装飾山イバラ道[155]憧れと現実の間
── 武田瑛夢 ──

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いろいろあった大塚家具。うちにも大塚家具で買った家具がいくつかあるけれど、買った当時の15年程前には確かに敷居の高い店だと思っていた。

エントランスを通ると、スーツ姿の店員に何か記入するように促される。病院の問診票のようなものでめんどくさいし、本気の家具購入なのかちょっと見たいだけなのか、事前に調べられる感じだった。

当時はマンション入居のタイミングだったし、家具もまるっと買うつもりもあった。すると、担当さんがついて何を見るにもピタっと寄り添って説明してくれる。丁寧に説明されるとじっくり聞かないと悪い気もするし、なかなか自分たちのペースで見ることはできなかった。良い点悪い点どちらもあったと思う。




●フロアのマジック

当時はフロアを上がるごとにどんどん高級感が増していき、すごい家具もあるものねぇと、気分も上昇して憧れ感に浸ったりした。だんだんと素敵なものは高くても当たり前と思えてくる。その後、カジュアルな階に下りて来ると、やっと現実的な値札を見て安心し購入候補に入れていく。

そこでちょと待て×2の流行の言葉じゃないけれど、高級フロアから下りて来たこのような時が一番危ないのだ。カジュアルフロアは一見安く見えるけれど、本当はそんなに安いわけじゃないことに後々気がつく。

高いフロアは安いフロアに現実感を感じるために、安いフロアは高いフロアに特別感を与えるために、あるのかもしれない。今もフロアごとに何かが違うのだろうか。憧れを抱いた後だから、少しだけ背伸びした現実が受け入れやすい気もする。

当時の私は慎重だったので一回で購入を決めたものは何もなく、結局何度か足を運んでソファとテーブル類を購入した。それらはすべて未だに現役で使い続けているので、物持ちがいい方かとも思うけれど、私のようなタイプの人も多いかもしれない。

今のファストファッションのように、おしゃれで安いデザイン家具を気分で買い替えるというのが、皆本当にできているのだろうか。日本人のなかなか買い替えない、もったいないという本質がそう変わった訳ではないと思うのだ。

IKEAは楽しいし、組み合わせの参考がまるまる置いてあるので助かる。日本人はきっとIKEAの家具も大事に長く使うのではないだろうか。模様替えを機にすべて買い替えたわ! ってすごくさっぱりしそうだけれど、使える物は残しながら移行するのが日本人の良いところのような気がする。

●歯医者の計算

私が通っている歯医者が移転し、広くなってオシャレになった。壁紙も診察台もピカピカだ。移転祝いの胡蝶蘭がたくさんあって華やかな中、待ち合い室の一部の椅子や傘立ては以前のものを使っていた。

引っ越しでも生き延びた、見覚えのある懐かしいアイテム。患者さんには高齢者も多く、そういうところに安心する人もいるので、もしかして計算かも? と思えるけれど、先生のセンスはなかなかいいなと思うポイントだった。案外どなたかのお祝いの品だったのかもしれない。待ち合い室ってそういう余計なことを考える時間のある場所なのだ。

大塚家具の新しい店舗にはまだ行っていないけれど、今回の騒動はもしかして宣伝効果ばっちりだったのではないだろうか。お父さんの代に購入した人も、娘の店作りに興味を持ってちょっと見に行く人もいるだろう。

顧客は子や孫のプレゼントに張り切る世代かもしれないし、バブリーな金銭感覚のまま大きな買い物をするのだろうか。壮大な親子喧嘩とも言われていたけれど、壮大な娘自慢だったような気もする。

私も数年ぶりに机でも見に行こうかと思っている。ここ最近はハンズかdinosかIKEAでしかデスク周りのものを見ていなかった気もするし。通販のものも良いけれど、やっぱり現物を見て買う安心感は捨てがたいのだ。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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クラッシュ・オブ・クランは未だにタウンホール6のまま防衛設備の増強をじっくりやっている。同じレベルに長居するのは無納金の宿命かな?(笑)ゲームの中では略奪にも慣れたけれど、略奪されるのにも慣れた。力を蓄えている間は負けるのも辛抱だ。