わが逃走[179]東久保町の構造美 の巻/齋藤 浩

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今回初めて『マチオモイ帖』に参加しました。

自分にとって大切な“町”をテーマとしたA4サイズの冊子を全国で展示する、公募形式の展覧会です。

2011年にスタートして以来人々の共感を呼び、参加者も来場者も年々増え続けています。参加資格はクリエイターであること。これだけです。

わたしのマチオモイ帖
http://machiomoi.net/

最初この話を聞いたときは、正直ユルい印象があったのですが、昨年秋の清水柾行さんと福島治さんによるトークを聞いて、なるほど、これはアリかもしれんぞ! と考えを改めました。




グラフィック、とくに広告のデザインは、不特定多数に対し効率よく伝えることが前提とされるため、いかに相手の立場にたって考えるかが基本と言えます。

しかしこの『マチオモイ帖』については、大仰に言ってしまえば自分の思い入れを主軸とした、いわば真逆の方法論による情報伝達が前提となるのです。

それゆえ自己満足的なモノを提示してしまうコワさもあり、どこまで客観性を維持できるのか不安でもありました。

しかしこれを“プロが作る同人誌”と考えると、大手出版社では作れないような、エッジの立った表現を提示できるチャンスともいえます。

これはもう、作らねば!!

という訳で、広島県尾道市東久保町の『マチオモイ帖』を作ることにしました。

私はここで生まれてもいなければ育ってもいませんが、ここが故郷だったらいいなあ、と訪れる度に思うのです。私にとってそういった町なのです。

また、ライフワークで撮り続けている『趣味の構造美』をいつか一冊にまとめたいという願望があったので、東久保町で撮影した偏りのある写真、過去10年分のストックからセレクトして写真集としてまとめることとしました。

被写体はあくまで“構造”なので、ほとんど寄りの写真のみで構成。

たとえ書店に置かれても誰も買わないような、究極の美《オレ基準》が完成しました。

今回はその中からとくに《オレ基準》な作品をご紹介します。

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黒い瓦と白い壁。そのエッジを鑑賞。

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山越しに、その向こうに広がる瀬戸内の島々を見下ろしている平らなところがどこにもないので、一歩進むたびに景色が変わります。気持ちで撮影。ちなみに手前の黒いところが山です。

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円と直線。この他にもミニマルアートのような物件多数。

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プラハのキュビズム建築に勝るとも劣らない、美しい門柱。

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壁を切り取ると抽象画になる町ってスゴイ。それと関係あるかどうかはわからないが、ここでは子供も老人も元気だ。

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おそらく日本で最も美しい階段。水路と重なる構造も秀逸。実に彫刻的。

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道の角に謎のでっぱり。傾斜した路面に対し、水平になるよう丁寧に作られている。

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急坂と急坂が接するところに3段だけの階段。現場合わせなのだろうか、職人の心意気を感じます。

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リズミカルに設置された配管。平面との対比が楽しい無作為のアート。

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やっぱり最後くらいは“引き”だよね、ということで高台から東久保町を見下ろすの図。画面左は尾道水道と瀬戸内の島々。

展覧会『わたしのマチオモイ帖展2016』は3月に大阪で行われ、盛況のうちに幕を閉じました。今後東京をはじめ、全国で展示されることになる(と思う)ので、機会があれば是非ご覧ください。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。