ところのほんとのところ[118]本物の若手音楽家へのメッセージ/所 幸則 Tokoro Yukinori

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Oくん、あなたは感覚も鋭いし、技量も確かなんだろうし(僕には技量は判断できないからこう書いた)、幅も広いと思います。「ESPACE KUU 空」での、Oくんの一曲目と二曲目は、Oくんの演奏としては聞いたことがないタイプだったけど、とてもよかった。そして、最後の演奏は飛び抜けてよかった。僕には「ザ・Oの曲」と思いました。これが作れるなら、もっともっと先に行けると思いました。

いい曲は作れるが、どうやっても自分の曲は作れない人がほとんどだと思う。自分の曲が作れる人は、天から何かもらった人だと思うから。僕は門外漢だし、この言葉には論理性は、ほぼないのですが。

僕は高一の頃から、論理的とか合理的とかいう脳の部分をあまり使わないように意識してきました。僕は十代で、得意なところを押さえつけて勝負することに決めて、感覚を磨くことに三十年費やしてきた人です。

しかし結果は、論理的に写真を考え実験を繰り返し、新しいといわれる作品を生み出してきた。写真のあらゆる技術の理論は僕の手の内にある。ただし、実行はほぼ人の手を借り、指示通りやってもらうようにしていた。




技術の虜になるのが目に見えるようでいやだったからです。実際、印画紙を自分で作ったり、それをプリントするために一か月近く、太陽も見ることなく暗室にこもった頃もある。

理論系の脳をなんとか芸術家脳に持っていく。それを維持するために、できるだけ記憶的なものに脳を使わず、芸術家脳を維持しようとしている。これは結構大変なことなんだ。何かの参考になれば、と思って書きました。

僕が本物かもしれないと思って、本物じゃなくなった人は7〜8%ほど、それもほとんどがやるべきことに集中できない環境におかれたり、家族の状況が人として、夫として、親として、息子として、放っておけない事態に巻こまれたり、ということが原因です。

まあ、僕は人である前に写真家である。しかし、僕の目指すその境地には全然達してないのですが。母や父や子供や元妻たちを切れないところがね。

Oくんはまだぼくより二十年は多く時間があることが羨ましいし、嫉妬もします。どう生きるか、よく考えてね。人生は思ったより短いよ。また飲みたいね。



さて、7月18日(土)に「ESPACE KUU 空」で16時から演奏する福原寛さんは、紛れもなく天才だ。

たまたま友達の頼みで、ちょっと覗きに行って撮影をしたことがある。川崎大師で少しだけ聴こえてきた笛の音で背中がゾクッとした。それが縁でニューヨークまで彼を撮りに行った。

その時はいろんな縛りが多くて、撮影も満足にできなかったし、ゆっくり演奏も聞けなかった。その後、日本で唯一の国宝扱いをうけている庭、栗林公園の掬月亭で彼を撮る機会に恵まれた。その時に彼が吹いた笛の音で、掬月亭は江戸時代になってしまった。

よく噂話で人間国宝になる笛吹師の福原寛。彼が「アインシュタインロマンス」に合わせて笛を吹く。僕の個展でしか聴けないものです。是非、聴きに来てください。

・PARADOX PROGRAM 音楽家たちとの対話3
< http://taisho-kuu.tokyo/coming-soon/ >

「PARADOX TIME」という哲学的な命題に対し、福原流笛方の福原寛氏をゲストに招いて、写真家・所幸則氏とともにアプローチしていく試みです。「アートの読み解き」をめざすべく、「ONE SECOND」「アインシュタインロマンス」の作品映像にあわせて、横笛を演奏します。この挑戦に重要な役割を担うオーディエンスとして、ぜひ皆様お集まりください。

日時:7月18日(土)16:00〜17:00
ゲスト:福原寛氏(福原流笛方)
参加費:無料
会場:ESPACE KUU 空(エスパス・クウ)
大正大学5号館一階( 東京都豊島区西巣鴨3-20-1)

◎福原 寛 | Kan FUKUHARA

福原流笛方 四世宗家 寶山左衛門師(六代目福原百之助 人間国宝)に手ほどきより師事。1990年東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。1992年同大学院修士課程を修了する。歌舞伎や日本舞踊会などの古典を中心とした演奏活動のほか、NHK古典芸能鑑賞会、国立劇場主催公演などの企画公演に出演、また能楽と歌舞伎囃子の融合を目指す三響会にも初回から出演。

他ジャンルの演奏家(インドバンスリーの巨匠ハリプラサード・チャウラスィアー氏、サムルノリの金徳珠氏、オイリュトミーの笠井叡氏など)や、語りや朗読とのコラボレーションなど様々な演奏表現にも積極的に参加。

1999年第2回ジョイントリサイタル「笛と唄と」にて名古屋市民芸術祭審査員特別賞受賞。2004年アテネオリンピック・シンクロナイズドスイミング日本チームテーマ曲の演奏。2005〜2006年十八代目中村勘三郎襲名披露興行に出演。その後、六代目中村勘九郎襲名披露公演や四代目市川猿之助襲名披露公演等に出演 横笛「苑の会」主宰


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >