[4019] 3Dプリンターで何がしたいねん? どうしたいねん?

投稿:  著者:  読了時間:15分(本文:約7,300文字)



《野菜の名前を10こ、制限時間内に言いなさい》

■ショート・ストーリーのKUNI[184]
 患者が多すぎる
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[70]
 3Dプリンターで何がしたいねん? どうしたいねん?
 織田隆治





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■ショート・ストーリーのKUNI[184]
患者が多すぎる

ヤマシタクニコ
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20151119140200.html
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ここはとある田舎の診療所。かなりのご高齢と思われるお医者さんがひとりで切り盛りしているという小さな診療所です。今日も患者たちがやってきました。

「はい〜、今日はどないしはりました」

「はあ、私、なんやしらん頭が痛くて痛くて」

「ほう。頭が痛い。いつからですか」

「さー、いつからですやろか……朝起きたときはどないもなかったんです。朝ごはん食べてるときもだいじょうぶでした。そのあと、歯をみがいて、テレビでニュース見てるときも普段と何の変わりもありませんでした」

「それから」

「テレビを見てから散歩でもしようと思い、ネコにカギをかけてドアにえさをやって出かけました」

「反対や」

「歩きだしてしばらくすると、向こうから来た男にいきなり頭をどつかれました。それからなぜか頭が痛くなりました」

「どつかれたら痛いのは当たり前や。見せてみ。あー、大きなこぶができてるがな。まあ心配ない心配ない。この膏薬をはっときなはれ。二、三日もしたらひっこむやろ。はい、次のひとー」

「先生、ぼく、なんか最近気分がすぐれません」

「そうか。気分がすぐれんか。まあなんともなかったらうちにはけえへんわな。で、どない気分がすぐれへんのや」

「あちこちがかゆいような、寒いような暑いような、気持ちいいような悪いような変な気分です。食欲も落ちてます。この調子ではライザップのAfterみたいになりそうです」

「なったらええやないか」

「それに、最近よくむかむかします」

「え、むかむか。吐き気が」

「いえ、なんか腹が立ってむかつくんです。それで今朝も向こうから来た人をどついたら少し気がおさまりました」

「あんたかいな。どついたんは。それはいかんぞ。気分が悪いとゆうても人をどついたらいかん。……えーと、気分が落ち着く薬を出しておこう。これをのんで、しばらくおとなしゅうしとくように。決してひとはどつかんように。はい、次のひとー」

「実は急に寒気がしまして、そのままほっといたら熱も出てきたみたいなんですが」

「ほう。まず熱を測ってみて……36.2度……熱はないようやがなあ」

「いえいえ、咳も出るし、鼻水もとまりません。難儀してますねん」

「そんなようにはみえんが……」

「いや、私やなくて隣の田中さんなんですが」

「なんじゃそら。本人が来んと意味がないやろ」

「えーっ、本人限定ですか」

「あたりまえやろ、もー。何を考えてんねん。次のひとっ」

「先生、わし……わし……認知症かもしれません。しくしく……」

「泣きなさんな。どないしたんや。なんで認知症やと思うんや」

「ネットでたまたま認知症テストというのを見つけまして。『おとといの夕食がなんだったか覚えていますか』というのがありました。わし……思い出せませんでした。昨日はハンバーグ、さきおとといはサンマとおひたしと冷奴、さきおとといの前の日は……先生、さきおとといの前の日は何ていうんでしょう」

「知らんがな」

「さきおとといの前の日はてんぷらやったことも覚えてるんです。なのにおとといが思い出せません。ひょっとしたら、おとといという日は存在しなかったのかも知れないと思って近所の人にそれとなく聞いてみたら、いつものようにおとといはあったそうです」

「そうやろなあ」

「認知症の症状として『自分がだれなのかわからなくなる』というのも別のサイトにありました。そういえば若い頃から自分という人間は一体なんであるか悩んでいました。これは認知症の第一歩、いや、若い頃からわしは認知症やったのかも……」

「心配しすぎとちゃうかなあ」

「あと、野菜の名前を10こ、制限時間内に言いなさいというのもありました。わし、ダイコン、ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、キュウリまでは言えたんですけどまだ五つです。やっぱり認知症かも…先生、言えますか、野菜10種類」

「10種類くらい言えるやろ。ダイコン、ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、キュウリやろ」

「それはわしが言うたやつです」

「待て待て。ダイコン、ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、キュウリやろ」

「はい」

「ダイコン、ニンジン、キャベツ、ジャガイモやろ」

「減ってます」

「うーん。野菜は興味ないからなあ。野菜カステラはよう食べたが」

「なんや先生もそんなんですか。ちょっと安心しましたわ。しやけど、また別のサイトを見たら、認知症が進むと『ささいなことで怒り出して暴力をふるう』というのがありました」

「なんか思い当たることがあったんかいな」

「はい、ゆうべもiMacを使ってましてね。メールを整理してたら迷惑メールのひとつに『あなたはこのメールを迷惑メールにしました……』と、うらみがましいことが書いてあったのでむかーっと来まして、『それがどないしてん、わしの勝手やろ!』とiMacを殴りかけて、値段を思い出してなんとか踏みとどまりました。レティーナモデルの大きなやつやから高かったんです」

「よかったよかった。しやから暴力はふるってないわけや。まー心配ない心配
ない」

「そうですかー。なんか心配で……先生、ほんまのこと言うてください。わし、ほんまに認知症とちゃいますか」

「ちがうと思うけどなあ」

「ほんまですか……絶対、ちがいますか……もし……わし、認知症やったら……どないしたらよろしいんやろ。しくしく」

「しつこいな。私が信用できんのかっ!」

「あー、いや、いや、そそそそんなことはありません、信用してます、信用してます!」

待合室でさっきの患者たちがひそひそ声で話しております。

「あー、怖かった。先生、まじで怒り出しはった」

「そやろ。しやからやっぱりやばいと思うねん」

「そうやな。間違いない。先生ももうええ年や。80はとうに越してるし」

「認知症かなあ……」

「野菜の名前10こ言われへんかったし」

「怒りっぽくなったしな。前は何言うてもにこにこしてはったのに」

「何より、わしらが入れ替わり立ち替わり別の患者のふりして行っても、全然気付いてないって……」

「だいぶ進んでるなあ、あれは」

たった二人しかいない患者がうんうん、とうなずきあいました。


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
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紅葉シーズンの京都はすさまじい人出、というのはだいたいわかるが、雨が本降りの日なのに、あちこちに傘をさした人の長い行列ができてるのにはびっくりした。で、やっぱり聞こえてくるのは中国語。

ツァーで日程が決まってたらどうしようもないんだろうな。遠くから来て雨とはかわいそうだな……いや、ひょっとしたら中国から雨女もしくは雨男がいっぱい来てるのかもしれないよね???


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■3Dプリンター奮闘記[70]
3Dプリンターで何がしたいねん? どうしたいねん?

織田隆治
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20151119140100.html
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随分冷えてきましたね。

FDM型(熱融解型)のプリンターの素材なんですけど、最近では、一般的にPLAが主流になってきています。

PLAはとにかく固くて作業がやりにくいんですよね。。それでいて融解温度が190〜210度くらいと低いので、サンダーなどで勢いよくかけてしまうと、直ぐに溶けてしまい、サンドペーパーなどが目詰まりを起こします。

でも、熱による伸縮が少ないため、造形テーブルから剥がれる可能性が低くて、一般にはPLAが使われることが多いです。

最近では、ABSっぽい性質を持ったPLAも出て来ていて、これはこれでなかなか良いです。

でも、やっぱり、後加工のやりやすさ、出来上がったものの強度を考えると、ABSの方が良い結果となります。

ABSは、溶解温度が230〜240度と高く、熱収縮も大きいことから、造形テーブルから剥がれてしまうんです。これは、ヘッドから離れると、当然冷えて固まる際に、設置面が収縮することになります。

ABSをうまく出力するには、出来るだけ、造形物の温度が高いままにしておく必要があるんですね。

気温が下がってくると、FDM型(熱融解式)のプリンター、特にABSを出力する際には非常に厳しい季節になります。

要するに、温度を下げないようにすると良いので、造形テーブルに加温するヒーターが付いた機種が多いんです。

でも、ABSの場合は、素材の融解温度が230〜240度と高いため、造形テーブルの温度を90〜120度くらいにキープしなくてはいけないわけです。

プリンターを完全に箱にして、上下左右を塞いで密室にするといいんですが、この密室にするっていう特許があることで、メーカーとすればなかなかその構造にするには、“大人の都合”で難しいようです。

もう少しすれば、この特許も切れるということで、どんどん良いプリンターが出て来るかとは思います。

この、特許絡みの事情もあり、国内メーカーさんは様子見をしているようですね。そういうところ、実に日本らしいというか、なんと言うか……。冒険はなかなか難しいようです。

熱融解式のプリンターの素材について、最近では色々と出てきてます。僕も色々な素材を試してみていますので、そのことについてちょっと書いてみます。

まず、最近試してみた素材。メタル入りのフィラメントについてです。

これは、真鍮、銅、ブロンズの粉末を、PLAに練り込んだもので、プリント後に磨くと、ピッカピカの金属質感になります。

面白い素材なんですけど、PLAに大量の金属粉を練り込んであるのでかなり扱いが難しいです。まずは、フィラメント自体が柔らかくて脆い事。

そして、ヘッドの温度とエクストルーダーからの送り速度の調整が難しいこと。真鍮、銅、ブロンズと、種類によって少し変えた設定が必要なんです。

出来上がったものは、なんだか素焼きの土器みたいな風合いで、表面はかなりザラザラしています。こんなの、本当に金属っぽくなるの? って感じです。

それを、#100〜#1000くらいのヤスリで順に仕上げて行くと、これが大変身します。まるで、本物の金属のような質感になります。これは、塗装では絶対に表現出来ないような風合いです。

このフィラメントは、金属の粉を大量に含んでいるので、重量もかなりありまして、手に持った際にズッシリとした重量感を味わえます。

面白いなぁ〜! と思いますが、出来上がったものにも、少し難点があります。それは、脆いこと。

PLAに大量の混ぜ物が入っているので、仕方ないことだとは思います。真鍮、銅、ブロンズの中で、特に真鍮は出来上がった時も柔らかく脆いですね。

金属っぽく見えても、そこはそれ、樹脂な訳で、強度は通常のPLAより遥かに弱いのです。

でも、そのあたりを理解して使えば、かなり面白いフィラメントであることは確かで、僕は今後も面白い作品を作ってみたいと思います。この他、いろいろな素材も出て来ています。

このように、FDMの3Dプリンターだけでも、たくさんの種類の素材があり、3Dプリンターも数種あることで、その組み合わせはかなりの数になります。

「何を作りたいか?」「どういった事をしたいか?」ということで、3Dプリンターを選択する必要があるんですね。

作りたいものによっては、3Dプリンターよりも他にもっと良い手法、機械がある可能性も高いのです。

レーザー彫刻機の方が良かったり、CNCのような切削機械の方が良かったり。粘土こねての手作業の方が良かったり、モノ作りは様々ですね。

どういった物が作りたいか、ということが明確になると、おのずと手法が決まってきます。ですから、まず、3Dプリンターがあって、ということではなく、まずは「何がしたいか」の方から明確に決めて行く必要があるんですね。

これ、結構重要なことで、物珍しさから3Dプリンターを購入し、何をやっていいのかが分からずに、眠っている3Dプリンターがかなり多いと聞いています。

最近は、安価なコンシューマー向けの3Dプリンターも、かなり良い精度で出力できるようになりましたので、どんどん使って、面白いもの、便利なものを作り出せるようになりました。

そこで躓くのは、たぶん「何かを作りたい!」という明確な意思や信念がないせいもあるんでしょうね。

そういった質問をする場所や情報が、まだまだ少ないんだろうなぁ、、、なんて思います。そういう場所、その質問に答えられる人ををもっと増やして行く必要がありますね。

僕もそういうことを進めて行こうと思っています。そうすることで、もっと3Dプリンターへの理解が進み、遅れている日本の3Dプリンターの普及や発展に貢献出来るんじゃないかな、と思っています。


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp


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編集後記(11/19)

●石平「暴走を始めた中国2億4000万人の現代流民」を読む(講談社、2015)。中国という国家が崩壊する、といわれ始めてもう何年経つのだろう。北京オリンピック頃に終わると思っていたが、まだ続いている。それどころか、ますます巨大化してのさばっているように見える。だが、「経済大国・中国」は筆者から見れば幻に過ぎない、砂上の楼閣だという。中国経済はもはや崩壊寸前だ。そのことは国家体制そのものの崩壊につながる大問題だ。この本の前半は、いかに中国経済がインチキな構造で、無理に無理を重ねた成長であったかを実証する。後半が、筆者ならではの視点で国家存続の危機の根本を抉り出す。

それがタイトルにある「2億4000万人の現代流民」の存在である。経済発展を支えてきた安価な労働力、その中心を担ってきたのが「農民工」と呼ばれる農村戸籍の若者たちだ。故郷を離れて都会に出た彼らは、不当な差別と低賃金で働き、最底辺の暮らしを強いられてきたが、経済の失速で職場を追われ、現代流民となっている。たびたびデモや騒乱を起こしてきた彼らが、さらに怒りと不満を高め一斉に蜂起したら、それは国家存続の危機に直結する、というシナリオを、現実に起こった暴動事件を交えてリアルに描いている。強い憤りと憎しみが常に渦巻いている「農民工」こそ中国の治安を脅かす火種だ。

農民工たちによる暴動、その究極のパターンは「革命」に近いものだろう。つまり政府、共産党体制の打倒だ。中国の歴史は国家崩壊の歴史で、歴史の四割が内戦の期間だ。「流民の大量発生」こそが王朝を崩壊させる大反乱の条件であることは歴史が証明している。都市で育ちながら都市戸籍のない農民工は、いかに生活が苦しくても農村に帰ることはできない。そこに彼らの焦燥と迷走がある。また、大卒で就職できない若者は350万人に達する。彼らも閉塞感と未来への絶望で、現代流民になりつつある。現在の中国には、いつでも何かのきっかけで、巨大な暴動を起こす可能性がある人々がそれだけいる。

農民工、就職できない若者など現代流民たちの苦しい生活がこのまま続けば、彼らの怒りと不満は溜まる一方だ。流民たちがネットワーク化すれば、その規模はさらに巨大になる。暴動、鎮圧、流民グループの先鋭化、それが繰り返されてプロの反政府活動家が大量に生まれ、知識人もこの動きに加わることになるだろう。中央であるいは全土で一斉に暴動が起きてしまったら、それはもう軍隊でも鎮圧できない。天安門事件はいわば学生の遊びだった。これから起きるであろう反体制運動の勢力は凄まじいものになる。現代流民がいとも簡単に、習金平体制を覆す日が必ず来る。リアルタイムでそれを見られそうだ。(柴田)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406219810X/dgcrcom-22/
石平「暴走を始めた中国2億4000万人の現代流民」


●続き。そんな伯母からは、暇になってから旅行になんて考えてはダメだとは言われる。歳いったら近場になってしまうし、足腰が弱ったらそれさえ難しくなるよと。最近、時々面倒を見ていた伯母のいとこが認知症になってしまい、億近い財産が国庫行きになったため、お金も使わなきゃと言い出した。

伯母のいとこは私と同じ家に引きこもるタイプ。違うのは、私は誘われればノリで行くし、何でも経験だからと行ったことのないお店、場所、スポーツなどはやりたがる。演劇や音楽は、映像より体験だと思っているので出かける。ただし旅行までは考えないから、伯母は今のうちにと言うのだろう。

Ingressをやり始めてからは、行ったことのない場所に行ってみたいとは思うようになった。泊まりは準備がめんどくさいのと、急な仕事対応が入ると困るので避けたいけれど。続く。 (hammer.mule)

http://m2college.net/fes4/
まにまにフェスティバル(まにフェス)P4

伯母が大阪豊中のお伽工房で3人展。陶、ジュエリー、革カバン。11/22〜29。
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