もじもじトーク[41]大好きなTVCMと丸明オールドと/関口浩之

投稿:  著者:  読了時間:7分(本文:約3,000文字)



こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

みなさんは、テレビコマーシャルやポスターを観察するのが好きですか? 僕は大好きなんです。まずは、僕の大好きなコマーシャル映像をご覧になってください!

長崎バス運転者募集CM 「南越のふたり」篇 60秒


バスに乗ってくる幼い姉妹の会話が微笑ましいですよね…。そして、バスの運転手を演じる役所広司さんの表情がすごくいいです。なんかジーンとくるものがあります。このコマーシャルには、あと2パターンあります。




長崎バス運転者募集CM 「神ノ島の人々」篇 60秒
https://goo.gl/n7rxBw

長崎バス運転者募集CM 「オープニング」篇 60秒
https://goo.gl/wL5QU3

この映像は、バスの運転手さんを募集するCMなんです。すごくクオリティが高いと思いませんか? CMというよりも映画の予告を見ているような感覚になりました。

僕はこのCMが好き過ぎて、長崎バスのスペシャルサイトをじっくり見てしまいました。

長崎バス 80周年CMスペシャルサイト
https://www.nagasaki-bus.co.jp/recruit/businfo/lp/

ここで使われている文字は僕の大好きな「丸明オールド」という書体です。明朝体なのに各エレメントが丸で構成された「丸い明朝体」なのです。このCMには温かみのある丸明オールドが似合います。

えっ、なんで、いきなりそんな話をしたかと言いますと…、

昨晩、このCMをプロデュースしたアートディレクターの副田高行さんと、書体設計家の片岡朗さんをお招きしてセミナーを開催したからなんです。

◎FONTPLUS DAYセミナー Vol.3 [ざっくばらんなデザインのお話]
http://fontplus.connpass.com/event/31249/

先ほどご紹介した長崎バスの三つの映像は、登壇者の一人である副田高行さんがプロデュースした作品なんです。副田さんのことをご存知ない方もいるかと思いますが、みなさんが知っている広告をたくさん手がけている方なんです。

いくつか例を挙げると、サントリー「ナマ樽」・「モルツ」・「ウイスキー KONISHIKI」キャンペーン、JR九州、ANA「ニューヨークへ、行こう」、トヨタ「エコ・プロジェクト」・「ReBORN」キャンペーン、シャープ液晶テレビ「アクオス」、高橋酒造「しろ」、福井市「一乗谷 DISCOVERY PROJECT」、earth music & ecology、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」、連続テレビ小説「あさが来た」などなど。

最近のコマーシャルは、人気の女優アイドルを起用して、そのタレント性や話題性を活用した作品が多いような気がします。「あのアイドルが好きだからこのCMが好き」という声をよく聞きます。

インパクトはあるかもしれませんが、その広告を出している会社のブランディングがうまくいっていかというと、そうでない場合も多いと思います。

一方、副田さんの作品テーマはあくまでも人であり、生活であり、愛だったり感情だったりするものが多いと思います。心の琴線に触れるって感じですね。

また、作品のほとんどが、スタジオ撮影ではなく、実際の現場ロケーションでのカメラ撮影が多いのです。そして、その「映像」と組み合わされる「キャッチコピー」と「音楽」がうまく融合して違和感がない作品に仕上がっています。

最初に紹介した長崎バスのCMのひとつは役所広司さんを起用していますが、テーマは長崎であり、バスであり、その地域の人々であることが、60秒の映像を一度見ただけで感じられます。

そんな副田さんがプロデュースした映像をふたつ発見したのでご紹介します。

高橋酒造 米焼酎「しろ」「ぬか漬けをつけるひと/おにぎりを握るひと」篇 
70秒
https://goo.gl/cCMYbp

高橋酒造 米焼酎「しろ」「鰹節を削るひと/魚を焼くひと」篇 30秒
https://goo.gl/ETwDe4

このCMも、丸明オールドが使われてますね。

●副田さんと片岡さんの出会い

昨晩のセミナー登壇者お二人のことを少し書きます。

片岡さんと副田さんは、写植や手書きデザインが主流だった1970年代から1980年代にかけて、広告エージェンシーで机を並べて仕事をしていた同僚だったそうです。

その後、片岡さんは書体設計家の道へ進み、副田さんは30年間にわたり広告制作の第一人者として、素晴らしいクリエーションを世に送り続けています。

そして、2000年にお二人がゴルフ場で再会した際に、片岡さんが5年かけて制作していた新書体「丸明オールド」があることを知り、副田さんはその書体ととても気に入ったそうです。

2000年2月に展開されたサントリー新モルツの広告キャンペーン(新聞15段広告)で、丸明オールドが採用されたことがきっかけで世間から脚光を浴び、15年経過した今でも、色々なシーンで丸明オールドは使用されています。

なので、副田さんは「俺のおかげで丸明オールドは有名になったんだよね」って笑って言ってました。

僕が尊敬してやまない大御所お二人をお招きして、2時間のトークセッションと懇親会を実施できて、すごく良かったです。帰り際に聞いたのですが「お二人だけのトークセッション」は初めてだったということを知りました。

昨日は、アナログからデジタルへと移行をしたデザインの現場のお話、そして、デザインの本質について熱く語っていただきました。

今回、副田高行さんのことを中心に書きましたが、片岡朗さんのことは、過去に二回書いていますので、こちらもご一読ください。

もじもじトーク[04]僕の好きな書体の仲間達(1)
丸明オールド:書体設計家の片岡朗さんをお訪ねして
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20140911140100.html

もじもじトーク[22]街中で見つけた素敵な書体たち〜第2回〜丸明オールド探検記
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20150625140100.html

良い書体・良いデザイン・良い映像・良い音楽は、人を優しくしてくれたり、和ませてくれたりする力がありますよね。そんな上質なコマーシャルやポスターを目にするとすごく幸せな気分になります。

みなさんも、そんな観点でコマーシャル映像を見ると楽しいかもしれませんよ。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。