羽化の作法[15]段ボール村とラブホテルのクリスマス戦線/武 盾一郎

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12月。街はクリスマス気分だが、僕たちはクリスマスまでにラブホテルの壁画の仕事を終わらせなければならなかった。

そして、新宿西口地下道は段ボールハウス強制撤去の噂で緊迫していた。僕たちはどっちに行っても緊張の連続だった。こういったものは重なるものだ。

さて、デジクリでは11回「強制撤去の情報」で12月10日に写真家の木暮茂夫さんの路上写真展のことを書いている。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160301140100.html

[13][14]ではいったん時間をちょっと遡って、ラブホテルでの出来事を書いてきた。そして今回は、再び木暮さんの路上写真展の時間に合流します。




合流までの出来事を制作ノートからピックアップ

11月7日(火)ラブホテル

ヤマネ失踪事件
参照:[13]ラブホテルでの制作・ヤマネ失踪事件
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160329140300.html

12月5日(火)ラブホテル

「自分の奥からイメージを引っ張りだすんだ。そこに素晴らしいものがあると信じて。」

12月7日(木)・ラブホテル

ヤマネのお気に入りの掃除の仕事してる女性(アジア系外国人)がいなくなる 一品おばちゃんのメニューはにゅうめん
参照:[14]辻仁成さんのコラムで新宿段ボールハウス絵画が紹介される
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160412140300.html

12月9日(土)・新宿

路上テレビの遠藤大輔さんから来年一月に強制撤去があるとの情報

12月10日(日)・新宿

写真家の木暮茂夫さんが路上写真展を開催
参照:羽化の作法[11]強制撤去の情報
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160301140100.html

僕たちのスケジュール

1・月〜金はラブホテル壁画制作
2・土日は新宿段ボールハウス絵画制作
3・ラブホテルはクリスマスまでに完成
4・完成後は新宿段ボールハウス制作に集中し強制撤去に臨む

12月12日(火)のラブホテル壁画制作でちょっとした事件が起きた。

それはなんと制作中にお客さんに「絵、いいねえ!」と声を掛けられたのだ。ラブホテルのお客さんとは極力鉢合わせないように気を付けてたし、見かけても目は合わせずコソコソとしてきた。

40メートルに及ぶ絵が完成に近づき迫力が出てきて、お客さんも思わず声をかけたのだろう。ラブホテルを利用する人たちの目的はひとつだ。そんな人が僕らの絵に注意を向けたのだ。

段ボールハウス絵画もそうだけど、通り過ぎるストリートで「ふり向かせてやる!」という気持ちで描いていた。

ギャラリーや美術館などで「作品を展示」するなら、見てくれることが前提だ。しかし、僕たちは誰も見てくれない場所から始めたので、まず、「ふり向かせる」ことに重きがあった。

「ステージが用意されて優雅に舞うエリートとは違うのだ! 生きてる、とは路上で叫ぶことなのだ!」という意気込みだった。

ここ、ラブホテルでも「ふり向かせる」ことができたのだ。この出来事は自分を大きく励ましてくれたのだった。

ところが、ラブホテル制作で困ったことが起こる。それはお客様が増えて、駐車場が埋まり、壁画がなかなか進められないことが多くなるのだ。師走というが、人間は忙しい時期は仕事だけでなく、全方向に忙しく励むものなのだろう。

制作ノートより

12月13日(水)ラブホテル

「このごろやけに時が経つのがはやい。客も多く、やりにくし。何とか完成させねば。」

「新たなアイデアより、どのように画面を良くしてゆくか。埋めることよりも一つ一つの完成度の高さを求めたい」

12月14日(木)ラブホテル

「もうあと10日でクリスマス・イヴだ! (壁画を)描けるのは6日……、これはもう、ハイテンションでいくしかない!」

この日は段ボールハウス制作四ヶ月記念日だった。毎月14日は休みにしようと言ってきたが、12月14日は休まなかった。

12月16日(土)新宿

「場所を変えて描いた。都庁のよく見える段ボールハウス、あんまりにも差がありすぎるところだ。地下道にはおっちゃん達がビラ配りをしていた。亡くなった人に線香をあげた。複雑な気持ちだった。」

参照:『新宿 ダンボール絵画研究』より(写真・木暮茂夫)
https://www.facebook.com/junichiro.take/photos/a.1053736031337950.1073741847.206228169422078/1178925012152384/?type=3&theater

ラブホテルの壁画はいよいよラストの一週間となった。

制作ノートより

12月18日(月)

「今週で完成させる。その思いは3人の中に充分ある。タケヲとヤマネから、その緊張のオーラが出てる。僕も頑張るしかない。少しだけ神様からも力を借りたい。。」

12月19日(火)

「あたまの中がパニックパニック。あっちもこっちも終わんない。ウワー、ウワー!!! と思ってたら雨が降ってきた。すこーし冷静に考える。

そんなに大変なことじゃない。落ち着いてやっていけば何てことないのだ。大丈夫。うまくいくさ。」

12月20日(水)

「もう20日! もうあとがない! アァ、もうもう!!!

……でもアセらないよ。アセってなんかないさ。ふはは。いけいけGo Go! 少しづつ完成させてゆくのだ」

12月21日(木)

「なんとか完成まで一歩!のとこまできた。もうあと少し! もうあとちょっと! 残りあと1日!!」

12月22日(金)冬至

「おわった おわった また新宿ONLYの日々が始まる。休みはない。打って、打って、打ち上げて、あすからまた[新宿]だ!!!」

ラブホテルの壁画は見事に完成した。休むまもなく僕たちは強制撤去されるであろう段ボールハウス群に絵を描くために、極寒の新宿西口地下道に向かうのだった。(つづく)


【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/もっともっとこの星の美しい風景をいっぱい見たい】

小説家の星野智幸コレクション全四巻(人文書院)の装画制作中です。制作過程をフェイスブック、ツイッターにアップしております。夏以降に出版となります。乞うご期待!
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ガブリエルガブリエラ第四回展覧会『瞳をぬけると金色野原』
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代官山アートラッシュ『薔薇』展にて
5月3日(火)〜5月16日(月)
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ジュエリーは一点ものも含めかなりなくなってしまいましたが、まだまだ作品ございますので、ぜひお立ち寄りください!

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