3Dプリンター奮闘記[70]3Dプリンターで何がしたいねん? どうしたいねん?/織田隆治

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随分冷えてきましたね。

FDM型(熱融解型)のプリンターの素材なんですけど、最近では、一般的にPLAが主流になってきています。

PLAはとにかく固くて作業がやりにくいんですよね。。それでいて融解温度が190〜210度くらいと低いので、サンダーなどで勢いよくかけてしまうと、直ぐに溶けてしまい、サンドペーパーなどが目詰まりを起こします。

でも、熱による伸縮が少ないため、造形テーブルから剥がれる可能性が低くて、一般にはPLAが使われることが多いです。

最近では、ABSっぽい性質を持ったPLAも出て来ていて、これはこれでなかなか良いです。

でも、やっぱり、後加工のやりやすさ、出来上がったものの強度を考えると、ABSの方が良い結果となります。





ABSは、溶解温度が230〜240度と高く、熱収縮も大きいことから、造形テーブルから剥がれてしまうんです。これは、ヘッドから離れると、当然冷えて固まる際に、設置面が収縮することになります。

ABSをうまく出力するには、出来るだけ、造形物の温度が高いままにしておく必要があるんですね。

気温が下がってくると、FDM型(熱融解式)のプリンター、特にABSを出力する際には非常に厳しい季節になります。

要するに、温度を下げないようにすると良いので、造形テーブルに加温するヒーターが付いた機種が多いんです。

でも、ABSの場合は、素材の融解温度が230〜240度と高いため、造形テーブルの温度を90〜120度くらいにキープしなくてはいけないわけです。

プリンターを完全に箱にして、上下左右を塞いで密室にするといいんですが、この密室にするっていう特許があることで、メーカーとすればなかなかその構造にするには、“大人の都合”で難しいようです。

もう少しすれば、この特許も切れるということで、どんどん良いプリンターが出て来るかとは思います。

この、特許絡みの事情もあり、国内メーカーさんは様子見をしているようですね。そういうところ、実に日本らしいというか、なんと言うか……。冒険はなかなか難しいようです。

熱融解式のプリンターの素材について、最近では色々と出てきてます。僕も色々な素材を試してみていますので、そのことについてちょっと書いてみます。

まず、最近試してみた素材。メタル入りのフィラメントについてです。

これは、真鍮、銅、ブロンズの粉末を、PLAに練り込んだもので、プリント後に磨くと、ピッカピカの金属質感になります。

面白い素材なんですけど、PLAに大量の金属粉を練り込んであるのでかなり扱いが難しいです。まずは、フィラメント自体が柔らかくて脆い事。

そして、ヘッドの温度とエクストルーダーからの送り速度の調整が難しいこと。真鍮、銅、ブロンズと、種類によって少し変えた設定が必要なんです。

出来上がったものは、なんだか素焼きの土器みたいな風合いで、表面はかなりザラザラしています。こんなの、本当に金属っぽくなるの? って感じです。

それを、#100〜#1000くらいのヤスリで順に仕上げて行くと、これが大変身します。まるで、本物の金属のような質感になります。これは、塗装では絶対に表現出来ないような風合いです。

このフィラメントは、金属の粉を大量に含んでいるので、重量もかなりありまして、手に持った際にズッシリとした重量感を味わえます。

面白いなぁ〜! と思いますが、出来上がったものにも、少し難点があります。それは、脆いこと。

PLAに大量の混ぜ物が入っているので、仕方ないことだとは思います。真鍮、銅、ブロンズの中で、特に真鍮は出来上がった時も柔らかく脆いですね。

金属っぽく見えても、そこはそれ、樹脂な訳で、強度は通常のPLAより遥かに弱いのです。

でも、そのあたりを理解して使えば、かなり面白いフィラメントであることは確かで、僕は今後も面白い作品を作ってみたいと思います。この他、いろいろな素材も出て来ています。

このように、FDMの3Dプリンターだけでも、たくさんの種類の素材があり、3Dプリンターも数種あることで、その組み合わせはかなりの数になります。

「何を作りたいか?」「どういった事をしたいか?」ということで、3Dプリンターを選択する必要があるんですね。

作りたいものによっては、3Dプリンターよりも他にもっと良い手法、機械がある可能性も高いのです。

レーザー彫刻機の方が良かったり、CNCのような切削機械の方が良かったり。粘土こねての手作業の方が良かったり、モノ作りは様々ですね。

どういった物が作りたいか、ということが明確になると、おのずと手法が決まってきます。ですから、まず、3Dプリンターがあって、ということではなく、まずは「何がしたいか」の方から明確に決めて行く必要があるんですね。

これ、結構重要なことで、物珍しさから3Dプリンターを購入し、何をやっていいのかが分からずに、眠っている3Dプリンターがかなり多いと聞いています。

最近は、安価なコンシューマー向けの3Dプリンターも、かなり良い精度で出力できるようになりましたので、どんどん使って、面白いもの、便利なものを作り出せるようになりました。

そこで躓くのは、たぶん「何かを作りたい!」という明確な意思や信念がないせいもあるんでしょうね。

そういった質問をする場所や情報が、まだまだ少ないんだろうなぁ、、、なんて思います。そういう場所、その質問に答えられる人ををもっと増やして行く必要がありますね。

僕もそういうことを進めて行こうと思っています。そうすることで、もっと3Dプリンターへの理解が進み、遅れている日本の3Dプリンターの普及や発展に貢献出来るんじゃないかな、と思っています。


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
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