ローマでmanga[93]mangaセミナーと「天才的な企画」/midori

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年が改まって最初のテキストになります。私の周辺のマンガ事情を通して、とくにmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりしていきます。

Scuola Internazionale Di Comics(国際コミックス学校)で、2016年度の私のセミナーが始まった。単に「manga・セミナー」と呼んでいたのを「manga構築法セミナー」と名称を改めて二年目だ。

名称は大事だ。名は体を表すのだから当然すぎるほど当然。「mangaセミナー」という名前だと、特にイタリアで広く読まれているジャンプ系、りぼん系のmangaの描き方のセミナーというニュアンスを与えるらしい。

つまり、「お目目ぱっちりであり、忍者やなんとか波で敵を倒す特殊能力の話だったり」が意味するところとなる。

実技として短編を作ってもらうわけだが、私がいくら「絵柄は問わない」、「ファンタジーは君たちにはまだ扱いきれないからやめてね」と言っても、セミナーに参加を決めた時点で「NARUTO」が頭に一杯になっているので、どうしても下手な二番煎じしか出てこない。

話はちょっと横道にそれて、その二番煎じにまつわって、多くの生徒が作品のテーマにファンタジーやSFを選ぶのはなぜか、という考察に行ってみる。





●若さという経験不足

学校の生徒はおおむね若い。5年制の高校を終えてすぐだと18歳から19歳。セミナーに来るのはたいてい一年生なので年代的には20歳前後の生徒が多い。

中にはコールセンターなどでアルバイトをして、学費を稼ぎながら通う生徒もいるが、ほとんどが親がかりだ。つまり、まだまだ狭い世間で生きている。

現実社会での困難に出会っていない。もちろん、それなりに困難や問題があるにはあるに違いない。でもそれは社会生活で出会うほど多様ではないし、細かくない。

例えば、税金の申告漏れがあったとか、ローンの支払に問題が出て銀行と話さなくちゃ……ということはあまりない。

学校生活で嫌なやつがいたら避ければいいが、仕事の上司やチームだったら避けられない、とか。自分のやりたいことは二の次にして育児をするとか。炊事をするとか。

社会生活とは対人関係、お役所関係、様々な書類、法律、規則の世界だ。自分の都合を横へ置いとくことを、余儀なくされたりもする世界だ。

その世界の中で否応なく、彼我の問題への対応の仕方とか、反応の仕方とか、細かくも深いところを見るようになる。

早い話が、義務の数が多くなるのが社会生活だ。親に養ってもらい、学校という世間の風から守られた温室の中では、細かい深いものの見方に至らない。もちろん、例えば音楽にハマるとか、ゲームにハマるとかで、すごく細かく深く知識を得たりする場合もあるけれど、そういう意味ではない。

別の言葉で言うと、社会生活=義務と規則の世界=人様との付き合いの世界では人間への興味を持たざるを得なくなる。

私も年を取れば取るほど、人様の反応の仕方(言葉使いとか)に興味が行って、さらに日常というものを面白く見るようになったけれど、若い頃は日常とはつまらないものでしかなかった。

日常生活に興味が持てなければ、夢の方へ行くしかない。この世でない場所へ行くしかない……ということではなかろうか。

そして、自分の中から「これを語りたい」「これを伝えたい」というものが出てくるのに、多くの人は人生経験が必要ということなのだろう。

●「manga構築法セミナー」

では、manga構築法セミナーだ。物事を人様に教えるに当って、私がこのセミナーで言いたいことはなんなのか、をまずわかってもらう必要がある。

セミナーを受けようという側と私の方で食い違うと、受ける人は困惑したりがっかりしたりする。

私は私が言いたいことが何なのか、方向がわかりきっているので、セミナーを開催した当初はそれを怠ってしまった。

mangaという言葉が入るし、例として生徒に見せる画像はmangaなので、微妙に私の言いたいことがずれて到達することが多々あったのではないかと思う。

なぜそう思うかというと、セミナーの一日目はクラス一杯に参加者が集まり(30人ぐらい)、回を重ねるごとに半減、半減して行って最後には4人から5人になることが多かったからだ。

つまり、課題をやる時間を削ってまで参加をし続けようという気にならなかったわけだ。最後まで残る学生に共通していたのは、学校に来る前から絵を描くのが好きで、自分でもストーリーを作ったことがある、ということ。

つまり、作品制作の経験を持った人には私が意図するところが伝わり、そうでないと伝わらなかったということだ。

学校のコミックス科は作画家を育てるところであり、それは市場がそれを要求するからだ。ストーリーを作る人、絵を描く人、彩色をする人がいて一つの作品にするのが普通なのだ。

mangaは一人で全部やるのを前提としている。だからセミナーでは物語の基本などもやる。物語ることを面白がってもらわないと困る。

mangaセミナーから「manga構築法セミナー」に名を変えてから、授業の最初に言うことを決めた。

「私は作家ではありません。ここでは絵の描き方の講義はありません。登場人物の感情を表現するためにはどうしたらいいかを講義します」

セミナーの名前を見て決める参加者も、おおよそわかって参加してきているので、話が通じやすくなる。

●「天才的な企画」の宣伝効果

一昨年から、クラスがふたつになった。それまでは午後3時からの一クラスが私の受け持ちだった。人数が増えたというよりも、学校の方針として希望者を全員詰め込んでしまうのではなく、一クラスを15人ほどに抑えて講義を聴きやすくした結果だ。二クラスで30人というのは、これまでの出発当初とほぼ同じ人数だから。

昨年は二クラス合計で最後まで残ったのが10人ほどだから、これまでよりは打率が良い。名を変えたおかげで、私自身も何を伝えるべきか、どう伝えるべきかがやっとはっきりしてきて、生徒にも伝わった結果とも言える。

今年はそれがなんと三クラスになった。参加者は計45人ほど。

名前を変えた、Facebookで特設ページを作った、ということの他に効果があった一件がある。「天才的な企画」だ。

11月20日配信のデジクリに書いたのだけど、「実績を作りましょ、と学校の原作家と作画家に呼びかけて企画を立ち上げた。題して「天才的な企画」。

原作家のストーリーを元に、私がMANGA構築法を使ったネームを作る。バリバリにヨーロッパ風の作風を持つ作画家が原稿を描く。

「MANGAの構築法とイタリアの才を合わせた新しいマンガ」をさっさと作ってしまおうというわけだ。なんでもっと早く思いつかなかったんだろう」というこの企画だ。

この企画に作家として参加している人が、「創作の考え方」というセミナーと「電子ブック製作法」というセミナーを持っている。

つまり、コンタクトをとっている生徒数が多い。そして私のセミナーより先に出発している。この人が「manga構築法」というものや、「天才的な企画」についてしゃべるらしい。

それが宣伝効果抜群で、私のセミナーの参加希望者が増えたわけだ。三クラスにまとめて募集を締め切った後、なお、まだ希望者の打診があるという。

大盛況! と言いつつ、初回は希望届けを出したにもかかわらず、欠席した生徒が10人ほどいた。二度目はどうなるかね。

「天才的な企画」に関しては、イタリアのさる出版社に打診したところ気に入って出版してくれることになった。さらに今月のフランス・アングレーム国際漫画祭へ持って行って、フランスの出版社に打診する。
https://goo.gl/m1LhSU

出版されるということは、manga界でネームという名のストーリーボードの演出いかんで登場人物の感情に重きを置くことができ、それが読者の登場人物に感情移入して行けるmangaであり、mangaと他の形態のマンガは融合できることを証明することになる。

なんとなくmangaっぽい目が若干大きめな明らかな表情、とか、斜めのコマ割、だけがmanga表現ではないことを世間に知らせることができる。

ある言葉を学習するのに、幼いころからその環境の中に住んで学習する場合は「なんとなく」覚えていく。成長してから別の言語を学習するには、ある程度文法を学習したほうが効果が高い。

mangaを読む学生でも、メンタリティがイタリアなので、作ってくる作品はどうしてもキャラの行動を追っていく作品になってしまう。

manga構築法は文法に当たる。三クラスになったセミナーがイタリアで新しいマンガを作るお役に立てることを切に願う、2016年の出発なのであった。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

上の奥歯の鈍痛に押され歯医者に通うことになった。昔々、騙されて(?)扁桃腺をザクっと切られてから、口の中で何か作業されるのはトラウマになった。

そもそも歯医者が好きっていう人はいないと思うけど。そのせいで、虫歯になっても、もうこれ以上は我慢できないとなるまで、親に言わず進行させてしまって、奥歯は全部大きな詰め物がある。

診察の結果、治療が必要な歯が四本。カプセルを被せる必要があるのが二本。

先日、初の治療に行ってきた。歳のせいで歯茎が後退し、エナメル質がない部分が出てしまっている三本に人口エナメルを施す治療をした。その治療にも歯垢をとったりで、あのキィィィィィィンというミニドリルを使わねばならなかった。

私が怖がるので麻酔をしてくれて、全作業は15分ほどで完了。冗談を言ったり、何をするのかちゃんと説明をしてくれる先生で安心できる。

患者の椅子にしろ、無影灯にしろ、ずいぶん進化してるのね。椅子には小さなスクリーンがついていて、診察の時に撮った口内のレントゲンを表示し、また、奥の見にくいところは小さなカメラがついたスティック状のものを差し込んで、そのスクリーンに映し出す。テクノロジーばんざい。

MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/32604/

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/