挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[14]独立後にもっとも役立った営業経験/いわい ともひさ

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●初めての営業経験

10年もの間お世話になった前職では、元々はウェブサイトの管理や広告・宣伝を担当していましたが、諸事情により後半の5年間は営業として勤務しました。

元々は名古屋が本社でしたが、私の入社後に徐々に本社機能が東京に移り、最終的には登記上の本社も東京になりました。

名古屋に残った私は一人で営業を行うことになりましたが、これまでの人生で営業を経験したことはありませんでした。

特別なノウハウなどは持っていないため、とにかく物怖じしないでお客様のところに飛び込むしかないという気持ちでした。

幸いウェブサイトの管理や広告・宣伝を担当していたため、最初から商品知識は持っていました。





世の中には様々な職種がありますが、その多くは実務経験を通して仕事に必要な能力が身に付くものです。

特別な誰かにしかできない仕事などは多くないのだから、真面目に取り組めばできないことはないだろうとは考えていました。

とはいえ、これまでずっと制作畑一筋だった私にとって、営業職というのはかなり抵抗の強いもので、偏見もありました。

●営業職に悪い印象を持っていた理由

営業職に悪い印象を持っていた理由は、経験がないためにその職種の本質を知らなかったことが一番大きかったのですが、他にも原因がありました。

過去に営業の悪い実例を見ていたのです。ある会社に勤務していたときのことですが、営業職だった人から武勇伝のような話を幾つか聞かされました。

私が在籍したその会社では、営業がお客さんから案件を受注する仕様書を書き起こして、業務管理部署に渡すという流れになっていました。仕様書の内容を間違えると誤った製品が出来てしまいます。

ある営業が仕様書を間違って書いてしまい、大量の製品が出来上がってしまいました。

私なら会社とお客さんに謝るということしか思い浮かびませんが、その営業がとった行動は、なんと不法投棄。

自分の失敗を隠すために河原に製造物を捨てたというのです。あまりの身勝手さに閉口してしまいました。

他にもここには書けないような話を幾つか聞き、営業とはこんなにも粗雑なのかと、とても悪い印象を持ちました。いま思えば、彼らの素行が悪かっただけなんですが(笑)

●人間性が試される営業職

営業になってからは、まずはお客さんと多く接することを心がけつつ、多くの書籍を読み、営業経験の長い社員から学びました。

気を付けなければいけないのは、人間には性格の違いもあるし、営業経験が長い人には自負心もあるため、内容を鵜呑みにはできないということです。

仮にとても素晴らしいことを言っていたとしても、それがすべての人に合うやり方とは限りません。取り入れたことをどうに活かすのかは、自分次第です。

経験を重ねるうちに、小手先の技術は最終的には通用しないということもわかってきました。

誰かから聞いたことの受け売りや、書籍の内容をそのまま実践するのではなく、目の前のお客さんの立場で物事を考えられるかどうかが大切なのです。

それが理解できるようになってからは、サービスを無理に勧めることはしなくなりました。

●低価格帯から高価格帯への方針転換

前職で販売していたのは製品ではなく、電話のような通信サービスでした。

売り切りの製品の場合、利益が発生するのは物が売れたときだけですが、通信サービスは、一度契約してもらうと解約されるまでは毎月(毎年)費用をいただけます。

解約率が低ければ、契約が増えるたびに、利益はどんどん積み上がっていくのです。

私が入社した頃は普及期だったため、解約はほとんどなく、契約は右肩上がりに増えていきました。

しかし、儲かるビジネスには多くの業者が参入してきます。IT業界ともなるとその流れは超高速で、わずか数年で競争は激化しました。

当初は月額1,000円程度の安価なサービスも取り扱っていましたが、そのような価格帯で勝負するには数万単位の顧客を持つ必要があり、企業体力が問われます。

技術力には自信のある会社だったため、安価な価格帯のサービス提供はやめて、付加価値の高いサービスをより高額な価格帯で提供する路線に切り替えました。

会社としての方向転換は的確でしたが、営業は大変です。月額1,000円台のサービスは姿を消し、最低でも月額10,000円程度という10倍の価格帯になったためです。

変わったのはサービスの最低価格だけではありません。技術的により高度で高価格なサービスを扱うようになったのです。

それまでは契約数が重視されましたが、方針が変わってからは客単価(一顧客当たりの売上)や利益率もより重要になりました。

このような方針転換によって、中心となるお客さんの層に変化が生じました。端的に表現すると「月額10,000円は高い」から「月額50,000円なら安い」と言われるぐらいの変化です。もちろん、例外はあります。

月額10,000円が高いというお客さんに、月額50,000円のサービスを無理に勧めても契約してもらうのは難しいです。

また、サービスの特性上、誰もがいつでも必要となるものではないため、お客さんがサービスを必要なタイミングでお話をしなければいけません。

月額50,000円は安いというお客さんであったとしても、不要なときに売り込んだら、月額10,000円のサービスすら契約してくれないのです。

●自分なりの理想の営業の答え

買いたくない人に売り込んでも嫌われるだけです。また、いつ機会が得られるかわからないからと、用もないのに足繁く通うような方法も賢くありません。

「サービスが必要なときにお客さんから声をかけてもらう」というのが理想です。私はそのような方法を実践していました。

行ったことはただ一つ、「お客さんと友達になる」ということです。

イベント等で合う機会の多いお客さん(既存顧客だけでなく、見込み客も含みます)とはできるだけ積極的に会ってお話をします。

サービスを売り込むのでは無く、友達のような関係になれるよう心がけました。仕事のためというより、本当に友達を増やすつもりでした。

生命保険を選ぶときに、もしも信頼できる親類や友達がサービスを提供していたら、まずその人に相談しますよね。これは他の業種でも同じです。

友達には無理な売り込みは行いません。大切なのは仲良くなって終わりではなく、自分が何を行っているかを伝えておくことです。

そうすることで、本当にサービスが必要になったときにお客さんの方から相談の連絡をもらえるようになります。別のお客さんを紹介をしてもらえることもあります。

信頼関係は一夜にしてできるものではありません。長い時間をかけて、繰り返しやり取りを行っているうちに深まるものです。

時間はかかりますが、お客さんから信用が得られればこちらの提案も肯定的に受け止めてもらうことができ、話も早くなります。

前職のときに構築した人間関係や、営業として経験した様々なことは、独立後の現在も大いに役立っています。

次回は、2015年を振り返りつつ、来年の展望などについてお伝えします。

【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
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今週の一言:急に冷え込んできたので風邪をひかないように注意せねばです。