[3872] いつものものを選べるということ

投稿:  著者:  読了時間:17分(本文:約8,400文字)


《USB-Cポートひとつだけの割り切り》

■装飾山イバラ道[152]
 いつものものを選べるということ
 武田瑛夢

■Take IT Easy![46]
 プログラミングを学ぶ、教える
 若林健一 / kwaka1208

■おかだの光画部トーク[132]
 次に出る[MacBook Pro 15 Retina]が欲しい
 岡田陽一




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■装飾山イバラ道[152]
いつものものを選べるということ

武田瑛夢
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150317140300.html >
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毎年3月のこの時期にやっていることは確定申告。4年前の3月11日のように、今年も同じ日に、やっぱり午前中に夫と一緒に確定申告に出かけた。時間が予定より遅くなったことをお互いのせいにしながら歩く。

提出が終わった後は、時間つぶしを兼ねて散歩し、毎年恒例のお寿司のランチにした。お店の行列は相変わらずだけれど、WEBの受付システムがうまく動いているようで、皆のストレスはだいぶ緩和されているようだ。シャリ小さめで握ってもらった美味しいお寿司を頂いてホッとする。

春の日差しがキラキラとするような天気の良い日。4年前と違うのは税務署に日の丸が低く掲げられていたこと。半旗に気づいたのは夫だったけれど、今日が3月11日だからだねという話をした。

・4年前の記事 [74]キツツキを見上げた日/武田瑛夢
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110412140200.html >

久しぶりにこの記事を読んだら、4年前のその日のことが蘇ってきた。書いておいて良かった。あの時の私が恐れたように、その後食材の入手や日常に多少の不自由はあったものの、時が経ってしまえばそれほどの苦労ではなかったと思う。

本当に大変な思いをした方たちが、現在も家族のために努力を続けていることを、数々のテレビ番組や記事で知った。時間が経つことは残酷なこともあるけれど、人に優しい時もある。

●日々の選択

散歩がてらに寄ったスーパーでは豊富な野菜や果物、魚に肉があった。普通に何でも手に入る。今年の3月11日の行動を4年前と同じにしたのは偶然もある。ただ同じように過ごすことで、当たり前の日常の幸せをしっかりと感じることができた。

私はあの頃、最悪の場合はもっと日本が壊れてしまうと思ったし、日本の食べ物はもうだめかと思っていた。一時は海外のお肉ばかり食べ、乳製品のほとんどは海外のものを選んでいた。お水はすべてミネラルウォーターにしてコストがかかってしょうがなかった。それはそれで良かったと思う。

現在では半分は水道水も使っているし、国産の食材も食べている。震災直後には避けていたものも、だいぶ取り入れていると思う。しかしすべてではなく、よく選んでから買うことに変わりはない。

何も気にせずに食材を買っていた頃にはもう戻れないけれど、気にかけながら食べることはそう大変でもない。もう慣れてしまったのだ。かなりWEBの通販で食材を買うようにもなったので、いつ何をどう選んで食べてきたのかの履歴も残っている。何となくあるものを買うのではなく、意識的に買う習慣は今後も続いていくだろう。

当時はマンションから出て行ってしまった家族もいたし、このマンションに住み続けていいものかと悩んだりもした。過去の自分の選択が正しかったのかを3月11日を機に振り返っては考えた。

しかし今は冷静なのでわかるけれど、人間はその時々で考えられる精一杯を考えて生きているはずだ。だから過去の選択に間違いはないんじゃないかと思う。

私は基本的に一度気に入ると変えないタイプだ。美容師さんも歯医者さんも商店街もずーっと何年も同じ。しかしあらゆる人との関わりを、好きだったのに変えざるを得なかった人たちがたくさんいるということを忘れてはならないと思う。

同じ人たちに連絡をして、同じように関わってもらえる有り難みを噛み締めながら普通に生きる。今年もアメリカン・アイドルを見て、録画時間の残量を気にする。そろそろ日常のスピードを変える選択もできる。4月を迎えるための、いつもの準備を始めよう。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/ >

今回のテキストから、「旦那さん」という呼称が「夫」になりました。特に意味はないけれど、アラフィフへの自覚からかもしれません。てへ。


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■Take IT Easy![46]
プログラミングを学ぶ、教える

若林健一 / kwaka1208
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150317140200.html >
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こんにちは、若林です。

私もCoderDojoとして活動してる「子ども向けプログラミング教育」、このところテレビ番組で取り上げられたり、ニュースで取り上げられたりと、大変注目が集まっています。奈良でも、参加した方の声を聞いて「うちも参加したい」という声をいただき、キャンセル待ちが出るほどで嬉しい悲鳴をあげています。

小学1年生にプログラミング教育--武雄市、DeNA、東洋大
< http://japan.zdnet.com/article/35060367/ >

CoderDojoは小中学生のためのプログラミング道場
< http://coderdojo.jp/ >

私自身がプログラミングを覚えたのは中学・高校生の頃でした。パソコン本体はMZ-2000を祖母に買ってもらいましたが、当時は今のようにインターネットもなく、プログラムを入手する手段といえばパッケージを買うか、本に載っているBASICのソースやマシン語のデータを入力するしかありません。

中学生には、おいそれとパッケージソフトウェアを買うわけにもいかず、本に載っているプログラムをせっせと入力したものでした。

しかし、当たり前のように入力ミスがたくさんあり、一発では動きません。最初の頃は、意味もわからずに入力していたので、どこが間違っているか想像もつかず、プログラムを最初から最後まで画面と本を見比べて、間違っている箇所を探す地道な作業の繰り返しです。

そうこうしているうちに、動かないケースとその原因の対応付けが身についてきて、おおよその原因と箇所が特定できるようになり、気がつけば自分でプログラムを改変できるようになりました。

このようにして、私はプログラムを学んだのでした。何をするにも、動機付けというのは大切ですね。

それに比べると今の子ども達の恵まれていること。わざわざ自分で作らなくても、スマートフォン用のゲームを含めて無料で遊べるものがたくさんありますし、その内容も画面がきれいだったり、イベントがたくさんあったりと、私たちが子どもの頃に遊んだものの比ではありません。頑張って自分で打ち込まなくても、遊ぶネタには困らないのです。

それでも、忍者(Dojoに参加する子ども達のことを忍者と呼びます)はDojoでの活動だけでなく、家に帰ってからも作ったものを改造したり、同じテーマに自分ひとりで再チャレンジするなど、熱心に取り組んでいます。

私たちの子どもの頃のように遊ぶネタ欲しさではなく、純粋に作る楽しさを感じてくれているようで、教える側としては嬉しい限りです。

子ども達がプログラミングを学ぶと、どんないいことがあるのでしょうか? 私は次のように考えています。

1)YouTubeを観たり、ゲームで遊んでいた時間を、モノづくりの時間に転換できる

子ども達は(大人もでしょうけれど)デジタル機器に興味津々です、スマートフォンやゲーム機やパソコンが大好き。子ども達にとっては、ゲームをするのも作るのも同じぐらい楽しいこと、「ゲームをばかりしてたらダメ」ではなくて「ゲームを自分で作る」という新しいテーマを与えることで、YouTubeを観るだけ、ゲームをして終わっていた時間を、モノ作りを経験する時間に変えていくことができます。

2)パソコンやスマートフォンなどが動く仕組みを理解し、ITリテラシーが高まる

プログラム作りを経験することで、デジタル機器がどのようにして動くのか、どんな工夫が必要なのかを知ることができます。これらを知ることによって、普段自分たちが使っているアプリや機械がどんな風に動くのかをイメージできるようになります。

これは、すぐに効果が現れるものではありませんが、いわゆるITリテラシーの基礎として大人になった時に役に立つはずです。

たとえば、ITリテラシーの分野でなかなか理解の進まない「セキュリティ」についても、内部の動作イメージを持つことで、正しい理解を得ることができるようになるでしょう。

3)学校で習ったこと、特に算数や理科の授業で習ったことが生きる

プログラムを作る上で必要な知識は、プログラミング言語だけではありません。算数で習った四則演算、座標、方程式。理科でならった公式など、授業で習っただけで実生活で使うことのなかった知識が、プログラムを作る上では必要になります。

例えば、キャラクタを動かすためにはX座標、Y座標を理解していなければなりませんし、動かす方向を変えるためには普段の生活では滅多に使わない「マイナスの数字」も使わなければなりません。

算数や理科で習った知識を「道具」として駆使することでより理解が深まる。つまり、「プログラムを作る」というは、学校で習ったことの実践の場でもあるのです。

学校の勉強にもつながる、となれば関心が高まる保護者の方も多いのではないでしょうか。いつもゲームで遊んでばかりのうちの子にプログラムなんかできるかな? 関心を持つかな? 

そんな心配はありません、今までにDojoでたくさんの子ども達を見てきましたが、小学一年生でも楽しんでやってますし、みんな時間を忘れるぐらいに真剣に取り組んでいます。

最初はどうしていいかわからなかった子も、帰る頃には「家に帰ってまたやる!」と言ってくれます。どうぞ、近くのDojoを探して参加してみてください。

そして、保護者のみなさんには教える立場にも参加していただきたいのです。各地のDojoで使っているScratchというプログラミング言語は、プログラミングを職業としない方でも扱える簡単なもの。

多くのDojoでメンター(教える人)が不足していますので、子どもを連れてくるだけでなくメンターとしても参加していただければ、より多くの子ども達が浪費している時間を、より有意義な時間に置き換えることができるのです。どうぞ、よろしくお願いいたします。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
crossroads
< http://kwaka1208.net/ >
< https://twitter.com/kwaka1208 >
< https://www.facebook.com/kwaka1208/ >

CoderDojo奈良
< http://coderdojonara.wordpress.com/ >


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■おかだの光画部トーク[132]
次に出る[MacBook Pro 15 Retina]が欲しい

岡田陽一
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150317140100.html >
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最近、忙しすぎて時間が経つのがもの凄く早く感じる。先週のアップルの新しい製品の発表から、あっという間に一週間だが、なんだかもうずいぶん前の事のように感じる。

先週のKeynoteでは、昨年発表され話題になったApple Watchの発売日が4月24日と明らかになったが、新しいMacBookの発表が目を引いた。

事前の噂で、MacBook Airの12インチRetinaが出ると思っていたこともあり、「MacBook? Airじゃなくて?」というのが最初の印象だった。
< http://www.apple.com/live/2015-mar-event/?cid=li-us-keynote-mar-2015 >

じっくりスペックを見てみると、MacBook Airとは全く別ラインだということがわかる。
< http://www.apple.com/jp/mac/compare/results/?product1=macbook&product2=macbook-air-13 >

現時点では、新しいMacBookがRetinaディスプレイという部分で上に感じるが、CPUなどのスペックを見ると、新しいMacBookはどちらかというとエントリーモデルの位置づけのようだ。

アップルらしく、思い切った割り切りで出してきたと感じるのは、色々なポートを全て捨てて、USB-Cポートひとつだけ。そこまで削ぎ落とすかというくらいの大胆なデザインはアップルにしかできないことだと思う。

PCには付いていて当たり前だった光学ドライブも、なくしたのはアップル。当初は、光学ドライブなしで、どうやってソフトをインストールするの? と、誰もが思ったが、今ではアプリはダウンロードが当たり前。

CDやDVDにデータのバックアップ取ってたなんて、今では嘘のように誰もそんなことはせずに、Cloudを使っている。

なので、きっとこの先のノートPCは新しいMacBookのようになるのだろう。

だけど、わたしが今このMacBookが必要かと言われれば、これじゃない。趣味で使う分にはこれがいいのかもしれないが、がっつり仕事で使うとなると、ちょっと物足りないし、レガシーな部分の拡張性・互換性は必要。

いま使ってるMacBook Airのトラックバッドがちょっと馬鹿になってきているので、新しいMacを買おうと思っていたところだったので、今回、MacBookと共にリプレイスされたその他のモデルも、期待をもって見ていたが、残念ながら買おうと思っていたMacBook Pro 15インチ Retinaについては、アップデートされたのは価格だけ。円安の為替を反映して、数万円高くなってしまった。

MacBook Pro 13インチ Retinaの方は、感圧タッチトラックパッドや第5世代のIntelCoreプロセッサなど、新しい技術も搭載してきているので、15インチの方はたぶん、CPUが間に合わなかったのだろう。秋のWWDCの頃には出ると期待して、半年ほど待ってみようと思う。

かつては、MacBook Pro 一台で仕事していたが、ここ3年くらいは、デスクトップにMac miniをメインで使い、サブでMacBook Airというスタイルでやってきた。

オフィスでじっくり仕事をして、たまに外という場合はこれがよかったが、最近は外に出ることが増えてきたので、2台に分かれてるとFontが入っていたりいなかったりと、逆に使い勝手が悪くなってきたので、次は以前のスタイルに戻してMacBook Pro 15インチ Retina 一台体制にしようと考えている。

ただ、今の段階では、いつ出るかもわからず秋ごろに出ればいいなぁと想像しながら、だましだましAirを使い続けないといけないので、ひとまず4月に時計を買ってみるか。と思ったり思わなかったり......。

【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > <Twitter:http://twitter.com/okada41 >

2015年、マンスリーで開催中の「CSS Nite in KOBE」。3月のVol.7は今週金曜日20日に開催。"リモートワークでも「ちゃんとWeb」するコミュニケーション&ディレクション術〜 オフィスを持たない制作会社が取り組む、満足度の高いプロジェクト管理"と題し、たにぐちまことさん(H2O Space.)に3時間お話いただきます。
< http://cssnite-kobe.jp/vol7/ >

その次、Vol.8は4月24日(金)こもりまさあきさんに、Web制作効率化のための制作環境構築に関して「デバイス多様時代 2015年のWeb制作(仮)」を3時間。こちらも申込みはじまっています。
< http://cssnite-kobe.jp/vol8/ >

また、今月29日(日)にはApple User Group KOBEのイベント、「第1回 AUGM in KOBE(アップルユーザーグループミーティング in 神戸)」を開催します。
< http://augkobe.com/entry-6.html >

既に参加申込みも開始しています。アップル好き、Mac好き、iPhone好きのみなさん是非ご参加ください。ゲストのITジャーナリスト 林信行さんのKeynoteをはじめ、盛りだくさんの内容です。


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編集後記(03/17)

●渡部雄吉写真集「張り込み日記」を読んだ(ナナロク社、2014)。写真集だから、見たというべきか。ネットのどこかで、構成・文が乙一、ブックデザインが祖父江慎のすごい写真集があるとの噂を聞いて、図書館で検索したらすぐに見つかり借りることができた。B5判208ページ、厚さ2.4cm、かなり重い。最初の3見開きが古い沼のような色の印刷で、他は全部重厚なモノクロである。一通り見たら、映画制作時のスチル写真かと思った。映画撮影中によくこんなすごい写真が撮れるものだと感動した。それは違っていた。この写真は映画のシーンではなく、ある殺人事件を追う刑事ふたりに同行した捜査記録だった。

渡部雄吉「張り込み日記」は非常に有名な写真集であることを後から知った。まず2011年にフランスで刊行され大ヒットした。2013年日本のroshin booksがオリジナルのネガから新たにプリントを制作し、フランス版になかった写真も加えた新編集版を発行し話題になった。そしてこのたび、文芸作家とアートディレクターが参加して、再編集版が作られたのだ。先行する写真集があるのに、なぜこの企画が成立したのかというと、ナナロク社版は、事件発生から解決までを丹念に追ったかのように「構成」したからだ。事件の発端から捜査の進展状況、そして結末までを記す短いテキストが、6か所で素っ気なく挿入される。

それによって、まさに映画のような写真集となっている。実際の事件が存在し、捜査する二人の刑事を追って撮った写真が大量に存在する。その写真をどのような順番で配列すれば、事件を、犯人を追っている「ように見せられるか」が、構成作家・乙一の仕事だ。「この写真集にはトリックが使用されている。嘘というべきだろうか」と乙一。写真の撮影期間は20日間ほど、事件が解決したのは撮影から数か月後だ。写真を普通に並べたら、未解決のままで写真集が終わってしまう。そこで、写真の時間軸と、合間に挟まるテキストの時間軸を、意図的にずらして、事件の解決までを「体験」できるように構成したのだ。

この写真が撮られたのは、戦後13年ほど経過し東京タワーが立ち上がる頃だ。「読者がページをめくっているうちに、東京が戦後から現代の姿へ変化するように見せられないかと考えた。事件の捜査を通し、昭和という時代を写真集の中に再現したかった」と乙一。人々の顔や服装、電車の中、小売りの店舗、食堂、看板、建物、雑踏など、まさに「三丁目の夕日の時代」がここにある。この写真集は何度も開いて、見る度になつかしい。ほんと、何度見ても飽きない。つげ義春の漫画と同じだ。それにしても、昔はタバコについては誰もが寛容だったと思う。また、「張り込み」じゃなくて「聞き込み」なんだけど。(柴田)

roshin booksサイトに渡部雄吉「張り込み日記」の写真が多く掲載されている
< http://roshinbooks.com/special.html >


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします