[3883] 肩書きは「ダンボールアーティスト」

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《神は細部にではなくシルエットに宿る》

■挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[01]
 肩書きは「ダンボールアーティスト」
 いわい ともひさ

■グラフィック薄氷大魔王[427]
 「Surface Pro 3」「Painterの画面キャプチャ」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[01]
肩書きは「ダンボールアーティスト」

いわい ともひさ
< https://bn.dgcr.com/archives/20150401140200.html
>
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●20年のサラリーマン生活に終止符を打ち独立

はじめまして。このたび、歴史あるデジタルクリエイターズで連載させていただくことになりました、いわいと申します。

私は昨年(2014年)、12月末付けで10年間お世話になったホスティング会社(レンタルサーバ会社)を退職し、2015年からはフリーになりました。

「10年間お世話になった」という時点で、少なくとも30歳を超えているだろうということは予想できると思いますが、現在43歳です(退職時は42歳)。

フリーになった現在は、「ダンボールアーティスト」という肩書きになっています。クリエイティブ系のお仕事や分野は数あれど、ダンボールアーティストという肩書きは珍しいですよね。

しかも、直近の会社はIT系でデザイン系や制作系の会社ではありません。IT系の会社でもウェブやデザイン系の部署や職種はありますが、退職時は営業職だったので「アーティスト」というものとはかなり縁遠い感じです。

趣味がCGであったり、デザインに興味があって、その分野のことを色々と独学はしていたものの、それを生業としていく自信は全くありませんでした。

ところが昨年、本業とは関係なく、テレビ局とディズニーから仕事の依頼をいただきました。依頼内容は「ダンボールアート」の制作です。

ディズニーの件では制作時に密着取材され、テレビの情報番組の冒頭特集として、15分間ほどその模様を放送していただきました。

これら一連の出来事がきっかけとなり、一念発起して2014年末で退職、2015年からは独立という道を選択。

前職には2005年1月1日付けで入社し、2014年12月31日付けで退職したので、ちょうど10年間という節目でした。

●きっかけを与えてくれたのは「ブログ」

テレビ局とディズニーの仕事が無ければ、恐らく、独立という大きな決断は少なくとも昨年末の時点ではできなかったと思いますが、そのきっかけを与えてくれたのは「ブログ」です。

自身のブログで公表していたダンボールアートが、テレビ局とディズニーの担当者の目に止まり、制作依頼をいただきました。

お仕事の依頼をいただくきっかけとなったブログは、2013年1月1日から始めた「IWAIMOTORS BLOG」という個人ブログでした。
< http://iwaimotors.com/blog/
>

このブログを始める前年、2012年に「プロブロガー」の存在を知りました。プロブロガーとは、ブログに掲載した広告から得られる収入で生計を立てている人達のことです。

「IWAIMOTORS BLOG」は、開始から3年目とまだ日が浅いのですが、ブログ自体は10年以上前から書いており、Googleが提供するAdsenseの広告を掲載していました。

広告がクリックされることにより広告収入が発生するのですが、過去に収入につながったことはありませんでした。Adsenseは、まとまった金額にならなければ支払われないため、広告収入がそこまで達したことがなかったわけです。

ところが、プロブロガーという人達は、Adsenseやその他の広告サービスから、毎月何10万円もの収入を得ているといいます。

なぜ、そんなことが出来るのか。俄然、プロブロガーという人達への興味が湧いてきました。

●広告収入で生計を立てられるのか

どうやったら、ブログに掲載した広告で生計を立てられるほどの収益が得られるのか。そんな興味を持ったときに、プロブロガーの方が主催するセミナーが開催されることを知り、参加するために大阪まで足を運びました。

セミナー後の懇親会で、思い切って主催者の方に広告収入のことを質問したところ、100万PVほどのアクセス数ともなると、その広告収入が何10万という金額になるとの回答でした。

例えば、100万PVのうち、100分の1(1万PV)でクリックが発生し、平均クリック単価(1クリックで得られる広告収入の平均)が20円だったとすると、20万円(=1万PV×20円)の収益になります。

広告はAdsense以外にも色々とあるため、組み合わせれば、さらに多くの収益を得られることは容易に想像できます。

しかし、有名人でもなく特別な知識や能力を持っているわけでもないのに、一体どうやれば月間100万PVのブログを作れるのか? それが最初の問題でした。

また、広告収入というのは、当然ながら広告を出稿する広告主やAdsenseを提供しているGoogleのような会社があるからこそ、成り立っている仕組みです。

このような広告が突然なくなるとは考え難いものの、広告収入というものがその仕組みを作っている会社に依存しているということは間違いがありません。広告を提供する側の都合で、突然料率が変わり、広告収入が激減するということは実際に起こっています。

●セルフブランディングのためのブログを立ち上げ

100万PVというハードルの高さに加えて、不安定な広告収入。プロブロガーという人達は、このような壁を越えてその道で生計を立てているわけです。とても真似できることではないと思いました。

ただ、ブログ自体は自分自身が好きなことを書けるし、インターネットを通じて世界中に発信できます。月間100万PVとまでは行かなくても、ある程度の人に見てもらえるようになれば、自分専用のメディアとして活用ができるはず。また、お小遣い程度でも広告収入が稼げれば、嬉しいものです。

広告収入は副産物的に考えつつ、メディアとしてのブログの力に注目し、セルフブランディング(自らをブランド化しプロモーションする)のためのブログを始めてみようと考えるようになりました。

ブログ自体はプロブロガーの存在を知る前から書いており、書くこと自体には慣れていたものの、PVや広告収入などは一切意識したことはありませんでした。メディアとして影響力を高めるためには、このあたりをしっかりと考える必要があります。

幸い、インターネット上にはブログのアクセス数を増やすための情報が多く公開されており、プロブロガーによって書かれたノウハウ本や、ブロガーが集まるイベントなども全国で開催されていました。このような情報を積極的に活用しつつ、個人ブログの準備を開始しました。

次回は、「IWAIMOTORS BLOG」を作るために、どのような準備を行い、どのように運営しているかを具体的にお伝えします。

【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
Blog < http://iwaimotors.com/blog/
>
Twitter < https://twitter.com/iwai
>
Behance < https://www.behance.net/iwai
>

今週の一言:ヤクルトを飲み始めました。友達から、一年間毎日飲んだら花粉
症に効いたと聞いて。道のり長いわ〜


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■グラフィック薄氷大魔王[427]
「Surface Pro 3」「Painterの画面キャプチャ」他、小ネタ集

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20150401140100.html
>
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●割といいかも、Surface Pro 3

ようやくペンがある状態でいじれたよ〜。よく行く家電量販店、ペンが用意されてないことが多いのだ。

Fresh Paintを使って描いてみた。筆圧は硬い。ちょっと力を入れないと描けないけど、慣れればなんとかなるだろうレベル。コントロールパネルを開けてみたけど、筆圧調整できるような項目は特に見当たらなかった。

WACOMのユニットではないので、WACOMドライバを入れてああでもないこうでもないと苦労する心配がないのは、逆にシンプルでいいのかもしれん。

筆圧よりも気にしていたのが画面の摩擦。ガラスの上に樹脂のペン先だからツルッツルで描きにくいだろうし、WACOMペンなら使えるエラストマー芯が使えないのは致命的。

かと思ったら、なんかしっとりした感触。かすかに粘り気があってペンが画面に密着する感じ。力を入れて描くと摩擦が増す感じはintuosの表面に近い。割といいかも。

画面が無段階で傾けられるのは良い。っていうか、絶対必要な機構。それが初代Surface Proにはなかったんだよ〜。あと、12インチの画面は10インチにくらべりゃめちゃくちゃ広い。あと3インチ大きかったらなあ......。

首が痛くならないように気をつけてCintiq Companion Hyblid を使っても、翌日に頭痛になるのはたぶん首のせい。よほどの理由(PC一体型17インチCintiqが出るとか)でもなければ、液タブ系は使わないと決めてるので、Surface Pro 3はたぶん買わないと思う。

●Cintiq用ソフトケースのリサイクル

何度も何度も、出したり仕舞ったりを繰り返してきたけど、ついにCintiq Companion Hyblidを手放した。画面が狭い以外に性能の不満はないけど、どれだけ気をつけていてもスマホネックで首と肩だけでなく頭が痛くなるのはなんともしようがない、ってことで。

で、Cintiqソフトケースが残った。一度実家に持っていくのに使っただけだが、けっこう気に入ってるのだ。内側が青いふわふわで、あまりに感触がいいので思わず手を突っ込んでいつまでもすりすりしていたい感じ。

ふと思いついて、MacBook Pro 15インチを突っ込んでみたら、あつらえたかのようにピッタリサイズ! いいわこれ。持ち歩きの時に使おう。
< http://www.yoshii.com/dgcr/cintiq-softcase >

●ZBrushをまた使いたくなってきた

へえ! 「WIRED」にZBrushの記事が出る時代になった。ちょっと感慨深い。
< http://wired.jp/2015/03/14/zbrush/
>

僕はといえば、3DCGブームだった1997年頃にLightWaveなど普通のポリゴン系ソフトから始めようと思って挫折。2000年に現COOのJaime Labelle氏にZBrushを薦められたのがきっかけで使い始めた。

それまで、モデリングといえばポリゴンの切ったり貼ったりが主な作り方で、思い通りに作れるとはとても言えなかったのに、ZBrushならポリゴン関係なく思い通りに形が作れ、色まで塗れちゃう。

2〜3年のうちにイラストの仕事もPainterからZBrushに移行。

ZBrushの「ZSphere→Adaptive Skin」でローポリモデルをいじっていたことから、CINEMA 4Dのポリゴンモデリングも無理なくできるようになり、2005年からはMODOを使い始めて今に至る、って感じ。

MODOを使うようになってZBrushから離れちゃった理由は、ZBrushが基本的に「ディテール重視」のツールだから。僕が作るキャラクターってディテールないもんw 「神は細部にではなくシルエットに宿る」。

それでも、最近ちょっとずつZBrushを復活させようとしてるのは、MODOでの作り方が初期のように手探りではなくなってるから刺激が少ない。カンフル剤としてZBrushを使いたいなと。

●PowerMateのLEDライト

話題になってすぐ購入し、もう12〜13年も使ってるPowerMate。Macの音量ボリュームの調節だけに使ってます。ただ、底部のまぶしい青色LEDライトがジャマで、黒いテープを巻き付けてる。

で、最近、新しいドライバ(アップデータチェックでは検出されない新バージョン)を入れたら、LEDの光量コントロールやオン/オフができるようになってる〜! 黒いテープをようやく剥がせる!
< http://griffintechnology.com/support/powermate
>

っていうか、BluetoothのPowerMate、なんで未だに日本で売られてないんだろ?

●Painterの画面キャプチャ

昔の画像を整理してて出てきた画像。Painter4〜5(?)の画面キャプチャ。これ、実サイズで831×624pixelの画面。800×600pixelと記憶してたけど、この中途半端なpixel数って何だっけ? ナナオのディスプレイを使ってたけど。
< http://www.yoshii.com/dgcr/painter-gamen >

今、フルHDより一回り広いシネマディスプレイを使ってて、昔のPainter初期代表作などをよくあんな小さい画面でよく描いてたなと思ってたけど、パレットが小さいからぜんぜん大丈夫だったんだな! ってわかる。幅はPhotoshopのパネルの2/3くらいのコンパクト。

Painter12で確認してみたら、今も同じ幅。そのへん、やはりPainterはアーチスト寄りのツールなんだなあと実感。

またすごいキャプチャ出てきたよ。Artschool Dabblerの画面。これ641×481pixelの画面。引き出し式のパレットってすごい便利だったけど、その後この方式はどのツールにも引き継がれてないのは残念。
< http://www.yoshii.com/dgcr/dabbler >

●Sketcherなんて知らないでしょ?

ついでに。昔のPainterの話題ではこれが最強だろうなw FractalDesignが出してたグレースケール専用Painter、「Sketcher」の存在を誰が覚えているだろうか? ソフトのパッケージなんてほとんど捨てたけど、これだけは小物入れになってて残ってる。
< http://www.yoshii.com/dgcr/sketcher >

Macでフルカラー表示がかなり贅沢だった時代に、白黒だからちょっと安いって感じだったのかな? フルカラーが普通な今はあんまり意味ないかも。当時でもほとんど使わなかった。

●Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」

パリの老舗百貨店 Printemps の150周年記念マスコット「ROSEちゃん」。日本語のページも用意されてます。
< http://departmentstoreparis.printemps.com/ja
>
< http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
>


【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

ミヤネ屋で「50億円が藻くずに」って言い方してて、テロップまでそうなってたw 「海の藻屑と消えた」と「札束が紙くずになった」が混じってるんだろうなあ。ところで、「海の藻屑と消えた」ってのは小学生のときから連合艦隊の本とか読んでておなじみの慣用句だったのだが、当時は藻屑がイメージできず、朝食に出る「もずく」だと思っていた。海藻だからそんなに違ってないw

・rinkakの3Dプリント作品ショップ
< https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii
>
・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
>
・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp
>
・App Store「REAL STEELPAN」
< https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8
>


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編集後記(04/01)

●中筋純「流転 緑の廃墟」を読んだ(アスペクト、2015)。写真集だから、正しくは「鑑賞した」。写真集を見て感動したのは久しぶりだ。ジャンルとしては廃墟の写真集である。今までも多くの廃墟写真を見てきた。わたしは廃墟に関心があるのだ。こわいもの見たさという気持ちもある。ちゃんとした写真作品もあれば、ネット上の怪しげな画像もある。廃墟は造形的に面白いと思うが、見て楽しいものではない。むしろホテルや病院、娯楽施設などかつて多くの人が訪れた建物の廃墟は怖い。よくこんな危険な所に踏み込んで、無神経に写真を撮ってきたものだと思う。見ただけで厄災を招きそうな写真もあった。

「流転 緑の廃墟」は、今までに見たことのない「廃墟美」の写真集である。中筋純は20年にわたり廃墟写真を撮り続けてきた、この分野の第一人者である。たぶん、わたしも彼の写真を見てきたと思う。この度の写真集は「緑に覆われた廃墟」をテーマに、北海道の銅山、岡山県の廃校、長崎県の刑務所、三重県のダムなど、さらにチェルノブイリ、そして福島で撮影された、彼の到達点というべきものである。廃墟が緑に包まれていく現象を廃墟ファンは「ラピュタ化」という。宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」から来る、見捨てられた世界が自然の治癒力で再生されていくさまを表す。うまいことを言う。

写真は約120点、横長の本の見開きになる作品もあれば、見開きに縦4点が収容されていたり、白地・黒地のスペースもあったりと、リズムがある。各作品にはノンブル(ページ番号)しかない。何の情報もない。結局、最後に「鳥取県 若松鉱山 P29」「山梨県 白沢峠 P107」といった一覧があるだけだ。潔いばかりの素っ気なさ。各作品毎にキャプションがつけば、それなりに納得すると思うが、何もないからくいいるように見つめて、想像を逞しくするしかない。ここで何があったんだ。唯一、一瞬でわかったのはチェルノブイリだ。見開きで上半分が青空と雲、下半分が森林と捨てられた団地群、遠景の煙突と......。

「緑は人の営みや記憶には残酷なまでに無関心のようだ。そんな現場に身を置くと文明の挫折という我々側の視点に立った悲壮感に支配されてしまうものだが、覆い尽くす緑は人間の非力さを嘲笑することもなく、ただただやさしく輝き続ける」(あとがきから)。中筋純は廃墟ではとても豊穣で柔和な時間の中にいたという。今まで廃墟は「死」だと思ってきたが、廃墟は「生」でもあった。植物の、緑の。まさか廃墟写真に癒やされるとは思ってもみなかった。水平・垂直がビシッと決まった廃墟写真はとても気持ちがいい。もちろん、きれいだけどやっぱり怖い写真も含まれるのであった......。(柴田)

「流転 緑の廃墟」アスペクト
< http://www.aspect.jp/isbn/?k=978-4-7572-2382-0
>

「写真を楽しむ生活」にも掲載しました
< http://photo.dgcr.com/
>


●いわいさんの独立話やアイアンマン見てました! 連載開始、ありがとうございます!

お久しぶりです。長いお休みをもらっていました。エイプリルフールネタではありません。

なかなか自分のことを優先できなかったんですが、長いお休みをもらえて、片付けたかったこと、やりたかったことをいくつか経験出来ました。ありがとうございます。

またぼちぼち書いていきます。よろしくお願いします。(hammer.mule)