3Dプリンター奮闘記[74]3Dプリントも結局のところマンパワーなのよ/織田隆治

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,600文字)



最近の天気、というか気温の変化は凄いですねぇ…。

昨日は寒かったのに、今日は暑い! 暑いと思ったら、今日は寒い!体調を崩してしまう人も多いんじゃないでしょうか?

気温の変化ってのは、色々なところに影響しますよね。これ、3Dプリントにも言える事なんです。

例えば、FDM方式(熱溶解式プリンター)なんですが、気温の変化で微妙に出力の安定性が変わってきます。

FDM方式(熱溶解式プリンター)のプリンターは、名前の通り、素材を熱で溶かして積層して行くプリンターで、190〜240度という高温で素材が溶け、それをニュルニュルと絞り出して積層していき、それが外気の温度やファンに寄って冷やされて固まります。

以前にもここで書きましたが、物質は熱をかけると膨張し冷えると収縮します。最近のFDM方式(熱溶解式プリンター)の場合、造形テーブルを温めておき、できるだけテーブルに接した所が冷えないように工夫されています。

これは、その熱膨張や収縮により、造形テーブルから造形物が剥がれないようにしている訳ですが、外気があまりに低い場合、テーブルの温度が下がってしまって安定しなくなり、造形物の反りやハガレを生じてしまいます。

このことは素材の性質にもかなり左右されていて、溶解温度が高いABSでは必ず現れる症状です。



後加工や素材の耐久力などを考えると、一般になって来ているPLAよりは、ABSの方がずっと優れているんですが、ABSをきれいに安定して出力できる機種が少ないのはこのせいかと思います。

だったら、3Dプリンターを密封して、できるだけ外気に触れないようにして、テーブル温度を一定に保つようにすればいいのです。

この方法は今のところ、「密封した空間で3Dプリントを行う」ということに特許があるらしく、すべてのメーカーがそのような機種を作れるわけではないという状況にあるようです。

今年から来年にかけて、その特許の効力もなくなるらしいので、こういった密封式FDMプリンターがたくさん出て来る可能性もあります。

最近の3Dプリンターは、かなり精度も安定性も上がってきています。僕が3Dプリンターを使うようになった頃の精度、スピードと比べると、雲泥の差があります。

それでも、まだABSを安定して出力できる機種が少ないのが現状で、早くそういった機種が出て来ることを熱望しています。

素材の方も、最近では色々な種類が出て来ていて、ABSに近い特性を持つPLAや、ポリカーボネイトなど、すごく良い素材が見られるようになりました。

そういった素材を安定して出力するには、この「温度管理」ってのがかなり重要になっていて、本当に「FDM方式での3Dプリントの安定性」って、この「温度管理がどれだけ出来るか」だけなんじゃないかと思っています。

それにしても、あれだけテレビで取り上げられていた3Dプリンター。最近では、テレビというメディアでは殆ど見ることがなくなってきました。

僕がテレビをほとんど見なくなってしまったので、僕が「見てない」ないだけかもしれないですけどね…。テレビという大衆向けのメディアでは、センセーショナルな話題が優先されるんでしょうかね。

その反面、ネットのニュースでは色々な記事がアップされるようになってきました。この一〜二年の3Dプリント技術の進歩って凄いです。

当然、色々な技術が開発されており、ハード面、ソフト面での進化のスピードが上がって来ていることは当たり前なんですが、これは使う人の技術も上がってきているのも要因のひとつじゃないかな〜と思います。

これまで、3Dプリンターをどのように使って行くかを試行錯誤してきたが、ようやく効率よく使う方法が見えて来た、ということもその要因のひとつなのかな〜と。

最近、フルカラー石膏プリントの造形物を扱う仕事をしていて感じるのは、その精度がかなり上がって来ていることです。

フルカラー石膏プリンター自体の精度も上がってきてはいるんでしょうけど、それを扱う人の技術がかなり上がってきてるように感じます。

以前では、こんな細かいもの、石膏だし折れちゃうねって感じでしたけど、最近では、かなり細かい造形物を見る機会が増えてきました。

これって、出力をしている人の技術もかなり上がって来てるからじゃないでしょうか?

やっぱり、3Dプリントってのは、最終的にはそれらを扱う人の技術になってくるんだなぁと、実感するところでもあります。

同じ形状のものをプリントしたとして、そのプリンターの特徴を理解して、

「3Dプリントするデータを、いかにうまく3Dモデリングできるか?」

「どういった角度でプリントすれがきれいに出力できるか?」

「出力した物を、後加工でどれだけきれいに仕上げることができるか?」

といった考えが重要になってきている気がします。そういうことをマスターすると、もっと3Dプリンターを上手く使いこなせるようになって来ます。

今のところ、ハード面では、かなりの進歩が見て取れるようになってきました。確かに、最近は色々凄いプリンターが出て来ています。

しかし、その機械を使っていかに良い物を作り出すかといことで、後に付いて来るのは、「使う人の技術と知識」になってくるんだな〜と思います。

これって、3Dプリンターが普及する前の工作機械にも言えることなんでしょうね。結局、人の力なんだな、と。

なんだ、結局「マンパワー」なんだ。

同じ機械を持っていても、それを扱う人の技術で、出来上がりがかなり変わって来る。これ、普遍的なことなんですね。

最近、僕は色々な学校や会合などで、そういったことをお話しさせて頂いたり、実技をするようになってきました。そこで、必ず出て来るのが、こういう感想です。

「仕上げ作業でこんなに出来上がりが変わって来るんですね」

3Dプリンターの基礎を理解して、それをいかに上手く使って行くか、ということが重要なんですね。

おかげさまで、僕の仕事も一時はほとんどが3DCGとかプランニングでしたが、最近はほとんどが立体制作や講義に変わって来ました。

一時的なものではなく、これって、今後もどんどん増えてくるように感じています。

要は「マンパワー」でっせ! ということで、頑張ります!


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp