[4108] 尾道市東久保町の構造美の巻

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《いま風邪引いてラッキー》

■わが逃走[179]
 東久保町の構造美 の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[39]
 日本語Webフォント今昔物語・その3 自分のTwitter IDを入力してみて!
 関口浩之




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■わが逃走[179]
東久保町の構造美 の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20160414140200.html

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今回初めて『マチオモイ帖』に参加しました。

自分にとって大切な“町”をテーマとしたA4サイズの冊子を全国で展示する、公募形式の展覧会です。

2011年にスタートして以来人々の共感を呼び、参加者も来場者も年々増え続けています。参加資格はクリエイターであること。これだけです。

わたしのマチオモイ帖
http://machiomoi.net/


最初この話を聞いたときは、正直ユルい印象があったのですが、昨年秋の清水柾行さんと福島治さんによるトークを聞いて、なるほど、これはアリかもしれんぞ! と考えを改めました。

グラフィック、とくに広告のデザインは、不特定多数に対し効率よく伝えることが前提とされるため、いかに相手の立場にたって考えるかが基本と言えます。

しかしこの『マチオモイ帖』については、大仰に言ってしまえば自分の思い入れを主軸とした、いわば真逆の方法論による情報伝達が前提となるのです。

それゆえ自己満足的なモノを提示してしまうコワさもあり、どこまで客観性を維持できるのか不安でもありました。

しかしこれを“プロが作る同人誌”と考えると、大手出版社では作れないような、エッジの立った表現を提示できるチャンスともいえます。

これはもう、作らねば!!

という訳で、広島県尾道市東久保町の『マチオモイ帖』を作ることにしました。

私はここで生まれてもいなければ育ってもいませんが、ここが故郷だったらいいなあ、と訪れる度に思うのです。私にとってそういった町なのです。

また、ライフワークで撮り続けている『趣味の構造美』をいつか一冊にまとめたいという願望があったので、東久保町で撮影した偏りのある写真、過去10年分のストックからセレクトして写真集としてまとめることとしました。

被写体はあくまで“構造”なので、ほとんど寄りの写真のみで構成。

たとえ書店に置かれても誰も買わないような、究極の美《オレ基準》が完成しました。

今回はその中からとくに《オレ基準》な作品をご紹介します。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/001

黒い瓦と白い壁。そのエッジを鑑賞。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/002

山越しに、その向こうに広がる瀬戸内の島々を見下ろしている平らなところがどこにもないので、一歩進むたびに景色が変わります。気持ちで撮影。ちなみに手前の黒いところが山です。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/003

円と直線。この他にもミニマルアートのような物件多数。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/004

プラハのキュビズム建築に勝るとも劣らない、美しい門柱。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/005

壁を切り取ると抽象画になる町ってスゴイ。それと関係あるかどうかはわからないが、ここでは子供も老人も元気だ。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/006

おそらく日本で最も美しい階段。水路と重なる構造も秀逸。実に彫刻的。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/007

道の角に謎のでっぱり。傾斜した路面に対し、水平になるよう丁寧に作られている。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/008

急坂と急坂が接するところに3段だけの階段。現場合わせなのだろうか、職人の心意気を感じます。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/009

リズミカルに設置された配管。平面との対比が楽しい無作為のアート。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/04/14/images/010

やっぱり最後くらいは“引き”だよね、ということで高台から東久保町を見下ろすの図。画面左は尾道水道と瀬戸内の島々。

展覧会『わたしのマチオモイ帖展2016』は3月に大阪で行われ、盛況のうちに幕を閉じました。今後東京をはじめ、全国で展示されることになる(と思う)ので、機会があれば是非ご覧ください。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[39]
日本語Webフォント今昔物語・その3 自分のTwitter IDを入力してみて!

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20160414140100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

春らしい陽気になりましたね。みなさん、体調いかがですか? 僕はここ5日間、熱が37〜39度の間を行ったりきたりを続けています。

病院で検査したところ、インフルエンザではなかったのですが、熱がしばらく続くウィルス性の風邪のようです。流行っているとのことでした。みなさんもお気をつけください。

今年は年初からずっとスケジュールがたてこんでいました。週末を含めて4月前半まで、ほとんど休日が取れずで心身ともに緊張した状態が続いていたような気がします。風邪気味の時にもどうにか持ち堪えていたんです。

ところが、久しぶりに土日の休みがとれてゆっくりできそうになったのと、今週月曜から水曜まで社内会議以外のアポイントがほとんどない状態になっていることに気づいたら、急激に体調を崩しました。

かかりつけの病院の先生いわく「体が悲鳴をあげてるんです。このようなサインが出たら忙しくても体を休めることが必要。このまま数か月忙しい状態が続いたら、もっとひどい病気になっていたと思うよ。今、風邪引いてラッキーなんだよ」と言われました。

ほんとそう思いました。

今週前半はスケジュールに余裕があったので、やり残した仕事を一気に片付けるつもりでした。そのことを頭から一切捨てて、この二日間は会社休んでずっと寝てました。熱はまだ少しありますがだいぶ楽になりました。

なにも考えずに二日間ずっと寝てるのも、すごく贅沢なことだなと思いました。熱があって両方の鼻が詰まっているので安静が一番ですけど。

普段、体調不良で休みをとってもメール対応はするんですが、今回はずっと寝てました。でも、大事なクライアントから携帯電話に数回電話あったので、寝ながらちゃんと対応しました。そのあとすぐに寝ました……。

4月は、学校では新学期、会社では新年度でスタートする季節ではありますが、一年間の疲れも出るときだと思います。体調が悪いときは、無理せず、まずはかかりつけ医に相談するのがいいと思いました。

さて、今回は『日本語Webフォント今昔物語・その3』です。

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こちらのWebサイトで、ご自分のTwitter IDを入力してみてください。
http://goo.gl/I19o1f


Twitter ID持ってない人は、自分の好きな有名人のTwitter IDを入れてもいいですよ! @は付けずに入力してください。

ねっ、楽しいでしょ!!

ずっと読んでいたくなります。

「私って、こんなくだらないこと、いつもつぶやいているのねーー」と笑いながら見ている人もいると思いますが…(笑)

日本語Webフォントを活用したこの事例、5年前の作品「Motion Typography」です。

どうやって、こんな楽しいコンテンツを実現させているのかを簡単に解説しま
すね。

1. Twitter APIを利用して、入力したアカウントのタイムラインを数十個取得する。

2. タイムラインを形態素分析して、要素ごとに文字サイズを変えたり、フォント名を変えたりする。

3. Webフォントサーバーに必要な文字だけ(指定されたfont-familyごとに)、取りに行く。

4. 形態素分析された文字がフェードイン・フェードアウトしたり、3D回転したりします。※閲覧デバイスやブラウザにより動きが異なります。

ブラウザの右下に書体名が表示されるので、書体好きな人にとっては「おっ、これはロダンだね」とか、「これはモトヤステンシルアポロですね」とか、書体のお勉強を楽しむこともできます。

Twitterタイムラインも、テキストに動きと書体の変化が加わることで、楽しさが10倍ぐらいになりますよねーー。

この作品を作ったエンジニアさん、何がすごいかっていうと形態素解析(けいたいそかいせき)を取り入れたことだと思います。

形態素分析って「言語で意味を持つ最小単位に分析し、その要素を品詞判定等をする」ということです。日々、みなさんが利用している「なか漢字変換」(日本語文字入力)は、まさに形態素分析の応用技術といえます。

この作品をさらに発展させて、タインラインが楽しい内容だったら楽しそうな書体、悲しい内容だったら悲しそうな書体にすることもできそうです。

このように、文字を動きで表現したアニメーションを「モーションタイポグラフィ」と言います。

海外のアルファベット圏のほうがモーションタイポグラフィの作品が多いような気がします。表意文字である日本語のほうが適していると思いましたが、リアルすぎて難しいのかもしれませんね(素人目線です)。

●インフォグラフィックへの活用

もう一つ、5年間の日本語Webフォントを活用した導入事例で、記憶に残っている作品をご紹介します。これです。ジャーン!
http://goo.gl/92ou4O


これは作品「タイポマップ」、気に入っています!

主要国の面積の大きさに合わせて、文字サイズを変えて表現しています。漢字一文字で各国を表現できる日本語って素敵ですよね。アルファベットでは一文字で国を表すことは無理ですからね。

アメリカ合衆国の「米」をクリックすると、面積/人口/GDPなどが表示されます。※情報が古いままですけど。

画面を拡大すると小さい文字(面積が小さい)も出てきます。例えば、スペインを示す「西」の左下の小さい文字「葡」はポルトガルです。

さらに、メニューバーを操作することで[漢字一文字]から[日本語/正式]や[現地語]に切り替えたりすることができます。

文字サイズが[面積]で比較表示されてましたが、[人口]や[GDP]などに変更することもできます。

今回ご紹介した事例は、5年前に制作されたものですが古さを感じさせません。表意文字である日本語をうまく活用して、情報が直感的に理解できるインフォグラフィックや、見てる人を惹きつけるモーションタイポグラフィがもっともっと増えるといいなぁと思います。僕はそのセンスはないですけど。

前回と今回は、日本語Webフォントの黎明期における僕の大好きな事例をいつくか紹介しました。次回は少し新しめのおすすめ事例を紹介します。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。


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編集後記(04/14)

●久しぶりにテレビドラマを見た。TBS火曜日の「重版出来!」である。この前に見たテレビドラマは、数年前の「半沢直樹」総集編だった。わたしはテレビはニュースと天気予報と大相撲しか見なくなった。テレビは朝から晩まで、とにかくうるさいからだ。我慢できるのが唯一、NHKニュースだ。反対派のデモしか映さないという偏向ぶりは気に入らぬが、アナウンサーがまともにしゃべるからいい。「重版出来!」第一回は面白く見た。民放ってTVCMがこんなに頻繁に入るものだったのか(いまさら何をいっておるのだ)。テレビ大好きな妻は、ご贔屓番組は必ず録画して、CMを飛ばしながら快適に見る視聴プロだ。

前に「主人公の黒沢心、誰が見ても『小熊』な容貌、暑苦しいほどのガッツ。ウルトラ前向き。いいなあ。かわいいなあ」と書いた。いずれ映像化されるはずだが、誰が演るんだと思い巡らしたが、そもそも芸能界にあまり関心がないので、どんな役者がいるかわからなかった。果たして黒沢心は黒木華だという。実力のある俳優で、蒼井優に似ている、そのくらいしか知らない。しかし、誰が見ても「小熊」じゃないだろう。もっとも、誰が見ても「小熊」では俳優にはなれまい。まずまず妥当な線であろうと思って見たら、意外なことにお誂え向きではないか。新卒ピカピカの小娘を溌剌と演じて、好感度満点である。

とにかく明るい黒沢心、表情豊かでかわいらしい。発音が聞き取りやすい。姿勢がいい。走る姿が美しい。先輩の五百旗頭はオダギリジョー、壬生(ほんとはモヒカン)は荒川良々、意地悪の安井は安井顕、みんないい歳なのに役は若い。いい配役だが、編集長・和田は松重豊、神経質そうでちょっと違う。この回は、巨匠・三蔵山(小日向文世)の連載中止騒動を描いていた。30年来同じ道具で作画していた三蔵山の絵は、最近はバランスが崩れていた。そのことはみんな気づいていたが、誰も指摘できなかった。拗ねて辞めたアシスタントがネットで告発する。ネットの中傷はひどいもので、オワコン宣告まで出る。

歳を取って猫背になり、描く姿勢が変わったことがデッサンを狂わせた。黒沢心の指摘で、失意のどん底だった三蔵山はみごとに復活する。黒沢GJ☆ 笑っちゃうのは、三蔵山がフルデジタルの描画システムを導入したという極端さ。そんな無茶なー。このドラマは漫画週刊誌編集部が主な舞台になるが、小道具となる架空の漫画誌、コミックスなどが充実している。また、作中の漫画は、「重版出来!」作者の松田奈緒子のネームを、本物の売れっ子漫画家が作画しているという。かつて所属する編集部に「小熊」っぽい新卒女子が加わって楽しかったことを思い出す。わたしの似顔絵はその子が描いてくれた。 (柴田)

TBS「重版出来!」
http://www.tbs.co.jp/juhan-shuttai/



●齋藤さんのモノクロ写真好きだわ〜。/ご自愛ください〜! Twitter IDを入れてみた。@dgcrは面白すぎる。自分のはネガティヴなものだったので、その時の自分の気持ちが甦ってしまい、すぐに終わらせた。何でも明るい話題を書く方がいいね。

「重版出来!」私も見(聞き)ました〜。iPhoneのTVerで、家事をしながらなので、画面はほとんど見ていないのですが、主人公のキャラが立っていて面白かった〜! 小熊ちゃん、好きだ〜!

名古屋ウィメンズマラソン続き。ジョギング用の音楽。

趣味として音楽を聴く場合は、好き嫌いが先に立つが、走る時は「明るい」「テンションが上がる」「合いの手がある」「気晴らしになる」「気が紛れる」「テンポが一定」「リズムがわかりやすい」「深くない」「アレンジが古すぎない」「音が少なすぎない」「単純すぎない」「複雑すぎない」「揺れが少ない」「音楽が主張しすぎない」「歌詞が深すぎない」のがいい。

そういう意味では、アイドル音楽って良く出来てるなぁと。明るいヒット曲は、「ぱあーーーーっ」とはじける感じのものが多いので、テンションが上がりやすい。

お客さんと一緒に盛り上がるためのものだから、テンポがちょうど良かったりする。サビにはかけ声をかけさせるための隙間があり、心の中でかけ声をかけてみるとなんだか元気になる。

ヒットした昔の洋楽なんかもジャキジャキでテンションが上がる。あとは宝塚のショー主題歌(実況)も楽しい。入れてないけれど古いアニソンもテンション上がりそう。 (hammer.mule)

「重版出来!」初回は4月19日(火)21:59配信終了
http://tver.jp/episode/15072026/