もじもじトーク[31]「点と丸」について考える/関口浩之

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。暖かかったり寒かったり、寒暖の差が激しい11月でしたが、風邪などひいてませんか?

年末年始に向けて風邪はひきたくないですよねー。おたがい体調管理に気をつけていきましょう!

さて、先日、デジクリ編集長の柴田さんから、文字に関する貴重な資料が送られてきました。これです。じゃーん!
http://goo.gl/rHNzBz

この写真を見ただけでは「ただの文字テーマの冊子じゃん」って感じですよね。ところが、この冊子、日本の文字についての貴重な資料になると思われます。

まだ一冊しか読んでないので、今度、11冊全部、じっくり読んでみます。そうだ、せっかくの機会だから、読書感想文のようなノリで皆さんにも情報共有したいと思います。




●「モジカ」って何?

「モジカ」(MOJICA)という季刊誌。発行は「文字デザイン研究会」で、創刊は1995年2月でした。正確に言うと、モジカ創刊準備号が1995年2月発行、モジカ1号が1995年3月発行でした。その後、やや不定期に刊行されて1998年12月発行のモジカ12号までは確認できました。

何号まで発行されたのだろうか…。Google検索してもあまり情報はでてきませんでした。

先日、文字に詳しい人が集まるイベントがあったので、数冊持参したところ、「すごく貴重な資料もってますね!」とか「会社に一式揃っていたけど知らないうちに処分されていた」など、反響がすごかったです。

モジカが創刊された時代背景を振り返ってみました。

Windows95日本語版が発売されたのが1995年11月20日なので、モジカが創刊された時は、まだWindows3.1の時代でした(Windows95が発売されてから、もう20年なんだぁ…。時の流れは早いです。年をとるわけだ…)。

一方、MacintoshはPower Macintoshシリーズが発売され、System 7.5と漢字Talkの時代でした(Mac OSになったのは1997年のMAC OS 8からになります)。

Macintoshによる日本語組版、つまりDTPが日本で普及しはじめたのが1990年代前半だったと記憶しています。DTP黎明期におけるソフトと言えば、アルダス社の「Aldus PageMaker」(のちのAdobe PageMaker)とQuark社の「QuarkXPress」が双璧だったです。

ちなみに、DTP(DeskTop Publishing)という表現はアルダス社の社長ポール・ブレイナードによって生み出された造語のようです。

また、当時の通信回線と言えば、ダイヤルアップ接続でした。当時、僕はパソコン通信をやってました。インターネット幕開け前夜を感じていた頃です。Yahoo! JAPANがスタートしたのが1996年4月1日でした。

そんな時代背景の中、モジカは創刊されたわけです。創刊準備号の「創刊にあたり」の一節を引用します。

デジタルフォントは、活字、写植に次ぐ「第三の波」であることは自明です。好むと好まざるとにかかわらず、我々は、まさにDTP時代の扉を開けてしまいました。とはいえ、ただやみくもに現代を睥睨(へいげい)するのではなく、あせらず、だが着実に歩みを進めなければなりません。本誌はいま、ひたすら使う側・表現する役割の観点から、風化しながらも変化していくこの国の文字や組版について、考えてみたいのです。

とても印象に残った一節でした。これだけ読んでも、この資料がいかに貴重であることがお分かりいただけると思います。

●あたり前のように使っている「句読点」

モジカ1号「点と丸」を読んだ感想を書きたいと思います。

「点と丸」という表紙を見て、最初、小説のタイトルかなぁ〜って思ってしまいました。そうではなくて、句読点のお話でした。

みなさんもあたり前のように使っている句読点ですが、どんな歴史背景があって、どのような法則に基づいて使われるのか、考えたことありますか?

正直いうと僕も考えたことありませんでした。いっしょに考察してみましょう。

江戸幕末期までは「句読点」はないに等しかったようです。江戸時代の木版印刷の書籍や写本を資料館で見たことありますが、句読点を使用した書物は、たしかになかったと思います。

明治時代に入ると、活版印刷が新聞、雑誌、書物などで広く普及しました。とはいえ、明治時代前半においては、句読点が使われることはあまりなかったようです。

明治25年に発行された幸田露伴の『尾花集』が、本格的に句読点が使われた書物と言われています。
http://goo.gl/3qXEJt

この見本をじっくり観察すると、意図をもって組まれていることがよくわかります。

・句点「。」は、ひとつのセンテンスが終了したことを表しています。「文章が終わった」ことを示す働きです。同時に「終わった後の余韻を残す」働きもあります。

・読点「、」は、「語の区切りを明確にする」働きです。同時に「息継ぎ」の働きもあります。

この本は五号活字の4分アキ組みで作成されていますが、じっくり観察すると、読点のあとのアキよりも句点のアキが二倍になっていますよね。

それにより、読点の息継ぎを感じられますし、句点のあとにしっかりとした余韻を感じることができます。

ところで、二行目の「でしたか」のあとには句点がありません。このケースでは、そこで段落が終了しているので、句点がなくてもセンテンスが終了したことが明確なのです。そして、余白がたっぷりあるので余韻を感じられます。

幸田露伴の『尾花集』は明治25年発行ということなので、西暦でいうと1892年になります。100年以上前の組み見本ということになりますね。句読点の本来の目的が明確に表現されたすばらしい組み見本だなぁと感動しました。

ところで、明治時代の活字では、句読点の大きさが漢字かなと比較すると大きめですね。とくに読点は濃いめ(太め)です。当時、句読点の活字はそのような傾向があったようです。

少し観点がかわりますが、現在でも、句読点を使わないケースがいくつかあります。結婚式案内状や年賀状挨拶文では、句読点を使用しない文字組みをすることが多いと思います。

なぜかというと「目上の人にあてた手紙では句読点を使わない」という古い慣習に関連しているようです(現在では、そのような慣習は残っていませんが)。

●文字はホントに奥深いのです

「何を今さらというなかれ。句読点(テン・マル)には印刷文字の原点がある。たかが句読点、されど句読点」ということですね。

皆さんもいろいろなシーンで文章を作成すると思います。読みやすさの観点だけでなく、息継ぎや余韻を感じられる句読点の活用を心掛けたいですね。

この場を借りまして、柴田編集長に感謝申し上げます。実は、モジカという雑誌、知りませんでした。こういう情報が掲載された本が欲しかったんです。詳しいうえにわかりやすい、すばらしい資料です。

20年前に発行された雑誌ですが、組版の正しいお作法は普遍ですね。まだ読んでいない、約物、記号、漢字と構造、文字コード入門など、どんなことが書いてあるか非常に楽しみです。

僕はWebの仕事を20年やっていますが、組版やタイポグラフィについてはまだまだ修行の身です。最近は紙のデザインの勉強する機会がないまま、Webの仕事をしている人も多いと思います。

僕自分も勉強中ですが、みなさんと一緒に文字に関する情報を楽しく共有したいと思っております。仕事でWebのことしか関わっていない方でも、文字の基本を学ぶことは重要です。それにより、日本固有文化である文字(漢字・かな・カナ)を知ることができ、そしてビジネスにも必ず役に立ちます。

そんなことを感じていたこともあり、一年半前に『もじもじトーク』を始めた次第です。

でも、天体や宇宙、カセットテープやオーディオなどの趣味のテーマもたびたび書かせていただいております…(笑) これからももじもじトーク、よろしくお願いします。

参考文献:
モジカ創刊準備号(1995年2月発行)モジカ1号(1995年3月発行)点と丸


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。