ところのほんとのところ[131]職業カメラマンの危機?/所 幸則 Tokoro Yukinori

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最近一部の写真好きがはまっている投稿サイト。いろいろ問題が起きてますね。ネットに上げてあることだけでアウト、なんて悲しいことだけど、この写真いらない、持っていっていいよ、と思うしかないのが現状です。特にsnsでは。

[ところ]の場合、大事なものは写真全体にタイトルや自分の名前を入れたものをアップするようにしていますが、まあ、入れてないものと比べると確かに見劣りがします。

ひどい例をあげると、プロが主宰するグループページに投稿した、趣味の写真家の写真を、別のページにその主宰するプロが自分が撮ったものとして投稿するとかね。





もう少し大きな話になると、オシャレな企業のページに写真を投稿するシステムが付いていて、世界の腕自慢の写真愛好家が投稿する。

企業イメージに合っていて、それなりのクオリティなら採用されて、そのページのタイムラインに流れる。掲載されてももちろん無償、採用通知もなし。それでも、撮影者の名前は入る。

投稿した人は、自分の写真が採用されたかどうか必死で探して、あったら嬉しい。確かにウィンウィンの関係だから、文句の付けようもない。

一般的な投稿サイトだとまあその程度だけど、世界的な視聴者を抱える巨大な写真のファインアートのサイトなどでは、お金を払ってページを買い、自分のポートフォリオを載せて、誰か有力な目利きに見つけてもらおうとしたりする。

[ところ]は無料で招待するから載せてよいと相手側から言われて、知り合いのキュレーターに相談したところ、そんなにメジャーな投稿サイトでもデータの盗用疑惑があると聞き、ストップしました。

ある飲み会の席で、アマチュアの方が嬉しそうに招待された話をしていたのですが、そこで疑惑の話をするとシラけるよなあと思い、黙っていましたが。

少し話が逸れますが、ギャラリーといえども嫌な話はあって、世界中でこの問題はありますが……。

仮の話ですが、パリの有名老舗のギャラリーに、パリから遠く離れたところに住んでる作家が出品している。その作品が売れる。だけど作家には知らされない。どういうことが起きたかというと、仕入れがタダでギャラリーが儲かる。

作家に知らさなければ、売れたこともわからない。だけどパリ近郊に住んでる作家ならば、客とも繋がってる場合もあるし、時々顔を出せばそういう目にも会わないでしょうけれど。

だけど、この構造似てますよね。タダで作品を手に入れて、それが企業のイメージアップにつながる。つまり作者にはお金が入らず企業だけが儲かる。

いまはフィルムが要らない時代、バンバン撮って投稿する。撮ることに快感があるし、採用されることに快感がある。そんな人がたくさんいます。

同じような事例で、フォトコンテストがどんどん増えています。カメラメーカーがやるのは、カメラを使う人、買う人が増えて欲しいからでわかりやすい。カメラ雑誌がやる場合はもっとわかりやすいよね。

審査員にはタレント写真家もどきもいるけど、いちおうオープンだし、編集部がちゃんと見てるから講評も付く。二次使用で儲けようなんて感じじゃない。ただ、もっとカッコ良くする必要はありそうですけれど。若い層も取り込まないと……。

そして、普通の有名企業がコンテストを始めるようになって、それが増えてきています。賞金が50万や100万なら、たくさん写真が集まります。有名企業ともなるとパンフレット、カレンダー、ホームページなど、みんなが思ってるよりはるかに写真を使っています。

以前はレンタル写真業者などから借りるのが、一番コストがかからないやり方でした。今はコンテストをやって写真を集めるやり方がベストということに気づいた企業が多くなりました。

審査員もかなり適当な人が多い。だけど、これもウィンウィンの関係です。問題は、職業カメラマンはそこに入っていないということでしょうね。

これから職業カメラマンは、初心者相手にレクチャーする仕事が主流になっていくのかもしれないですね。既にそうなってるか……。

ただし、高価なカメラで覚えることが多いうちはそれも成り立つでしょうが、iPhoneなどのスマホで簡単に写真が撮れるのですから、今の高校生が中年になる頃、写真のうまい撮り方を教える人がそんなに必要だとは[ところ]には思えません。将来が心配です。

そういう意味では、ブランド化で高級腕時計が好きな人がいるように、ライカみたいなやり方が残っていったりするのかもしれないですよ。高級カメラを所有し、使いこなすところに喜びを残す、という意味もあるのかもしれません。

あとは、[ところ]のような、哲学的なというか、快楽的にシャッターを押して喜ぶ写真ではなく、自分が考えてることを伝えたい写真、そして美しい写真、世界で一つだけの考え方で撮った写真、という方向ではないかと思っています。

そして今、日本が極めている印刷技術の行くすえも案じています。そういうことを考えて、開催するのが今回の個展です。

●所幸則写真展「アインシュタイン・ロマンス」の贈り物
─写真集は芸術表現の高みを目指す─

会期:2015年12月22日(火)〜27日(火)11:00〜23:00、最終日21:00まで
最終日の27日(日)14:00〜15:00過ぎまでトークショー。その後、クロージングパーティを行ないます。みなさん、是非いらしてください。

スピーカーは[ところ]と、One second Shibuyaの頃からずっと所幸則の作品を見て語り合ってきた太田菜穂子さん(東京画コミッショナー&キュレーター)と、20年以上の空白期間を置いてfacebookで再会した、ビジュアルアーティストの先輩でもあり、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科の非常勤講師もされ
いる片山裕さん。三人で時間と空間と今のアートについて語り合います。

本展覧会は写真集の存在意義について考える「写真集文化を伝えるための個展」でもあります。会場には写真集「Einstein Romance」をじっくりと鑑賞していただくスペースのほか、オリジナルプリントの展示、4kモニターでオリジナルの音楽とともに映像的展示も行います。

この写真展が、日本の匠の高度な印刷技術によるクオリティの高い写真集の可能性について感じ考えていただく機会になることを強く望みます。

ほぼ毎日、午後数時間は在廊予定ですが、詳しい在廊日程は、所幸則Blog「CHIAROSCUARO」でご案内します。
http://tokoroyukinori.seesaa.net/?1449857662


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則  http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト   http://tokoroyukinori.com/