映画ザビエル[09]ミス仁王立ち
── カンクロー ──

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◎隠し砦の三悪人

●作品情報

原題(英題):The Hidden Fortres
制作年度:1958年
制作国・地域: 日本
上映時間: 139分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、藤田進

●だいたいこんな話(作品概要)

時は戦国、褒賞を目当てに戦に参加した百姓の太平と又七だったが、敵国の捕虜になってしまう。戦に敗けた秋月家の埋蔵金を捜す苦役を課せられるが、捕虜たちの暴動に紛れ逃げ出すことに。時を同じくして、秋月家の雪姫も埋蔵金と共に、お家再興のため同盟国を目指す逃亡の旅を始めたのであった。




●わたくし的見解

リメイク作品で雪姫を演じた長澤まさみさんの出演作を、私はとんと観たことがなく。そのため、曖昧模糊モコなイメージしか持っていないのですが、「パーフェクトなビジュアルと比べると、お芝居の方は今ひとつのアイドル女優さん」だと根拠もなく思っていたので、「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」では、なかなかエエじゃないのと、その演技力を見直しました。

オリジナル雪姫の仁王立ちを引き継いで、小ぶりな鞭らしきものをペシペシ叩く姿も様になっています。一説によると、クリスチアーノ・ロナウドも雪姫に感化されて仁王立ちしているそうですよ。嘘ですけど。むふ♪

長澤さんが達者に見えた要因は、オリジナル雪姫様の“ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン” 的演技力でしょう。

オリジナルの雪姫も長澤まさみさんに負けず劣らずの、類稀なる美貌の持ち主。いずれ当主となるべく男勝りに育てられたとは言え、如何なものかと疑問の残る酷いヘアメイクをものともしないパーフェクトビューティーぶりは、50年近く前の日本人のプロポーションとは思えません。

腰の位置の高さ、膝下の長さ、ボリュウムこそ長澤さんに及びませんが、着物の上からでも感じてとれる、お乳の形の良さ。ベイビー、君の太ももにイチコロさ。

ところがどっこい、姫様の横暴極まりない台詞回しに「この人なんとかならんのか?!」と、若干キレ気味のわたくし。それを知ってか知らずか「じゃ、雪姫様はやんごとなき身分を隠すために唖の設定でヨロシク〜」と映画の大半を姫に喋らせない流れに持ち込み、わたしくのストレスは一気に軽減。さすが、世界のクロサワです。

不思議なもので「なんとかならんのか?!」な雪姫の芝居も、終わってみると味わい深く、今となっては我が家で偉そうに振る舞う際の定番モノマネと化しているのでした。

「お茶飲もうよ、煎れてよ」
「ヤぢゃ!今、猫が膝に乗っておるのぢゃ。お茶は自分で煎れるのぢゃ!」
(カンクロー家の会話より抜粋)

さて作品。死んでこそナンボな価値観のお侍さまに、至極あっさり「死ぬな!」と仰るのです。言葉に出さずとも判ります。

あのミフネが、振り向きざまに真っ白い歯を見せてニカッと笑えば、そりゃ「生きろっ!」てことでしょう。もののけ姫のキャッチコピーよりインパクトあります。

そして、少年ジャンプ黄金期の何十年も前の作品なのに、昨日の敵は今日の友。好敵手と書いて「ライバル」と読む。強敵と書いて「友」と読む。本気と書いて「マジ」と読む。単車と書いて「マシン」と読む。もうエエか。

真壁六郎太の好敵手、田所兵衛の存在が実に効いていて、まつわる台詞も快なるかな。超我がままに思えた姫様も、ここぞと言う局面でリーダーの資質をバシッと発揮し、かっちぶーでした。主役のお百姓は、持ち前のタフさ図太さしたたかさで、湿っぽさがまるでないところも良かったです。

秋月家の再興を三部作くらいの作品で見届けたくなる、始まりを感じさせる素晴らしいラスト。なるほど「スターウォーズ」のモデルにもなっている作品というのには、すこぶる納得。これぞ紛うことなき痛快時代劇。実に、天晴じゃ!


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル  http://www.eigaxavier.com/


映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。