映画ザビエル[07]ぅう〜〜っ ワンッ!!/カンクロー

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◎めし

制作年度:1951年
制作国・地域:日本
上映時間:97分
監督:成瀬巳喜男
出演:上原謙、原節子、島崎雪子





●だいたいこんな話(作品概要)

結婚5年目をむかえる岡本初之輔と妻の美千代。恋愛結婚した美男美女の夫婦として世間からは羨まれるほどだが、近頃は些細なことで揉めてばかりだった。時代は違えど、どこの夫婦にも覚えのあるような実に等身大の物語で、かつ秀逸なホームドラマ。

林芙美子原作の成瀬作品シリーズ第一作目にあたる。原作の同名小説は、新聞連載中に林芙美子が急逝したため未完の絶筆となってしまった。映画では、当時の大阪の風俗も伺える楽しみもある。

●わたくし的見解

世間ではワンちゃんも召し上がらないと言われている、“夫婦喧嘩”の映画です。夫婦喧嘩のきっかけは「家出してきた」と言って突如現れた夫の姪。まるで台風の目。

お年頃で、何でも「縁談が気に入らない!」と飛び出してきたそうな。若くて綺麗なお嬢さんですが、どうにもだらしない。妻はそう感じてしまうのでした。

事実、少々非常識ではた迷惑な娘であることは確か。若くて綺麗だからいいようなものの、そうでなければ(私が同じことをしたら)きっと袋だたきに遭うことでしょう。しかし、夫は姪に優しくする。「ああ腹が立つ」ってことなのですが、これは所詮きっかけに過ぎません。

夫はそれなりに、妻にも気を配っているのです。姪と夫婦と三人で一緒に観光に行こう、つって。妻だって、本気で夫と姪の仲を疑ってヤキモチ妬いている訳ではない。

きっと、妻にとっては「夫婦喧嘩にもならなかった」のが一番決定的だったのでしょう。

あたくしっ、実家に帰らせていただきます! 前掛けをクルクルっと畳んで叩きつける嫁の図は、重要無形文化財として国から保護されています。もちろん嘘です。前掛けのシーンがあったかどうかは定かではありませんが、妻はそれまで内に秘めていた怒りを米を研ぐことであらわにします。

ザッ、ザッ、ザッ (何よっ 何よっ 何よっ!)
ザッ、ザッ、ザッ (私だって 私だって 私だって!)
ザッ、ザッ、ザッ (何なのよっ 何なのよっ 何なのよっ!)

永遠の聖女だとか処女だとかと名高い原節子さんが、この時ばかりは鬼の形相。小津映画の彼女しか知らなかった私には、驚きでした。原さんも生身の女性だったんですね。

しかし同時に、奥さん怒ったはるわ〜と、思わずケタケタ高笑いもしてしまうのです。その激おこプンプン丸ぶりが妙に微笑ましいのですね。

そして今後、私も夫婦間の問題で腹の虫がおさまらなくなったら、米を研ごうと思いました。だって怒って、たとえば洗い物などすると、よりにもよって(捨ててもいいと思っている皿に限って割れず)気に入ってる皿が割れたりするのです。

さらに怒りにまかせて割れ物を拾うと怪我をして、泣きっ面に蜂。ろくな目に遭いません。その点、洗米ならば(炊きあがりの良し悪しは別にして)ひとまず安全です。

ラストは妻のナレーションで幕を閉じるのですが、今回の夫婦の問題について、実は画期的な結論には至っていません。何しろ相手はワンちゃんも召し上がらないと評判の、夫婦の揉め事です。

あえて達観してみたり、分かった風なことを言わずして、観る側を安心・納得させる落としどころには脱帽。

映画のご夫婦はこの先も幾度となく、ワンちゃんが召し上がれないバトル(時には一人相撲)を繰り広げるに違いありません。それでも……

うーむ。夫婦って、ほんっとにムニャムニャムニャ、ですねぇ〜

※上記のムニャムニャには、ご自由に言葉を当てはめて下さいまし。


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル  http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。