3Dプリンター奮闘記[56]3Dプリンター産業革命
── 織田隆治 ──

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つい最近、光硬化タイプの3Dプリンターの造形速度が飛躍的にアップする技術と、積層痕の出ないプリンターのニュースが出た。面白いことになってきた。

あと数年もすると、本当に一家に一台の時代がやって来るんだろうな〜。

色々妄想してみる。

少し昔、カラーコピーが一般化したように、はじめに都市圏に3Dプリントショップが出来始める。

で、色々なコンテンツが沢山出回るようになり、気軽な値段で3Dプリントができるようになってきて、次はコンビニだ。

各コンビニに一台の3Dプリンターがやってきて、事前に注文しておくと、次の日か数時間後にプリントされた物を取りに行く時代。

そして、いよいよ各家庭に一台の3Dプリンターだ。




素材自体も各種多様なものが出来てくるだろう。通電するもの、しないもの、金属、プラスチック、天然素材を主原料にしたものなど。

基盤等は、3Dプリンターでの出力は、もうすでにそろそろ現実化しつつある。

各メーカーは在庫を抱えることもなく、データを蓄積するだけになり、物流はその素材等を運ぶのがメインになる。

こればかりは、現在のような物流に任せるしかないわけだけど。

しかし、流通の仕組みも、倉庫の仕組みもガラっと変わる。

素材メーカーはしのぎを削って色々な素材を開発するだろう。その素材を作り出す元の原料の生産、リサイクルする施設なんかも増えてくるだろうな。

3Dプリンティングの発展により、大陸、国境を超えた製品の購入も気軽に行えるようになるだろうな。

今まで、輸送に苦労していたもの、輸送するのに困難な場所へ、苦労してものを運ぶことも容易になる。あらかじめ、素材を運ぶことが必須だけど。

怖いのは、色々といけないものが入って来たり、出て行ったりすること。

通信さえできれば、そういった技術や物資等が簡単に送れるようになるのは良いかもしれないけど、逆にそういうことを制御するシステムの開発が必須になるだろうなぁ。

プロテクト技術と、ハッカーとのせめぎ合いは、これまでよりもっと激しくなるだろうな。こういうのって、いつもイタチごっこなんだよなぁ。

懸念すべきなことは他にも色々ある。

顧客はいつでも、欲しい時にデータ選んでスイッチを押すと、自宅での生産が可能になる。そうなると、各メーカーのある程度の工場の削減が行われる。

当然、そこで働いている者の人員削減が行われるわけだ。時代に応じて、色々な職業が消え、生まれるのは仕方ないことだけど。

3Dプリンターの生産も、3Dプリンターで行われるかもしれない。

そうなると、根本的に産業革命が起こる訳だ。これまでの生産というものが、根本的に置き換わる。

これは本当に凄いことになるかもしれないな〜と。

ちょっと前までは、そんなのずっと先の話なんだろうな〜と思っていたけど、冒頭で書いたような3Dプリンターが普及してくると、そう夢物語でもないのだなと実感(?)する。

当然、3Dスキャンの技術も向上しているし、色々なもののコピーが簡単にできる時代が来る。

今のスキャナーは、解像度が低かったり、出力するための後加工が大変だったりして、まだまだ簡単に行えるものではない。

でも、この急激な進歩を見ていると、それもすぐに色々な技術が出て来る可能性が高い。

そうなると、世の中コピーだらけになるわけだ。本物の価値ってのも上がってくるのかもしれない。

これ? 本物なの?

「ブレードランナー」という映画に、ヘビのシーンがある。

精巧にできたヘビのロボット。このヘビは本物なんですか? 本物は高くて買えないわ。と、いうくだり。

逆に、本物の持つ価値観がグッと上がってくるんだろう。まあ、嗜好品ということになるかとは思うんだけど。

「本物か偽物(コピー)か?」

そういったことがささやかれる時代が来るんだろうなぁ。

でも、「本物、オリジナル、って何なのか」さえ分からない時代になってくるのかな。

なんか、怖いような、不思議なような。妄想しすぎ、って思うかもしれないけど、本当にそういう時代ってすぐそこまで来ている気がするんですよね。

その時代まで僕は生きているだろうかなぁ。

手作業で生み出されるものの価値。そういうものが値踏みされる時代になるんだろうな。まあ、今でもそうなんだけどね。

工場で大量に生産されるもの。手作業で作り出されるもの。

その価値は、それぞれ持つ、使う者の価値観で変わって来る。

そういう意味では、これからも、先もずっと変わらない普遍的な思考なのかもしれないなぁ。

いや、とにかく面白いことになってきたね。

レコード、カセットテープから、CD、データ配信と、音楽なんかの普及方法も変わって来た。今では、データで曲を購入し、手元のプレーヤーで再生するは当たり前になっている。

だけど、今になって、レコードが原点回帰のように見直されて来ている。これは、色々なことに共通しているように思う。

時代が進んで便利になればなるほど、逆にそれが窮屈になり、追い込まれている錯覚に陥り、昔のアナログ手法を懐古する者が必ず出て来る。

クラシックカーにしろ、SLにしろ、そういう物だ。でも、それは嗜好品でしかない。まあ、そういう骨董品(?)を愛する人は、これからも沢山現れて来るんだろうな。

その「時代の進歩」によって、消えて行くものもあれば、新しく生まれ変わるものもある。そういったことを繰り返していくわけだ。

人間ってのは相変わらずだね。

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