ところのほんとのところ[120]ココいただき!とは言ってても……/所 幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,600文字)


最近、オリンピックのエンブレムの問題で、あるデザイナーに関する記事を見ない日はない。

[ところ]は最初にエンブレムを見たときに、なんだかつまらないデザインだなぁという印象だけだったが、それがベルギーの劇場の盗用ではないかという話になり、そのベルギーの劇場はなんと王立だったということが報じられた。

あるデザイナーは弁明のプレゼンテーションをして、それを見た瞬間はそういうこともあるのかなぁと、いったんは思わされた。だが、そのあとある企業のトートバッグを盗用だと認めてから雲行きは怪しくなった。

だけど、それとこの件は別の話だなあというのが[ところ]の感想。

企業に頼まれ商品を売るためのポスターを作ったり、商品開発段階でのデザイン案を作ったり、どれもデザイナーの仕事だ。元々人がデザインして作ったフォントを選んで仕事をする人でしょう。

[ところ]は超一流企業とも少なからず仕事をしてきたが、彼らとの会話から、このネタ使えるなあとか、これパクれるとか、そんな言葉がよく聞こえてきたのを覚えている。




しかしその頃は、インスピレーションを得たという意味で使ってる人もいたし、じっさい学生の写真作品のアイデアをそのままで、超一流のプロ集団(カメラマン、スタイリスト、ヘアーメークアーティスト)の力を借りて、元の100倍良くして大企業の広告に使用している教授の姿なども見てきた。

それでも遥かに良くなってるから、学生の僕らはアイデアを利用されてることを怒ってはいなかったし、逆に自分たちのアイデアがそこまで良いものになることに夢を感じたし自信もついた。

今回の件で、そのデザイナーの仕事をいろいろ見せられる(SNS等で強制的に目に入る)ことになって、仕方なくつきあっていたが、そういった元のアイデアを、まったく違うレベルに引き上げたりしているように感じるものは、残念ながらなかった。

[ところ]が知っているような、50代〜60代のデザイナーは違ったと思う。つまらないけどおもしろい切り口をしたものを見つけたとき、僕ならこう展開させて面白いもの、かっこいいものにして行く、という人が多かった。

ココいただき! とは言ってても、やってることは噂の彼とは明らかに違ったのだ。

それは、商業広告の世界が予算を失い、魅力を失い、優秀な人材が他に流れていったという事情もあるのだろうし、企業が予算削減ばかり考えるようになり、噂の彼のような考え方で、安易で素早くお手軽にネットで探して持って来る便利なデザイナーをスターのようにもてはやし、作り上げて行ったのだと思う。

そして、二年前に銀座で開かれた20世紀モダン・タイポグラフィの巨人ヤン・チヒョルトの展覧会の旗やポスターにあるビジュアルのほうが、噂の彼の原案だという話も出てきた。

だからといって、最終案のデザインに似ているベルギーの劇場が黙っているはずもない。そういうものを真似て提出するだけの人だという評価が、より鮮明になっただけだ。

そして、広告写真家も今同じような状況に置かれているんじゃないだろうか。[ところ]が2006年に決別した世界だから、細かい変遷はそんなによくはわからないけれども。

写真を盗用したらあまりにすぐわかってしまうから、そこまでは行っていないかもしれないが、例えば2010年に上海のギャラリーで開催された[ところ]の個展「上海1秒」のメインビジュアルは、まったく知らない、縁もゆかりもない人に使われていました。

この人、N◯Tの「ド◯モ国際事業部担当部長」だったらしいことがわかっちゃいました。著作権や個人情報に一番気をつけなきゃいけない、元日本の通信のフラッグシップだった会社の人だけにがっかりですよね。

すでに彼のブログの表紙は、上海の友人の指摘で直していますが、スクリーンショットを撮ってあるので、これが証拠。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/2015/09/01/images/001.jpg >


さて、ところの新作写真集が発売になったばかりですが、ここで買えます。
< http://blog.livedoor.jp/sokyusha/ >
< http://www.amazon.co.jp/dp/490412054X/ >

丸山直樹さんの感想は的を得てるなと思ったので、紹介します。

週末に写真家・所幸則氏の新しい写真集「アインシュタインロマン」を手にいれました。ファウンディングでも応援していたので、とても楽しみに期待していました。前回の「ワンセコンドSHIBUYA」に比べ、サイズが大きく迫力が凄いです。

内容ですが新幹線に乗った写真家が、秒速83.333mの高速移動体となり撮影しています。見慣れた景色が、高速移動体の視点で変容していく様がとても新鮮で、驚きを伴った感動があります。それに対して遠くの変容しない景色、神々しい富士との対比が従来の風景写真とは全く異なる、新しい美しさを見せてくれます。

今回の作品の中で最も心に残ったのは、高速移動体の視点で造形が変容し、見たことも無い造形もしくは痕跡のみが撮影された作品群です。

表現出来る言葉が上手く選択出来ないのですが感動と表裏一体、いい意味のぞくっとする感覚があります。

思ったのは、統一理論の候補である超ひも理論でいう十次元の普段見えていない次元の片鱗が、この新しい芸術写真表現で我々の前に現れたのではないか。この写真集は、芸術写真のみならず実証物理学の写真集でもあると感じました。

この様な新しい世界に導いてくれる写真家は、揺るぎない孤高の視点とタイトルにもある、ピュアなロマンスを持つ方だろうと思いました。


●PARADOX ─ TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険 ─
Yukinori TOKORO 所幸則写真展
会期:2015年7月1日(水)〜 9月25日(金)10:00〜19:00 入場無料
会場:ESPACE KUU 空(エスパス・クウ)東京都豊島区西巣鴨3-20-1 大正大学5号館一階
< http://taisho-kuu.tokyo/ >


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >