mosse/11?e=1305767/3400284 >

パルンボのリアルな描写の人物でドタバタギャグ、はすごく新鮮だった。

ヨーロッパの作家にありがちな、絵画的でアウトラインがはっきりしない絵柄ではなく、アウトラインをしっかり取った日本のMANGAに共通する描き方で、日本の読者の目にも違和感は少なかったと思う。

読者の評価はどうだったのか情報はないけれど、ともかく「ピエルアランと友達」略して「ピエ友」シリーズの一つとして日本にお目見えした。

「ピエ友」は連載をしない(その後、ピエルアランが掲載作家の発掘に困ったのか、もう一度「CUT」が掲載された。特殊な例だ)。

でも、お友達のイゴルトとヨーリが連載作品の契約をしている。僕だって! と思っても不自然ではない。

イタリア、フランス、スペイン担当の編集者、堤さんがイゴルト、ヨーリとの打ち合わせにやって来た。そこでパルンボも便乗した。

三人ともボローニャ住まいだから、こういう時楽だった。一人暮らしのイゴルト宅がサロンにもなっていて、ボローニャ内外の漫画家やアーチスト仲間がよくやってくる居間が打ち合わせ場所になる。

そして、パルンボと「CUT」の冒険が始まるのだった。

●辛坊強いよ南イタリア人

南イタリア人、とひとくくりにしてしまうのは危険があるけれど、パルンボはいつも穏やかな笑みをうかべて控えめだ。体はまるまるして純朴な農夫のような感じだ。いかにも辛抱強い感じ。

堤さんは「CUT」をあまりお気に召していなかったのかもしれない。手放しで、「ピエ友に掲載されたものの続きにしよう」とは言わなかった。

ここで脳内HDにバグが出て、具体的な内容を引き出すことができないのだ。

パルンボがにこやかに、でも自分の意見とは違う方向の堤さんのサジェスチョンを聞いていた姿は記憶HDに残っている。

私もこの頃エッセイMANGA「ローマの生活」を描いていて、堤さんが担当編集だった。時々編集さんの言いたいことが、私の頭の中にないものだと、合わせようとしても案がぎこちなくてなかなか先に進めないことがあった。

パルンボもそれに陥るのかな、と心配したものだ。堤さんと何度かやりとりをしたけれど、なかなか決定打が出なかった。

それから一年程だったと思うけれど、モーニング編集部に国際版権部から英語のできる編集者が異動してきた。海外作家企画がいよいよ軌道に乗ってきた証拠だ。

堤さんが一手に引き受けていた何人ものヨーロッパの作家を、手分けすることにしたのだ。

パルンボは竹中さんに引き継がれた。まだ、何も決まってなかったしね。堤さんもいまひとつフィーリングが合わないと感じたのかもしれない。

顔合わせで竹中さんもヨーロッパを巡礼した。またもやボローニャのイゴルト宅で打ち合わせ。ここでもパルンボは穏やかな笑顔で竹中さんに対した。

竹中さんは「ピエ友」にもう一度掲載された「CUT」第二話に出てきた、CUT以外の男性と女性をレギュラーにしたらどうか、と提言した。

トリオで毎回役柄を変え、同じキャラでありながら役を変えて読み切りでエピソードを作っていく。「ピエ友」は8ページだけど、16ページでもいい、と言ってパルンボを喜ばせた。

話し合いの中でパルンボは何度もうなづきながら、視線を左上の方へ持っていった。上の方へ瞳を動かすのは考えているからだけど、ボディラングエージでは瞳を左へ動かすのは嘘をついてる時ではなかったか。

だとするとパルンボは、竹中さんの提言を納得しなかった、とも考えられる。実際、竹中さん担当でもパルンボの作品は掲載にまでもっていけなかった。

編集と作家の相性というのも大切なんだ、ということを目のあたりにした経験
だった。
そして、またまた年が二回ほど明け、パルンボは相変わらず幾つか試作ネームを送り、ボツになっていたが、新たな出会いに至るのだ。

これは次回へ。

【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

郊外の我が家はもと農家で、「庭」と呼んでいる耕作地がある。ほうっておくと雑草がジャングルとなり、お隣の境界近くにあるイチヂクを取りにいけなくなる。

トラクター型のエンジン付きの草刈り機を購入したけれど、オートマチックじゃないので、誰かが乗って草刈りに出かけないといけない。草刈りだけならいいけど、庭という名の耕作地は他にもいろいろ仕事を作ってくれて、いくら時間があっても足らない。家族全員それぞれやることがあるしね。

三年ほど前から、耕作地の半分をお向かいの三ちゃん農家のアンドリオさんに提供することにした。

アンドリオは自分で耕し、収穫し、近郊の町の朝市へ売って生計を立てている。ほとんど農薬を使わず、ハウスを使わず、季節の野菜しか作らない。

アンドリオの野菜は美味しいけれど、彼の生活は苦しい。こうした業界でちゃんとまともな生活が出来ないというのは間違ってると思うけれど、これはまた別の話だ。

今年の冬は菜の花を植えた。耕作地をタダで貸しているので、作物を勝手に取っていいことになっている。

葉が柔らかい時と花の蕾が出始めた時に何度か収穫した。イタリア式だと茹でて、その後、フライパンでニンニクと唐辛子と一緒に炒める。

柔らかいので茹でずに直接フライパンで火を通したら(コップいっぱいの水と一緒に)成分を逃さず取ることになるのですごく美味しかった。

アンドリオの野菜を食べるようになって、自然に育ち、採りたてで食べる野菜の味の濃いことに驚いている。

MangaBox 縦スクロールマンガ「私の小さな家」
< https://www-indies.mangabox.me/episode/18803/ >

「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」
< http://p.booklog.jp/book/77255/read >

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/ >


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■グラフィック薄氷大魔王[423]
「透過原稿をスキャンする」他、小ネタ集

吉井 宏
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150304140100.html >
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●透過原稿をスキャンする

ポジやネガなどの透過原稿をスキャンできるエプソンGT-X820があるうちに、アナログ時代からのポジをスキャンしておこうと思い立った。「あるうちに」というのは、近々、複合プリンタに買い換えたいと思ってるから。

大量のポジを分類したら、絵具で描いたイラストよりも、データ入稿ができなかった頃のデジタル作品のポジ出力や、書籍/雑誌の表紙を複写したものが多い。画像データがある作品はもちろん、表紙も別にスキャンデータが存在するため、あらためてスキャンする必要はない。

スキャンする必要があるのはアナログ時代の絵の複写ポジ、4×5や6×7合わせて60枚程度。あと35mmが数10枚。

6×7を3枚ずつテンプレートに載せて調子よくスキャン。こりゃけっこうはかどるぞ! と思ったら、あれ? 発光部分の幅が足りず4×5がスキャンできない仕様。しかたなく、半分ずつスキャンしてPhotoshopの「差の絶対値」でレイヤーを位置合わせして合成する。こういう淡々とした作業はキライじゃない。

で、5〜6枚やったところ、どうしても合わせ目が合わないものが出てきた。何度もスキャンして画像を並べてたらわかった。同じ解像度でスキャンして長さが違うぞ。明らかに平体かかってる。なんだこりゃ? コンシューマ用の限界か?

スキャナを再起動すると、サイズが違うトラブルはなくなる。しばらくやってると急に合わなくなるけど、その都度再起動すればなんとか大丈夫。

一日目に40枚ほどスキャンして、二日目に突入、と思ったら、あれ? おかしいな。6×7を18枚と35mmのスキャンも朝のうちに終わっちゃった。早すぎる。ずっと「大変な作業だから覚悟しなきゃ」って思ってたけど、やり始めたら片手間で丸一日しかかからなかった。もうスキャンするポジがなくなっちゃった。もっとスキャンしたいw

とりあえず、画質の悪いL版プリントをスキャンしたものしかなかった絵や、原画が手元になくポジしかなかったものなど、今までWebにアップしたことのない絵をお見せできそう。そのうち、ギャラリーにしよう。

スキャンとか書籍自炊とかのときどき手がかかる作業を仕事と同時にやると、集中が途切れないから仕事がめちゃくちゃはかどる!  のはいつもの通りw

●複合機に買い換えたい

ってのは、主に「テーブルひとつを占領してる上に電源・USBケーブル計4本がのたうつA4スキャナとA4カラーレーザープリンタ」を「Wi-Fi接続のA4カラリオインクジェット複合機に買い換えたら、電源ケーブル一本で済む上にテーブルが半分空くぞ!」という目論見。

今、奥さんのカラリオ複合機を試してみたんだけど、う〜むむ。そんなにいいもんじゃないな。プリントは、顔料インキ系よりはマシだけど最初にちょっとスジが出るし、紙送りが二枚重なったりプリントされずに出てきたり、手差し設定が言うこと聞かなかったり。

そこへいくとレーザープリンタのメンテナンスフリー感はすごい。レーザーは発色が地味なのでインクジェットに期待したけど、普通紙ではインクジェットのほうが地味。写真用紙を使った本気プリントは、インクジェットが圧倒的にキレイなんだけど。

複合機のスキャナは「キッキキ、ビョ〜〜〜」って音が頼りないし、遅い! っていうか、今使ってるスキャナが速すぎるんだろうけど。300dpiで雑誌の表紙をスキャンする分には画質的にはあまり差は感じない。

やっぱ普段使いのレーザープリンタははずせないなあ。スキャナも今使ってるのが優れものってよくわかった。高画質プリントしたいときはインクジェット使わせてもらうか。Wi-Fiでも使えるし。

いやしかし、染料インキはマシ。何週間ぶりに使ったプリンタでもほぼ実用のきれいさでプリントできるもん。顔料インキ系プリンタは、スジスジが消えるまで一時間半くらいメンテナンス。

ただ、カラリオプリンターはペナペナのプラスチックの給紙トレイや差し込み口のフタ、ディスクプリントのトレイなどがあちこちにあって、ガチャガチャの建て増し感、めちゃくちゃヤワに見える。うかつに持ち上げるとベキバキッてどこか壊れそう。HPの複合機などのほうがぜんぜん大人な感じがする。

次買うときはHPにしてみようかな。世界的にはHPのプリンタが標準らしい。以前、HPのプリンタにしてたこともありましたが、インキがお店で売ってなく通信販売。今は近所の量販店でも買える。

そういえば! 1992年にMacintosh IIciといっしょに買ったプリンタはHPだった。CMY3色でカラーを表現するタイプの「DeskWriter C」。なんと198,000円!

●プリンター/スキャナの余談いろいろ

・おととし、実家作業中にどうしても必要になって、エプソンの下から二番目に安い7000円くらいの複合機を買ったんだけど、スキャンもプリントも速度は遅いものの、そこそこキレイでびっくりした。これで十分仕事できる!

・使用中のエプソンGT-X820は2本のLED光源で紙のシワなどが映りにくく、モアレ低減オンでもめちゃくちゃ速くて高画質。ただ、透過原稿ユニットが取り外し不可なため、フタが重くて開閉するのがめんどくさい。本気スキャン用に残しておこうかなとは思ってる。

・そもそも、画質が要求されるスキャンってほとんどしないし、透過原稿ももうなくなっちゃった。これからは安い複合機で十分。スケッチとかはScanSnapでスキャンすることも多いし。大量のスケッチが、一個のPDFにまとまるのが痛快。

・写真愛好家やプロが、デジカメ以前のフィルムやプリントを利用したいから高画質スキャナの需要があったんだろうけど、そろそろ「アナログ写真のデジタル化」って誰もしなくなるかも。興味ある人はすでにデジタル化し終わってるだろうから。カシオQV-10から20年もたってるんだ〜。

・ScanSnapにしても、僕の本棚にはまだ裁断するつもりはないけど、将来自炊するかもしれない本はあと数10cmしかない。買ってきた本を書籍自炊しているのは「電子本が売ってないからしかたなく」であって、電子本だけ買うようになったら必要なくなっちゃう。

・エプソンからUSBバスパワー駆動のスキャナが出てる! バスパワー駆動スキャナの元祖、キヤノンのLIDEシリーズは歴代4機種買ったくらい大好きだった。今は複合機中心だからスキャナ単体の需要は少ないんだろうけど、と思ったら、うへー! キヤノンなんかパーソナル向けスキャナがたった2機種になってる〜。エプソンはプロ写真家向け含めて4機種。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

実は今回の原稿は急遽差し替えたもの。先週、『「.docx」がMac版Word2008で開かず、いろんなアプリを試したあげく、結局最新版のOffice Mac 2011を購入、ところがやはり開かなかった〜!』という件をSNSに書いた。毎度のドタバタ事件として、直後にデジクリ原稿としてまとめ、この号に載せるつもりだった。

しかし、どう手を入れても「ろくでもないOffice書類が送られてきて大変な目に遭った」というトーンになってしまう......。違うのです。「簡単な方法があるのをわかっていながら、その方法以外で自主的に解決したら痛快だろうと思っていろんな検証を始めてしまうという、いつものパターンの自虐的笑い話」のはずだったんだけど。

ボツにした。......ほぼ完成してたのにボツにするのは初めてかも。あっ! 3月末でデジクリ連載が丸10年!

・rinkakの3Dプリント作品ショップ
< https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii >

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii >

・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp >

・App Store「REAL STEELPAN」
< https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8 >


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編集後記(03/04)

●「ボケてたまるか!」を読んだ。このタイトルの本はアマゾンで五冊も出てくる。伊東四朗、はらたいら、金子満雄、明治製菓広報室、そして一番新しいのが、山本朋史「ボケてたまるか! 62歳記者認知症早期治療実体験ルポ」である(朝日新聞出版、2014)。62歳の記者による認知症早期治療の体当たり現場ルポ、ではない。筆者自身が「症状はまだ軽いが認知障害の疑いがある。まだ認知症までは進んでいない。しかしこのまま放置すると数年後には認知症になる可能性がある」と診断された患者なのだ。彼は「ボケてたまるか!」と専門医が推進する認知症早期治療に賭けた。その実体験ルポ。いい企画だ。

前期高齢者でさえない記者は、61歳を過ぎた頃から脳の異常を自覚する。物忘れが重なったが、加齢のせいにしてきた。ところが、あるとき取材日程のダブルブッキングという、今までの記者人生でありえないことが起こった。認知症かもしれない。不安で夜も眠れなくなる。医療関係者に相談して、東京医科歯科大学病院神経科の「もの忘れ外来」に飛び込む。結果、前述の診断が下された。受けることになった認知症早期治療は、仕事と両立できるのか。週刊朝日のデスクに相談すると、その治療の実体験をルポすればいいと提案され連載が始まった。300日間の記録を再構成したのがこの本。治療費は自己負担だ。

筑波大学附属病院でのトレーニングが始まる。南千住の自宅から約2時間のつくばの病院へ。午前9時から午後3時半まで30人以上参加するグループワークだ。認知機能ゲーム「アタマ倶楽部」での集中トレーニング、簡単なゲームで高齢者たちに惨敗。参加者たちはみな必死で「認知力アップデイケア」をこなしていく。柔軟体操、ステップダンス、筋力・歩行・敏捷性テスト、耐久力比べなど、すべて記録され順位が発表される。こうして笑いと汗と格闘の日々が綴られてゆき非常に興味深いが、このような先進的な認知力アップトレーニングは、まだ限られた病院でしか受けられない。認知症早期治療の最前線を、身を以て体験する非常に価値のあるレポートだ。

初めて知ることだが、筋力トレーニングが高齢者の認知機能に顕著な効果があるという。健常者からいきなり認知症になる人はいない。最初は必ずMCI(軽度認知障害)という通過点がある。ここで治療すれば治る可能性も高い。何もしないで放置すると症状が進み認知症になってしまう。MCIからもとに戻るために一番効果のある運動は、負荷のかかる強めの筋トレである、という「本山式筋トレ」が写真入りで解説されている。これは価値ある情報だ。回復を信じて筆者は早期治療にいっそう励んでいるという。最近もの忘れが多いと思う人は読むべし。怒りっぽくなる、これは認知症の症状だ。わたしも......(柴田)


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします