グラフィック薄氷大魔王[474]冨田勲「惑星」のジャケット絵って長岡秀星なの?
── 吉井 宏 ──

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●冨田勲、逝去

ああ〜〜〜。冨田勲も逝ってしまった。

前にも書いたけど、僕の別格的英雄クリエイターは二人いて、冨田勲と、昨年亡くなった長岡秀星。どちらも、日本で一流の実績がありながら、個人で動いて海外進出し大成功を収め、人々に大きな影響を与えたクリエイター。

・グラフィック薄氷大魔王[442]「スマホネックのひどいやつ」
「追悼・長岡秀星」他、小ネタ集
https://bn.dgcr.com/archives/20150729140100.html


シンセサイザーのアルバムはだいたい持っててもちろん大好き。YMOやクラフトワーク、ウォルター・カルロスの「スイッチト・オン・バッハ」と平行して、冨田勲も本格的に聴き始めたのだった。




シンセを入手して多重録音し始めた81年頃のシンセの手引き書やムック本には、たいてい冨田勲の特集が組まれてた。

当時のシンセの本に載っていた、冨田以外の世界中のクラシックアレンジ系のシンセアーティストのアルバムも聴いてみたけど、どれも大味。

冨田以上に手間をかけてシンセを色彩豊かに活かしきるような、繊細な使い方をしてるアーティストは他にいなかった。今だっていないでしょう。日本人特有の、どうかしてるほどの凝り性を初めて意識したのだったw

僕も最初は氏のシンセ音楽から入ったけど、テレビ番組のテーマ曲などのほうが本領発揮っぽい気がする。シンセ音楽は割と「余技・趣味・楽しみ」っぽい。僕的には、ウォルター・カルロスがバッハの入り口になったように、冨田はドビュッシーの入り口になった。

最後まで現役だったのも素晴らしい。初音ミク起用で若者文化に返り咲いたのには驚いた。つい数年前に「タモリ倶楽部」のシンセ特集に、弟子の松武秀樹といっしょに出てて、飄々としてておもしろかったなあ。

「新日本紀行のテーマ」は、古今東西あらゆる音楽の中で最高傑作の一つだと思う。

アース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイト、デビッド・ボウイ、プリンス……。今年はキツいなあ。神アーティストがどんどんいなくなる。

●「惑星」のジャケット絵って、長岡秀星なの?

冨田勲の「惑星」のジャケット絵って、長岡秀星なの? 検索するとそう書いてあるところがいくつか。当時から秀星作品と思ったことは一度もなかった。ぜんぜん違うよねえ?

もし本当に秀星なら、僕の二大英雄のコラボってことになるんだけど。当時の印象では、無名イラストレーターの「流行りのハイテクっぽいエアブラシイラスト」としか思わず、琴線に触れなかった。実家にLPがいくつかあるので、今度確認してみたい。

http://retro.recordsale.de/cdpix/t/tomita-theplanets(obi)(3)

う〜〜ん、曲線多用の宇宙船の形は秀星っぽいと言えなくもないけど、タッチはまったく別モノ。エアブラシがヘタすぎる。土星の輪とか特に。ミサイルのような部分の先端を赤で塗るようなベタなことしないでしょ。

しかし、下の円錐形の光の中の冨田像部分は確かに秀星っぽいかも……。「惑星」リリースの1977年といえば、秀星の緻密絵のピークとも言える時期、この絵はぜんぜんちがうと思うがなあ。

Facebookで話題に出したら、やはりみなさん「冨田勲のジャケットは長岡秀星が描いていた」というイメージを持ってる人が多い。ただ、よくよく聞くと喜多郎やELOなどと混同してるかもしれないとのこと。

「tomita isao cover」で画像検索してジャケットをざっと観てみると、「大峡谷」が秀星っぽい以外、それっぽいものはない。その「大峡谷」のアートは、鶴田一郎氏でした。ノエビア化粧品のイラストでブレイクする前に、SFイラストを描かれてたのはよく知ってます。

http://www.isaotomita.net/recordings/grand.html


しつこく検索してたら、「惑星」のアーチストが判明! ジャケットの裏にStanislaw Fernandesってクレジットがあった。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0090S4DF6/dgcrcom-22/


検索すると、知ってる知ってる! 無名どころかOMNI誌の表紙とか描いてる一流の人だよ。氏のサイトのSFファンタジーのコーナーに「惑星」の絵もある。

http://www.sf01.com/PagesSF/SciFi&Fantasy.html


エアブラシ時代のペーター佐藤はこの人の影響? いや、OMNI誌の年代を見ると、むしろペーター佐藤がStanislaw Fernandesに影響与えてる可能性。

http://www.sf01.com/PagesSF/Special.html


すると、冨田勲と長岡秀星の接点はなかった、ということでいいのかな?


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


GW明けすぐの締切がなかったので、めずらしくゆったり過ごせた。実家へも行ったし。後半は久しぶりにホームページの整備をしようと確認してみたらびっくり。

ちょうど4年前のクリエイターEXPO 2012の直前にいじって以来、ほとんど何も更新してなかったw 新しく載せたい項目をリストにしたら、とてもじゃないけど数日で終わるような分量じゃない。一応、取っかかりはつけたけど、何か月かかけて更新していかなくちゃ。

あと、GWが終わるのを見計らって「ズートピア」観てきた。日本語吹き替え版。めちゃくちゃ面白いし泣けるし最高スギル。ディズニーアニメーションスタジオの大進撃スゴすぎる。憎たらしいほどのあまりの完璧ぶりに地団駄踏みたくなる感じ。早くBlu-ray発売して!

内容は、アメリカ社会の理想と現実と理想。タイトルがそもそも理想郷だしね。どの社会でも「人を見かけや先入観で判断しちゃダメだよ」って話として通用するんだろうけど、そんなレベルじゃなく、相当踏み込んでます。ただ、日本語版は事前に聞いてたより、そのへんかなりマイルドに改変されてるらしい。

・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/


・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


・rinkakの3Dプリント作品ショップ
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii