挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[11]試行錯誤を重ねてディズニー用のダンボールアート作品を制作/いわい ともひさ

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●過去最大の作品制作に挑戦

ディズニーからの依頼を受けて、映画のキャラクターをダンボールで制作することになりました。

映画館やショッピングモールに展示したときに、ある程度見栄えの良い大きさでなければいけなかったものの、厳格な指示などはなかったため、ざっくりと横幅180cmぐらいの大きさで作ることにしました。

これまで作ってきたものは、ほとんどが小さく軽いものでしたが、180cmという大きさになるとダンボール素材とはいえ、立派な構造物です。

そうなると、その構造物をどのように支えればよいのかという、仕組みから考えなくてはいけません。

テレビ局からの依頼に比べれば、時間には少し余裕があったものの、いきなり無計画に作り始めてしまうと大きな手戻りにつながる危険性があったため、手を動かす前に計画をたてる必要がありました。

最初に必要となるのは資料ですが、そこでいきなり困難が待ち構えていました。





●作品の資料を探しに博物館へ

ディズニーの担当さんに作品制作に必要な資料として、どのようなものをご提供いただけるのかを確認しました。しかし、参考になりそうなものはほとんど入手できないことがわかってきました。

ダンボールアートを制作するときはCGソフトで設計を行いますが、その際にもっとも役に立つのが「三面図」です。三面図は、ある対象を真上、真横、正面など三方向から見たときの正確な形状が描かれた図面です。

これがあれば、細かな部分はわからずとも、大まかな形は把握できるので比較的簡単に形を作っていけます。CG制作における設計図が三面図なのです。ところが、そのような資料はディズニーからは提供されませんでした。

結局、新しい映画の宣伝映像をインターネット上で繰り返し見たり、スクリーンショットを撮ったりして、最初の参考資料にしました。

今回の映画「プレーンズ2 ファイヤー&レスキュー」は、前作「ブレーンズ」の続編です。

今作では主役飛行機が消防士を目指すという内容になっていましたが、それにともない、前作では車輪だった足の部分が、今作では水上飛行機の仕様に変わっていました。

前作の資料はインターネット上でも多く見つかったものの、今作に関しては英語圏のウェブサイトでも情報がなかなか得られませんでした。

私が住んでいる岐阜県には「各務原航空宇宙博物館」という、飛行機や宇宙に関する資料が展示されている博物館があったため、飛行機そのものの構造についてより深く理解するために見学に行き、写真を撮ってきました。

このようにして集めた資料を参考にスケッチなどを手描きして、CG制作を進めて行きました。

●営業先にまで及んだテレビ局の取材

今回のダンボールアート制作は、ディズニー映画の宣伝用に使われるものでしたが、宣伝には様々な方法があります。

ダンボールアート制作の模様をテレビ放映するというのも宣伝の一環だったわけですが、自分の姿がテレビに映ることなど初めてでした。しかも、それが一か月がかりの密着取材などとは予想もしませんでした。

制作当初、資料収集に博物館まで足を運んだときや、パソコンで設計図を作っていたときにテレビカメラは入りませんでした。取材が本格化し始めたのは、ダンボールを切る作業を始めたときからでした。

私のダンボールアートはCGで形を作った後で、別のソフトを使って展開図に変換します。そのデータを使って、レーザーカッターという機械でダンボールを切っています。

レーザーカッターは10万円以下で入手できる安価なものから、数百万円以上する産業用のものまで種類は様々です。高価なものは処理速度も速く、レーザーの強さを設定して切る強さを変えられるなど、非常に高度な処理が可能です。

たまたま、自宅近くに高性能なレーザーカッターを所有しているものづくり支援施設があり、私はいつもそこでダンボールを切っています。手で切るよりも圧倒的に速く、正確な処理ができて大変重宝しています。

家族の同意が得られず、自宅での取材が不可となったこともあり、テレビ局の人達にはものづくり施設まで来ていただきました。

とまあ、このあたりまではよかったのですが、日中会社で働いている様子も取材させてはもらえないかとの相談があったときは、少々考えてしまいました。

この当時はまだ会社員で、日中は営業としてIT系企業に勤務していました。周りの人達が何事かと驚きますよね(笑)

結局、理解ある会社と取引先に事情を説明して、協力してもらえることになり
ました。取材当日、取引先の担当者は事情を理解していたものの、同僚の皆さんはあまり聞いていなかったようで、一体何が始まるのかという顔をしていました。

私が若く、社歴も短かったとしたら、そもそもテレビの取材というだけで動揺したかもしれませんし、取引先の協力を取り付けることも難しかったかもしれません。

しかし、年齢は40歳を過ぎており会社でも古参になっていて、取引先からも信頼してもらえていたため、協力を得るのはそれほど難しくはありませんでした。

●8割完成と思ってからが正念場だったダンボールアート制作

万事順調に進んでいたダンボールアート制作も納期が迫り、完成まで残すところ一〜二週間という段階になりました。

その時点では作品の全容が見えており、ほぼ完成と思えるような状況でした。ここまで来れば完成したも同然と思っていましたが、それはかなり甘い考えでした。

展示に際して作品をどのように自立させるか、細かな仕上げをどのように行うかというところが詰め切れておらず、作業し始めると予想外に時間がかかったのです。

繰り返しになりますが、当時は会社員だったので日中は仕事をしており、まともに時間が使えたのは週末の二日間と平日の深夜ぐらい。結果の見えている作業は効率良くできても、正解がわからない試行錯誤は考えているだけでもドンドン時間がなくなってしまいます。

結局、最後まで気を抜けない状況になりました。特に今回はあのディズニー作品の宣伝に使われる作品ですし、テレビ局の密着取材も入っているわけで責任重大です。

最後は自家用車に作品を積み込んで映画館まで運びましたが、もしも、事故でも起こしたらどうしよう、自分が注意していても追突されたらこれまでの苦労が水の泡だとか、ドキドキしながら車を運転していました。

次回は、ディズニー向けダンボールアート制作の最終編です!


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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今週の一言:年に数回、目がチカチカすることがあったので、気になって眼科にいったところ「頭痛」とのこと。頭は痛まず目だけに症状がでることがあるんだとか。眼球に異常はなかったものの、気を付けねばいかんですね〜