[3940] タイ王国の謎

投稿:  著者:  読了時間:28分(本文:約13,900文字)


《オレのブロマイドに需要なんてあるのか?》

■Otaku ワールドへようこそ![214]
 タイ王国の謎
 GrowHair




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■Otaku ワールドへようこそ![214]
タイ王国の謎

GrowHair
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150703140100.html >
───────────────────────────────────

政情不安が長年にわたって続いていても、経済は経済で急成長していけるもんなのか。

約10か月にわたってタイ全土に敷かれていた戒厳令は4月1日(水)に全面解除されているものの、バンコクの街のそこここに兵士が数人ずつ立ち、6月になってもまだものものしい空気が続いている。

脳天気な日本人のこのじいさんは、政情不安を意にも介さず、セーラー服をまとってタイ入りし、ルンルン気分でバンコクの街を一人、お散歩する。

タイは立憲君主制を敷くが、実質的には議会に対して王権側が強い力をふるっている。タクシン元首相派の「タイ貢献党」が選挙に勝って議会で政権を握ると、王政側から軍が発動されてクーデターが起き、「民主党」が政権を奪還する、ということが繰り返されている。

第31代首相であるタクシン・チナワット氏がニューヨークに滞在中の2006年9月19日(火)にクーデターが起き、タクシン氏はそのまま亡命している。

2011年7月3日(日)の総選挙でタイ貢献党が勝利し、タクシン氏の妹であり美貌で評判の高いインラック・シナワトラ氏が第36代首相に就任した。しかし、2014年5月7日(水)の人事異動の発令が憲法違反にあたると判定されて首相の座を追われた。

2014年5月20日(火)、タイ王国全土に戒厳令が敷かれ、二日後の22日(木)、国軍がクーデター成立を宣言した。同国が立憲君主制に移行した1932年の立憲革命以来、19回目のクーデターとなった。

クーデターを主導したタイ王国陸軍総司令官のプラユット・チャンオチャ氏が2014年8月25日(月)、国王からの任命を受けて正式に第37代首相に就任している。

タイの人々はこの事態をどの程度深刻に受け止めているのか、いまひとつよく分からないところがある。2014年2月には、混乱するタイの政治状況を報道するためにバンコク入りした日本人アナウンサーについて、「イケメンすぎる」と騒ぎが起きている。2014年2月9日(日)の産経ニュースは下記のように報じている。

政治の混乱が続くタイのインラック政権は、下院の総選挙を2日に強行、反政府デモの妨害で選挙区の二割が投票中止に追い込まれた。大規模衝突に備え、各国のメディアも首都バンコクに集結したが、現地メディアに映ったある日本人アナウンサーについて「イケメン過ぎる」とネット上で話題が沸騰。一部で選挙の結果以上に注目を集め、地元紙が「タイの政治を見劣りさせる」と報じる人気ぶりとなっている。

タイの女性たちをゾッコンにさせているのは、フジテレビ系報道番組「スーパーニュース」でキャスターを務める榎並(えなみ)大二郎氏(28)。総選挙当日、インラック首相がバンコクの投票所で投票するもようをヘルメットと防弾チョッキ姿でリポートした。

郊外では爆発や発砲が散発的に起き死者も出ているものの、さすがに投票所で「厳重装備」をしていたマスコミは少なく、目立つ格好が注目を浴び、その男前ぶりが地元視聴者の目にとまった。

榎並氏に関する“ニュース”は総選挙明け3日の朝一番でネットに登場し、映像とともに「こんなハンサムと結婚したい」「ファンクラブを結成しよう」などの書き込みが殺到、中には「防弾チョッキを脱いで。私の体であなたを守る」と熱のこもったメッセージ投稿も。日本人記者を見つけた地元記者が「榎並アナにはどこに行けば会えるのか」と“逆取材”を受けるなど、榎並氏は一躍タイの有名人となった。
< http://www.sankei.com/world/news/140209/wor1402090021-n1.html >

政治的混乱が日常化したせいか、その深刻度までもが混乱してよく分からなくなっている。そんなタイの首都バンコクを、セーラー服姿で歩いてみるというのは、なかなか刺激的な社会実験になるのではなかろうか。

残念ながら、イケメンアナウンサーのような騒ぎにはならなかった。しかし、道行く人々が次から次へと手を振ってきたり、声をかけてきたりして、一緒に写真を撮っていったりもする。約一年前にタイのテレビに出たのを「見たよ」と言ってくれる人もいた。

初めて行った国なのに、すでにある程度知られる存在になっていたらしく、この現象、日本とあまり変わらない。イベント会場でもなんでもない公共の場所で、これだけ人々から声をかけられて人気を博したのは、海外ではタイがダントツであった。

道路脇で張り込んでいる兵士たちの前を通り過ぎるとき、少し緊張する。目が合うと、敬礼してくる。え? まさか海軍と間違えたというわけではあるまい。ほんっと、タイはよく分からない。

●経済成長著しい熱帯の王国

タイ王国は東南アジアの国で、東にカンボジアとラオス、西にミャンマー、南にマレーシアと隣接する。面積は意外に広く、日本の1.4倍、フランスとほぼ同等である。人口は日本の半分。

気候は熱帯性。季節は、5月中旬から10月ころにかけての雨季と、11月から3月中旬までの比較的涼しい乾季の二つしかない。4月が一番暑くて特別に暑季と呼ばれ、40度超えする日が何日かあるという。

立憲君主制を敷く。国王はラーマ9世。大戦終結後、1946年6月9日に国王ラーマ8世は王宮内で他殺体となって発見されたが、真相は究明されず、弟のラーマ9世が国王に即位した。それから69年の在位になる。人柄と高い見識から国民の人気が非常に高い。

1967年には東南アジア諸国連合(ASEAN)に結成時から加盟。1989年にアジア太平洋経済協力(APEC)に結成時から参加した。国民の高い教育水準や豊かな国土を背景に工業国への道を模索し、日本や欧米諸国からの大企業の進出を得て、高度経済成長を果たしている。

今は、80年代後半から90年代前半にみられたすさまじい経済成長からはやや落ち着いているものの、まだそれなりの勢いで成長の途上にあるといえる。バンコクにいる限り、特に国のカラーが顕著に目につくわけでもなく、普通の大都市という感じがする。

そうはいっても、 世帯あたりの平均月収は8万5千円程度である。シンガポールの85万円に比べれば、だいぶん見劣りがする。本格的に経済成長するのはこれからなのかもしれない。

宗教は、仏教(南方上座部仏教)95%、イスラム教4%、キリスト教、他にヒンドゥー教、シーク教、道教など。

タイは気候もさることながら、文化も暑くるしい。オカマ天国といわれる。女装に対する寛容度が世界一高い。ワコールのブラジャーのテレビCMがすごいと評判になった。

めっちゃかわいい子が白いシャツの胸元から水色のレースのブラをチラチラと覗かせる。つけまつげを外し、ルージュを落とし、シャツを脱ぎ、ブラを外すと……。そこにあったはずの谷間が……。あれっ?! っていうやつ。こんなの日本じゃぜったい無理だ。進んでるなぁ、タイ。
< >

●急ぐ心がくじかれるバンコク

夕方、バンコクのホテルに到着し、夕食に出かけるまでに一時間ほど休憩時間があるというので、ホテルの無料Wi-Fiの接続テストをして、ツイッターで到着報告でもしておこうかとスクールバッグを開くと、あれ? ない! パソコンがないぞ! あ゛ー、やっちまったー! 頭の中で時間が巻き戻る。

前日、6月18日(木)の朝、デジクリ原稿を入稿した。シンガポールのレポートである。夜、プチ達成感を肴に一杯飲みたい気分ではあった。けど、無理。翌日は会社を休んでタイへ向かうことになっているが、まだ準備にまったく手がついていない。スネ毛を剃ったり、ヒゲで三つ編みを編んだり、いろいろやることがある。

翌6月19日(金)は、11:00am 成田発のタイ国際航空の飛行機に乗るために、7:58am 日暮里駅発の京成スカイライナーに乗り、8:41am に成田空港駅に到着した。出国手続きを通過して搭乗ゲートに着くと、ここまで来ればもう安心とばかりに、近くにある「カフェ & バー アビオン」に入り、ピザと赤ワインをグラスで注文。前日飲めなかったもやもやを解消すべく、朝っぱらから飲んでしまった。

窓向きの席に座ると真正面に滑走路があり、目の前から飛行機が次々と離陸していく。よしときゃいいものを、もう一杯。注文したら、今度は大サービスですとか言いながら、なみなみと注がれちゃった。二杯分はあるぞ。10:30am の搭乗開始まで10分しかないぞ。がーっと流し込む。

搭乗待ち列に並んでいる五木あきらさんに会ったとき、私はそうとう赤い顔をしていたらしい。搭乗すると、タイ国際航空のフライトアテンダントの方々は坊さんみたいな衣装をまとっている。かっこいい!

一人が "Nice dress! I love it!" と話しかけてくるので、調子よく "You, too!" などと返すこの酔っ払い女子高生オヤジ。

パスポートと搭乗券とメモ帳とボールペンと『地球の歩き方 バンコク』とパソコンとを取り出して、座席の前や下に置き、スクールバッグを頭上に収納した。即、寝る。足もとに置いたけど使わなかったパソコンの存在を、降りるときにはすっかり忘れてた。ふんがー、やっちまった。

空港でイベント主催者の近藤氏に迎えられ、五木さんと一緒にタクシーに乗り、30分ほどでホテルへ。片道30分なら往復で一時間かといえば、そうはいかないタイの交通事情。

シンガポールとはうって変わって、渋滞がひどいのだ。あっちでもこっちでもぎっちぎち。交通渋滞はバンコクの名物と聞いてもちっともうれしくない。

ホテルまでの道は高速道路を降りるあたりでちょっと混んだくらいで、マシなほうであった。金曜の夜のことで、都心から郊外に向かう反対車線はぎっちぎちなのを見てきた。通訳のミナミさんにお願いして、空港までの往復に同行していただく。

MRT(地下鉄)の Phra Ram9(パラムガオ)駅まで、距離的には徒歩15分ほどで行けるはず。けど、実際には何分かかったのだろう。道行く人が次々に声をかけてきて、一緒に写真を撮っていく。路上で演奏している人や工事している人や、喫茶店でお茶してる人までもが飛び出してきて。なに、この人気。

『キモチイイ』見ましたよ、って人がけっこういる。タイのテレビ番組。去年の4月2日(水)に池袋の「サクラホテル」の前で収録された。タイから来た三人の出演者の演技がやたらめったら大振りで、非常に暑くるしい。2014年5月28日(水) に YouTube にアップされている。42万アクセス。
< >

一駅区間乗って Phetchaburi(ペッチャブリ)駅へ。ここまで来るのにすでに一時間経ってる。ARL(エアポート・レール・リンク)の Makkasan(マッカサン)駅につながっており、Suvarnaphumi(スワンナプーム)駅へ。

この鉄道、まるでつくばエクスプレスのように立派な高架軌道を走るくせに、走る速度がやけに遅く、ちょっとスピードを出すとやけに揺れる。日本に発注してくれてれば、もうちょっとマシなものを作ってたはずだぞ。新幹線は、中国に勝って日本が受注できそうだと聞くけど。

以前は途中駅を全部通過していく特急列車があったらしいが、今は各駅停車ばっかり。空港が終点になっている路線でありながら、実際には主として通勤の足になっているあたり、京浜急行羽田空港線と似たようなことになっている。やけに混んでいるのである。ひとつ手前の駅でほとんど降りちゃって、最後の一駅区間はガラガラ。

遠くに広がる真っ黒い雲は、一部が地面に届いており、あのへんで激しい雷雨になっていることがうかがい知れる。

空港で特別の券を発行してもらって、セキュリティの人にガードされながら、出口脇の特別のゲートから入れてもらう。手荷物受取所の脇の保管所にパソコンはあった。ふう。五人ほどいた職員全員から写真を撮られる。

空港を出ると、激しい雷雨になってる。げ。こっちへ来たか。復路はタクシーを使うが、さっきはすいすいいけてたあたりから、早々に渋滞が始まる。げ。雨のせいか。

三時間ロスした。先に食事しているみんなと合流する。イベントで海外に呼ばれるケースでは、鉄道に乗ることが一度もなかったので、いい観光にはなった。

●タイでイベントを開くのはリスクが大きい

今回、私が訪泰した目的は、イベントにゲストとして出演するためである。ギャラこそ出ないものの、渡航費用はぜんぶ主催者持ちである。

6月20日(土)、21日(日)に、バンコク市内のショッピングモール「The Shoppes Grand Rama9」で開催された『The Shoppes Comic Party 91 in Bangkok』と称するイベントで、漫画、アニメ、ゲームをテーマとし、サークル出展、ゲスト紹介、世界コスプレサミットタイ代表選考会、世界カラオケグランプリタイ代表選考会などが催された。
< http://www.facebook.com/events/709366575853323/ >

会場はふたつのフロアーからなるショッピングモールで、一階の中央あたりにイベントスペースが設けられている。二階は、フロアーの半分ほどががらんとしたスペースで、若者たち四〜五人から十数人のグループがいつも何組かいて、それぞれ適当に場所を占め、ダンスの合わせ練習をしている。無料で勝手に使えるらしい。おおらかなスペースの使い方だ。一番奥に、大きな鏡で仕切られた控え室が設けられていた。
< http://www.theshoppesgrandrama9.com/ >

このショッピングモールがイベントのスポンサーになっていて、日本から二人、台湾から二人、著名なコスプレイヤーたちをゲストとして呼んでくれている。五木あきらさん、MONさん、STAYさん、私。あ、私をそのカテゴリに入れていいかどうかはいざしらず。

主催するのは、「株式会社ねぎぼうずコンド」(旧称「ねぎぼうずタイランド」)の社長である近藤秀和氏。私は、5月1日(日)、2日(月)に中国「広州南豊国際会展中心」で開催されたイベント『D.L 動漫游戯嘉年華广州 01』で一度だけお会いしている。そのイベントに近藤氏は五木さんとMONさんを連れてきていた。

近藤氏はタイに住み、東南アジアの国々で開催される漫画・アニメ・ゲーム系のイベントを企画・運営している。今後のイベントでもし可能なら私をゲストに呼びたいけれど、地方都市で小規模に開催するイベントが多く、あまりに小さいのに呼んでは失礼だから、そのうち機会があれば、と言っていた。

今回、バンコクで主催することになったので、さっそく声をかけてもらえたというわけだ。

その間に、近藤氏は台湾でイベント開催し、そこから直接韓国に行ってイベント開催し、日本に戻ってきて休養をとり、タイに戻ってチェンマイでイベント開催し、そして今回のイベントとなる。小さなイベントで実績を積んで、だんだんと大きなイベントにチャレンジしていくのかと思いきや、そうではなく、大きいのにはなるべく手を出さないようにしているのだそうで。四年前、反政府デモと洪水とでひどい目にあっているのだ。あやうく破産しかけた、と。

2011年1月19日(水)の読売新聞に「ジャパンフェア デモで延期」と題する記事が掲載されている。「バンコクを拠点に日本のポップカルチャー関係のイベントを企画する「ねぎぼうずタイランド」は、1月22日〜23日にバンコク中心部で予定していた「第一回クールジャパンフェア in バンコク」を、今年半ばごろに延期した。タクシン元首相派勢力「反独裁民主戦線」(UDD)が23日、中心部でデモを計画しているためで、22日、代替イベントの「コスプレパーティー」を開催する」とある。さらに、次のように続く。

フェアは複合商業施設「セントラル・ワールド」前の屋上広場を会場に、日本の有名コスプレーヤー(コスプレ愛好者)も招いて、マンガ、アニメ、ゲーム、音楽、食などの日本文化をタイ人に幅広く紹介する予定だった。

ところが、UDDはタイ騒乱の犠牲者を悼む名目で今年1月9日、広場前の大通りを占拠して約三万人のデモを行ったのに続き、23日にも同様のデモを行うと発表した。

UDD側は、周辺商業団体からの抗議でデモを二時間に限定するとしたが、「ねぎぼうずタイランド」の近藤秀和代表は「イベントを楽しく、安全に行える保証はない。混乱を避けるため、やむを得ず判断した」と延期に踏み切り、支援団体・企業からも理解を得た。

代わりの公開イベントとなる「コスプレパーティー」では、日本からコスプレイヤー10人を予定通り招待し、セントラル・ワールド8階で22日午後1時から8時まで、タイのコスプレーヤーとの交流会を開く。

同時に、タイワコールがスポンサーとなり、ネット上のコンテンツ用にタイ人コスプレーヤーの撮影会も行われる。ネット投票を後日実施し、優勝者には日本への旅行が贈られる。(ここまで引用)

主催者側の落ち度ではないとはいえ、払った会場費がどこかから戻ってくるわけでもなく、たいへんな損失をこうむった、と。

2011年10月31日(月)の「バンコク経済新聞」は「雨女伝説の「初音ミク」、バンコク公演も洪水の中? ジンクス破られず」と題する記事で、次のように書いている。

セントラルワールド7階「SFワールドシネマ」で10月30日、大洪水でバンコク市内にも浸水が広がる中、「初音ミクライブパーティー(ミクパ)2011」が開催され、ファンの間からは「やはりミクの雨女説は本当」「洪水まで引き起こすとは」など驚きの声が上がっている。

バーチャル・シンガー・ソフト音源「VOCALOID(ボーカロイド)」のキャラクター・初音ミクの立体映像がステージに立つ同公演。チケットが即日完売したほか、追加公演も完売する人気ぶりで話題を集めていた。洪水の影響で開催が危ぶまれていたが関係者の努力で無事、実施にこぎ着けるとができた。

ファンの間ではもともと「初音ミクがらみのイベントは雨にたたられることが多い」というジンクスがあり、「ミクは雨女」という説があることは有名。バンコク公演では雨は降らなかったものの、洪水被害が拡大する中での開催だったことから、フェイスブックやツイッターでは「またか」など、雨女伝説に関係する声が続々と上がっている。

コンサートは非常な盛り上がりを見せ、タイにおけるボーカロイド人気の高さをうかがわせたが、洪水の影響で会場にアクセスできないファンが続出。主催者によると69%しか会場に足を運べなかったという。

「雨女説は知っていたが洪水になるとは」と戸惑いの色を隠さない同イベントのコーディネーターでねぎぼうずタイランドの近藤秀和社長。「来場できなかったファンのために、年末に追加公演を行うことで関係機関と調整したい」と意欲を見せる。(ここまで引用)
< http://bangkok.keizai.biz/headline/777/ >

つまり、会場費を二度払う羽目にあってる、と。ご難続きの年だったようで。タイでは予期せぬことが起きるので、小さな会社でイベントを主催するにはリスクが大きすぎるとさとった。で、その後は堅実に、小規模なイベントを中心に主催しているとのこと。

激務な上にちっとも儲からん、とぼやきつつ、やはり好きだからと続けている。

●熱く、あるいは暑くるしく、盛り上がるイベント

近藤氏は、イベントの事前宣伝をすごーくがんばってくれた。バンコクにはバンコク・スカイトレイン (BTS)という高架軌道の鉄道が二本走っている。車内の壁に液晶スクリーンがかかっていて、宣伝映像が流れているのだが、そこに私が映っているのを見たと、タイ在住の知り合いが教えてくれた。

街にはラッピングカーが走り回る。四人のゲストの顔写真がプリントされている。ショッピングモールの近くには、やたらと大きな液晶サイネージが掲げられているが、そこにも映ったらしい。また、周辺にはやはり四人の顔写真入りの大きめの看板がそこここに立っている。

イベントでの私の役割は三つぐらい。
(1)写真販売、サインと写真撮影
(2)ステージで一言あいさつ & 写真撮影
(3)カラオケコンテストで審査員

広州のイベントでは、来場者が会場に入るときに入場料を徴収され、握手&写真撮影会自体は無料であった。そしたら、私の前に100人近い列ができ、後から後から並ばれるので、ちっとも短くなっていかない。イベント終了時間にちょうどはけるよう、列の尻尾を締め切ってもらった。

今回のイベントは入場無料。もし無料で握手会を催したら、建物の外まで並ばれることは予想がついた。その対策として近藤氏が考えたのは、写真を販売し、買ってくれた人だけ並ぶことができ、その写真に本人が直筆でサインするという方式であった。

写真はだいたい2Lくらいのサイズのコート紙にプリントアウトしてあり、売り値は一枚あたり100 バーツ。1バーツは約4円。六種類あって、それぞれ50枚ずつ、計300枚用意してくれた。その中の二種類は、私が鹿児島に行ったときにもみのこゆきと氏が撮ってくれたものである。

他の三人のゲストたちのグッズは写真集やポスターなどで、単価がもっと高い。これで列の長さが均等になろうという主催者の読みだが、ちょっと悪ノリが過ぎやしないだろうか。いくら直筆サイン入りとはいえ、オレのブロマイドに需要なんてあるのか?

結果として、290枚売れた。ほぼ完売。これって、自分の旅費ぐらい稼ぎ出してないかい? いやぁ、市場というのは思いもよらないところにあるもんだね。それを予め読んでて、ほぼぴったんこの枚数を用意してきた主催者、天才!

売れたのはいいんだけど、なんか新たな市場を開拓しちゃったっぽい。たぶんタイ独特の。

「ヘスティア兄貴」はタイで有名なコスプレイヤーらしい。ヘスティアは、大森藤ノ氏によるライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場するキャラである。下界に降りてきた新参者の女神。ロリ巨乳。黒髪ツインテールに裾丈のやたらと短い白のワンピース、胸の下を通すように二の腕に結んでいる青い紐が特徴。

このキャラを、ガタイのでかい、ボディービルダーのように筋骨隆々たるお兄さんがやると、もう筆舌に尽くしがたいほど暑くるしい。しかも、顔には、元キャラを離れて、マジックでヒゲみたいな太い線がぎゅうぎゅう描いてあるし。

二人で並んで、片手ずつでハートマークを作ったり。兄貴が私の頭をぐっと抱き寄せて、ムッキムキの分厚い胸にべったりとくっつけたり。そしてそのたくましい胸筋をびっくんびっくんと伸縮させる。うっわーーー。これって百合だよね?

いま「ヘスティア兄貴」でググってみれば、トップから5件ぐらいは私がからんでいる。つつくと、「日本の「セーラー服おじさん」とタイの「ヘスティア兄貴」の対峙が面白いwww【タイ人の反応】」と題するブログ記事に行き当たる。
< http://thailog.net/2015/06/23/223316/ >

タイ人の無責任な反応の数々が挙げられている。

「ふたりとも笑顔で楽しそうですね」
「ついにこの二人が出会ってしまったんだね」
「セクシーさがぶつかり合ってるね!!」
「運命の二人だね」
「うん、ずっと探し続けていた二人が出会ったんだね」

なんだろ、この肯定感。この文化の違いは、気候の違いだけからくるものだとは言えないと思う。たぶん、インドネシアあたりはまったく違うムードなはずだ。いったいぜんたいどうなってるんだ。謎の国、タイ。

他にもいろいろ。トトロはもともとオスでいいのかもしれないけど、何かが非常に違う。チューを迫ってくる赤いドラえもんとかも。いやぁ、変な箱を開けちゃったなぁ。

ステージに上がると、盛大な拍手と歓声に迎えられる。事前宣伝のおかげでお客さんの入りは非常によく、目の前に数百人の人々が奥のほうまでぎっしりと密集している。「うわぁ〜、緊張する〜」ではなく「うをー、気分いい!」と思っちゃう私。

「うにゃにゃん♪」とポーズをとると、おびただしい数のカメラのレンズがこっちに向けられる。こういうお仕事、案外向いてるかもしれないワタシ。

カラオケ選考会の審査はまじめにやった。イベントの中の催しとして、世界コスプレサミットタイ代表選考会と世界カラオケグランプリタイ代表選考会がある。それぞれ優勝者は、日本行きの切符を手にして、8月に名古屋で開かれる世界コスプレサミットの決勝大会に進出する。

カラオケは30人がエントリしていた。一日目が予選で、10人に絞り込まれる。その審査を四人のゲストが務めた。すでにとてつもなくレベルが高い。日本語の歌詞を完璧に暗誦して、まったく危なげがない。っていうか、プロでしょ。

実際、大勢のファンたちを客席に引き連れて、盛大な歓声を浴びながらステージに登場する出場者もいた。この選考会にすべてを賭けて、満を持して出てきたぞ、という感じがすべての出場者から伝わってきた。

私はDAMの精密採点Dxになったつもりで採点した。と言っても、機械的に採点して済む話であれば、実際に機械が採点すればいいだけの話になっちゃうので、もちろんそこだけではない。

音程やリズムの正確さは基本項目として重視するし、こぶしやビブラートなどのテクニックはプラスに作用するけど、それにとどまらず、声質の心地よさ、抑揚のつけ方、情感の込め方、総合的な感動の度合いを考慮に入れて、点数をつけた。

点数の基準において、感覚的に精密採点Dxのそれにならった。聞き苦しいレベルなら70点台。一人もいなかったけど。まあまあ上手だなってレベルなら80点〜84.999点。一人もいなかったけど。

これといって粗はないけど、もっと感動させてくれてもいいぞ、ってレベルなら、85点〜89.999点。ここが多かった。いや〜、聞きほれたぜ、すばらしい、ってレベルなら90点台。これがちょうどよく10人いた。

採点は、もちろん日和をみたり、ムードに流されたりせず、独自に判断すべく真剣に臨むが、判定に対しては迷う必要がなかった。審査員とてポーカーフェースで採点しているわけではなく、お、これはいいぞ、と思っていると、隣りで五木さんも大喜びしてるし、会場からわーっと歓声が挙がるし。文句なくいいものは、誰が聞いてもいいと言うのだ。

今回のイベントでは、五木あきらさんの歌のステージが催され、『ラブライブ』から一日目と二日目でそれぞれ二曲ずつ歌った。五木さんは、コスプレイヤー三人組ユニット「パナシェ!」の一員として、かつてソニーミュージックからメジャーデビューしている、れっきとした歌手である。のびやかな声が実に心地よい。

客席の後ろのほうにはサイリウムをもった一群の観客がいて、ノリよくヲタ芸を打っていた。合いの手の入れ方がお見事で、日本のアイドルシーンとまったく変わりがない。オタクの心は楽々と国境を越えてひとつになる。

ネットから拾い集めた写真はこちら。
< http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event15062021 >


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/ >

特に知り合いでもなかった人が結婚した。結婚披露宴で上映する余興映像に出演してくれませんか、と、共通の知り合いを通じてこっちへ話が来た。

いやいや待て待て。四流芸人を自称する私は、事務所に所属するわけでもなくて、芸能人ですらない。歌うわけでもなく、お芝居を演じるわけでもなく、芸らしい芸がなにもないし。大根でいいというなら、やらなくもないですけど。

いいというので、出演してきた。題して『リラックマハンター マサヒコ』。4月4日(土)に目黒の公園で収録。マサヒコはユカリにプロポーズするべく、未来永劫の幸せを約束するという伝説のリラックマを苦労して手に入れる。それを横取りしようと企てるのは、セーラー服おじさん。おいおい悪役かよ。

ユカリとの結婚がかかっているマサヒコは、みすみす渡すわけにはいかない。戦って奪還しようとするが、このおじさん、意外と強い。繰り広げられる壮絶なバトル。結果やいかに?

悪役の大根ぶりさえ気にしなければ、映像としてはそうとう面白いものになってるんじゃないかな。上映は大成功で、披露宴は大いに盛り上がったという。それっきりではあまりにももったいない。というわけで、YouTubeに上げてもらった。
< >

フランスでJapan Expoが開催中。すんげ〜行きたかった〜。けど、無理〜。すでに休みを取りすぎている。私は2012年と2014年の二度行っただけなのだが、フランスでは毎年来ていると認識されているらしい。間の年は、すごいヒゲのじいさんが来場したらしく、それがB面の私だったと誤認されたらしい。今年は誰が身代わりになるのだろうか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(07/03)

●沢木耕太郎ルートで「あなたを抱きしめる日まで」を見た。2013年のイギリ映画で、ノンフィクション「The Lost Child of Philomena Lee」を原作としている。失われた子供を探す旅に出る老女フィロミナと、その旅の相棒がジャーナリストのマーティン。二人の道行きを綴る映画である。ただし、イントロでマーティンが政治の陥穽にはまって失職するパートは、間違って別の映画を見ているのかと心配になった。彼女は50年前、あやまちで妊娠してしまい、それを恥じたカトリックの父により修道院に預けられ、そこで男の子アンソニーを産む。洗濯女として苛酷なまでに働かされ、彼と会えるのは日に一時間だ。

ある日、アンソニーは養子に出され母子は引き裂かれる。それから50年、老いたフィロミナはその秘密を娘に告白する。娘は偶然知り合ったマーティンに、母の息子捜しの旅に同行して、顛末を本にしないかともちかける。二人はアイルランドにある修道院を起点に、幻の息子捜しの旅に出る。修道院では、アンソニーの記録は火事で失われたというが、マーティンの聞き込み調査で、彼はアメリカ人に「売られた」ことが分かる。二人はアメリカに飛ぶ。マーティンの人脈による情報とインターネットにより(あっけないぞ)、アンソニーはマイケルと名を変えられ、成功した人生を「送っていた」ことが分かる。

老いたフィロミナにとって、あまりに苛酷な現実が突きつけられた。ここで旅が終わったわけではない。これからがすごい。二人が調査を続けた結果、旅はふりだしに戻るのだった。そして、恐るべきアイルランドカトリック教会の闇が暴かれる。思いがけないシリアスな展開に驚き、一途なマーティンにすっかり同化したわたしも暴発寸前だったが、フィロミナは「赦す」のだ。ここまでされて赦すのか。彼女は静かに言う。「赦しには、大きな苦しみが伴うものなのですよ」。それはないだろうと思うのは、わたしがかの宗教を知らないからか。これが実話に基づいたものだというから恐ろしい。

このふたりの組み合わせが絶妙だ。善良でほのぼのとしたおばあちゃんと、冷めたエリート気質の中年男のかけ合いは、シリアスな中に知的なユーモアがにじみ出る。結局はとても暗いストーリーなのだが、だいたいは調子いいテンポでサクサク進んでいくところが見事だ。それにしてもこのメロドラマみたいな邦画タイトルはないだろう。「あなたを抱きしめる日」なんて来ないことは、話が半分進んだところで明らかになる。じゃ、それ以降の展開はどうなる。タイトルが見る人に間違った期待を与えている。こんなはずじゃなかったと思わせる。しっかりした構成に救われているが、このタイトルは問題だ。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00HZZ5V7A/dgcrcom-22/ >
「あなたを抱きしめる日まで」

< http://www.phantom-film.jp/library/site/mother-son/ >
公式サイト 予告編を見たらぜったい本編を見たくなる


●マラソン続き。トイレ後から足が重くなり、しばらく走っているとマシになった。が、全身がだるくなってくる。スピードが落ち、給水で止まって休憩を取るようになった。それまでは歩きつつコップを取り、飲んですぐにコースに戻っていた。

止まってストレッチをし、エアサロンパスをスプレー。だるいなぁと思いつつ走り始める。沿道のプラカードは一応見るものの、最初のように楽しんで見ることはできなくなった。

そして関門の時間が気になってくる。まだ余裕はあるが、20km前でこれだと最後はどうなるかわからない。距離を稼がないといけない、そう思い始める。ハーフの男性陣を抜きつつも、上り坂では歩いてしまう。走っては歩き、歩いては走る。

ハーフは左、フルは右に寄れという指示が出る。ハーフのゴール門が見え、横を通過する時には「ゴール!(ハーフの)」と言いつつ両手を挙げた。ゴールし感極まって泣いているハーフの男性陣(複数)を見て、なんだか腹が立ってきた(笑)。私たち、ここからその倍走るのよ〜って。続く。 (hammer.mule)