メグマガ[08]ささくれ/こいぬまめぐみ

投稿:  著者:  読了時間:2分(本文:約900文字)



数日前から、右手の親指にささくれができていた。爪の根元を覆う後爪郭の表皮は剥け、赤い皮膚が顔をのぞかせている。

何も刺激が加わらなければ、そこにささくれがあることなど忘れてしまいそうだが、髪の毛にシャンプーをつけて泡立てるとき、手袋をはめるとき、みかんの皮を剥くとき、紙が引っかかったとき、そこには思い出したかのように鋭く短い痛みが走る。




そのときは痛みを噛みしめるが、ほんの一瞬一瞬の我慢を重ねればいつの間にか治っていることが多いので、さほど気にもとめず、適切な処置を施さずに放置していた。

それどころか、ようやく治りかけた頃になって、小さなとっかかりが気になって、無意識でその表皮を剥いてしまった。

するとせっかく治りかけていた皮膚はふたたび剥けてしまい、より深みを増した傷口の根元にはうっすらと血が滲む。それでも放置し続けた私の指先は炎症を起こし、傷口から入った細菌によって緑色に化膿していった。

皮膚科の先生は、私の指先を見ながら、今このときに来てよかったねと言った。

さらにしばらく放置すると、どんどん膿がたまっていき、激しい痛みを伴いながらさらに悪化していくという。

やがて表面上だけでなく、奥へ奥へと侵入した細菌は骨にまで達し、壊死する。すると場合によっては、指を切断するケースに至ることもあるという。怖すぎ。

あんなに小さな傷からは想像もできなかった、殺傷力の高さ。たかがささくれとは言っていられない。

小さな綻びから生じた大きな傷口には、小さな手当てを正確に施すことで、その結び目をひとつひとつ解いていく。

ビタミンやたんぱく質をとること、手や指先の保湿ケアをすること、まとまった睡眠時間をとること、ストレスを発散すること、そのどれもが、私がこれまでできていなかったことだった。

自分自身の小さな変化ひとつにも気づけなかったのに、私は、これから大きな変化を起こそうとしている。

※都合により、この回をもちましてしばらく休載とさせていただきます。また新たなネタを引っさげて戻ってきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


【こいぬまめぐみ】
Twitter: @curewakame
BLOG: http://koinuma-megumi.hateblo.jp/

武蔵大学社会学部メディア社会学科在学中。宣伝会議コピーライター養成講座108期。