晴耕雨読[19]アナログとデジタルの話/福間晴耕

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この前の新年会で、もう若手とはいえない友人同士で、古い技術が失われていくのを目の当たりしているという話で盛り上がった。例えば、こんな感じ。

回路屋さんから見ると今や多くの電子回路がデジタル化したために、アナログ回路を設計できる若手がほとんどいないようだ。

アプリケーション屋さんだと、当然必要だったメモリマップを頭に書けるスキルを持つ若い人が、どれくらいいるかわからない。

Webデザインでは、アプリケーション層以下のTCP/IPのような、トランスポート層・ネットワーク層のプロトコル設計をできる人が若手にはあまりいない。





幸か不幸か、今では多くの事がこうした低レイヤーの技術を知らなくても作業できるようになっているので問題にはなってないが、老害臭い事を言わせてもらうと、こうした低レイヤー部分がわかっていれば、トラブルになった時の切り抜け方にも繋がるし、業務効率はだいぶ上がると思うのだ。

こうした話はエンジニア関係だけでなく、自分の関わるCG関係でも当てはまる。

デザイナー必須のPhotoshopも、実は多くの機能はアナログ時代の製版や写真の暗室ワークのシミュレートになっていて、用語はもちろんのこと、ある操作をするとどんな変化が起きるかも、実はアナログ時代のシミュレーションにほかならない。

おかげで、自分のように当時のやり方を知っている人間には直感的に操作できるわけだが、当時を知らない人達はかえって使いにくい部分もあるのではないかと思うのだ。

例えば、覆い焼きツールのアイコンは、写真を印画紙にプリントする時に手で印画紙を覆う動作がモチーフになっていることなど、どれほどの人が知っているだろうか。

もう一つの問題は、エンジニアリングやデザインに限らず、今や多くの仕事が細分化していて、全体を知っている人が少なくなったことだろう。

例えば、自分が関わっているゲームやCGでも、昔は一人で部門の全行程を担当することが普通だったのが、今や個々の作業でさえも作る物が年々大掛かりになった事もあり、各専門毎に別々の人が担当するようになっている。

もちろん、そうしないとこなせないし効率も悪いからなのだが、そのせいもあって、同じ仕事を分担する間同士でさえ断絶が始まっている感じがする。

まして、最初に述べたように元になる知識レベルからズレが生じている状況を見ると、このままでは思想レベルで話が咬み合わなくなってきて、人材交流さえ難しくなってくるのではないだろうか。

せめて自分のようなベテラン(ロートル)組は、技術が継承されるフェーズが壊れつつある今、橋渡しの元になる一見枯れた古い技術を学ぶ意義や面白さを、若手に伝えていくしかないだろう。最先端の技術は若手のほうが知っているだろうし、意義があればきっと自分で勉強してくれると思う。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。