映画ザビエル[08]ヒャッハー! ってやつ/カンクロー

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◎マッドマックス 怒りのデス・ロード

原題(英題):MAD MAX:FURY ROAD
制作年度:2015年
制作国・地域: アメリカ
上映時間:120分
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト

●だいたいこんな話(作品概要)

核戦争後、文明の崩壊した世界。潤沢な地下水を支配する独裁者イモータン・ジョーによって、元警官マックスは、彼のマシンV8インターセプターと健康な血液を目的に捕らえられる。

マックスは、イモータン・ジョーの元から逃亡を図る5人の妻、そしてフュリオサ大隊長と行動を共にすることになるが。「マッドマックス」シリーズ第4弾。キネマ旬報2015年度外国映画ベストワン作品。





●わたくし的見解

私にとって映画は近年ずっと、ボジョレーヌーボーばりに何かしらの当たり年で(7年に一度だの12年に一度だの、毎回巧みに出来の良さが表現されるアレ。「フレッシュでフルーティー」って年もあるけど、ぶどうジュースがちょっと発酵した状態なんだから超当たり前! と突っ込みつつ、あの苦肉の策感がもはやカワイイ領域のボジョレー評)2015年は、娯楽大作の豊作イヤーだったと満足しています。

上半期の時点で、「ミッション:インポッシブル」と「007」の新作が観られると知っただけで大ハシャギでしたが、それらに比べると思い入れもなく、ただ予告編のインパクトだけで観に行った「マッドマックス」で得られた映画体験は、2015年イチでした。

1979年から1985年にかけて公開された前3部作については、観たことがあるという程度で、固定ファンの多い作品ながら、私自身の「待っていました感」は皆無。

前述したとおり、劇場予告の映像の迫力、トム・ハーディがメル・ギブソンに替わりマックスを演じるという点に強く惹かれて鑑賞し、本作に登場するウォーボーイズのごとく、ものの見事に、作品に熱狂し心酔してしまいました。

日本では「北斗の拳」に代表されるような、一度終わった世界の描かれ方は「マッドマックス」前3部作が源流にあるそうです。なぜかモヒカン半裸のバイカー達による暴力の台頭、水と燃料と食糧を求める日々。

「怒りのデス・ロード」は時系列的には前3部作以後に配置された物語で、特に「マッド・マックス2」の系譜にあると言ってよいでしょう。

ヒャッハー!です。世紀末救世主伝説です。千葉繁のハイテンションな次週予告です(私は未鑑賞ですが、吹替版では敵対するキャラクターの一人を千葉さんが演じてくれています。配給会社よく分かっていて偉いぞ)。

私が評価したいのは、鑑賞者のハイテンションを維持し続ける映画のハイテンションさ。作品と鑑賞する側のテンションは、悲しいかな案外ズレが生じるものですが、世界観の完成度の高さによって手に汗握る感はノンストップ。

ご覧になられた方は、ウォーボーイズのメタルスプレーによって、狂った世界観にまんまと引き摺り込まれたことでしょう。

また、まるで漫画のようなキャラクターやマシンであっても、ファンタジーにほど近い別の世界の物語のようであっても、きちんとリアリティーを失っていないのです。

水・食糧、武力を掌握した権力者が、暴力だけで人を支配するのではなく、思想や価値観(英雄として死を迎え蘇りを約束する宗教)を植え付けてシステムを安定させていること。

そしてすべてを手に入れた権力者が、自らも病に冒されている汚染された世界で最も欲しているのが健康な後継者であることも、マッドな物語に現実味を与えています。

これまでの「マッドマックス」に引き続き、驚異的に無口な主人公を演じるトム・ハーディの魅力(セクシー俳優のはずが、前半ほぼ滑稽なのが乙と言えば乙)もさることながら、本作ではやはり隻腕の女戦士フュリオサの格好よさが鼻血もの。

心拍数の上がる高槍部隊もろもろが登場するカーアクションと、美人すぎて何
も誰だか分からないシャーリーズ・セロンの存在は作品の二本柱(端正過ぎて毎回どの作品でもCMでも初見では誰? って思っちゃうんですよね。で、そう思ったから、きっとシャーリーズ・セロンだろうと山をはって、間違った試しがありません)。

実は、大騒ぎして行って帰ってくるだけのストーリーに、情緒やドラマを与えているシャーリーズ・セロン。オスカーを獲るほどの女優ですが、フュリオサ役は彼女以外のキャスティングが思い浮かばないという点で、今までで一番の当たり役ではないかと思います。

そして感想の最たるものは、ジョージ・ミラー頭おかしい、の一言に尽きます。前作から27年も経つなか、今さら感の跳ね返し方がハンパない。

監督自身の年齢が70を過ぎてなお、これほどまでにエッジの効いた禍々しい世界観を構築できるなんて、クリエーターの鑑! しかも、前作からの27年の間には人気のブタ映画「ベイブ」の続編や、踊るペンギン映画「ハッピーフィート」などを作っており、一体どーゆー人なんだ。やっぱマジで、おかしいでしょー。

しかし、ふと気づくのです。愛くるしいブタやペンギンの出てこない「怒りのデス・ロード」でも、醜い世紀末的世界で描かれているのは、希望なのでした。ある意味、一貫して希望を描き続けているジョージ・ミラーにスタンディング・オベーション。

次回作も、ついて行きます。イモぉータン・ジョぉおーー!!(←ウォーボーイズのポーズで)


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル  http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。