[4039]吹いた芽よ大木になれと水をやる─新興企業応援イベント

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《こう見えても、ワタシ、シャイなんですー。》

■Otakuワールドへようこそ![225]
 吹いた芽よ大木になれと水をやる─新興企業応援イベント
 GrowHair



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■Otakuワールドへようこそ![225]
吹いた芽よ大木になれと水をやる─新興企業応援イベント

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http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20151218140100.html
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東芝の社員は全員、青山墓地へ行って、創始者・田中久重の墓の前で土下座してこい! あの区画を19万本の花で埋め尽くしてこい! 「万般の機械考案の依頼に応ず」と刻まれた墓碑銘とじっくり向き合ってこい!

今現在、何万人もの従業員を擁し、何兆円もの年商を上げている巨大企業だって、始めたときは、当然のことながら、スタートアップ企業だった。世の中、いろんなものが金で回ってるけど、何でも最初は金なんかなくて、心意気で回っている。一度初心に立ち返って再認識すべきはそこである。

子、孫、ひ孫と人が世代交代していくのと同じく、企業だって世代交代していく。今、スタートアップしたばかりの企業のうちの、ほんの一握りでも生き残り、次の時代の日本を支える基幹産業に成長していくのが、健全な姿ってもんである。

まかり間違っても、全部中国に持っていかれ、日本人は全員安月給の下っ端労働者になり下がってた、なんて未来に行き着いてはならない。重箱の隅みたいな細かいことにはやけによく気がつくくせに、大きな絵がまるで見えていない最近の日本人のメンタリティの傾向は、下っ端労働者に最適なもんだから、心配ではある。がんばれ、日本のスタートアップ!


12月12日(土)、天王洲アイルの寺田倉庫にて、スタートアップ企業に対し、経営のプロがデザインとマーケティングがいかに重要かという観点から指導することで喝を入れるイベントが催された。『Heart Catch 2015』。主催するのは株式会社Heart Catchで、代表取締役は西村真里子氏である。

この会社自身、2014年7月に創立され、現在二人で切り盛りしているスタートアップ企業といえる。イベントは、500席が早々に売り切れる大盛況で、会場はスタートアップの熱さと、経営のプロの見識の深さが評判上々、大成功であった。

イベント自体、西村氏の志と、それにほだされて集まった協力者たちの同調とで成り立ったようなところがある。私は、五つの事例のうちのひとつとして、塗り絵ARの会社であるPuteko Limitedのケースを紹介するために割り当てられた30分間、MCを務めてきた。

そんな役、私にゃ無理だと及び腰だったのに、結局なんとかなっちゃったのは、ひるまずに役を振ってきた西村氏の度胸のおかげによるところが大きい。

こんな真面目なイベントに出るのは初めてだった私にとっての収穫は、「面白法人カヤック」のCEOである柳澤大輔氏との2ショである。
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event151212#6227818034686399218

田中久重氏の言葉:「知識は失敗より学ぶ。事を成就するには、志があり、忍耐があり、勇気があり、失敗があり、その後に、成就があるのである」。

●日本の企業にはデザインとマーケティングのセンスが足りない

西村氏は、「日本の企業、特にスタートアップはデザインとマーケティングのセンスがあれば、もっと世界で戦えるに違いない」との信念をもっている。

海外での家電やエンターテインメントのショウに出展する、日本の企業の製品やサービスを見ると、エンジニアとビジネスからの発想に偏りがちで、デザインのセンスが欠けているために、ユーザサイドから見たときに今すぐ欲しくなるような魅力的な製品にまで完成度が上がっていないケースや、大きな展示会に出展しさえすればいい宣伝になるはずだと、マーケティング戦略を欠いたやみくもな出展のしかたをして、かけた予算の割には効果が薄く終わっているケースが見受けられるという。

デザインとマーケティングの伝道師の役を負うべく西村氏が2014年7月に立ち上げたのが株式会社Heart Catchである。重要だ重要だと説いて回っているだけでは何も始まらないので、スタートアップ企業にこれらの要素を注入し、実際にどのような変化が起きるかをみることで、効果が可視化できるに違いないと考えている。

実際の取り組みとして、スタートアップ企業に対して、プロのデザイナーとマーケターをあてがってチームを組み、二か月間の指導と特訓を施す。仕上げとして、お披露目イベントを開催する。

対象企業を募集し、応募してきた中から5五社が選ばれ、プログラムが遂行された。仕上げのイベントが、12月12日(土)に開催された『Heart Catch 2015』だったというわけである。

そのへんの経緯については、「MarkeZine(マーケジン)」というメディアが西村氏へのインタビュー記事を9月10日(木)に掲載している。

『CES・SXSWから見えてきた課題、日本企業に必要なものは“マーケティングとデザインのセンス”』。
http://markezine.jp/article/detail/23066

『Heart Catch 2015』のページはこちら。
http://heartcatch.me

●押し返しても寄り切られる

西村氏から、共通の知人を通じて最初にコンタクトがあったのは8月6日(木)のことで、用件は、9月19日(土)、20日(日)に幕張メッセで開催される『東京ゲームショウ2015』への出演依頼であった。。

「株式会社ガルボア(GaLboa)」のスマホアプリゲーム『おやじGirly』のブースでステージに立ってほしいと。将棋の加藤一二三九段とご一緒できて、私にとって貴重な経験をさせてもらった。

そのイベントからしばらく間があいて、『Heart Catch 2015』への出演依頼が来たのが11月13日(金)のことである。フェイスブックのメッセージで「またまたセーラー服おじさんに助けていただきたいイベントのご相談です」と。はい、なんでしょ?

前述のイベントについての簡単な説明があり、ついては「セーラー服おじさんに登場いただき30分、部分司会をお願いしたく考えております」。いや〜、無理無理無理無理。そんなのが務まるようなタマじゃないからー。

ゲームショウではさんざんお世話になっておきながら、にべもなく断ったのでは申し訳ないから、やんわりとお断りしよう。「司会ってやったことないし、自分ではあんまり向いているような気がしてないんですが...(弱気)。あっちこっちに同時に気が回るような器用な人ではないもんで...。困りました」。

やんわりすぎて、断ったと受け取ってもらえなかった。12月1日(火)に市ヶ谷で打合せしましょうってことになった。当日、仕事帰りのB面の姿で駅の上のスターバックスで西村氏と会い、説明を聞いた。

スタートアップ五社のうちのひとつである、Puteko Limitedのケースの紹介に割り当てられた30分間、MCを務めてほしいという。その会社について、簡単に説明してもらったが、よく飲み込めなかった。詳しくは、のちほど、Putekoから直接私に伝えてくれる話になった。

西村氏の意向としては、ただのセーラー服を着たおっさんとしてではなく、知性がキラーンと光るところを見せてほしいってことのようで。いやいや、ないものは光りませんって。

Putekoはニュージーランドから始まった会社なので、英語でMCやってくれませんか、と。さらにハードル上げないでください! 社会の上澄みのほうにいらっしゃる500人の日本人を前に、英語でしゃべる度胸なんてありませんって。

こう見えても、ワタシ、シャイなんですー。はっきり断ったつもりだったのだが、またしてもそう受け取ってもらえなかったらしく、のちに蒸し返されることになる。

PutekoのJessop氏と、メンターの竹中氏とをメンバーに入れて、西村氏がフェイスブックにチャットルームをオープンしてくれたのは、12月8日(火)の夜のことである。

翌日の午前中、竹中氏が入ってきて、簡単な自己紹介と、Putekoの概要説明を書き込んでくれた。その上で、Jessop氏に、Putekoおよびその製品についての資料と、プレゼン資料を提供してくれませんか、とお願いしてくれている。

しばらくしてJessop氏が入ってきて、製品を紹介するYouTube動画にリンクを張ってくれた。ユーザからみてどのような製品であるかはよく分かるのだが、どの部分に独自技術が盛り込まれているのかが見えず、情報としては不十分だった。

しかし、私は忙しさにかまけて、イベントの前日、11日(金)まで放置していた。4:46pmになってやっと自己紹介を書き込み、Putekoの画像処理技術について質問を投げると、4:50pmにJessop氏から回答が来た。

そこからばばばばっとやりとりが進んだ。画像処理技術について、私が矢継ぎ早に質問を投げてがんがん掘り下げると、Jessop氏は、しまいには降参して、「そこまで詳しく知る立場ではありませんが、当日、CGディレクタが来るので、さらに議論できると思います」と言ってきた。

考えてみると、MCにとってはぜんぜん必要ないレベルの話であった。技術屋としての私の個人的な興味本位で、詳しく聞きたくなっちゃったのであった。

夜になって、Putekoという会社について、まだ何も聞いてないことに気がついた。いつ、誰が、どこで、どういう経緯で設立した会社なのか? 資本金は? 従業員数は? 会社の場所は? 「今ごろになって、すみません」と断りつつ、それを聞いたのは8:37pmだった。

8分後にJessopから返事が来た。これでやっとなんとかなりそうだとの感触が得られたが、真っ先に聞くべきことが、イベント前日の夜まで意識に上らないあたり、やっぱり向いてないんじゃないかと。

当日、0:30pmからリハーサルをやり、2:30pmからイベントが始まり、5:20pmからの出番を待っているときに、「やっぱり英語でやりませんか」って話になった。えーーーっ?! 「一部だけでも」。押し切られ、自己紹介の部分だけ英語でやることになった。

●Putekoはテクノロジー化した鳥

カンタベリー大学(University of Canterbury)はニュージーランド南島クライストチャーチ市にある大学である。その中に「HIT Lab NZ」という研究機関がある。何がヒットするのかと思いきや、"HumanInterface Technology"の略であった。AR(augmented reality,拡張現実)などを研究している。

そこの研究者が、研究成果を学会発表すると、「面白い!」と世界中から評判をとり、賞をいくつか獲得した。「事業化、行けんじゃね?」って話になると、資金がドバッと集まり、ノリと勢いで会社ができた。

領域としては、"edu-tainment"に属する。「教育」と「エンターテインメント」の合成語で、1975年から使われている用語である。ユーザにとっては楽しく遊んでいるだけなのに、知らず知らずのうちに知識や技能が身につくようになっている仕組みを指していう。

製品は、言わば、「飛び出す塗り絵」。紙に印刷された線画が用意されていて、ユーザは自由自在に色を塗っていくことができる。それをスマホにかざすと、絵が立体になって飛び出してきて、カメラが捉えている背景の絵の中にリアルタイムで合成されて動くというもの。

スマホアプリを作ってショップに投げると、日本のブロガーが見つけて紹介してくれたらしい。評判が広まり、テレビでも取り上げられたらしい。よーし、市場は日本だ! ってことで、営業の拠点を日本に移した。

従業員数は七人で、うち四人が日本にいるという。ニュージーランドの三人は、その後もHITLabに所属して研究を継続し、技術を前進させていて、Putekoから給料が出ているという。

コア技術があるというのはいいことで、他社の追随を許さず、安定的にオンリーワンの座を保持することができる。技術の側から、「面白いもん作ったから、みんな見てよ見てよ」とノリノリで進んできた会社である。

自然に評判が広まっていっているうちはよかったのだが、ここへ来て、拡散の勢いが鈍ってきた。次のステージに進んで、さらなる成長を狙うためには、いよいよ何かを仕掛けなくてはならない情勢になってきた。それで、Heart Catchのプログラムに応募してきたというわけである。

ニュージーランドには「pukeko」という鳥がいる。それとテクノロジーの「テック」とを組み合わせて「Puteko」。テクノ鳥である。

●画期的なイベントとなった(らしい)

下っ端サラリーマン生活を27年間続けている私は、会社経営に関してまったくの門外漢である。なので、今回のイベントについて、論評できる立場にはない。

「デザインとマーケティングの力でスタートアップを進化させる画期的なイベントが開催された」と報じるメディアがあったりするが、スタートアップ向けのイベントが今までに開催されたことがあるのかないのか私は知る由もなく、あったとしても、今回のイベントのどこが際立っていたのかを浮き彫りにするための、比較の視点も持ち合わせていない。

そういうわけで、今回のイベントがどうだったかについては、経営者視点をもった人の書いたレポートを参照したほうが手っ取り早かろう。イベントの翌日には、もう記事が二本出た。いずれも「THE BRIDGE」から。

ウェブメディアのこのスピード感がたまらない。もちろん伝統的な紙の新聞だって速報性は高いけど、新聞記事はこんなに長くはない。

経営をデザインとマーケティングから考える──500名を集めた『HEARTCATCH』がスタートアップに投げかけたもの by Takeshi Hirano on 2015.12.13
http://thebridge.jp/2015/12/heart-catch-2015-round-up

『HEARTCATCH』参加チームが、プロによるメンタリングのBEFORE/AFTERを一挙披露 
by Masaru IKEDA on 2015.12.13
http://thebridge.jp/2015/12/heart-catch-2015-showcases-5-startups

12月15日(火)には、リクルートのMEDIA TECHNOLOGY LABから記事が出た。スタートアップ5社やメンターやゲストスピーカーが一覧できるようリストアップされ、情報がよく整理されている。

五社の中から、眠りのクオリティの改善を狙いとするNeurospace/nemeeに焦点を当てて、Before/Afterを詳述している。また、トークセッションについても内容まで立ち入ってレポートしている。

News/『HEARTCATCH』!デザインとマーケの力でスタートアップを進化させろ。
2015/12/15
http://mtl.recruit.co.jp/hartcatch2015/

なので、イベントの全体的なレポートは、上記メディアを参照していただくことにして、ここでは、それらのメディアが完全にスルーしてくれた、私の出番について。

会場に入ると、壁に大きなパネルが掲げてあり、スタートアップ五社と、パートナーが配置されている。パートナーは、JAL、IBM、Microsoft、伊藤園、UCC COFFEEなどがロゴマークで示されている。それらに混ざって、なぜか、セーラー服おじさんの顔のイラストが。
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event151212#6227818166721320130

自分の出番まで待ち時間が長かった割には、自分ひとりの世界に浸れる時間がまとまって取れることはなく、言うべきことをきっちり覚えきったという確信がないままの登壇となった。

しかも、初っ端の自己紹介は英語でやることになっている。ここはつっかえずにスムーズにやらなくてはならない。自己紹介とPutekoの紹介を合わせて2分しか与えられていないのだ。それに、カッコつけようとして失敗しては、たいへんみっともないことになる。

もし忘れて出てこない箇所があっても、ごまかしきれ。今まで経験のないマジメな会だけど、空気に気おされて萎縮してはいけない。飲んでかかれ。中央ステージをはさむ形で、下手側に西村氏、上手側に私。

内心、けっこうビビってた割には、口からは英語がするすると出た。西村氏によると、空気がざわっとしたとのことで、後でエゴサしてみれば、いろいろつぶやかれている。

・セーラー服おじさんズルい。ITエンジニアだったのもアレだけど、流暢すぎる英語でのスタートアップ紹介をしている。もうセーラー服おじさんしか見えない

・何故わたしの行くイベントには必ずセーラー服おじさんが居るのか… でもこの人英語流暢でビビったし、スゲーMC上手くてわろてる、たぶんめっちゃ頭いい

・セーラー服おじさん、英語堪能でびびる。ギャップ萌え

・セーラー服おじさんのスカート丈思ってたよりすごいミニだ

・セーラー服おじさんが出てきたw

・なんと!#セーラー服おじさん

・セーラー服おじさんが英語でMCしだした!www

・セーラー服おじさん、まさかのゲストMC!

西村さん、こういうインパクトの出し方でよろしかったでしょうか? 経験のないことで、本人はできないと思っているのに、他人ができると言い、結果的に後者が正しかったってことが、たま〜に起きる。なぜ分かるのか、たいへん不思議である。

写真はこちら。
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event151212#


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/

いや〜、食った食った、腹いっぱい。腹を満たしているのは、牛のチンコ。高田馬場さかえ通りの奥にある中国四川料理の店「蜀湘苑」で晩メシを食ってきたとこ。

値段はちょっと高めでもいいから、とびっきり美味い中華料理を出す店を開拓しておきたいと思い、昨日12月16日(水)、試しにと初めて入ったとこである。9月に開店したばかりだという。

キワモノっぽいのがメニューにあるのは目に入ったが、とりあえずスルーして、四川風牛タンとハチノス和え(780円)と空心菜のニンニク風炒め(980円)と汁なし坦々麺(880円)を注文。ハチノスは蜂の巣ではなく、牛の胃袋。モツ系の大好きな私である。どれもめっちゃ美味かった。大当たり。

で、今日も同じ店へ。行く前から、そいつに狙いをつけていた。牛のペニスの土鍋煮(1680円)。シチューのような感じにやわらかく煮込んであり、味付けはかなりぴりっと辛い四川風。

ぷるっとしているが、脂身のようなゼラチン質ではなく、かといって、肉でもなく、むぎゅっとした食感。まさにチンコとしか言いようがない。妙な感じのする食い物だが、決してまずくはない。これで牛、何頭分か、っちゅうぐら気前よくごろごろ入っている。

『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書、2007.5)を著した福岡伸一氏によると、体内のコラーゲンを補給することによって、つやつやのお肌になりたいからといって、牛などのコラーゲンを摂取することには、ほとんど意味がないという。

コラーゲンは、不足すれば、体内で生成できる。それも、どんなありきたりのアミノ酸からでも作れるので、摂取するのは肉でも魚でも同じことだという。

何を摂取したとしても、元はといえば他の生物の身体の一部だったものであるから、その生物の情報が埋め込まれている。われわれは、それを一度解体し、再構成してから体内の一部として使う。たとえて言えば、単語レベルの情報を、いったんバラバラのアルファベットにほぐし、別の単語を作ってから使うようなもの。

その時点で、摂取したコラーゲンは、すでにコラーゲンではなくなっており、アミノ酸になっている。それがまた自分用のコラーゲンとして再構成されることもありうるけれど、ふつうに肉や魚を分解してできたアミノ酸から再構成したって同じことなのである。

その段でいくと、チンコを食ったからといって、自分のチンコがデカくなるってふうにはいかないようである。だいたい、見せびらかす相手もいないのに、デカいのを持ってたって持ち腐れである。女性用のパンツが大好きで、会社にも毎日穿いていっている私などには、邪魔っけなだけである。

30年くらい前、読売新聞の日曜版に米原万里氏がコラムを連載していた。ロシアから要人が来日すると、ロシア語の達人である米原氏のところに通訳の仕事が回ってくる。

政治思想が保守的な人は、食べ物についても保守的で、日本に来てまでロシア料理を食べたがる。逆に、リベラルな主義の人は、なじみのない日本料理であっても、面白がって手をつける。これを読んだ私は、将来、仮に海外に行く機会があったとして、意地でも日本料理には手を出すまいぞ、と心に誓ったものである。

牛のチンコを食ったとしても、自分のチンコの足しにはならないかもしれないが、自由な精神のスコープを広げるには多少の効果があるのではないかと思えたりするわけだ。

中国人は、四本足のものは、机と椅子以外、何でも食べると言われている。中華素材のひとつやふたつでいちいちビビっていては、日本は永久に中国に勝てない。私は中国へ行って、鳩も食ったし、亀も食った。

けど、広州で、かめに張った水の中を勢いよくくるくると泳ぎまわっていた水ごきぶりだけはダメだった。ごめん、敗北だ。誰か、かたきをとってきてはくれまいか。

市ヶ谷に「東京閣」という中国料理のお店がある。ホテルグランドヒル市ヶ谷の中にあり、宴会場という感じで、やや高級感のあるお店。店名が示すとおり、四川風でも広東風でもなく、東京風。

たしかにチャーハンは出てくるし、とろみのついたスープは出てくるし、中華料理には違いないのだが、特徴的な素材をまったく使っておらず、中華料理の味がぜんぜんしない。異国の味など試してみる気はさらさらないけど、雰囲気だけエキゾチックなムードを味わいたいって人向けなのかも。

どんだけ保守派向けのお店なんだ、と思っていたら、居合わせたのは、防衛省の団体さんであった。

暮れも押し迫ってきたけれど、私はしみじみと一年を振り返って感傷に浸るって気分にはなれない。今年は六回も海外に行ったけど、まだこれからシンガポールと中国南通が控えているのだ。緩んでいる暇がない。

私は中国や東南アジアに行くとき、自分の腕時計を現地時間に合わせない。朝、9:00amにロビー集合だとして、あ、もう8:00amだ、早く服を着て朝食に行かなきゃ、と思っても、実際にはまだ7:00amなのである。この気持ちの余裕がよい。

しかも、湧いてきた一時間は、自分が調整して作り出したものではなく、まわりが全員、勝手に遅れているのだ。こっちはいつものペースを続けていればいいだけ。実に楽チンである。

中国 江蘇省 南通市で年を越す予定。12月15日(火)のこいぬまめぐみさんのコラム『2016年は、一時間遅れでやってくる』じゃないけど、私の新年は文字通り一時間遅れでやってくる。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20151215140100.html


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編集後記(12/18)

●横田増生「仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン」を読んだ(小学館、2015)。宅配ドライバーの助手、物流センターの倉庫係としての潜入取材も加えた「宅配戦争」の興味深いレポート。宅配便のネットワークは既になくてはならない「社会のインフラ」である。だが、宅配業界はヤマト運輸、佐川急便、日本郵便による寡占化が明白で、三社による果てしない価格競争が繰り広げられている。そのため宅配便を取り巻く環境は日に日に厳しさを増し、制度疲労がいたるところに見えてきた。このまま消耗戦を続けると、宅配便の仕組みを維持することが難しくなっているように思える、と筆者は警告する。

宅配市場は現在、ネット通販市場の急拡大を背景に成長を続けている。しかし、ネット通販の宅配荷物は運賃が安く、かつ高いサービスレベルが要求される。いまや8割以上のネット通販業者は「送料無料」を掲げている。それは宅配業者への安い運賃という形で現れる。2013年春、佐川は最大手の荷主であるネット通販の雄、アマゾンジャパンとの取引を打ち切った。「荷物を多く集めれば利益が出る」という考えを改め「運賃適正化」に方針を変えた。アマゾンは荷物量ではダントツだが、運賃は最も安いグループに入っており、ほとんど利益が出ない。佐川の現場では早くからアマゾンは邪魔者扱いだったそうだ。

佐川から100億円のエサを提供されたヤマトは、運賃が原価をわっているらしく、集配品質の低下と固定費の増加で悩んでいる。そして、アマゾンのネット通販に感化され、「送料無料」に甘やかされてきた日本の消費者は、貪欲にそれを求める。それがネット通販業者への圧力となり、回り回って宅配業者への安い運賃になるという流れができてしまった。現在の宅配業界は、従業員や下請け業者の犠牲の上に成り立っている。そうしたサービスが「社会のインフラ」として長続きするのはむずかしいだろう。一個の宅配便が、発送者の手もとを離れ、受取人に届くまでどれだけの人手がかかり、どんな設備が必要なのか。

それについては綿密に述べられており、ネット通販などが「送料無料」と標示するのは無理があることが理解できる。宅配便の利用者が、宅配業者の労働に見合う運賃を支払っているのかを見分ける尺度があるという。それは自分自身が、あるいは自分の子供を宅配業界で働かせたいかと思うかどうかだ。物流業界の労働時間は他産業の平均より長く、賃金は平均より安い。長時間で低賃金である。人が24時間働くことによりようやく宅配便が届くという仕組みの一部になりたいと思うか。宅配便の仕組みは維持されなければならない。ネット通販利用者はいずれ「送料無料」をあきらめる時が来るだろう。それが健全。

・澤穂希は引退会見で「澤穂希にしかできない仕事が」と繰り返していた。わたしは澤穂希をきらいではないが、これはビミョーなセリフだ。何様ですかと感じてしまう。澤穂希を陰でサポートする人は、質問対応マニュアルを作っておくべきだった。インタビューされる機会の多いトップアスリートは、スピーチライターを雇えば恥をかかずにすむ。この頃、テレビ見ていて、それを言っちゃーおしまいよ〜とハラハラすることが多い。 (柴田)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093798745/dgcrcom-22/
「仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン」


●明日はまにフェス!

続き。アプリの話を書こうと思ったが後日に。最近ではIngressが強い味方。待ち合わせ場所のマップや経路を検索するついでに、Ingressのマップも見ることにしている。

外出先の情勢を見、行ったことのないポータルを探す。アイテムの補給ができそうだなぁとか、ここは壊してしまおうとか考える。はじめて行く先なら、面白そうなポータルはないかとか、どの道を通ればたくさん寄れるかとかも。

となると最低でも15分前、できるなら30分〜1時間前に到着できるようにしたいという思考になる。早く着きすぎたとしても、暑い&寒い中待たなくていいし(歩くけど)、時間を潰すためのカフェがあるかを心配しなくてもいい(本は読めないけど)。

早く着けば着くほど、たくさんのポータルに寄れる。そのつもりでいたら、遅れることはなくなる。ギリギリになりそうなら、Ingressで遊ぶのをやめればいいだけなんだから。

その場に行かないと遊べない、そんなめんどくさいゲームのおかげで、ねばならないの15分前ではなく、したいの30分前目指すようになったのはメリット。遅刻がちな方はぜひIngressを! いえ、私もいつまで続けるかわかりませんが(笑) (hammer.mule)

まにまにフェスティバル(まにフェス)P4
http://m2college.net/fes4/

スマートフォン向けアプリゲームIngress(イングレス)を活用した寺田町公園の見守り活動に取り組みます!
「真田の心を引き継ぐエージェントよ、寺田町公園を守護せよ!」
http://www.city.osaka.lg.jp/tennoji/page/0000333882.html