グラフィック薄氷大魔王[480]「バキュームフォーム」「手で作ること」
── 吉井 宏 ──

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●バキュームフォームという製造法

簡単操作のバキュームフォーマー(キックスターター)
https://www.kickstarter.com/projects/1094489804/formbox-a-desktop-vacuum-former-that-makes-beautif/description


動画がよく出来てて魔法みたいに見えるから「画期的なマシンの登場」と思っちゃう人も多いようでちょっと話題になってた。でも、昔からある方法。掃除機を使うのも伝統。

このマシンは簡単正確に作業できるように工夫してあるところがミソ。これ、ちょっと小さいな。倍くらいのサイズだったらちょっとそそられるかも。

プラ板や塩ビ板などの樹脂板を熱であぶってダヨンダヨンに軟らかくし、台の上に載せた型に当てると同時に掃除機で空気を吸い込むと、ピッタリ密着して形を転写できる、というもの。同じ方法で巨大なユニットバスを一気に成形するのをテレビで見たことある。

僕なんかは小中学生のとき、スロットカーのボディやラジコン・Uコン飛行機の透明キャノピーを作る記事で知った。プラモデルが一般化する前からバキュームフォームキットはあったらしい。




高価な金型が不要でなので、少ない予算でもキットが出せる。マニアックな飛行機のキットやラジコンの車など、バキュームフォームキットで売られていた。
Amazonにまだそういうキット売ってますね。

10年くらい前、フィギュアを作るのに利用できないかと思って、簡易バキュームフォーマーを買ったことがある。お面やレリーフ状の作品(内側から色を塗る)や、塗装用のマスクを作れるんじゃないかと思って。

バキュームフォームのレリーフ作品には大きな利点があるんだよ。軽いし、壁にかけられる。立体作品の新しいジャンルになるかなと思って。

エアブラシ用のマスクを作るテストをしたこともある。原型に押し当ててバキュームフォームで薄皮を作り、カッターで切り抜いてエアブラシ用のマスクとして使う。切り抜きが難しかったのと、塗装してみたら隙間が空いてしまってイマイチだったけど。
http://yoshii-blog.blogspot.jp/2006/09/toys-4_29.html


塩ビ板をあたためるのがむずかしかった。電熱コンロの代わりにガスコンロを使ったから、急激にやわらかくなるしムラがあるし、失敗が多かった。垂れ下がってコンロに接触しそうになるとか。あたためるのさえクリアできれば、簡単なはずなんだけど。

こんな記事もあった。樹脂板にカラープリントしてからバキュームフォーム。
https://www.facebook.com/hiroshi.yoshii/posts/10154278446823566


これも古くからある方法だろうけど、なんか新鮮に見える。歪みを計算の上で、っても単純な平行マッピングでイケそうだねえ。プリントした金属板をプレス加工するブリキオモチャだって同じ。樹脂板にインクジェットでプリントできればイケそう。

余談。「プリント/バキュームフォーム」で検索したら出てきたこのボート。
http://miyaokamokei.blog.fc2.com/category11-1.html


大昔、小学校低学年の頃に買ってもらった「スピードボート」に色も形も非常に近いんだけど、ひょっとして同じものが生き残ってるのか? と思ったけど、たぶん持ってたものより大きいんだろうな。

そのスピードボートは、ペナペナの薄い樹脂でできた軽いもの(つまりバキュームフォーム)で、モーター搭載。庭にあった3メートルくらいの池で走らせたらビューンって一瞬で横切る速さだった。

●手で作ること

「“誰でも簡単に作れちゃう”が引き起こす、想像力と覚悟の欠如」上のほうにある「久世さんがツイート」に注目。
https://t.co/qJYIgV9Nxw


僕みたいに古い人は「手で作る/描く→パソコンでやる時代に移行→誰でも使えるデジタル工作機械が登場」の順だった。

でも、若い人たちは「デジタル工作機械がある→モノを作るためにパソコンで設計する必要→最終的に手作業が必須なことに気づく」という、逆のコースを辿るのかもしれない。

それは時代の環境であって、若者が甘いとかじゃないけどね。

「プラモデルも作ったことないのかっ!」って若者への決まり文句があるけど、プラモが普及する以前の木製キットは、大ざっぱにカットされた木片や角材と図面が入ってるだけだったそう。

昔、近所のおじさんが木製キットで作った1.3メートル(200分の1スケール)の立派な大和か武蔵の模型を見せてくれたことある(なぜか「これは陸奥だ」と言い張ってた)。

Uコンやラジコンのキットはバルサ板・ベニヤ板・角材・真鍮パイプやピアノ線・翼に貼る紙などがゴチャゴチャと入ってるだけだったしw

今そんなの渡されても、完成させる根性ない。デジタルを知った後に、手で全部作るのはやはりキツすぎる。とか言いつつ、そういえば粘土からフィギュア作ってるわ、僕。

●黒木華と重版出来

「重版出来!」、話題に乗り遅れて後半の数回しか見れなかったけど、おもしろかった。元気が出る。原作マンガは電子版が出てるから買おう。

で……ガ〜ン! 知らんかった。黒木華は「くろき はる」であって「はな」ではない、と!
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%9C%A8%E8%8F%AF


文字だけだとまったくわからない。名前って主に他人が使う識別記号なんだから、読み方混乱させないでよとw 吉永龍樹さんたちが作っているという「意外と名前を読み間違えがちな芸能人ランキング」を教えてもらった。武井咲も「たけいさき」と読んでた orz
http://ranking.goo.ne.jp/ranking/category/022id/QcFxv8pzRc-b/


つい最近まで「じゅうはんでき!」だと思ってたし、罠が多いドラマだなあw 割と近い業界にいたはずなのに、知らなかった。Painterの本を出してたとき何度か重版かかったことあるけど、「しゅったい」って聞いたことない。

Wikipediaによれば『版元の企業文化により「じゅうはんでき」と読む場合もある』って。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E7%89%88


ところで、「『重版出来』は出版に関わる者すべてが幸せになる言葉!」というセリフがあったけど、著者、出版社/編集者、印刷会社、紙屋さん、インク屋さん、輸送、取次、書店などなど、みんな重版によってお金が入る。

しかし、装丁家/デザイナーやイラストレーター・写真家は蚊帳の外 orz 会員だった十数年前、日本図書設計家協会が「装丁印税制」について運動してたけど、どうなったんだろう?


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


滅多にドラマ見ないけど、「リーガルハイ」のヒッピー弁護士も黒木華だったのか! イメージぜんぜん結びつかんかった。

告知/「シャカシャカぶらし」誕生! くまちゃんが子供の歯磨きタイムを楽しく習慣化
……クマのデザインに関わった製品がクラウドファンディングに出てます。クリップ式のクマを歯ブラシに取り付け、知育アプリと連動して子供に歯磨きの習慣を楽しく覚えられるように考えられたものです。
https://www.makuake.com/project/shakashaka-burashi/


開発者の歌野さんのインタビュー:歯みがきIoT「シャカシャカぶらし」で子供の苦手克服。Engadget電子工作部発のアイデアが2年半を経て製品化へ
http://japanese.engadget.com/2016/05/25/iot-engadget-2/


・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/


・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


・rinkakの3Dプリント作品ショップ
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii