晴耕雨読[15]知られざるコミケの専門書の世界
── 福間晴耕 ──

投稿:  著者:



コミケット(通称コミケ)と聞いてどんなイメージを持つだろうか。

多くの人はアニメ・漫画の設定やキャラを使った、いわゆる「二次創作」の薄い漫画の本やコスプレーヤーだろうか。

あるいは、一昔前にメディアが批判的に報道したせいで、ネガティブな印象を持っている人もいるかもしれない。

だが、意外にもコミケは書店にも売られていないような、特定の分野に特化した専門書を手に入れることの出来る数少ない機会でもあるのだ。

例えば、デザインで言えば現役のグラフィックデザイナーのゆず家さんが出している「書体の研究」という本は、様々なアニメ・漫画・ライトノベルで使われているフォントを例に上げながら、どのような書体がどんな意図で使われているかを詳細に解説した内容で、ロゴデザインやグラフィックデザインの教本としても素晴らしい内容の良書だ
< http://yuzuya.style.coocan.jp/blog/
>




また、AEP PROJECTというグループでは、多くのメンバーが様々なグラフィックソフトの解説本やAEのプラグインなどを配布している。
< http://ae-users.com/jp/
>

プログラムや工学分野に関しても同様に様々な本が出ている。例えばAndroidの実践プログラミング講座とか、レーザープロジェクターや学習リモコンの自作方法だとかバラエティ豊かだが、こちらは自分の専門ではないので紹介している記事のリンクに留めておこう。
< http://codezine.jp/article/detail/8417
>

もちろん、膨大なマニアのいるミリタリーや鉄道などの、比較的メジャーなジャンルは言うまでもない。これらは一般書籍でも様々な本が出ているとはいえ、米軍のスナイパー向け教本を翻訳したものや、DEW指向性エネルギー兵器に関する本など、とても商業誌では成り立たないようなニッチなジャンルでも恐ろしく詳しい本があるのが、コミケの良いところなのである。

更に、軍事に限らずジャンルに関しても同じことが言える。市場が見込めない特定の狭いジャンルであっても様々な本があるのがコミケなのだ。

例えば、自分の持っている本で言えば、中世ヨーロッパの料理を再現したレシピ集や、現役の薬剤師の書いた漢方薬に使われる植物図鑑や具体的な栽培法の本、更には膨大なオスマントルコ語の資料を元に書かれたクリミア汗国の歴史や社会について書かれた本などもあって驚かされる。

最後に、自分の興味のあるジャンルではあるが、こんなニッチな本があるというまとめも貼っておくので参考にしてほしい。
< http://togetter.com/li/858001
>

もちろん、すべての本が自費出版なので他で入手することは難しいが、ある程度有名な本は最近では通販をやっている所もあるので、興味があれば探してみるのもいいだろう。

また、必ず手に入れるという覚悟がないのなら、比較的混雑が緩和されている午後から会場に入って見て回るのも良いかもしれない。

初めて会場に行くのなら、ちょっと覗くだけでも、事前に必ずカタログ(大手書店やアニメショップの他、Amazonなどでも購入出来る他、今はオンラインカタログもある)を購入して目を通しておくのをお勧めしたい。

なにせ総参加者50万人以上、本を出している出展サークル数3万5千、そしてひとつのサークルが複数の本を出しているので、この何倍もの種類の本が存在するのだ。

そこを下調べもなしに行っても、お目当ての本どころか、どこに何があるのか見当もつかないのは目に見えている。

今回紹介したのは膨大なコミケのジャンルのごく一部ではあるが、コミケの知られざる一面についての参考になれば幸いである。


【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
< http://fukuma.way-nifty.com/
>

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったのでインテリアを見たりするのも好きかもしれない。