ところのほんとのところ[121]「アート県」で写真を教えて来たが/所幸則 Tokoro Yukinori

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僕は今新たな岐路に立っているのかな。

母が五、六年前から急激に体調が悪くなってきて、父が[ところ]が生まれて記憶にないほど必死な決意を持って、高松から渋谷にやってきたのはその頃。

渋谷の家を叩き売り状態で処分し、高松と渋谷の二重生活が始まった。




[ところ]は、高松では母の顔を見て話すことぐらいしかすることがないなと思っていたけれど、うまくプレゼンが通り、高松のシンボルというべき高層ビルの中でファインアートフォトの初歩を教えることになった。

香川県が「アート県」なんて言い出した時期だったので通ったのだろう。

写真に関しては受講生たちは、かなり真摯に取り組もうとしていたが、もともと引退後に写真を楽しもうという人たちや、きれいな故郷や貴重な行事を撮る大ベテランはたくさんいても、いわゆるアーティストとしての写真家は誰もいない……。

正確には、世界に誇る巨大産業としてのカメラメーカーが喜ぶタイプの、機材を沢山買ってくれる、自称写真家はたくさんいたりするけれども。フォトグラファーと呼べる人がほとんどいない。

少し教えてみれば、なかにはもういっぱしの写真家気取りのOLもいたりして、本当の文化度というのはなかなか上げられるものではないということを実感している[ところ]です。

もちろん、すごく一生懸命な人もいるし、マイペースで写真を楽しみ続けている方もいるし、そういう人にはなんとか適切な指導をしたいと思っています。

5月には母も亡くなり、あまりに広い実家には人のいい父ひとりとなって、時々[ところ]が顔を出したり、息子の小さな娘が来るので書道や算数を教えたりして寂しさを紛らわせている。

高松にいる理由の30%ぐらいはなくなったのかな。

[ところ]に真摯に教わりたいと思ってる人は意外と少なそうです。それを求めても得られない人も日本には沢山いるのに。何人の人が[ところ]に教わりたいと思っているのだろうか。

年間200万近い学費+居住費を払っても[ところ]が所属している大学に入学できる人もいれば、無理な人もいる。

香川に住んでいるというだけで、月3000円のプリント部屋がある。プリンターと消耗材は[ところ]の持ち出し、作品を見てと言われればきちんと見る。

それでも[ところ]の行動にむっとしてやーめた、といってやめていく人もいる。どれだけ贅沢なのか、岐阜や富山や新潟の人が[ところ]に作品を見て欲しい、意見を聞くだけでもいいと言いながら、その機会がなく断念している。どれだけありがたみがないんだろうか……。

安く与えられたものはもっと安くていいんじゃないか? とか、ああいう行動はなんかヤダ、だとかいい年齢の人が言うことなんだろうか?

県のお金で安くフォトラボKに入り、そのあとも月3000円でチャンスがある。そんな好条件でもお金がもったいないという。

kラバーズの理念に賛同して入ったはずなのに、いまから繁忙期だからやめる?毎回展示できるわけでもないんだから、他の仲間への援助とは考えられない?

[ところ]はこの土地の人にとって必要なんだろうか?

[ところ]は大学三年生の講義を受け持っているが、それが一年間に七回だけなのだ。学生だってお金持ちの子ばっかりじゃないんだ。バイトで必死な思いをしながら来ている子もいるんだ。

良くも悪くも災害もなく穏やかな気質で住みやすい県ではあるが、甘えてる人が多い。[ところ]に少し教わって上手くなって、もうそこそこ自分でやれると思ってる甘過ぎる人が多すぎるように思う。

田舎なら「あらうまいわねー」とか言われるんだろうけど、かなり幻滅してる[ところ]です。

香川の豊かな自然、美味しい食材、温暖な気候、知らなかった絶景。沢山いいところはあるんだけど、本格的な美大もないというのが[ところ]にとって一番の問題なのかもしれない。

そこで育った人には理解できないことが多いんだろうな、まったく発想が違うんだろう。とても残念……。

●PARADOX ─ TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険 ─
Yukinori TOKORO 所幸則写真展
会期:2015年7月1日(水)〜 9月25日(金)10:00〜19:00 入場無料
会場:ESPACE KUU 空(エスパス・クウ)
   東京都豊島区西巣鴨3-20-1 大正大学5号館一階
< http://taisho-kuu.tokyo/ >


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >