[4146] 強制撤去「Xデー」はいつだ?

投稿:  著者:  読了時間:14分(本文:約6,700文字)



《今は今しかない》

■羽化の作法[18]
 強制撤去が近づいてくる・3
 武 盾一郎

■crossroads[18]
 最適な行動パターンを見つける
 若林健一





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■羽化の作法[18]
強制撤去が近づいてくる・3

武 盾一郎
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160621140200.html
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1995年の大晦日は年越しで朝まで段ボールハウスに絵を描いた。その後、正月も新宿西口地下道に通って絵を描いていた。

新宿西口地下道に溢れ出していたたくさんの段ボールハウスを、東京都が一方的に強制撤去する時が来る。しかし、いつ来るかは定かではない。

家に帰って次の日来たら、段ボールハウス群は跡形もなくなっていた、ということだけは避けたかった。

最悪でも誰かひとりは強制撤去のその瞬間まで、段ボールハウスに絵を描いていたかったので、僕たちは制作をシフト制にする。

これまでは集合時間を決めて描いてきたが、24時間常に誰かは段ボールハウスに絵を描いているようにしていくのだった。

◎1月5日(金)晴れてるような気がする。今日、会社が倒産して職を失ったまま写真を撮っている人に言われた事。

「ホームレスの人達の人の良さ、遠慮がちさに付け込んで、自分らの好きな絵を描いてるのではないか」

僕はおっちゃんたちを弱者として見てない。だから付け込むという発想すらなかった。警備員に「トイレで水を汲むな」と言われた。:制作ノートより

◎1月6日(土)ケンさんの家を拠点に描ける家を描いて行く。おっちゃんから手紙届いた!!:制作ノートより

◎1月8日(月)晴れていたと思ったら雨降って風もあったらしい。でも寒くなかった。今日はやたらと立ち止まって見てゆく人が多く思えた。何だか時間の流れがはやかった。:制作ノートより

◎1月9日(火)晴れてたと思うが非常に寒い。ゲストで呼ばれる以外、テレビ局はいやや!!!:制作ノートより

◎1月10日(水)ケンさんの所の絵がなかなか仕上がらない。徐々に進んではいるのだが、ウーン。撤去は何日何時なのか:制作ノートより

◎1月12日(金)ケンさんとこにヤマネが手を入れていい具合。あと何日?:制作ノートより

◎1月13日(土)撤去まであと何日? 何時間? あうあう、これからが本格的に死闘編ね。。:制作ノートより

一説には強制撤去は1月13日だという噂が流れていたが、この日が「Xデー」ではなかった。

ホッとしたと同時に、いつまでこの不眠不休が続くのかと途方に暮れる感じもあった。しかし「まだ絵が描ける!」という気持ちの方が大きく勝っていた。

毎月14日は、段ボールハウスを描き始めた8月14日の記念日なので、休みにすると決めていたが、1月14日は休まずに制作を続けた。

僕たちは「強制撤去に反対」とは言わなかった。段ボールハウスに直接的な「強制撤去反対」のメッセージを描くこともなかった。「自分たちの絵を描く」ことのみに集中した。

撤去されたらこれまで描いてきた段ボールハウス絵画の全てを失うことは理解できていたけれど、絵を記録または保存しようとはしなかった。

「保存」を前提とした「行為」なんて不純だと、心底思っていたのだった。

生産性を上げるとかいう観点からみれば、それは「虚しい」し「無駄」なことになる。そのときはただただ、全身全霊を込めて描くことだけに集中した。

もし段ボールハウスの住人に、新しいダンボールを持っていって「僕らの絵が描いてある段ボールと交換してください」って頼んだら、作品は僕の手元に残ったかもしれない。

あるいは一点一点自分らで写真記録すればよかったかも知れない。

だけど僕たちのやってきた段ボールハウス絵画は、そこに住んでいる人に頼んで描かせてもらい、そこに住んでいる人の暮らしと共に存在するものだから、描かれた段ボールだけが残ったところで、それは「抜け殻」で、それはもはや「藝術」ではない。

そこに住んでいる人が消失するなら絵もいっしょに消える、そこまでが作品なんだ。

ツイッターやインスタグラムが生活の一部になっている現在では、「今を記録しない」という感覚は理解されないかも知れない。

しかし、「今は今しかない」のだ。アーカイブを見てどれだけ生々しく思い出せたとしても、それはもうあの時の「今」ではない。「なう」とツイートしても「編集されてしまった今」なのだ。

後日談として。強制撤去によって運び出された段ボールハウスは、一時、東京都の地下倉庫に保管されていた。

新宿の西口地下道のとある扉を開けると、天井の高い広大な地下倉庫があるのだ。強制撤去から暫くして、僕は一度その倉庫の中に案内されたことがある。

強制撤去で持って行かれた、大量の野宿者達の生活用品と段ボールハウス絵画たちが棚にずらりと並べて置いてあった。

段ボールハウス絵画の引き取りを申請すれば受け取れたのだが、僕はそれをしなかった。そうしておけば多少は金と名誉になっただろうに。

今の自分だったら、段ボールハウス絵画の時間と場所をきちんと記録しただろうし、段ボールハウス絵画を引き取り、展示して売っただろう。だけど後悔は全くしていない。

◎1月15日(月)暖かい。成人式。あと何日、もう何日、、、いえいえそんなものはもうどうでもいい。ひたすら描くだけです。

「ギオンショウジャ」の言葉を描く。今日は徹夜で描いた。「ギオンショウジャ」しあげた!

画像参照:
https://www.facebook.com/junichiro.take/photos/a.1053736031337950.1073741847.206228169422078/1187296484648570/?type=3&theater

参照:羽化の作法16 強制撤去が近づいてくる・1
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160524140300.html

「目」仕上げた
参照:毎日新聞
https://www.facebook.com/junichiro.take/photos/a.1053736031337950.1073741847.206228169422078/1207655175946034/?type=3&theater
:制作ノートより

1月17日(水)血まみれで横たわっているおっちゃんを見た:制作ノートより

「Xデー」はまだ来ない。張り詰めた糸がいつまで持つのか。しかし、不思議なことに三人とも絵に対する集中度は上がってゆくのだった。(つづく)


【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/扇風機出しました】

小説家の星野智幸コレクション全四巻(人文書院)の装画を担当することになりました。只今、III巻『リンク』を制作中。制作過程をフェイスブック、ツイッターにアップしております。夏以降に出版となります。乞うご期待!
https://twitter.com/hashtag/%E6%98%9F%E9%87%8E%E6%99%BA%E5%B9%B8?f=tweets

Facebookのページ http://www.facebook.com/junichiro.take
Thttp://twitter.com/Take_J
take.junichiro@gmail.com


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■crossroads[18]
最適な行動パターンを見つける

若林健一
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160621140100.html
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こんにちは、若林です。今年初めから準備を進めていた、日本のCoderDojoコミュニティ初のカンファンレンスイベント「DojoCon Japan 2016」のサイトが正式オープンを迎えました!

手前味噌ですが、「DojoCon Japan 2016」実行委員会には様々な分野のプロフェッショナルが集まっていて、それぞれがCoderDojoやDojoConに熱い想いを持っています。

とてもボランティアグループのサイトとは思えない、素晴らしいサイトを持つことができるのも、このコミュニティの多様性のおかげです。

開催日は8月27日(土)10:30〜16:30
会場は内田洋行 大阪 ユビキタス協創広場 CANVAS
参加受付開始は7月11日(月)です ぜひ会場で私たちに会いに来てください。

DojoCon Japan 2016
http://dojocon.coderdojo.jp/

●エラーを簡単に解決する方法

さて、先日SNSでこんな面白い投稿をみつけました。

〈なんかよく分からないエラーの対処法。覚えとけ!〉

1. 英語エラーメッセージを重要な1行コピーして、Google検索
2. 一番上が「Stack Overflow」ならビンゴ
3. 質問内容が同じなのを確認して、おもむろに下にスクロール
4. Thanks! とかお礼言っている「手前」が回答

プログラマーがエラーで困った時の対処法のひとつを、冗談ぽくまとめた投稿なのですが、ソフトウェアエンジニアとしては、まさに「あるある」な話です。

ソフトウェア業界以外の方には、何のことかわからないと思いますので簡単に説明しますと。

原因不明のエラーが起こったら、とりあえずエラーメッセージで検索してみろ。最初にでてきた結果が「Stack Overflow」だったら答えが載っている可能性が高い。

でも、全部英語だし、コメントが多いとどこを読んでいいのかわからないから、とりあえず質問内容が自分の困っていることと同じということを確認し、コメント欄の「Thanks!」とお礼を言ってるところを探せ、そこで解決しているはずだ。

ということは、そのひとつ前のコメントに書いてある内容が解決方法のはずなので、そこだけ読めばいい、ということです。

「Stack Overflow」とは、プログラマー向け「Yahoo!知恵袋」のようなもので、ソフトウェアエンジニアが困ったことや教えて欲しいことを書き込むと、誰かが答えを書いてくれるというもの。

日本語版のサイトもあるのですが、英語サイトの方が歴史が長くやり取りも活発なので、欲しい情報が見つけやすいのが特徴です。

Stack Overflow
http://stackoverflow.com/

私がこの投稿に共感したのは、私もまったく同じ探し方をしたことがあるからなんです。この探し方だと、かなり効率的に得たい情報を見つけることができるのは確かです。

もちろん、エラーが発生した時の状況など、細かいところを押さえておかなければ間違った情報を得る可能性もありますから、これだけで絶対大丈夫! というものではありません。でも、闇雲に情報を探すよりは高い確率で求めている情報を見つけることができます。

将来的には人工知能の発達で、このような最適な行動パターンを人のスキルに頼らずに見つけられるようになるのかもしれませんね。

その時は「Stack Overflow」の書き込みは、ほとんどが人工知能によるものだったりして。いや、人工知能はそんな回りくどい面倒なコミュニケーション手段は使わないのかな。

いずれにせよ、「人の経験値に頼らない」そんな世界が実現されれれば便利になるとは思うのですが、コンピュータ同士が勝手にコミュニケーションをして解決してしまう人間不在の世界。それはそれで恐ろしいとさえも感じます。


【若林健一 / kwaka1208】
Web: http://kwaka1208.net/
Twitter: https://twitter.com/kwaka1208

CoderDojo奈良&生駒の開催予定
http://coderdojo-nara.org/
奈良:7月16日(土)午後
生駒:7月30日(土)午後


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編集後記(06/21)

●古谷経衡「左翼も右翼もウソばかり」を読んだ(新潮新書、2015)。内容はタイトルほどシンプルではなく、いろいろな事象を分析していて面白い。根っこは「願望」から脱せよ、なるべく「科学」や「データ(事実)」をベースに物事を見よ、ということらしい。左右両極のイデオロギーの主張には、多分に「願望」という調味料が混入していることを筆者は見逃さない。それらの「願望」がいつのまにか「事実」にすり替えられている。そして自らの「願望」は、嘘で塗り固められており、事実が自分の理想と乖離していることをうすうす認知している、というやましさがあるという。ちょっと新鮮な視点だと思う。

いわゆる「護憲派」「リベラル」が安倍政権を「ファシズム」「独裁者」呼ばわりしているが、それは「安倍首相がファシスト・独裁者であってほしい」という彼らの「願望」が作用したものだという。どこにナチ党と自民党の共通点があるというのか、そんな与太を飛ばす馬鹿は他にいない。安倍政権の誕生と継続は、ナチ党「乗っ取り」とは似ても似つかぬ、正当な手続のもと公正に行われた選挙結果であり、圧倒的な民意を得たものである。「反安倍」勢力のいう「国民の支持から遊離した安倍政権」という評価は、客観的な世論調査の数字からもまったく正しくはない。2012、2014の総選挙の結果からも明らかだ。

いわゆる安保法案成立後の政党支持率は、自民党はほとんど変わらないのに、野党はすべてがそれを下げている。安保法案では、ただただ反対ありきの野党議員たちの素っ頓狂な行為が、有権者にはパフォーマンスと映り失笑の対象になったからだろう。安倍政権による各種の政策に対し「独裁者が国民を無視して勝手に行っている」と批判する「反安倍」勢力の言説には、安倍首相がそうであってほしい」という彼らの「願望」が強く作用している。その「願望」は、大衆蔑視もいいとこだ。国民はいとも簡単に安倍首相に騙されている、リテラシーの低い愚民だ、と言っているのに等しいからだ。

国民は常に「極端」「過激」を嫌い「微温的」な落としどころを探っており、自らの選択肢の中から〈消去法にせよ〉ともあれ安倍首相を選んでいるというのが事実であり、そんな政権に「独裁」「危険」といったレッテルをはるのは不毛である。民衆が〈およそ〉安倍首相を支持しているという、現実と趨勢を直視することなしには「護憲派」「リベラル」の復権はないだろうと筆者は説く。いや、たぶん無理であろう。彼らの「願望」は彼らの中では既に「事実」に変化しているからだ。この本については、つづく。

近所のスーパー出入り口で妻が「戦争法案に反対の署名を」とお婆さんに呼び止められた。わたしの経験を聞いているから、「戦争法案なんてありません」と拒否すると、通りかかった見知らぬおじさんが「ウソのレッテルはりはやめろ!」と加勢してくれて、お婆さんはスゴスゴと退場したという。昔から、なぜかおじさんたちに好かれる妻であるが、今回はそういう話じゃない。 (柴田)

古谷経衡「左翼も右翼もウソばかり」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410610637X/dgcrcom-22/


●プログラマーじゃないけど、あるある! このサイトがなかったら、解決できていなかったことは多い。何度ここに行き着いていることか。回答横の数値の多いのを見てる。

ロビ続き。一気に作り上げるため、公式サイトにある「組み立てサポート動画」は結局見なかった。説明書だけで十分作れるよ。

上手いなぁと思ったのが、最初に目や頭部から作らせるところ。7号で胸までが形になり、ロビの頭が動いた時は嬉しくて、最後まで作ろうと思えるのだ。

後半号では解体しての作業があり、不要になるパーツまで出てくる。他から作り始めたらいいのにと思ってしまいそうになるのだが、効率重視にせず、あの嬉しさを先に用意してくれるのはさすがだなぁと。

その胸像はテストボードとして、後半号まで活躍する。普段は飾っておくこと
だってできる。一部を後で捨てることになるとしても(←しつこい)。 (hammer.mule)

第7号 頭部をヘッドスタンドに取り付け、首を動かす