ところのほんとのところ[135]「撮って出し」の正体は?/所 幸則 Tokoro Yukinori

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「撮って出し」という言葉が流行っています。何も触ってないから純粋な気がすると思う、嘘がないと思う、という解釈もあるようです。

そして、銀塩がそうだから、銀塩は触りようがなかったからなどと、今の世代は大きな勘違いをしているようです。

まず「撮って出し」自体が、「自分が見たものを純粋に撮ったデータ」だということが、すでに間違いなのです。

jpegは各メーカーの開発部門の技術さんが研究を重ねて、色付けも、コントラストも、大衆にいかに喜んでもらえるかを考えて出力されているものだ、ということなんです。

それが多くのデジタルカメラにとって、売れ行きの差に繋がるからです。プリンターもそうです。メモリーカードをプリンターに挿したら、きれいな色でプリントが出てくるように調整されているものも少なくないです。




記念写真においては百歩譲っていいとしましょう。本当に肉眼で見たものより、肌も景色もきれいに写って嬉しいでしょう。但し、その写真を見ることで、現実と違う記憶にすり替えられていることは理解しましょう。それが「撮って出し」です。

そして、もともと代表的なデジカメのセンサーは、CMOSもCCDも本来色情報は持っていないということを知っておいた方がいいでしょう。RGBのフイルターを組み合わせて、なおかつ各メーカーが絵作りをしてカラーになっているのです。このことをよく覚えておいてください。

さて、「撮って出し」が、銀塩がそうだから、銀塩は触りようがなかったから、銀塩はよりこだわりの写真である、という幻想。

これについては前に書きましたが、銀塩が生まれた時から、写真を撮る人は自分が気にいったトーンになるように、自分自身で現像していました。

プリントに至っては、例えば有名なストレート写真家のアベドンは一枚焼いてから何十か所、鼻のこの部分は-1.3、目の下は+0.4とか書きまくっていたし、風景写真家で有名なアンセルアダムスは、同じ場所で最大32枚の露出違いの写真を撮り、正確に重ね合わせてすべてのディテールを出していました。

日本で人気のある植田正治さんですら、好んでプリント合成をしていました。マンレイなどはもっともっと色々な試みをしていたことは有名です。彼がやった白黒の銀塩では、後の世代が試したくなるような実験はほとんどやりつくしてしまったと言われています。

本来、写真の基本とはピンホール現象が由来です。これはカメラが産まれるはるか昔、地球ができた頃からあったと思われます。

暗い空間があり、そこに小さな穴が空いていたら、その空間の壁との距離のバランスが取れていれば、そこに外の景色が結像していたことでしょう。

それを定着したいと思ったのは、最初は画家でした。その後、科学の発展により、ガラス乾板、写真湿板などが生まれていきます。そして銀塩フィルムが発明され、普及したのが60〜70年前、その全盛期が35mmサイズのフィルムが一般に普及した頃から、フィルムの種類が減りだした2000年頃だろうか。

銀塩はいまや表現においての幅も極端に狭くなっている。それをさも基本のように言ってやっている[ところ]ら世代の人たちがいます。

どんどんムービーに侵食されて、ダメになっていく写真のいう表現。「撮って出し」だとか、表現の幅がなくなった銀塩に引っ張られてる場合ではないと思うのだけど。表現者の場合は。ただ、写って楽しいという人は、それはそれでいいと思いますよ。


さて告知です。巨大アインシュタインロマンのプリントを是非見てくださいね。神戸で初の[ところ]のプラチナプリントも見られます。

「Einstein Romance / YUKINORI TOKORO」
神戸市中央区海岸通2丁目4-8第二日新ビルB1F
Gallery TANTO TEMPO
http://tantotempo.jp/web3/

2月6日(土)より3月31日(木)まで開催します。2月6日のオープニングには在廊しています。写真集お買い上げの方には名前入りでサインします。お待ちしております。

なお、2月6日(土)には「六甲国際フェスティバル」のコミッショナーであり、世界的なポートフォリオレヴュアーであり、世界的な写真コンテストの審査員もしている杉山武毅さんと[ところ]の二人でポートフォリオレビューを行います。以下、杉山武毅さんのコメントです。

所幸則写真展を開催するにあたり、2月6日オープニング当日、所さんと僕と二人でポートフォリオレビューを行います。要申込。先着5名様まで。参加無料。お申し込みをご希望の方はinfo@tantotempo.jpまで「所幸則ポートフォリオレビュー希望」と書いてメールをください。

ポートフォリオレビューは各セッション30分〜45分。2シリーズまで拝見します。二人で拝見しますが、本ポートフォリオレビューの特徴は六甲山や主要なレビューとは異なり、作品を拝見するのみならず写真家としてやっていく上で普段悩んでおられることなどにも傾聴し、プロとして回答します。

オープニングに所さんが在廊される機会を使いますので、原則ポートフォリオレビューは公開にて実施することをあらかじめご了承ください。また、各ポートフォリオレビューの開始時間はこちらが指定します。ご了承ください。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則  http://tokoroyukinori.seesaa.net/
所幸則公式サイト   http://tokoroyukinori.com/