おかだの光画部トーク[135]感動アニメシリーズ「SHIROBAKO」/岡田陽一

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久しぶりにとても感動したアニメシリーズだった「SHIROBAKO」。おかだ史上、5位以内に突然食い込んできた。とってもオススメのストーリーなので、詳しく紹介してみよう。

......とはいえ、3月末で2クール、全24話既に終了しているので、今から観るのであれば、DVDを買うか、レンタルするか、怪しい動画サイトなどネットを検索するかになるが、Web制作の仕事をしている人や、何かを作っているクリエイティブな仕事をしている人は絶対に観たほうがいいと思う。

SHIROBAKO
< http://shirobako-anime.com/ >

ざっくりまとめると、アニメ制作会社のお話。

タイトルの元になっている「白箱」とは、ひとつの作品が完成した時に、制作者が最初に手にする完パケのビデオテープ(最近ではDVD)のことで、販売用にデザインされたパッケージとは違い、無地の地味なもの。しかし、その白箱には、制作に係わった人々の想いがたくさんつまっている。

実際にアニメ制作に関わる人たちの苦労やこだわり、夢や仕事に対するプロ意識などが描かれているのだが、人物描写の仕方がすごくリアルで「実際にこんな人いるよなぁ」と随所で感じることができる。

アニメ制作とは関係ないが、Webや多くのクリエイティブな業種でも、似たような人物が思い浮かぶはずだ。

各話、さまざまな名シーン、心に残る名言が出てくる。




5話「人のせいにしているような奴は辞めちまえ!」では、コミュニケーションの行き違いから、手描きの作画担当と、3Dでの描画のエンジニアが対立する場面がある。

作画の担当(遠藤亮介)は、この先どんどん3Dに仕事を取られてしまうのではないかと危機感をもちつつも、作画に対するプライドがあるので、3Dを受け入れられずにいる。そこで、後輩(堀田)と一緒に、他社の先輩アニメーター(北野三郎)に居酒屋で相談するシーン。

堀田:「遠藤さんが描くはずだったカット、3Dでいくことになって......。あんまりですよね。3Dなんて時間ばっかりかかって、しかも出来たもんに味も情緒もないし。それに3Dには絵を描く喜びとか楽しさがないっすよ」

遠藤:「そうそう。そんなに3Dアニメが好きなら、カリフォルニアにでも行けっつーんだ。ですよね! 北野さん」

北野:「俺、今、3Dにジャパニメーションのコツを教えているよ。3Dソフトを使って、絵と時間のデフォルメをな。彼らは絵は描けなくても、アニメが好きだからな。覚えるのも早いし、教えてて気持ちがいいんだ」

遠藤:「北野さん、なんでそんなことやるんですか!」

北野:「俺たち絵描きが歩み寄って、3Dアニメーターの使うツールの長所も短所も知って、彼らと協力して、アニメの質を上げていくんじゃないのか?」

遠藤:「北野さん......そっちの人間だったんすか.......」

北野:「いじけて3Dを否定しても、何も良くならんぞ」

遠藤:「でも、現にこうやって3Dの奴らに仕事取られて!」

北野:「うまくいかないことを、人のせいにしているようなヤツは、辞めちまえよ!」

遠藤:「じゃぁもう、俺達みたいな手描きのアニメーターは必要ないって言うんですか!」

北野:「お前の描く絵が通用しなくなっても、技術を活かす方法はあるんじゃないのか? 鉛筆がタブレットに代わってもセンスは必要とされる。ま、お前も勉強してみればどうだ」

このシーンを見てて、自分のやっているWebの仕事でも似たような話があるよなぁと感じた。例えば、FLASHもそうだったし、最近では、デザイナーがJavaScriptや、プログラミングまである程度かじらないと、なかなかWebの制作では仕事が大変になってきている感じ。

また、逆にプログラマ、エンジニアの人たちが、デザインなんてわからないしって言ってたら、いいモノが出来ないから、双方が歩み寄らないとって感じ。すごく似ていて共感する。

16話「ちゃぶだい返し」では、キャラクターデザイン担当(井口祐未)が、いくら描いても描いても、原作者からNGが出てリテイク(書き直し)になってしまう。悩んでいる姿を見て、先輩で作画監督(小笠原綸子)が相談にのる回。

小笠原は、落ち着いたキャラで普段着がゴスロリのお嬢様風。彼女の発案で、制作進行(宮森あおい:主人公)と宮森の同級生のアニメーター(安原絵麻)と女性4人で、キャラクターデザインにNGを食らって、その先の進行が全部ストップして責任を感じ悩める井口を気晴らしに連れて行く。

宮森:「前からそのファッションだったんですか?」

小笠原:「昔はいつもTシャツにGパンでした」

宮森:「じゃぁいつからその姿に...?」

で、小笠原が初めてキャラクターデザインを担当した時の回想シーン。

何度描いても、イメージが違うと言われ、「悪くはないんだけどね〜。もうちょっと別のパターンも見せて」と言われ、指示通りに描いても、「やっぱり違うなぁ。最初のが一番よかったよね〜」となって悩む。

小笠原:「追い込まれても、勝負をひっくり返されても、へこたれない方だと思ってましたが......。その時理解したのです。すべてにハイハイとうなずいていてはいけないのだと。

クリエイターは誰しも、繊細で傷つきやすい心を持っている。しかし、絶えず批評、ダメ出し、注文をつけられる。だから自分を守るため、私は鎧をまとったのです」

宮森:「それは武装だったんですね」

井口:「確かにTシャツよりは攻撃力高そう......」

安原:「えっと......でも、なぜ?」

小笠原:「その時描いていたヒロインが着ていたからです。それから私は強くなりました」

井口:「安心しました。小笠原さんもつらい時期があったんですね」

小笠原:「誰にだってあります。つらい時期のない職業なんてありません。ですから後は、屈辱をバネにどれだけ自分が頑張れるかです」

このシーンも、デザインや執筆などクリエイティブな仕事をしていると日常茶飯事で、経験することだと思う。

22話「ノアは下着です」

かなりのカット数になる予定の最終話の作画の割り振りで、井口が、安原絵麻に作画と作画監督もやってもらえないかと提案。安原はまだ自分の絵に自信が持てず、描くのも遅い上に作画監督は周囲に迷惑をかけないか心配で、その担当を受けるかどうするか迷う。

一方、一番後輩でまだ大学生、脚本家志望の今井みどり(りーちゃん)は、どうやったらアニメ業界で脚本家になれるのか、きっかけを見いだせずにいたが、設定資料をまとめる仕事で先輩の宮森を手伝うためアルバイトで会社に入ると、次第に色々な仕事を手伝うようになる。アフレコ台本発注用の絵コンテを作っているところに安原がやってきた時の会話。

今井:「これ任せてもらえて、またシナリオの読み方がまた変わったですよー」

安原:「読み方?」

今井:「やっぱ、絵コンテって100人100通りなんすよね。(昔の作品)読ませてもらったら、今とは全然テンポ感が違って、でも深いなぁと思うとこもあって、今、自分の中に栄養がムクムク入ってきてる気分。おもしろいっす!自分の一文に合わせて、声優さんが演技するかと思うと、超〜ビビるっす!」

安原:「うん......。ビビるよね。」

今井:「ビビるっす。でも楽しいっていうか、なんか、ほんとにヒャーって感じで」

安原:「ヒャー? ブルブルじゃなくて?」

今井:「ヒャーっすよ! だって、去年の今ごろなんて自分がアニメの制作の仕事に係われるなんて夢にも思ってなかったんすから」

安原:「りーちゃんは怖くないんだ......ね......」

今井:「何言ってんすか、絵麻先輩。怖いのは脚本家になれないことです!」

この後輩の前向きな仕事ぶりと、大先輩の長老アニメーター、杉江茂に諭され、安原は怖がらずに頼まれた作画監督の仕事をしっかりとやろうと決心する。

とにかく各回、いろんな出来事で登場人物が衝突したり、落ち込んだり、励まし合ったり、問題を解決したりする中から、「自分も仕事、頑張ろ!」ってすごくポジティブになれるアニメだ。

ストーリーを追うだけでなく、さまざまな場面に伏線があったり、アニメ好きならピンとくる登場人物(実在の人物がモデルになっている)が随所にでてくるので、何度観ても楽しめる。

23話「続・ちゃぶだい返し」では、最終回のひとつ前で、大どんでん返しがある。そして、最後の場面で宮森の涙のシーンがあり、観ている方もつられて結構泣ける。

実は、そのシーンも、20話で、木下監督が注文を出したセリフ「できれば台詞のやりとりじゃなく表情芝居で希望」が伏線になっていて、宮森のこのシーンがまさにそうだった。

ということで、アニメ好きも、普段アニメを観ない人も、SHIROBAKOは絶対に観て損をしない、とってもいい作品だ。かなりオススメなので、観てない人はなんとかして観て欲しいし、一度観た人も、各所にちりばめられたネタを探して何度も観て欲しい。

【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > < Twitter:http://twitter.com/okada41 >

2015年、マンスリーで開催中の「CSS Nite in KOBE」。次回、Vol.9は今週末、5月24日(日)に開催。鷹野雅弘さんによる、『Webデザインの現場ですぐに役立つ Photoshop仕事術』です。

・Photoshop CC以降で実現するPSDカンプ制作のワークフロー(2章)
・Bootstrapを使った動くモックアップ制作(2章)
・効率化のためのTips(4章)
・見落としがちな基本機能(5章)

などのトピックを中心に、PSDカンプやバナーなどを制作していく上でPhotoshopを使い倒すテクニックを、時間の許す限り紹介していただきます。

まだ残席ありますので、Photoshopを使ってWebのビジュアルを制作している人は是非ご参加ください。
< http://cssnite-kobe.jp/vol9/ >