装飾山イバラ道[166]もやしの恩恵〈ブロッコリースプラウト〉
── 武田瑛夢 ──

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ブロッコリースプラウトを育て始めた。家で栽培できる野菜としては最も単純で、手軽に水耕栽培のできる野菜だ。見た目はかいわれ大根のようなものでブロッコリーの新芽だそう。

スプラウトがいわゆる「もやし」のことで、発芽した芽と茎の部分を食すものをさすらしい。あらゆる新芽は見た目がとても似ていて、ブロッコリーなのかルッコラなのかシソなのか、一目でわかる人は少ないと思う。

小学校の理科で種を植えて出て来たかわいい二葉のようなもの。ワサワサ生えてきたのを食べてしまうのだから、ちょっと残酷な気もするけれど。楽天で栽培キットが視野に入ってしまったので、見ていたら簡単そうで買ってしまったのだ。




私の今の段階はまだ一度も食べておらず、種から芽と根が出て来たぐらいだ。ブロッコリースプラウトの種と専用のキットを買ったので、失敗はしにくいらしいけれど、食べてもいないのにコラムを書き始めるのは少々早かったかな。

スーパーで買うと1パックが100円〜200円程度のものらしいけれど、キットを2セットとスプラウトの種を数種類買ったら2000円を越えてしまった。10回以上成功させないと元すら取れない計算だ。

容器は上下で二段になっていて下の段には水を入れて、上の段は均等な感覚で穴があいたスノコのようなトレイだ。上に種を撒いて水を種が水没しないスレスレに保つと良いらしい。キリフキを上からかけて水分を与える。

茶色い種から芽が出て、ある程度の長さに成長するまでは、光をあてないようにアルミ箔や箱の中にいれておく。最後の数日は日に当てて緑化するそうだ。

種の発芽率は高いらしく8割以上のようだ。実際に私の家のものでも、ほとんど芽か根が出ているみたい。

穴空きトレイの穴より種が小さい場合は、キッチンペーパーをしいた方が良いというネットの情報で、最初はしいていたのだけれど、どう考えても根が下に出て行かないと気がついたので、トレイにバラバラと置き換えた。

まだ芽が出たばっかりの種ちゃんたちを、プラスチックトレイにばらばらと落とすのはとても罪悪感があった。次回は、最初からトレイにダイレクトに種を撒こうと思う。

・ブロッコリースプラウト3日目
http://eimu.com/dgcol/broko

上の写真は種を撒いて3日目の状態を上から見たところ。水をキリフキでかける時はアルミ箔をはずす。黄色い二葉が出て白い綿毛の根もある。

下の段は写真では見えていないけれど、半分ほどの穴から下に根がのびていていい感じだ。下の穴に向かわなかった根は上でくるんくるんしているけれど、これでいいのかどうかはわからない。雑菌がつくのを防ぐために手では触らない方がいいらしい。

●なぜブロッコリースプラウトか

家で料理をするようになって、食べるならなるべく体に良い野菜がいいなとは思っていた。中でもアブラナ科の野菜はとても良いらしく、がん予防効果でも有名で医者でも食べるようにしている人が多いと聞く。高血圧が心配の夫にも
良いらしい。アブラナ科ですぐ思いつくのは菜の花だ。春に鰹節をかけた菜花のおひたしは最高。

そしてブロッコリーもアブラナ科の野菜。茎ブロッコリーと呼ばれる長いブロッコリーが「スティックセニョール」などと呼ばれて売られていたので買ったことがあるけれど、これを見れば確かに菜の花の仲間だと感じることができる。

歯ごたえのある菜の花のようで、ブロッコリーのコリコリ感もあって美味しかった。アブラナ科の野菜は火の通し加減がうまくいくとすごく美味しいけれど、茹ですぎたりするととても残念だ。私は少し芯を感じる程度の固めが好きだ。

ブロッコリーを白くしただけのようなカリフラワーもアブラナ科の野菜。昔ためしてガッテンでいろいろと生で食べる方法が出ていたのでやってみたけれど、カリフラワーはやっぱり素直にカレー炒めが美味しいと思う。

食感や甘さが活かされるし、色の白さのおかげでカレーらしい黄色の料理になる。昔からある料理にはそれなりの理由があるのだ。

野菜の王様のキャベツもアブラナ科だ。そう考えると、あえて意識せずともアブラナ科の野菜はけっこう食べられているのかもしれない。

どのアブラナ科の野菜にも合うと思える調理方法は、レンチン&マヨネーズだけれど、それでは調理とも言えないので私はペペロンチーノ炒めをお勧めする。

ニンニクととうがらしと塩があれば、あとはお好きな油で炒めるだけだ。アンチョビやしらすなどの旨味要素もちょっと入れれば最高。

ブロッコリーもやしであるブロッコリースプラウトは、生で食べた方がいいらしい。普通のブロッコリーにも含まれている「スルフォラファン」という体にいい成分がブロッコリーの20倍も含まれているんだそう。

でも、ぶつ切りをばくばく食べられるブロッコリーに比べて、小さな新芽を食べるブロッコリースプラウトは、そんなにグラム量を食べられないような気もする。でもまぁ生で食べられて20倍ならお得かな(と思うことにする)。

●命の数え方

家の植物は他に鉢から水栽培に切り替えたモンステラと、鉢に残ったまま生き続けているモンステラがいる。元はひとつだったのを切り分けたのだから兄弟と言えるのだろうか。植物の家族構成ってちょっとよくわからない。

モンステラの新葉が出るたびに、新しい弟や妹だと思って可愛く眺めているけれど、下の方の半分茶色くなった古びた葉っぱは別れを告げて切らせてもらう。

私の中では葉っぱ一枚がひとりぶんの扱いなのだ。そのまま水入りのコップにさしておけば生きているのだから一単位だと思える。それは正しいのだろうか。

ブロッコリーは種一個がひとりかな。そうするとこれだけの量をイッキに頂くのが申し訳なくなる。いくら丼を普通に食べているくせにだ。スプラウトの栽培をしていると、引っこ抜かれて食べられるって何かのゲームのキャラクターみたいでけなげに思える。

種という状態は考えるととても不思議だ。紙袋の中の茶色い種は一見ドライに見えるけれどしっかり生きていて、私が水を与えたきっかけで成長が始まる。

一度成長が始まるとその流れは止められない。スプラウトは芽の状態で食べてしまうので、その後を見ることはないけれど他の人のブログではそのまま育て続けた人もいる。

結局、もやしの状態で食べることに調整されている種は、そのまま育ててもあまり大きく育たないらしいのだ。なるほどー。とにかく後数日間育てて食べてみなければと思う。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


10月に夫の母が亡くなった。前回のコラムは母のいない夫の実家に写真を頂きに行った時のものだ。今年は病院へお見舞いに通う日々が続き、それまでお正月やお墓参りぐらいでしか長く話すことがなかった母と話す時間を多く持てた。

ここでコラムを書くようになったおかげで、文字にしておくことの価値はわかっていたので、自分のための日記としてたくさん記してきた。しかし、やはりまだ記事に書くような時間は経っておらず、書く技量も足りているのかわからない。時間が経って誰かのためにも、自分のためにもなりそうだと感じられたら書きたいと思う。