Otakuワールドへようこそ![217]行列のできるセーラー服おじさん・後編/GrowHair

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アキレスが亀に追いつけないという論理が破綻しているのと同様、ごくふつうのおっさんが変な格好をして街を歩いていると、テレビ局からメールが来て、人気番組に出演させてもらえるなんてことが起きるわけがない、ゆえにそれは起きない、という論理が破綻していることは分かっていた。

特に、スタジオ収録がすでに終わっていて、放送予定日まであと二日に迫っている段階においては。放送されないとしたら、たとえば、天変地異や政変が起きて、番組が臨時ニュースに食いつぶされてお蔵入りになってしまうという事態がありうるけれども。

私の映像が放送されるはずがない、ゆえに大事件が起きるに違いない、という論理は決定的に間違っている。その論理的誤りは、ベイズの統計学における「事前確率」、「事後確率」という概念を持ち出すことにより、明快に指摘することができる。

ごく簡単にいうと、仮に、「変な格好をしたおっさんがテレビに出してもらえる」確率が非常に低いというのが正しいとして、それは「収録される」に至るまでの確率が低いのであって、「収録を完了した」という事実が確定した後において、「放送される」に至るまでの確率は、それほど低くはないかもしれない、ということである。

……そんなことを述べるつもりではなかった。今回は前回の続きである。





●前回までのあらすじ

夏休みを挟んでいるので、前回は二週間前ではなく、一か月以上前の7月31日(金)である。だいぶ間が空いたので、簡単に振り返っておこう。

日テレ『行列のできる法律相談所』の番組制作担当の方から、「突然のご連絡、失礼致します」とメールが来たのが6月22日(月)のこと、原宿のラフォーレ前とウチの近くの行きつけの居酒屋で収録されたのが7月5日(日)のこと、スタジオで収録されたのが7月12日(日)のことであった。

番組の次回予告に私の姿が映ったのが8月26日(日)で、その翌週は番組が休みの日だったので、放送予定日は8月2日(日)であった。その二日前が、前回のこのコラムの配信日だったというわけである。

テレビの企画は変更になったり流れたりすることが多いので、どうせこれも最後はボツだ、と自分に対して唱え続けることで、緊張を緩和していた。収録がすべて終わり、もはやこっちから手出しができない段階に来て、なんだかにわかに緊張が高まってきた。これ、やっぱ放送されちゃうんじゃないの? 一千万人ぐらいに見られたりするのかな? やばい、有名になっちゃうぞ。

みなさんご存知のように、その翌日、桜島が大噴火を起こし、テレビ東京が平然とアニメを流し続ける以外、すべての局のすべての番組が現場からの実況中継に切り替わり、『行列』も当然のごとく流れた。

……ということはなく。

●穏やかな夜だった

放送までの二日間、もし一人で過ごしていたら、空気を入れすぎた風船が破裂するかのごとく、緊張のあまり精神が内部からパン! となっていたかもしれない。

幸い、土日は二日続きのイベントがあった。『東京アイドルフェスティバル2015』。お台場のフジテレビの建物やその周辺に設けられた八か所のステージで同時進行するアイドルイベント。アイドルヲタのO友氏が高田馬場駅から車に乗せていってくれた。

会場では、写真を撮らせてくださいと私に近づいてくる来場者がけっこう多いて、そのたびごとに『行列』の宣伝をしておいた。フジテレビのお膝元で日テレの番組の宣伝をすることに、多少のばつの悪さを感じつつ。

芸能方面に極端に疎い私は、あの回の出演者の中で、以前から知っていたのは徳光和夫さんだけであった。徳光さんと一緒にスタジオ収録したことを自慢すると、たいてい「ふーん」ぐらいの反応であった。O友氏の入れ知恵により、亀梨和也さんに切り替えたら「わー、すごーい!」という反応がほとんどであった。そういうもん?

夜になり、帰り道の途中で、テレビの備わったO友氏の車の中で番組を見る。新宿通りの四谷三丁目駅付近に停める。日曜の夜のオフィス街は歩く人がほとんどいなくて、不気味なくらい静まりかえっている。道幅の広い通りだが、めったに車が通らない。

穏やかな夜だった。天変地異や政変など、起きそうな気配は微塵もない。日テレでは『世界の果てまでイッテQ!』をやっている。落ち着き感のある番組で、この後に私が騒々しく登場しそうな気配がちっともしない。けど、もはや避けられないんだろうなぁ。

私は持参したパソコンを使ってツイッターに感想などを書き込み、さらに、収録時のエピソードを語ったりするのをO友氏がケータイで捉えて、リアルタイムでツイキャスに流すという体制。

テレビを見ながらネットで動画を見る人なんていますかいな、と思ったら、最近はそれがふつうのことになってきているらしい。せわしなくて頭がどうにかなりそうな気がするけど、みんな器用だね。

●編集でどれだけ残るかが気がかりだった

スタジオ収録は三時間に及んだ。途中に15分間ほどの休憩をはさんだ以外は、ずっとカメラが回りっぱなし。台詞を噛もうが、会話が台本から大きく逸れていこうが、戻ってやりなおすことはほとんどなく、そのまま進行していく。公開収録で、30人ほどが見ている。なぜかほぼ全員が女性。

この回のテーマは「ネットで話題になっているあの人に会いたい」であった。四組のゲストがスタジオに呼ばれる。トップバッターは私。

外で収録してきた映像が流れ、雛壇に座るコメンテーターたちが感想を述べ合う。それから本人登場となり、呼んでくれたホラン千秋さんと並んで立ち、質問に答えたりするという流れ。

台本はそうとう分厚いものが用意されていたが、私には見せてもらえず、場の流れにしたがって、聞かれたらそのつど、思ったことを答えてください、とだけ、口頭で指示されていた。

無理に面白いことを言おうとしなくていいですからね、と念を押された。普通に受け答えする中で、その人となりが自然ににじみ出るのが一番面白いんです、と。TBSテレビ『有吉ジャポン』のときも同様のことを言われた気がする。

素人の場合、面白いことを言って人気を稼ぎ、あわよくば次の出演機会につなげようと変に欲を出してがんばりすぎちゃって、かえってスベりまくって場の空気をおかしくしちゃうってことがよくあるのかも。

トップバッターが私なら、それに続くのは、キャンディ・ミルキィさんとか、タワシおじさんとか、レオタードおじさんとか、帽子の宮間英次郎氏とか、ネットをにぎわすキワモノ的な人たちが続々登場なのかと思いきや、その予想をさらっとくじくのが、人気番組の構成のうまさ。見る人が多様なら、出す人も多様で、幅広いジャンルから呼んできている。

後の人たちは、ちゃんとした人ばかりで、私が出ているのが恥かしいくらい。二番手は、読売ジャイアンツのマイコラス投手にともなって、アメリカから来日した妻のローレンさん。美人であることが話題になっている。

番組始まりの時点では、コメンテーター席に空席が二つあって、そこを私とローレンさんが順々に埋める。つまり、番組の最後まで出突っ張りにしてくれたのである。

これは、局にとってもそうとう思い切ったことだったと思う。生放送ではないので、不用意な発言はカットできるとはいえ、全体にわたって発言がまともでなかったり、場の空気を壊しまくりだったりした場合、番組そのものがひどい出来になりかねない。

事前に制作スタッフから私に来たメールで、英語で会話してくれませんか、と聞かれたが、私の英語はデキる人からみればインチキなのがすぐにバレてしまうほど拙いものなので、公共の電波に乗せるのはかんべんしてください、とお断りした。それは了承されたはずだった。

にもかかわらず、司会の後藤輝基氏は、こっちへ振ってきた。まあ、その場では、実は私もちょっとしゃべってみたいかな、という気分になっていた。軽い冗談を言ったらウケてくれて、いい気分であった。

三番手はチーズ職人。フランスでのコンテストで優勝したんだとか。フランス人だが、日本に住んでいることが話題になっている。私は、食べる機会が与えられるので、感想を述べてくださいと、事前に口頭で指示されていた。

ラストは、「ガッツ」というスポーツ。サッカーのPK合戦をフリスビーでやるようなゲーム。ものすごい勢いで揺れたり曲がったりしなが ら飛んでくるのを、軍手をはめた手で受け止める。片手でつかむルール。

法律が出てくるのは、最後にちょこっとだけ。相談事を寸劇にした映像を流し、雛壇のコメンテーターたちがああだこうだと素人意見を述べた後、四人の弁護士たちが、法的な立場からびしっと見解を述べる。

ここでも後藤氏は私に振ってきてくれた。思うところを述べたのだが、弁護士が発言するはずだったことを横取りしちゃったようで、本村健太郎氏は「セーラー服おじさんの言うとおりですよ」と言うしかなかった。

三時間の収録で、私はそうとう発言した。回数も長さも。コメンテーターのどなたかから「よくしゃべるねぇ」と言われた気がする。はい、よくしゃべりました。

しかし、後で振り返ると、電波に乗せられない人となりがずいぶん出てしまった気がする。まわりが反応に困って石になるような形で、空気を変えてしまったというか。場の温度を冷却してしまったというか。

だから、いっぱい発言した割には、おそらくほとんどが編集でカットされて、54分間の放送では大して残らないのではあるまいか。どれだけ残るかが、私にとって、いちばんの気がかりであった。

●随所随所に生き残った私の発言

ふたを開けてみると、私の発言はかなり多く拾われ、全体を通して存在感をばんばん放射するよう編集がなされていた。非常にありがたいことである。人気番組に出演すること自体にはビビりまくりだったのに、いざ放送されるとなると、たくさん映ってたほうが嬉しいという、妙に相反するオトメゴコロである。

しかしながら、ひとつひとつの長ったらしい発言は、ことごとく、キュッ、キュッ、と縮められていた。編集において、尺を縮めるのにいかに苦心したかがしのばれる。

カットされたのが非常にもったいない場面も多々あった。第一に、居酒屋でのマスターへのインタビューが一秒も残らなかったのは、私にどうこうできることではなかったとはいえ、申し訳ない気持ちである。

新井薬師前の「ぢどり亭」は、「鶏刺し二種盛り」が絶品で、かなりの頻度で行く店だが、収録の際、カメラがマスターにも向けられた。「あの姿で来店したときはびっくりしました」と答えてくれている。かなり緊張しているようであった。

スタジオ収録の際に流された映像では、たしかにその場面が映っていた。なので、放送前にお店に行ったとき「マスターも映りますよ」と予告してしまっていたのである。ところが本放送では全カット。あ゛ー。

ローレンさんとの英語によるやりとりの縮められ方には、若干不満が残る。"You are a little bit more beautiful than I am!"、つまり「あなたは私よりもほんの少しだけきれいですね!」と言ったのである。ローレンさんは、ひとしきり笑ってから "Well, thank you!"、つまり、「あ、どうもありがとう」と言っている。

ところが放送では、私の発言の前半と、ローレンさんが笑ったところがカットされている。お世辞を言って、お礼を述べるだけの普通の会話になってしまっている。おいおい、冗談が通じて笑ってもらえた場面だったのにー。

法律相談で意見を求められたとき、私はマシンガントークで長々とまくしたてた。口約束も契約とみなされうること、奥さんが口外しないとの約束を破ったことは債務不履行であり、それによって実害をこうむっているわけだから、損害賠償責任を負うべきものであること、旦那さんのお怒りはごもっともであり、賠償金を取ることができると考えること。

私に台詞を横取りされた弁護士の本村健太郎氏が「セーラー服おじさんの言うとおりですよ」と言った後、メガネのフレームが同じ赤であることを誰かが指摘し、「波長が合いますね」みたいな話になって、お互いに自分のフレームに手をかけてにっこりしあうという場面が続いたが、カットされていたのは惜しかった。

その後の北村晴男弁護士との激論も、そうとう面白かった。北村氏は、賠償金を払ってもらうのは無理であろうという立場。法律では口約束も契約とみなしうるとはいえ、去り際についでにさらっと言ったことまで契約とみなすのは無理という意見であった。それに対して、本村弁護士は「ついでじゃなーーーい!!!」と熱く反論する。見応えあるバトルであった。

逆に、私が紹介されるコーナーでは、問題発言や問題行動がやけに多くて、カットされて助かった場面もある。パンツは女性用かどうかを聞かれて、実際に見せちゃったとか。観覧者たちから悲鳴があがり、空気が凍った。私は「聞かれたから答えただけじゃん」と、聞いた人のせいにしてよけいに空気が凍った。

脚がきれいですね、と言われたとき、スネ毛は剃ってます、と答えた流れで、「ついでにこの辺まで剃っちゃって、パイパンなんです」と言ってしまった。徳光さんから「正確にはそれはパイパンとは言わない」と訂正が入った。

生放送だったら、放送事故レベルの「やらかし」だったかもしれない。

●舞台裏のトラブル

番組出演者は、放送では映らない内側の模様を必然的に見るわけだから、どんなトラブルが発生したかも、いやおうなく見えてしまう。

美人で評判のマイコラスの妻ローレンさんは、『行列』が日本で初のテレビ出演となる。が、本番前の待ち時間にすでにムードがおかしなことになっていた。

一階に収録スタジオがあり、二階が控え室になっている。ローレンさんの控え室は、私のすぐ隣りであった。トイレに行こうと控え室を出ると、お隣りの前の廊下には四〜五人の人が立って、何やら深刻そうに相談している。

単純な打合せではなく、困った事態に陥っているムードが伝わってくる。「こんなことになってしまって、どうもすみません」と誰かが誰かに謝っている。

本番収録では、なんらかの手違いがあったことが明白な、気まずい場面があった。司会者が「実はダンナさんにもスタジオにお越しいただいています」と言い、「じゃあ、登場していただきましょうか、どうぞ〜」と言いかけたところでスタッフから制止の合図が飛んできて「え? 出ないの?」。

ローレンさんは、複数の芸能事務所間で争奪戦があり、外国人タレント専門の「稲川素子事務所」が獲得したと報じられていた。この日起きたトラブルについては、放送に先立って 7月29日(水)、ウェブ版の『女性自身』が記事にしている。
< http://jisin.jp/news/2690/8808/ >

「巨人・マイコラス 話題の美人妻が『行列』収録で絶叫トラブル」というタイトル。ギャラでモメたという。バラエティ番組としては普通の拘束時間だし、局側は本来三万円のギャラを五万円に引き上げているし、事務所の取り分は控えめに20%と設定していたが、ローレン夫人は、どちらも「納得できない」と激怒したとのこと。

所属が決まったと報じられていた稲川素子事務所との間で、実はまだ契約が交わされてなく、この一件でご破算になったらしい。

控え室は、当然のことながら、関係者以外立ち入り禁止であるからして、ギャラでモメた一件について知りうるのは関係者しかいない。マスコミに情報リークしたのは、日テレか、稲川事務所か。記事には、「テレビ局関係者」とある。

局側はローレンさんに対して怒っていて、二度と出演させないだけでなく、他局にも出られないように評判を落としてやろうという魂胆なのかもしれない。

ネットで検索かけてみても、その後、ローレンさんが何かに出演したという情報は出てこず、どうやら芸能界入りは空振りに終わった模様。

●ツイッターのトレンド入りは予想通り

放送が始まってしばらくすると、ツイッターのトレンドに「セーラー服おじさん」が上がった。放送終了後もしばらく続いた。これは予想していた。TBSテレビ『有吉ジャポン』、NHK『Rの法則』のときも起きていたことなので。

ツイッター内検索をかけて発言を読むが、なにしろものすごい数で、掘っても掘っても続いていて、とてもじゃないが読みきれない。しかも、すごい勢いで、新しいのが上がってくる。

トレンド入りしているキーワードには、「北朝鮮」「IVAN」などもある。他局でサッカーの中継をしていて、日本の対戦相手が北朝鮮であった。『行列』に出演しているIVANさんは、亀梨さんと昔から飲み友達だったことを明かし、それが驚きをもって受け止められているってことらしい。

ツイキャスには累計で1,000人ほどが見にきてくれた。視聴者からの投げ銭次第で生放送の時間を延長でき、まだまだ続けられそうだったが、いい加減なところで打ち切った。

ほんとうに放送されちゃったよ。うん、いい夜だ。この放送をもって、何かが変化しただろうか。日曜の夜9時からの全国ネットの人気番組であるからして、子供も含めた家族で見てた、なんてことが、小さな田舎町にいたるまで、日本中で起きていたんだろうなぁ。

●その後の波紋

この番組の視聴率は15.6%であった。週間のベストテンに入りそうなくらい、いい数字である。この番組の最近の放送回の中でも最高だという。サッカーの対北朝鮮戦と張り合ってこの数字が取れたのは、けっこうすごいことらしい。

放送に先立って、いろいろな時間帯に番宣をずいぶん流してくれたらしい。そこには、亀梨さんも、ローレンさんも私も映っていた。視聴率獲得に誰が一番貢献したのかは分からない。けど、少なくとも私はマイナスに作用してはいなかったと思う。

私へのギャラはいくらだったのか。スタジオ収録のときに聞いてみたら、「その話は、後でメールでやりとりしましょう」と、その場では提示してもらえなかった。放送から二週間ほど経ってからだったか、源泉徴収した後の手取りが四万円になったという。

素人枠の相場はおそらく三万円であるから、多少色をつけてくれたってことらしい。「えー、そんなもん?」と感じられただろうか。はい、そんなもんです。事務所に所属している、ちゃんとした芸能人であれば、局と事務所との間で交渉して決めるので、数倍は高いはず。

素人は、局が出してあげている、というお客さん扱いであって、仕事とはみなされていないらしい。単発でたまたまテレビに出してもらえたぐらいのことで、調子に乗って、サラリーマンから芸能界に転向しようかなんて色気を出すと、おそらくひどい目にあう。

それなりの頻度で出演機会が来なかったら、芸能だけでは食っていけない。人気なんて、いつまで続くかわからない。おそらく収入は激減するであろう。舞い上がって変な気を起こさず、地道に定年まで会社にしがみつくぞ。

素人枠で出演して、ちょこちょこギャラをもらって、多少なりとも得したとはいえ、会社をクビになったりしたら元も子もない。私のA面活動については、総務と話し合ってきちんと線引きできている。

提示された三つの条件を守ってさえいれば、会社側から個人の活動に対して口を差し挟むことはできないとのこと。一見危なっかしそうなことをしている割には、けっこう安全運転なのだ。

今回の放送の後、上司や同僚の何人かが「見たよ」と言ってきた。その多くが「面白かった」と言ってくれた。上のほうからのお咎めはいっさいなかった。

放送の翌週8月9日(日)、ロケ地のひとつである原宿を再訪してみた。今までだと原宿から渋谷まで歩くのに 二時間程度を要していた。今回は、ホームから改札口にたどり着くまでに人だかりができてしまい、大変なことになった。

JR原宿駅の竹下口改札から竹下通りを明治通りまで抜け、明治通り沿いにラフォーレの前を通って、表参道から原宿駅に戻ってくるのに三時間かかった。

8月15日(土)に福島県の本宮に行ったら、町のお祭りであった。国道から車を締め出して、屋台が立ち並び、大勢の人でにぎわっている。予告なしに訪問した私は大歓迎を受け、終始、写真を撮られまくっていた。

3月8日(日)に行ったときは、二本松まで足をのばした際に、職質を受けた。今回の本宮では、二人組でパトロールする警察官に遭遇したが、にこにこの笑顔で軽く話しかけてきて、すぐ立ち去っていった。

8月11日(火)、伊東にある「アホとボケの楽園 (パラダイス)」に行くと、そこの社長さんがたいへん喜んでくれて、入場料をタダにしてくれた上に、みずからセーラームーンの衣装に着替えてきてくれた。
< http://maboroshi.pandora.nu/ >

帰る際、バス停で待っていると、通りすがりに車を止めて出てきて一緒に写真を撮っていく人が何人もいた。

8月29日(土)、兵庫県朝来(あさご)市和田山に行った。空き時間をつぶすため、JR播但線で寺前まで往復した。和田山も寺前も、いちおう特急列車が停車する駅ではあるが、あまり知られていない小さな町の駅である。両方で、三人ずつから写真撮影をリクエストされた。

この調子だと、日本全国津々浦々、どんなに小さな町に行ったとしても、私を知る人が何人かはいそうである。テレビの力、おそるべし。知名度が一段階上がったという感触を得た。

女装という概念はちっとも新しいものではないし、変な格好で街をうろつく人は、おそらく全国にたくさんいると思う。そういう人たちみんなにテレビ出演のオファーが来るわけではない。

なぜ私のところには来るようになったのか、そのへんの分析がまだぜんぜんできていない。たまたま、ってことでいいのかもしれないけど。

今後、出演機会に加速がつくのか? それもまったく見えない。


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/ >

O友氏ほか、私のリアルな姿を見てきた知り合い有志らが、YouTube チャンネルを開設してくれた。いろんな企画を立ててくれて、私をあっちゃこっちゃ引っ張りまわして動画を収録し、アップしてくれている。すでに七本の動画が上がっている。もしよかったら登録していただけるとうれしいです。
< http://www.youtube.com/channel/UCz0wPP5AWeHz2KJN9aP71RA >

テレビ東京『YOU は何しに日本へ?』の番組制作スタッフからメールが来た。日本から帰国しようとしている外国人を成田空港でつかまえて、滞在中に撮った写真のうちベストショットを見せてもらう企画を立てているという。

シンガポールの人が、アイドルのフェスで撮ったという私との2ショ写真を提示したという。それを番組で使わせてくれませんか、という依頼だった。どうぞどうぞ。シンガポールは6月に行っていて、イベントに出演したのが大手新聞の「The Straits Times」で取り上げられたりしているので、そこそこ知られた存在になっているかもしれません。放送は9月7日(月) 6:57pm〜8:00pmの予定だという。

夏休みを挟んで、職場が引越しした。建ったばっかりの25階建てのビルの23階へ。1988年に入社して、最初の六年間ほどを過ごした勤務地から、間に三つの勤務地を経て、20年ぶりに戻ってきた格好である。

会社も周辺もすっかり様変わりして、浦島太郎状態。かつて、行きがけに立ち寄って昼食用にパンを三つ買っていっていたお店はまだ存続していた。店主がちょっと風変りな人だったせいで陰では「偏屈パン」と呼ばれていたお店だが、いつもにぎわっていて、私も大好きなお店であった。

店主のじいさんはお客にいろいろ命令してくる。お金は決して手渡しせず、イライラした調子で「ここに置いて! ここ! ここ!」。店内で話をすると、唾が飛ぶからと怒られる。

けど、しばらくぶりに行ってもちゃんと覚えていてくれるし、立ち去り際には「行ってらっしゃい」と言ってくれる。いい人だ。

当時からまったく変わらぬ店構え。久しぶりに入ってみたら、店をやっているのは女性になっていた。あのじいさんはどうしてますか、と聞いたところ、「たぶん父です、13年前に亡くなりました」とのこと。

娘さんは、いろんな意味で苦労したらしい。あいさつしたりするのも気に入ったお客に対してだけだったという。たいへんでしたね。娘さんが受け継いだ今も店は繁盛していて、人々から愛されている。私もまた毎日行くようになった。