ところのほんとのところ[130]アクシデントが味方する
── 所 幸則 Tokoro Yukinori ──

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偶然とは努力した人に神様が与えてくれる橋のようなもの。

写真にとって最終的に必要なものはそれだよね。

すべて計算尽くで撮っただけのものなんてつまらない。

写真というものは、やはりそこにアクシデントが味方をしないと、名作にはたどり着けない。



例えば、置物をしっかり撮る。幾つかのものを意味深に撮るのならば、組み合わせている間に何か起きる可能性もあるでしょう。

だけど、ただ一つの剥製を撮る、人形を撮る。ライティングとアングル以外、何かアクシデントは起きますか? 自分の作品を語るすばらしい文章が出来て、キュレーターが感心しても、本質がわかっていない作家とキュレーターのように感じます。

[ところ]がアインシュタインロマンを撮っていた時のことです。

その日は山が見える窓側に座っていました。晴れれば富士山が見えるなと思っていましたが、どんよりとした曇り、富士山の近くを通る一時間前からほぼ諦めていましたが、雲の流れがすごく早いことに気づいたのです。

これはもしかして……と思ったら。神様が[ところ]のシャッターを切るべきタイミングで、雲の中から富士山の頭を10秒間だけ出してくれたのです。

反射的にシャッターを切りました。みごとな、たぶん普通に富士山を撮っているマニアの方には想像もできないものが手前でブレて、我ながらものすごい作品が生まれたのです。

こういったエピソードが、[ところ]にはたくさんあります。

言葉のマジックで騙しているとしか思えないようなファインアート写真家と、騙されているキュレーターの話は、今回はこの辺にしておきましょう。

さて、大学の後輩の展示があったので覗いてきました。初としてはまあまあ良くできていたと思います。愛でたし愛でたし。

見終えた後、見たい映画が自分ちの近くでやっていたので、イメージフォーラムに行ってきました。

「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」と、「氷の花火・山口小夜子」

どっちを見るかで少し迷い。前者は少し頭を使って写真を売るプロモーションのようにも感じていた事もあったし、信用している友達が「マイヤーを見たが重たかった」と書いていたのを読んだこともあり、高校時代、大学時代からしばらくのあいだ好きだった、山口小夜子さんに捧げる映画を見ることにした。

その後、甲田益也子、藤井春日と好きなモデルは変わっていく。大学2年当時、原宿の路地裏の小さなアクセサリー系小物屋さんにたまたまいた時に、小夜子さんが入ってきて、素敵な人だなと思ったのも理由の一つでもあった。前述した二人のモデル(現在はアーティスト)は、撮る機会に恵まれたけれど。

小夜子さんはすでにひとりの表現者というべき稀有なモデルだったから、当時の自分の作品のための被写体と認識していなかった。あの時の[ところ]の力量では、作品を撮るコピー機になってしまいそうだったからかもしれない。

当時20才の妻が、ミニ山口小夜子みたいな風貌にしていたせいもあるかもしれない。苦笑。鑑賞後、この映画の出来に関しては語るコトはない。

懐かしい顔ぶれが彼女のコトを語ってくれれば、それで僕は満足だから。ケンゾーさんの元気な姿も見られたし、セルジュ・ルタンスにしてもなんだか懐かしい気持ちで一杯だった。

彼女のコピーモデルを作り出して、それを撮りたがる気持ちはわからなくもないけど、そういう自慰的行為は自分達だけでやって、個展なり持ち込み企画なりにして欲しかった。映画には要らないシーンだった。

ファッションデザイナーの丸山敬太が、コピーモデルで涙ぐむ小夜子さんへの気持ちは素敵だなと思ったけれど。

さて先週、東京に移動する直前に、浜田香川県知事を表敬訪問してきました。娘の幸采も連れて。写真集も二冊プレゼントしました。行った理由としては、フォトラボ・Kのことや、Kラバーズの展示についてなど、いろいろ話をしたかったからです。

なかなかに難しい問題みたいだなあ。。[ところ]らしくなく、ちょっと緊張したかな^^:

こういうのって、初対面は特に話がしにくくなりがちなので、場を和ませるための意味もあって娘と一緒に行ったのですが、一番和んでいたのは娘だったように思います。もっと話さないと難しいかな。大西高松市長とも話さないと。

■所幸則写真展 「アインシュタイン・ロマンス」という贈り物

12月20日発売の「アサヒカメラ」1月号、写真展紹介の扉ページで大きく出ます。「CAPA」1月号では白黒ですが1ページで紹介されています。

今までで最大の「アインシュタインロマン」の展示になると思います。会場はギャラリーコンシール渋谷。12月22日(火)11時から27日(日)21時ぐらいまで。27日以外は23時までやっているので、みなさん来やすいんじゃないかな。27日は東京画のコミッショナー太田菜穂子さんとビジュアルアーティストの片山裕さんと語ります。
http://galleryconceal.wix.com/gconceal#!%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%B4%88%E3%82%8A%E7%89%A9/zoom/c199t/dataItem-ig3bynxz


ギャラリーコンシール渋谷:東京都渋谷区道玄坂 1-11-3 第一富士商事ビル4F
TEL/FAX.03-3463-0720

そしてこの「アインシュタインロマン」シリーズは「月刊CAPA」11月号で6P、「月刊カメラマン」12月号で7P(巻頭グラビア)そして、最大の特集が1月20日発売の「アサヒカメラ」2月号で10P掲載されます。

「月刊CAPA」11月号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B014TC1EGS/dgcrcom-22/


「月刊カメラマン」12月号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B015WS32UE/dgcrcom-22/


「アサヒカメラ」2月号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00C9NG8E8/dgcrcom-22/


カメラメーカー系の顧問をやってる方、大先輩の撮るクラッシックなザ・写真。とは違う、ファインアートとしての写真では初めての各誌大特集です。こんなに大々的なのは、クラシックタイプの森山大道さん、アラーキーさんぐらいじゃないでしょうか。

言葉と写真でファインアートを形作るのはいいですが、人が目を見張る写真でなければ本来の美であるアート(写真の場合)ではないと思います。前述の二人の巨匠は、まさに目を見張る写真なので、写真誌にもよく掲載されるのでしょうね。

アインシュタインロマン 単行本 2015/8
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/490412054X/dgcrcom-22/



【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則  http://tokoroyukinori.seesaa.net/

所幸則公式サイト   http://tokoroyukinori.com/