挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[05]テレビ局から舞い込んだダンボールアートの制作依頼/いわい ともひさ

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●ブログを書きながら考えたセルフブランティングの中身

将来的に「自分専用のメディア」として活用するために開始したブログですが、最初はどのように個性を持たせれば良いかはわかりませんでした。

ファッションに興味があって、その業界で働きたい人が、自分自身でコーディネートした服を掲載したり、音楽に興味があってミュージシャンになりたい人が、演奏する様子を動画に撮って掲載するというのは、最初から目的も明確でわかりやすい。

しかし、私は将来独立したいという漠然としたものしかなく、明確にこれをやっていくという具体的な目標は定まっていませんでした。

そのブログを、自身の情報を多くの人に伝えられるようなメディアにまで成長させるには時間がかかります。




有名人がTwitterを開始すると、一夜にして数万人がフォローするということが起こりますが、知名度のない人にはそのようなことはあり得ません。地道に情報を発信し続けることで、少しずつ読者が増えるのです。

何か事業を始めることになってから、情報発信のためにブログを開始しても、最初はメディアとしては機能しません。情報を発信しても受け止めてくれる人がわずかしかいないのです。

また、事業の開始時は、これまで会社の仲間が担ってくれていた業務もすべて自分自身で行う必要があるため、ブログにまで気を遣うのは困難となり、優先順位も下がることでしょう。

このように、ブログがメディアとして成長するまでには多くの時間を要します。一年も経たずして大きな影響力を持つようなメディアに成長させられる人もいれば、三年経っても鳴かず飛ばずということもあり得ます。

最初から明確な目標を持ってブログを始めるのが理想的ではありますが、思いたったときにすぐに活用したいのであれば、まずは始めることが重要です。

そのような考えから、会社員として働く傍ら、将来のことを考えながら、毎日ブログを更新し続けました。

●ブログ開始から約一年でテレビ局からの問い合わせ

2013年にブログを開始してから一年と二か月が経過した2014年2月の末日に、テレビ局の制作部の方から、問い合わせのメールをいただきました。

なんでも、4月からご当地アイドルの初めてとなる冠番組が始まる予定で、その番組用にダンボールロボットを作りたいので、相談に乗ってもらえるかという内容。ダンボールロボットは、番組MC(司会者)になるというのです。

ご当地アイドルは若い男子10数名のグループで、最初はメンバー全員がロボットのアイデアを考え、それぞれの図案から少しずつ部品を組み合わせて、ひとつの形にしたいというお話でした。

メールで問い合わせをいただいた後、電話でやり取りを行い、その後一か月程、待ちの状態が続きました。

その間、やり取りがなかったため、お話がなくなったのかと思っていましたが、3月の後半になって再び連絡があり、お会いすることになりました。

テレビ局のご担当の方にお会いしたのは、3月の最終週。当初聞いていた全員がアイデアを出し合うという案は流れ、用意された図案にしたがってダンボールロボットを作って欲しいという依頼に内容が変わりました。

当初、ロボットはダンボール箱を組み合わせた程度の単純な造形で良いと聞いていましたが、いただいた図案はもっと複雑なものになっていました。

お会いした日は3月29日(土)で、希望納期は一週間後の4月6日(日)でした。依頼をいただいた当時は会社員だったので、平日は仕事です。

ただ、とても良い経験になるし、セルフブランティングとしては最高の機会だっためお受けしました。

もちろん、超短納期であることはわかっていましたが、やれるかどうかという不安よりも、何が何でもやるしかないという気持ちが勝っていました。

●徹夜作業でロボットをデザインし翌日はダンボールの切り出し作業

打ち合わせ後、帰宅して今から色々と準備しようと考えたときに、担当さんから電話が入りました。顔のデザインを変更して欲しいというのです。

最初にいただいたデザイン画は、モヒカンにサングラスぐらいしか特徴のないものでしたが、変更後は「ダフト・パンクの左のようにして欲しい」とのこと。

ダフト・パンクはフランス出身の二人組のミュージシャンで、ロボットのようなヘルメットをかぶっているのが特徴です。

ダフト・パンク風とはいえ、そのまま真似してはいけないので、その雰囲気を持たせつつ、違うものを考えました。

担当さんには、翌日できるだけ早く返事をもらえないと、納期に間に合わなくなることを伝えました。

夕食後、早速デザインに取り掛かりました。ロボットは上半身の背面が一番多く映される予定と聞いていましたが、いただいた図案は正面しかなく、また、立体をあまり考慮できていない平面的なものでした。

背面が映るのなら、そこの見栄えをもっとも良くする必要があるので、そんなことを考えながらデザインしました。顔の部分は図案がないので、こちらも一から考えました。

デザインが終わったのは朝の4時。担当さんにCG画をメールして返事を待ち、ゴーサインが出たのは、その日の午後2時ぐらい。

ダンボールアートを作るときは、CGデータを作った後、レーザーカッターで切断を行っています。最初の二作品までは普通のカッターで手切りしていましたが、レーザーカッターの存在を知ってからは欠かせないものになりました。

レーザーカッターは非常に賢い機械で、図面データどおりに様々な素材を切ってくれます。おかげでかなり細かな細工も、正確かつ簡単に行えるようになりました。

ダンボールロボットのデザインを承認してもらった後、夕方6時ぐらいまでかかって展開図を作成し、急いでレーザーカッターのある工房にデータを持ち込みました。

実際にレーザーカッターにデータを流し込むときは、もう一手間かけてデータを最適化する必要がありますが、当時はまだレーザーカッターを使い慣れておらず、この作業を工房の方にお願いしていました。

結局、レーザーカッターの作業が終わったときには深夜12時を過ぎていました。普通ならお付き合いいただけるものではありませんが、工房のご主人が気前の良い方で、笑顔でお手伝いいただきました。もう一生頭が上がりません(笑)

●昼間は会社、夜はダンボールの組み立て

土曜日は徹夜、日曜日も深夜までかかってダンボールをカット。そして、月曜日からは会社です。

連日の長時間作業で日中は業務に集中できなかったかと言われると、実はその逆で、いつにも増して高い集中力を持って仕事ができました。

理由の一つは、本業に身が入っていないと言われたくなかったため。もう一つは、短納期に対応するため、一分たりとも時間を無駄にできないという緊張感があったためです。

会社での業務をダラダラとやって、無駄に残業するような暇などないのです。そう思うと日中はまったく眠くなりませんでした。

仕事を終えて帰宅してからは、ひたすらダンボールの組み立て作業。幸いその週の金曜日は祝日だったので、いつもより一日多く時間が取れました。

ダンボールロボットよりも前に作ったダンボールアートは、アイアンマンやその他のキャラクターのヘルメットだけ。全身という大きさで、しかも人が着用するものは作ったことがありませんでした。

ダンボールは伸縮性がないため、着ぐるみのような柔軟性はありません。設計段階で中に入る人の身長や体格をお伺いし、写真もいただいていたので、目安はありましたが、試着は避けられません。

となると、祝日である金曜日までに組み上げてテレビ局に持ち込み、試着してもらわなくてはいけません。月曜から木曜までは徹夜作業になりました。

金曜日はテレビ局で試着してもらい、改善点を把握。その日のうちに修正を行ったり、足りない部品を付け足したりして、最終作業となる塗装を始めました。

土曜日も塗装作業の続きを行い、夜までかかってようやく完成! 翌日曜日に無事納品を終えました。非常に濃密な一週間でした。

次回はダンボールロボットが登場した番組についてお伝えします。


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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今週の一言:周りに自分のことを気にかけてくれている人がいて、本当に幸せ。そんな人達に恩返しできるように頑張ります。