グラフィック薄氷大魔王[437]映画「ジョーズ」と私の人生(笑)
── 吉井 宏 ──

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先日書いた、『僕の人生、「トムとジェリー」によって目覚め、「スターウォーズ」が方向を決め、YMOが姿勢を整えたと言っても過言ではない〜〜!』。

……と、30年くらい思い込んでた。ところが、ふと本当にそうなのか考えてみたら、「スター・ウォーズ」に受けた影響は「ジョーズ」で開眼した興味の拡大バージョンに過ぎないかもしれない。「ジョーズ」で一歩踏み込んだところに、SWにとどめをさされたんじゃないか? と思い至ったので書いてみる。




●「ジョーズ」を見た日

1976年、中学一年の冬休み後半、正月明け5日くらいかな? 親父が浜松にあいさつに行くついでに映画に連れてってくれるとのことで出かけ、帰り道夕方に豊橋の映画館に入った。親父は別の映画。

当時は平気で映画の途中から見たんだよなあ。「不審な無人のボートの船底に潜って調べる」シーンの直前からだった。その回が終了して次の回のラストまで見た。そっか、最初から核心部は二回見たんだ。記憶に強く残るわけだ。

面白い、かっこいい、怖い、映像がいい、音楽がいい! それまで見たどんな映画より素晴らしい! たちまち夢中になった。

●映画パンフレット

冬休み明け、友達が見せてくれたマンガ雑誌に載ってた「劇画版ジョーズ」、これはすごい! ほしい! と思って親父に頼んだら、見つけられなかったようで、代わりに映画館で「ジョーズ」パンフレットを買ってきてくれた(劇画版ジョーズについては下のほうにも書きました)

それまで、映画パンフレット/プログラムというものの存在を知らなかった。スチル写真がいっぱい、こんな詳しく解説や内幕などが紹介されてる冊子があるなんて! ってことで、この後、行った映画のパンフは全部買うことになったし、ロードショウ誌やスクリーン誌も読むようになる。

●カメラの後側に気づく

それまで漠然と映画好きと思ってたのが、この映画とパンフレットのおかげで監督、プロデューサー、原作者、音楽、脚本、俳優などなど、「中の人」の存在を知った。また、ポスターデザイン、宣伝、絵コンテ、特殊撮影など、後に繋がるものを発見。僕史上、記念碑的映画になった。

特に、映画監督。「激突!」はすでに見てたから、スピルバーグの「こう撮ったらこういう効果がある」「意図=撮り方」が理解しやすかったんだろうな(「激突!」放映時の淀川さんの解説のおかげだけど)。それで二年ちょっと後の「未知との遭遇」も意図を深く理解しながら見ることになる。

●「スターウォーズ」も「ジョーズ」がきっかけ

そもそもSWを知ったのは、1977年の夏頃に、アメリカで「ジョーズ」の興行記録を抜いた大ヒット映画があるというニュースから。あの世界最強の「ジョーズ」を抜くなんて、信じられない。どんな映画だ? というのが興味の発端だった。

すでに別冊スクリーンで「惑星大戦争」というSF映画が公開されるのは知ってたけど、モス・アイズリー空港に到着した一行のスチルは、その時点ではあまり興味を引くものではなかった。

●映画音楽

テレビにラジカセ押しつけて、映画音楽をコレクションしてた下地があったので、「ジョーズ」の音楽にももちろんハマり、初めて小遣いで買ったレコードがサウンドトラック盤。実はサントラ盤と間違えて、便乗企画のドーナツ盤(歌もの)を買ってしまったのが本当の最初だけどw

この映画でジョン・ウイリアムスはアカデミー作曲賞を取った。当然、「スター・ウォーズ」にも繋がる。めちゃくちゃ聴き込んだ。その頃吹奏楽部だったので、作曲を勉強すればオーケストラ曲みたいの書いて演奏できるかもと思った。思っただけだし、すぐ退部しちゃったけど。

ところで、公開当時、「ジョーズ」ブームにあやかったスペシャル番組がいくつか放送され、そのうちの一本をカセットテープに録音して何度も聴いていた。BGMに使われてた音楽は、いかにも海っぽい感じで大好きだったけど「ジョーズ」のサントラではない。

ずっと謎だったのだが、二年ほど前にiTunesストアを検索していて謎が解けた。ジョン・バリー作曲のテレビドラマ「The Dove」(1974)の音楽だった。

翌77年の映画「The Deep」もジョン・バリー(まさかタイトルが似てるから依頼された?)。「ジョーズ」の原作者のピーター・ベンチリーの小説の映画化で、ロバート・ショーも出てる。

「The Deep」のサントラ盤にもハマッたわけだけど、歌バージョンのドナ・サマーは当時はエロ気持ち悪いと思ったけど、12年後にハマるPWLプロデュースの最高傑作アルバムに繋がる。いろいろ繋がってるなあ。

●鮫とスキンダイビング

そういえば、鮫そのものにもハマッた。海洋学者になってオリに入って鮫を見たいとか。鮫の写真集みたいの買ったし、水族館に何度も鮫を見に行ったりw

そういえば中二の頃、通信教育のイラスト講座を受けてたんだけど、鮫ばかり描いて「課題の意味をよく考えてください」って怒られたw

ダイビングへの興味も。足ヒレとシュノーケル買って海で素潜り/スキンダイビングを高校卒業までやってた。さすがにスキューバダイビングまでは手が出なかったけど。

●船の模型工作とインディアナポリス号の悲劇

主役の三人が乗り組む漁船オルカ号のプラモデルなんて売ってないので、自分で作ろうと思った。ただ、資料が映画パンフ以外になくて困った(今ならネットで検索するとオルカ号の図面が出てきたりするw)。

船の模型はどうやって作るのか調べるうちに、「木製帆船」の世界を知り、木で帆船模型を夢中で作ってた時期がある。

あと、ロバート・ショー演じるクイント船長が語る「インディアナポリス号の悲劇」。数年前にウォーターラインシリーズのプラモデルで連合艦隊にハマってた僕は、「太平洋戦争末期、米重巡洋艦インディアナポリス号が原爆をテニアン島に届けた帰りに、日本の潜水艦に撃沈された」を知ってたんだよw どんな中学一年だよ!

昨今は「艦これ」ブームで詳しい人増えたみたいだけど、当時も似たようなものだったかも(海に投げ出された乗組員が鮫に食われたのは、大げさに語られた半ば作り話らしい)

●劇画版ジョーズ

ずっと忘れていたんだけど、昨年2月にTwitterにこんなの↓が流れて来て「これだ!」と一人で大騒ぎしてた。
< https://pic.twitter.com/Nmk8ypsy28
>

検索したら劇画の単行本が出てきたけど、どうも記憶とちがう。
< http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/62638475.html
>

ちょうど先月、映画のコミカライズ/劇画化について、ちょうどライムスター宇多丸氏が特集しててポッドキャストを聴いたらわかった。少年チャンピオンに載った別のコミカライズがあったそうで、どうもそれらしい。
< http://www.tbsradio.jp/utamaru/2015/03/321_4.html
>

この人も探したみたいね↓
< http://pachihell.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-e6d3.html
>

で、僕にとって「劇画版ジョーズ」がどういう意味を持つかというと、映画はマンガで表現できること。逆に、マンガは映画になり得ることに気がついた。マンガはお金がなくても一人で作れる映画だ!

さっそく、「ジョーズ」の続編をマンガで描くんだ! ってノートに5〜6ページくらい描いたんだよ、中学一年三学期! で、中学一年にまともなマンガが描けるわけがなく、人物も船も鮫も何にもちゃんと描けない。

描けないことに気がついたせいで欲が出て、数か月後にはマンガ家かイラストレーターになりたいと思ってました。資料を集めたりちょっと練習したりとか、そのへんが僕の原点の一つだったりする。

●おまけ1 映画「グリズリー」とメガネ

なんかとりとめのない昔話っぽくなってきちゃったついでに、もう二つ。便乗映画のひとつ「グリズリー」(1976)。「ジョーズ」の鮫をグリズリー/灰色熊に置き換えただけのストーリーって聞いて、ぜひ見たい! と。

夏、友達と浜松のUコン大会を見に行ったのに大雨で中止、帰りに豊橋の映画館へ。あんまりおもしろくなかったw 同時上映は「魔鬼雨」で、こっちのがおもしろかった。今考えたら、中学二年で午後遅くに映画館に入って二本立て見たら夜だよねえ。よくそんなことできたなあ。

あと、海洋学者役のリチャード・ドレイファスがかけていた八角形っぽい金ブチのメガネ。ずっとほしかったのでしたw メガネを買う機会なんてそうそうないし、ようやく似たものを買ったのは16年後の29歳の頃w
< http://www.yoshii.com/dgcr/hakkakumegane-P1070354 >

●おまけ2 竹島水族館

ちょうどこんな事件が。
「【炎上】竹島水族館がえげつない文章でアルバイトを募集して唖然」
< http://netgeek.biz/archives/40333
>

わはは、地元だ。水族館といえばここしか行ったことないかも。

書いてあることは当然のこと。というか、担当者の心の叫びw 普通、募集詳細にこういうことを書いてないのは、体面上遠慮してるだけ。まして、水族館だぞ? 飼育展示業務スタッフって、テレビなんかでおなじみの、ドラマチックな、大変なのに偉いなあ、の「飼育員さん」。

どう考えても、9時5時のサラリーマンじゃないよね。場合によっては徹夜続きでつきっきりで生き物を見てなきゃいけないわけで。だからこそ、そういう仕事に憧れる人だっているわけで。

で、竹島水族館は小学校の遠足とか含め、何回行ったかわからないくらい行ってる。もう30年以上行ってないので今はどうなってるか知らないけど、入り口を入ってすぐの部屋に「クジラの生殖器のホルマリン漬け」が壁いっぱいにド〜〜〜ン! って展示されてたのが強烈。

昔調べたら、水族館としての規模は小さいけど、貴重な魚を飼育してたりする重要な施設らしい。子供的にもデンキウナギとかタカアシガニの展示が魅力的だった。アカウミガメ、アオウミガメもいたな。

「ジョーズ」にハマッた当時はとにかく鮫を見たくてしょうがなく、竹島水族館にずいぶん通った。鮫を見てれば幸せw とはいえ、ホオジロザメとかの派手な鮫はいなく、小さい鮫や、ネコザメ、イヌザメ、トラザメとかみたいに砂に這いつくばってるやつばかり。コバンザメもいたかな? シュモクザメは頭部の標本(というか干物)があったような気がする。

展示の説明に「美味い」とか「こうして食べるとおいしい」とか書いてある。いや、魚介類の図鑑にもそういう説明はあるので、そういうものかと思ってた。水族館ってのは「漁業関連のショールーム」的なニュアンスを感じてたんだけどな。全国的には違うの?

竹島水族館ホームページ
< http://www.city.gamagori.lg.jp/site/takesui/
>

ショボいのに大人気!?愛知県にある竹島水族館の魅力
< http://matome.naver.jp/odai/2136075831698641801
>

しょぼい水族館が流行る“当たり前の”理由
< http://toyokeizai.net/articles/-/14418
>

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

※今回のタイトルは十年前この連載で書いた「スター・ウォーズと私の人生(笑)」と対になるものです。「トムとジェリーと私の人生」「YMOと私の人生」についてはまた別の機会にw

Apple Musicで定額でダウンロードし放題になるかもしれない。すると、今ほしい音楽が……困るw 試聴しててほしくなったアルバムが数枚、いや、以前から買おうか迷ってるアルバムがリストにもいっぱいあったりするんだけど。数か月後? に実質タダになるんだったら、今買うとバカみたいとか思っちゃう。困るなあw

・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
< http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500
>

・rinkakの3Dプリント作品ショップ
< https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii
>

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
>

・ハイウェイ島の大冒険
< http://kids.e-nexco.co.jp
>

・App Store「REAL STEELPAN」
< https://itunes.apple.com/jp/app/real-steelpan/id398902899?mt=8
>


◎「スター・ウォーズと私の人生(笑)」が掲載されたデジクリ 2005/07/13「MKチャット対談」ではCS2でおふたりがゆーうつになってます。なつかし〜
< https://bn.dgcr.com/archives/20050713000000.html
>