もじもじトーク[33]「促音・撥音・拗音・長音」について考える
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。2016年最初の『もじもじトーク』です。本年もよろしくお願いします。

前回は「括弧」、前々回は「句読点」についてお話しました。どちらも、あたり前のように使ってますが、それら記号がもっている本来の意味を理解して使うと、読みやすい文章が書けるのではないでしょうか(自分の文章が読みやすいかどうかは別の話ですけど……)

さて今回は、当たり前のように使っているシリーズ第三回「促音・撥音・拗音・長音」に挑戦したいと思います。




●「促音・撥音・拗音・長音」って何?

これら四つの用語を説明してください、と言われらたら、みなさん、どうでしょうか? 僕は答えられませんでした。なので、今回も『モジカ』という雑誌に登場していただきます。

今日の参考書はこちらです。ジャーン!
http://goo.gl/UbdNpX


『モジカ』5号は1996年8月発行なので、約20年前に発行された雑誌ということになります。まず、下記の一文が目に飛び込んできました。

促音・撥音・拗音・長音───これらの違いを正確に知る人は、それほど多くない。あまりに身近すぎて、その重要性をつい見逃してしまう。しかし、こうした特殊な音節のなかにこそ、実は日本語の大きな特徴が秘められているのだ。

では、それぞれについて解説していきます。

●促音(そくおん)

促音とは「取った」や「がっこう(学校)」などの小さな『っ』で表記される音のことです。『つまった音』と説明すると分かりやすいかもしれません。

下記の三つの単語は同じ『っ』として表記されますが、ローマ字書きすると[t]と[k]と[p]と発音は異なっています。

葛藤(かっとう) [katto:]
滑降(かっこう) [kakko:]
割烹(かっぽう) [kappo:]

促音は、母音はないけど一拍の長さをもっています。その意味で「特殊音節」と呼ばれています。

●撥音(はつおん)

撥音とは「呼んだ」や「かんばん(看板)」などの『ん』で表記される音のことです。『鼻にかかる音』と説明すると分かりやすいかもしれません。

下記の二つの単語は同じ『ん』で表記されていますが、ローマ字書きすると、[n]と[m]と発音は異なっています。

簡単(かんたん) [kantan]
看板(かんばん) [kamban]

撥音も、母音はないけど一拍の長さをもっています。その意味で、促音と同様に「特殊音節」と呼ばれています。

●拗音(ようおん)

拗音とは「きゃく(客)」や「きょう(今日)」などの『ゃ』『ゅ』『ょ』で表記される音、もしくは擬態語・擬音語の「くゎっと(目を見開き)」などの『ゎ』『っ』で表記される音のことです。

●長音(ちょうおん)

長音とは、平仮名なら「おかあさん」や「おとうさん」などの『あ』や『う』で表記される音のことです。「母音を通常の倍にのばしたもの」と説明すると分かりやすいかもしれません。音声学的には長母音になります。

また、片仮名なら「ケーキ」や「カーソル」などの『ー』で表記される音のことです。外来語で使用されることが多いようです。片仮名表記の場合、見た通りの「母音を伸ばしたもの」ということです。

●促音・撥音の歴史的背景

古代の日本語では、例えば「万葉集」の中では、促音・撥音・拗音・長音ともに、表記の上では存在しなかったようです。しかし、実際の生活の中では、これらの音節は存在していたと言われています。

例えば、「とさか(鶏冠)」が「とり+さか」からできていたとすれば、音声学的には「とっさか」の時期があったはずです。

促音や撥音は、動詞の連用形に助詞の「て」が付いたときに生じることが多く、平安時代から変化が始まったと言われています。例えば、

取り+て → 取って
読み+て → 読んで

のように変化したようです。[tori+te]の[i]が脱落すると[torte]になり、これが[totte]に変化していったようです。外国語でも母音が省略されたり、異なった子音が挿入されたりするケースがみられるように、日本語でも同様の変化が生じています。

奈良時代から音声としての促音は存在していたようですが、文字の表記は存在しなかったようです。例えば、「あやまって」という口語表現があったとしても、和文表現する際は「あやまりて(誤り+て)」と記述することが通例だったようです。

和文表現での促音「っ」の記述が一般的にになったのは、江戸時代になってからのようです。

簡単に「促音・撥音・拗音・長音」それぞれの意味や役割を書いてみましたが、日本語音声学を学んでいるような気分になりました。

●文字と言葉を誕生させた人類ってすごい

日本語をひも解くと、膨大な数の漢字があり、音読み・訓読みがあります。そして、ひらがら・カタカナがあります。そして、アルファベット混じりの文章を書く場合もありますよね。

また、人と人が直接コミュニケーションする際は、文章だけでなく、抑揚をともなった音声でやりとりするわけです。人類ってすごいなぁと思いました。

告白しますと、僕、学生の頃、文章書くのがすごく苦手でした。読書感想文の宿題が出たときは、原稿用紙の前にして、じっと固まってしまうタイプでした。

そして、彼女に手紙を書くなんてことになったら、そりゃー、もう大変でした。便箋を何枚もダメにしました。二日ががりで手紙を仕上げたりしてね…(笑)

そういえば、当時、便箋などの文房具はサンリオキャラクタが全盛期でした。ハローキティが誕生したのはその頃です。1974年。パティ&ジミーやリトルツインスターズも流行ってました。

ハローキティは息の長いキャラクタに育ちましたね。1970年代のキャクタ話はいつかのテーマにしたいと思います。脱線してすみません。

というわけで、文章を書くのは得意ではありませんが、ご縁があって一昨年、デジクリデビューしました。そしてどうにか休まず今日まで続けております。継続することへの情熱だけはありますので(笑)、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願いします。

今回で33本目の連載記事ですが、100本目を書く頃にはもっと素敵な文章が書けるようになっているといいのですが…。ご期待ください。

当たり前のように使っているシリーズ、第一回「句読点(丸と点)」、第二回「括弧」、第三回「促音・撥音・拗音・長音」をお送りしました。

参考文献:モジカ5号(1996年8月発行)「促音・撥音・拗音・長音」


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。