Take IT Easy![53]見たことのないものより見たことのない組み合わせを/若林健一 / kwaka1208

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こんにちは、若林です。今回は、モノづくりとパターンについてのお話です。

●見たことのない組み合わせを

ある日、テレビを見ていると、コマーシャルでこんなキャッチコピーが流れていました。

「見たことのないものより、見たことのない組み合わせを」

4月2日にJR大阪駅の近くにできた新しいショッピングエリア、「ルクアイーレ」のキャッチフレーズです。

・ルクア1100(イーレ)
< http://www.lucua.jp/lucua1100/ >

これを見て、「そうそう、新しいものを作り出すってそういうことなんだよね」と思ったのが、今回のテーマを取り上げるきっかけでした。




●モノづくりは、パターンの組み合わせ

技術の進歩が加速度的に進んでいる現代は、ゼロからモノを作るということはほとんどありません。既存の技術や部品を組みあわせたり、それらを加工したり、従来使われていなかった分野に転用してできていることがほとんど。

もちろん、今でも新しい技術や新しい素材は生み出されていますが、産業革命の時代のように、何もかもが新しい時代とは違います。

現代のモノ造りは、新しい組み合わせの発見の連続だといってもいいと思います。この新しい組み合わせのパターンを見つけた人が、「イノベーション」を巻き起こせるのです。

●携帯電話で新しいパターンを作ったApple

8年前まで、携帯電話の一般的な形といえば、テンキーと液晶画面を備え、テンキーの上下左右操作で画面の中の表示を選んで操作する、というものでした。

中にはユニークな形状や操作方法を備えたものもありましたが、それらはあくまでも「亜流」であって、「本流」は「テンキー+液晶画面」だったのです。

そして、この基本パターンを変えたのが「iPhone」。

「iPhone」ではテンキーを廃止し、本体の前面がすべて液晶となり、キー操作ではなく画面を直接触って操作する形を採用しました。

しかし、「iPhone」で採用されているハードウェアやソフトウェアの技術が、今までにないまったく新しいものばかりではなくて、既存の技術が(中にはApple流のこだわりで洗練させたものもありますが)ほとんどなのです。

この形は後に「Android」でも採用され「iPhone」というひとつの商品だけの特徴としてではなく、「携帯電話」の新しい形として一般的になっていったのです。

現在の形が一般的になると、携帯電話の世界で「革新的」と言われる商品を創出するためには、現在のスマートフォンに代わる携帯電話の「新しいパターン」を作り出さなければなりません。

単に特徴的なアプリを載せただけでは、Appleが作った「新しいパターン」の座を奪うことは難しいのです。

●パターンを身につける

話は少し変わりますが、ハードウェア、ソフトウェア、デザイン、どの分野にも必ず「デザインパターン」というものがあります。

「デザインパターン」とは言い方を変えると「セオリー」に近いニュアンスのもので、「こういう時にはこうする」という、テーマと対応方法のセットのことです。

「デザインパターン」を知っていれば、ひとつひとつの課題に対してゼロから考えることなく、一定のクォリティで対応できるようになります。

「デザインパターン」をどれだけ知っているかが、エンジニアやデザイナーのスキルの目安のひとつとなります。いわゆる、「引き出しが多い」というやつですね。

突然ですが、「子ども向けのかわいいホームページ」をイメージしてみてください。

普通の人なら、有名なサイトからひとつふたつを思い浮かべるぐらいで終わってしまいますが、Webデザインのプロなら、男の子向け、女の子向け、幼稚園児向け、小学生向け、と幅広いデザインを自分の引き出しから取り出すことができます。

そして、それぞれのデザインにおいて、どんな色の組み合わせを使うか、どんなフォント(文字)を使うかなど、より具体的にイメージすることができるのもプロ。

「引き出し」が多いだけでなく、深いのもプロの特徴といえます。

エンジニアの世界でも同じで、例えば優秀なソフトウェアエンジニアは、プログラミング言語を知っているだけでなく、多くのデザインパターンを持っているものなのです。

●ホラーのデザインパターン

そんなことを考えていた時に、面白いサイトに出会いました。ホラー体験専門の制作会社のサイトです。

「株式会社 闇」(ホラー系が苦手な方は閲覧ご遠慮ください)
< http://death.co.jp/ >

このサイトを見た時、真っ先に「ホラーのデザインパターンって何だろう?」と考えました。

画面を黒基調にする、言葉をカタカナにする、画数の多い文字を多用するとなんとなく怖くなるような気もします。単語や言葉の選び方にも、音(音色や高さ)にもホラーのパターンがあるのでしょう。

思えば、今までにそんなことを考えたこともありませんでした。ホラーのデザインパターンってどういうものなのかを、とことん追求してみたいものです。

このサイトよくできています。あえて見える部分を小さくすることで、コンテンツへの没入感を生んでいます。

それに「株式会社 闇」というネーミングが秀逸。「株式会社 恐怖」でもホラー系コンテンツ会社の名前としては悪くないと思うのですが、省略してこのサイトを呼んだ時に「恐怖のサイト」と呼ぶのと「闇のサイト」と呼ぶのでは、明らかに「闇のサイト」の方が怪しげです。

そもそも、ホラー系なのかどうかすらわからない。もし、そこまで考えてのネーミングだったらなら、みごとな設計だと思います。

話がそれましたが、世の中の多くのものはパターンで出来ている。「見たことのないものより、見たことのない組み合わせを」見つけることが新しいものを生み出すということでもあるのです。


【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
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