[3942] 時間感覚のジェットコースター

投稿:  著者:  読了時間:14分(本文:約6,800文字)


《これを見てイメージがわかない人はいないでしょう》

■装飾山イバラ道[159]
 時間感覚のジェットコースター
 武田瑛夢

■ところのほんとのところ[117]
 PARADOX PROGRAM 音楽家たちとの対話2
 所 幸則 Tokoro Yukinori




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■装飾山イバラ道[159]
時間感覚のジェットコースター

武田瑛夢
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150707140200.html >
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歳を取ると一年が早く感じるという。

理由はいろいろな説があって「ジャネーの法則」というものだと、人生分の1という分数で考えられていて、50年生きれば1年は50分の1なので5歳の子の5分の1とは大きさが違うということらしい。

そういった理論は他にもあってどれもなるほどとは思うけれど、私にはまだ完全に納得できるものはないような気がしている。

「アクティビティ量理論」では、歳を重ねることで新しい経験が少なくなるということが一年の早さを決めているという。初めて自転車に乗れたとか、25mプールを泳ぎきったとか、飛行機に乗ったとかの心ときめく経験。でもそんな初めての新しい経験はどんどん残り少なくなるように思う。

しかし私はまだバンジージャンプもスカイダイビングもしたことないし、潜水艦にも乗ったことがない。これらは本当にしたい訳じゃないので、きっと全部しないだろうけれど、本当に一生しないでいいのかきちんと考えたこともない。

きっとデヴィ夫人のように新しいことにチャレンジし続けていれば、一年を長く感じることができるということかしら。そのうちやりたければするだろうと思っていたいろいろなことも、考えてみるともうできないなと想像したりするのが中年の憂いなのかもしれない。

●いつかやろうと思っていたこと

昨年は今頃の時期に大阪のUSJへの旅行準備でワクワクしていたけれど、遊園地では普段はあまり使わない感覚への刺激が簡単に味わえることがある。スピード感やスリルは若返りにはもってこいだと思う。

しかしジェットコースターも激しいのは年齢制限があったりするので、中年の方は今のうちにチェックしてみて欲しい。

絶叫系で人気の富士急ハイランドでは、有名なドドンパや高飛車は年齢制限が60歳までだし、落下系では59歳までのアトラクションもある。遊園地に50代で乗れなくなる乗り物なんてあったのだ。

最近の50代なんてとっても若いのにね。子供や孫の身長制限を気にしている世代も多いだろうけれど、まさか自分の年齢制限が近づいているとは思わないものだ。

ほとんどの人はジェットコースターに興味なんてなくなっている頃かもしれないし、乗れなくても何も困らないかもしれないけれど。若返りの刺激に良いのに高齢になると乗れないというのはもどかしい。

施設側としては事故があっても困るので、ほどほどにした方がいいからだろう。見た目的には若くても、関節のサスペンションはもうパキパキかもしれないし(笑)。

私は去年のうちにUSJのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドの逆走に乗っておけば良かったと後悔している。二回乗るチャンスがあったのに、どちらも普通のに乗ってしまったのだ。もうしばらくは行けないだろうからもうないかもなー。

ジェットコースターなんて、乗り込んだら所要時間たったの三分程度の世界だ。乗っている時は景色やスピード感や落下感で興奮状態になっている。自分があんなに高い声で絶叫することにもビックリする。

楽しくて怖くて疲れて大変だけれど濃密な三分間と言える。乗り終わってしばらくは謎の笑いが止まらないし、並んだ何十分間と余韻も含めての体験だ。

●加速して何が問題か

一年が過ぎるのが早くてなんだかもったいないけれど、人は楽しいことをしている時ほど時間が経つのが早いともよく言う。刑務所で懲役刑を過ごしている人は時間をすごく長く感じるというし、自分にとって楽しい時間なのかというのは、時間の感じ方を大きく変えるのは確かなようだ。

確かに熱中できるものがあると時間が経つのは早い。一年が過ぎるのが早いなら、その一年が楽しかったからだとはなぜ考えないのだろう。

「嫌よね〜歳を取ると」とマイナスに思ってしまう。これはこのまま加速を続けたら、残された時間があっという間に過ぎそうな恐怖から来ていると思う。残された時間に意識が向いている人しか考えない不安かもしれない。

高校へ行っていた時は、二年生になる頃に残りの学校生活がどのくらいで終わるのかやっと想像ができていたような気がする。一年過ごしてみてやっと次の一年の忙しさや楽しさが想像できる。

学校独特の一学期の長さとか、結局は季節によっても短さは全く違うように感じていた。大学の頃はスケジュール表が文字で埋まっていれば、何かしらがんばっていたろうからと安心もできた。

一年の早さは加速しても、一日の濃さは薄くはならないような気がしている。私は5月に高齢の義理の母が入院して、最近はお見舞いのために病院通いをしているので、一日の大切さが身にしみることが多い。

若い頃のようにスケジュール表に文字を埋めなくても安心できるようになったし、今しかできない大事なことをしていると感じていられればそれが一番だ。

でもこの一瞬が大切なのだ! と思えば思うほど、家では普通のことしかできないので、我ながら行動のバリエーションの狭さを感じる。

いかに今日の料理を美味しく仕上げるかとか、ネット通販のセール開催時間を忘れないようにしなきゃとか、時間に対してみなぎるのはそんな時ばかりだ。

そういえば、プロジェクターで講義している時の残り時間の調整にもみなぎっているかも。おっとりしているのに焦ると、何かとテンパりがちなのは直さなくてはならない。

生きているうちにやりたい○○のことじゃないけれど、私はまだアラフィフだけれどそろそろ項目をまとめて書き上げておかないといけないと思う。

そしてこれは自分だけでできることだけじゃなくて、周りの人たちへのお願いすることや感謝を言うこと、見せておくこととか、相手がいないとできないことも全部含まれる。

項目を書き上げながら片っ端から片付けていくぐらいがいいのかもしれない。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/ >

この夏は仕事部屋のエアコンを新しくしなきゃならない。なるべく買い替え時期をずらすことで、一気に何台も買わずに済むようにはしている。電気屋さんに来週からは工事が混むかもと焦らされているので、早く決めなければ。


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■ところのほんとのところ[117]
PARADOX PROGRAM 音楽家たちとの対話2

所 幸則 Tokoro Yukinori
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150707140100.html >
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今月は二か所で[ところ]の展示が見ることができます。

■PARADOX ─ TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険 ─
Yukinori TOKORO 所幸則写真展
会期:2015年7月1日(水)〜 9月25日(金)10:00〜19:00 入場無料
会場:ESPACE KUU 空(エスパス・クウ)
   東京都豊島区西巣鴨3-20-1 大正大学5号館一階
< http://taisho-kuu.tokyo/paradox/ >

こちらは2008年から2015年4月までの、[ところ]のファインアーティストとしての活動を俯瞰する構成で、その間に共鳴しあった音楽家たち三人が[ところ]の作品に音をつける。

今週の土曜日(7月11日)は午後4時から5時まで、「PARADOX PROGRAM 音楽家たちとの対話2」が行われる。

[「PARADOX TIME」という哲学的な命題に対し、音楽家の大口俊輔氏をゲストに招いて、写真家・所幸則氏とともにアプローチしていく試みです。

「アートの読み解き」をめざすべく、「ONE SECOND」「アインシュタインロマンス」の作品映像にあわせて、ピアノの音色を使用したサンプリング演奏を行います。この挑戦に重要な役割を担うオーディエンスとして、ぜひ皆様お集まりください!]
< https://www.facebook.com/events/483416971835216/ >

大口俊輔さんとは、高松市で偶然知り合った。[ところ]は老齢の両親が最近だいぶ弱ってきたので、月の半分は高松にいるようにしているのだけれど、そこに彼は東京から呼ばれてやってきた。

イスラエルのカンパニーで活躍するダンサー、柿崎麻莉子さんとのコラボレーションのためであった。2015年の2月のことだ。

実は昨年バレエダンサーを撮る機会があり、三歳から正統派のバレエ一筋に踊ってきて、最近コンテンポラリーの動きや社交ダンスの動きも勉強中の、樋笠理子さんを撮影した。

その作品を見て、柿崎麻莉子さんというダンサーから、会いませんかというメッセージが飛び込んできた。会ってみると、非常にユニークで奔放、一緒にいて全然疲れない。これはなんだろうと、自然と撮影するようになった。

途中から柿崎さんは「ところさんの2月」という言葉を使い始めた。
その時の彼女のブログがこれ。
< http://marikokakizaki.blogspot.jp/2015/03/blog-post_5.html >


 香川県で、ところさんに出会ってしまいました。

 撮影されている時はわかってるようなわかってないような感じで、現場に漂うクリエイティブなエネルギーが気持ち良かった。

 仕上がりをみて、いまさら理解している。ところさんがみてたもの。

 ところさんと出会ってしまいました。

 ONE SECOND SERIES 一秒間に起こった動きたち。


柿崎さんを撮っていたタイミングに、ピアノとのセッションがあると聞いたので、[ところ]も見に行った。ピアノの音に合わせて踊っている柿崎さんが極めてすばらしく、途中で流れてきた打ち込み系の音楽が[ところ]の趣味とドンピシャだった。

楽屋で休んでいる柿崎さんを撮りに行ったときに、大口俊輔さんとも言葉を交わすようになった。その後、春から展開した[ところ]と弟子たちの展示を、大口さんに見に来てもらった。

そこで、[ところ]の新シリーズを見せて「僕の作品をみて音楽のイメージは湧きますか」と聞いてみた。

彼は、「これを見てイメージがわかない人はいないでしょう。新しい曲を書いてみます」と言ってくれた。

話をしていると、最初に曲を書いてくれた徳澤青弦さんの、大学の後輩であることが判明して、先輩の曲すごそう、と多少緊張もしたようだった。

[ところ]が聞いたドンピシャの曲、実はコムデギャルソンのファッションショーのために作った曲だったそうで、[ところ]の作品と合わないはずはないと確信を持っている。

今週の11日の土曜日には、大口俊輔さんの素晴らしい新曲が聞けることになる。皆さん楽しみにしてほしい。

実はその前に、WINDOW GALLERYで「アインシュタインロマン」が始まっていて、6月19日(金)には樋笠理子さんが、大口さんの作った楽曲で踊っている。

それとは別に、新しく作った曲だからなおのこと聞いて欲しいと思う。[ところ]とキュレーター・太田菜穂子さん、大口俊輔さんのトークショー、ギャラリートークもするつもりです。お楽しみに。


■「アインシュタインロマン 所幸則 Tokoro Yukinori」
会期:6月19日(金)〜7月30日(火)11:00〜21:00 日休〜20:00
会場:H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHI
東京都千代田区丸の内2-4-1丸の内ビルディング1F
< http://hpgrpgallery.com/cms/wp-content/files_mf/1432454086TOKORO_ReleaseSS.pdf >
< http://hpgrpgallery.com/window/ >


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >


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編集後記(07/07)

●「私を通りすぎた政治家たち」を読んだ(2014、文藝春秋)。このタイトルからは女優か社交界の有名女性による暴露話かと思うが、実は警察庁・防衛庁・内閣の要職を歴任した佐々淳行だ。実際に交流のあった政治家たちを切れ味鋭く評価する閻魔帳。歯に衣着せず率直に個々のエピソードも交えて紹介していて、おもしろいのなんの。政治家には、「政治家」(ステーツマン)と「政治屋」(ポリティシャン)の二種類がある。権力に付随する責任を自覚しノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)を心得ている人は「政治家」。権力に付随する利益や享楽を優先して追求するのは「政治屋」と、佐々は定義する。

「国益」を第一に考え「私益」を後回しにするというのも「政治家」に必要な資質といえる。その観点から戦後日本の政治史で、ベスト5の「政治家」といえるのは、吉田茂、岸信介、佐藤栄作、中曽根康弘、石原慎太郎。国益より私益を優先したワースト5の「政治屋」といえば、三木武夫、小沢一郎、田中角栄、加藤紘一、河野洋平。その理由は一読三嘆(とは言い過ぎか)。人の悪口は本当においしい。加藤紘一や小沢一郎に対する酷評は痛快無比である。憎めない政治家たち(浜田幸一、不破哲三、上田耕一郎など)、海外からの賓客、外国の大物たちの知られざるエピソードも実に面白い。

佐藤内閣の高辻正己内閣法制局長官のエピソードが興味深い。佐々が自衛隊の海外出動についての意見を電話で聞くと、「君、私のところに来るな。来たら今の私の立場では違憲といわざるを得ない。法制局長官というのは、時の総理が下した行政判断や出した命令は鷺もカラスと言いくるめるのが仕事だ。佐藤総理が決断をして、艦艇を出す場面になったら合憲だと叫ぶから、それまでは違憲だの合憲だの言わせないでくれ。もっと切羽詰まってから来い」と言う。驚くべき見識の高さだ。かつてはこんな骨太の役人もいた。その後の法制局は、内閣の禄を事実上食んでいるのに、エラそうに内閣の邪魔ばかりしている。

「自衛権はあるが行使できない」とか、法制局はバカか。もはや合憲とか違憲とか、そんなくだらない論争やってる場合ではない。安全保障についての本質的な問題を国会で議論すべきだ。誰かが言ってた。政府は法案をいったん撤回し、憲法第9条第2項を削除する憲法改正案と一緒に「憲法改正が否決されたら自衛隊は解散し、安保条約も破棄する」という法案を出してはどうだろうか。憲法改正が否決されたら、衆議院を解散して「国民の安全と憲法のどっちが大事か」と信を問う。これマジで支持したい。国民も本気で考えるだろう。それでも憲法が後生大事という国民が多いのなら、潔く滅びるしかない。 (柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163901132/dgcrcom-22/ >
佐々淳行「私を通りすぎた政治家たち」


●マラソン続き。コースはつまんない。景色の変わらない都心部での折り返しばかり(川岸より景色が変わって良いとは教わった)。さっきここ走ったよね? と。そのおかげで高低差が少なくて済むのだが。

走っているその遠い先に、左右に走っている人たちが目に入ってきて、折り返しだ〜と喜んで曲がるが、折り返し地点は見えない。ずっとずっと先だったり、そこから三度ほど曲がったところだったり。この「折り返し地点が近いと思っていたのに」は、心が折れやすい(笑)。

名古屋ウィメンズは、同じ道を二回走ることになっていて、20kmを越えると、反対車線には常に人がいる状態。こちらの走ったり歩いたりと違う、ガッツリ走る人たちがたくさん。

この「クネクネコース二度走り」は応援する側にとっては移動が少なくていいらしい。20km付近にいれば、25km、35kmでも同じところを走るから。

折り返してしばらく行くと、反対車線に収容バスがトロトロと走ってくるのが見えた。続く。 (hammer.mule)