[4148] 「人生には3つの…」の巻

投稿:  著者:  読了時間:15分(本文:約7,100文字)


《「いいね」の反応じゃつまらない》

■わが逃走[183]
 「人生には3つの…」の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[43]
 藤田重信さんの仕事の流儀
 関口浩之



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■わが逃走[183]
「人生には3つの…」 の巻

齋藤 浩
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160623140200.html
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某大学の教授になった吉田くんが、高校時代に言ってたことを思い出した。

「おまえのダメなところは3つある! には説得力がある」という。

2つでは少なすぎるし、4つでは多すぎる。そこへいくと3つという数のバランスには人の心を動かす力があるようだ。

ほほう、なるほど。

で、なぜこんな話を思い出したかというと、私のゼミ出身のデザイナーの◯◯君(仮名)にめでたいことがあり、このたび私はめでたい場に招かれ、そこでめでたいスピーチをすることになったのだ。

めでたいスピーチといえば人生において大切な3つの“玉”とか“袋”とかを思い出す。

まさかこんな話を本当にする人なんていないと思っていたが、過去に私が出席しためでたい席において、複数回登場し驚いた。

玉はあたま、めだま、肝っ玉。袋は胃袋、給料袋、堪忍袋だったか。

「3つのルーレット」なるものを制作し、おなじみの袋、玉などをはじめ、テキトーな名詞を書き込んでそれを回転させ、ルーレットが指したモノを題材に、面白くてためになる話を即興で披露するというのはどうだろう。

なかなか緊張感があっていいと思う。

しかし、出席者の誰かが3つの袋の話をしようとしていた場合、気まずいでは済まされないものがある。

とはいえ、3つの玉や袋以外で何か新しい話をつくることができたら楽しいと思うので、試みることにした。

さて、なぜ玉と袋なのか。

これはもう、キンタマブクロに由来すると考えて問題なかろう。

種族繁栄をテーマとしながら、ちょっとはずかしいモチーフという立ち位置か。

起、承、結と話は進行し、たとえば玉の場合、結で「キンタマ」を想像させつつ「肝っ玉」で着地させる。

めでたい席において、そのような言葉が主賓の口から発せられるはずなどないにもかかわらず、聞いている方はつい期待してしまい、めでたく裏切られるという構造だ。

まずはこの構造をベースにモチーフの選定をしたいと思う。

【1】
玉、袋と来れば、竿であろう。人生において大切な3つの竿。

ひとつめの竿は、「みさお」であります。何事にも節度を持って生きよ。おお、いい感じのスタートじゃないか。真っ当な話の気配があり、導入部としては好ましい。

ふたつめの竿は、「やさお」であります。つまり「優男」。男にとって最も大切なのは優しさである。

これはちょっと微妙だ。そもそも、やさ男には優柔不断等のイメージも伴うので、再考すべきかもしれない。

みっつめの竿は、「ささきいさお」であります。つまり、2人で『宇宙戦艦ヤマト』を熱唱するくらい仲の良い夫婦たれ。

ものすごく相手を選ぶ結論となってしまった。一瞬会場にざわめきがおこり、すぐに訪れる静寂を容易に想像できる。

これはダメだろう。明らかにダメだ。

【2】
思い切って最初から下品な言葉を使うというのはどうか。

人生において大切な3つのヤリチン。

ひとつめのヤリチンは、「おもいやり珍道中」。

夫婦生活とは何か、と問われたら私はすぐ、この言葉を挙げるでしょう。相手を思いやりながら、長い道のりを歩んでゆく。

旅の途中には辛く厳しいこともあるでしょう。しかしそんなことも良い思い出ととらえ、行程そのものを楽しむ気持ち。これこそが夫婦円満の秘訣なのであります。

「ヤリチン」という下品きわまりない俗語と、それに続く真っ当な話。このギャップに聴衆は引きつけられてゆく。

しかし、ふたつめ以降がまったく思いつかない。「えさやりチンアナゴ」、「なげやりチンタオビール」など言葉自体は思い浮かぶものの、それを“いい話”に着地させるアイデアがまったく出てこないのだ。

【3】
玉だの袋だの竿だのは、下世話な中学生レベルのモチーフと言える。

同様のテーマから、中学生男子が好きな3大“んこ”、つまり「ウンコ」「チンコ」「……」といったものを題材として選んではどうだろうか。

人生において大切な3つのンコ。

ひとつめのンコは「ウンコ」であります。うん、国際感覚。

ふたつめのンコは「チンコ」であります。βカロチン、コレステロールを下げる。つまり健康に留意して…。

いずれも無理がある。しかし、要調整ということでこのままボツにはしないでおく。

みっつめのンコは…「アンコ」であります。

これは肝っ玉の構造と同じだ。違う言葉を想像させつつ安心させる。

アンコ、即ちアンコントローラブル。操縦不能という意味です。

よくしっかりと手綱をとって、などと言いますが、そもそも最初からそんなことはできやしないのです。

操縦しようなどと思ってはいけません。夫婦とはたまたま目的地が同じ2機の飛行機であり、ひとつの飛行機を2人で操縦しているわけではないのです。個を尊重しつつ共に歩む。これこそが夫婦円満の秘訣なのであります。

などと考えてみたものの、いずれもめでたいスピーチにはまったく向かないと判断しました。おっさんくさいし、たぶんに自己満足的です。

ご心配おかけしました。

私もいいかげんイイ年齢なので、場をわきまえた立ち居振る舞いを心がけようと思います。

そういえば以前の職場でエライ人が「人生における3つのA」という話をしたことがあります。

1. あせるな
2. あきらめるな
3. 遊び心を大切に

だそうですが、それって3つの「あ」だよなあ。って思いました。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[43]
藤田重信さんの仕事の流儀

関口浩之
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20160623140100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

6月13日にNHKで放映された『プロフェッショナル 仕事の流儀 〜異端の文字、街にあふれる〜 書体デザイナー・藤田重信』の番組ご覧になりましたか?

書体デザイナーにフォーカスした『プロフェッショナル 仕事の流儀』の番組は、はじめてだと思います。楽しくて、あっという間の50分間でした。

●書体の持つ不思議な力

番組の冒頭、「書体が変わると印象が変わる」をテーマにして、藤田さんが制作および監修したさまざま書体が紹介されました。

では、番組で紹介された藤田さんの素敵な書体たちを一挙、Webフォントでご紹介します。じゃ〜ん。
http://goo.gl/yT9hkh

ここで紹介したのは8書体のみですが、藤田さんがいままで開発した書体は130書体以上のようです。

1書体制作するのに数年かかると言われてますので、チームで開発したとはいえ、質の高い書体をこれだけ世の中に生み出し続ける人は、他にはいないような気がしましす。

さて、この8書体の中で個人的に最も好きなのは一番上の「筑紫アンティークL」です。『春夏秋冬』って表現すると、この書体、目を引きますよね。古き時代の良き風合いを継承しつつ、でも新鮮さも感じます。

この中で一般的な明朝体は二番目の「筑紫明朝」ですかね……。何をもって一般的と定義するかは難しいですね……。

一般的を、見慣れていると定義したならば「MS明朝」や「ヒラギノ明朝」になるので、それらと比較すると「筑紫明朝」は一般的ではないかもしれません。

三番目の「筑紫B丸ゴシック」は最新のMAC OSに搭載された書体のひとつです。この丸ゴシック、かなが特徴的ですね。

六番目の「クレー」ですが、藤田さんはこんな説明してました。硬い鉛筆的なもので硬い楷書体です。なるほどと思いました。カタログみたら「硬筆体」と分類されていました。

一番最後の「パール」。個人的にはこれも結構好きです。神前結婚式場で使うとマッチしそうですね。

●追求する曲線美

藤田さんの講演を何回か聞いたことがありますが、必ず、曲線美の話がでてきます。過去にこんな話を聞きました。

・蝉の羽根にはいろんな曲線がある。その中でクマゼミの羽根の曲線は美しい。

・オバQの背中の曲線はかわいい。

・車のクーペのカーブはまっすぐに見えても、よく見ると美しいカーブを描いていることが多い。

藤田さんは、文字のハライのストロークにすごくこだわっているいると思います。ある時は、ここまでもかというぐらい伸びやかなんです。ビヨーンって感じです。

たとえば、最初の「筑紫アンティーク」の『姉』の文字をみるとよく分かります。そうかと思うと、うろこやハネの小さな部分においても、曲線を巧みに計算しているような気がします。

●引き算と足し算

番組の中、字游工房の鳥海修さんと藤田さんとの会話が印象的でした。

鳥海さんと言えば、ヒラギノを開発した書体デザイナーです。そして、字游工房はフォントワークスにとってガチンコの競合会社です。

でも藤田さんは、一年半後にリリースする予定の新書体の文字見本を持って、鳥海さんに意見を聞きに訪問したのです。そのシーンが放送されました。

鳥海さんからこんな発言がありました。

・「い」とか「む」、「し」とか「そ」、「て」もぜんぜんダメだな。

・僕はみそ汁を作るときに洗練された味噌汁を作る。でも藤田さんはいろんなものを添加している。いままで食べことない多国籍料理みたいな感じかな。

つまり、鳥海さんは引き算、藤田さんは足し算のアプローチなんですね。一見、引き算のほうがかっこいいと思われがちですが、どっちがいいということではないですね。

引き算の美学、足し算が生み出す個性、ということです。

藤田さんは、こんなことを言ってました。

・20年とか50年たってみないと良いのか悪いのか分からない。

・あれば亜流だったねで終わるか、あれば正解だったねと評価されるかは、わからない。

●開発情報をツイッターで公開

番組の最後のほうで『これは普通だね』や『いいね』の反応じゃつまらないと言っていました。普通の反応じゃあ、一年半後リリースする「Bヴィンテージ」の意味がないと……。

おおっ、将来リリース予定の新書体をテレビ番組で発表しちゃうのね。なんかすごい……。

実は、藤田さんはツイッターで新しい書体の開発情報を、どんどん発信しているのです。

このツイッターまとめ記事では1,000件近く、藤田さんのツイートが掲載されています。最初の10件ぐらい見るだけでも、すごく楽しいですよ。ぜひ、ご覧ください。
http://goo.gl/JAVGYG

普通の会社では、新製品は極秘で開発が進められるはずですよね。でも、藤田さんはどんどん発信して、意見を聞いちゃうのです。

この番組を見ながら、たくさん笑いました。たくさんうなづきました。そして泣きました。こんな素敵な番組を編成してくれたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』のプロデューサー、スタッフに感謝です。

最後に、この番組のツイッターまとめ記事を紹介しますね。なんと、5,000件近い、ツイートがあったようです。すごい。
http://goo.gl/iEu0oC


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。


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編集後記(06/23)

●朝日、読売、産経の三紙の社説をテーマ毎に並べて比較する「社説比較くん」というサイトが重宝だ。テーマが同じでないと比較にならないので、一紙しか書いていない社説はこのサイトには登場しない。実例は、6月20日の朝日の社説「沖縄県民大会 怒りと抗議に向き合え」である。他紙の社説は別テーマだから。いやはや、この日の朝日はものすごいことになっていた。一面トップから、社説、社会面まで、4本の大型記事でほぼ紙面を埋めており、まさに沖縄県民大会一色、この事案にかける意気込みは尋常ではない。「海兵隊撤退求め決議」と意気揚々、まるで沖縄ローカル新聞の紙面かとみがまうばかりだ。

「自公、参加せず」と非難するが、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の主催では、自公は参加できまい。県内11市のうち9市長は参加しておらず、全然“オール沖縄”の民意ではない。抗議する側の主張・感情に阿るばかりで、政府側の主張はガン無視。一方、読売でもものすごいことになっていた。34社会面中段に文字だけのほぼベタ記事扱い。報道の価値はないがアリバイで、といった塩梅。発行部数1位と2位の、この〈すさまじい偏向ぶり〉には笑うしかない。巨人軍新聞購読のわが家では、この沖縄イベントのことを知らなかった。朝日は知り合いに借りて読んだ。他の新聞はどう報道したのだろうか。

図書館でチェック。本日号はヒマな年寄りたちが読んでいて、当分順番が回ってこないが、バックナンバーのコーナーは誰もいない。6月20日朝刊、日経は2面と39社会面で写真も入るそこそこ大きな扱いだ。産経は1面で写真入り。タイトルは「沖縄『県民大会』超党派ならず」、23面で紙面2/3くらいの大きな記事で「『オール沖縄』に疑問の声」「一方的…基地問題の意見はそれぞれ」「親族『政治利用して欲しくない』」と産経らしい切り口。毎日は1面で「沖縄海兵隊撤退を 県民大会 女性殺害に抗議」、他の紙面でも3本の記事。朝日に次ぐ報道量である。そして「余録」というコラムがこれまた泣ける(?)。

「戦後70年が過ぎた沖縄は今なお、終戦直後の日本の影を独り背負い続けている」って…ほんまかいな。てゆうか、それどういう意味なの。27社会面の記事もすごい。「慟哭の沖縄」って…。大盛りの主催者発表でも65,000人、沖縄人口のわずか4.5%をオール沖縄の意思っていう神経が分からない。ベタ帯に白抜きで「本土の皆さん、第二の加害者は誰ですか?」って、どういう意味?本気で問い詰めたい。こういう報道が沖縄のためになるのか? 逆効果しかないと思う。年がら年中、基地の前で罵詈雑言をくり返している人々には、ヘイトスピーチ規制法で対応するべきだと思うが、沖縄県は別なのかな。 (柴田)

「社説比較くん」
http://shasetsu.ps.land.to/


●「人生における3つのA」のオチで爆笑した。/録画したけどまだ見てない〜。藤田さんの書体大好き。早く見なければ。

ロビ続き。一号あたりの組立時間は平均10〜20分程度。首や関節はサーボモーターで動くようになっていて、サーボが届く号はやることが同じ。

前の号で届いたサーボケーブルに保護シールを貼っておく。ケーブルは場所によって長さが違うので、一気に開封する人は注意。

サーボの裏蓋についている4本のネジをドライバーで外す。蓋をとる。一方のコネクターにケーブルを押し込んで接続する。奥まで押し込むとゴキッという「入った」感覚がある。ここが緩いと後で分解する羽目になるかも。

裏蓋を元通りにしネジを締める。テストボードに繋がっているケーブルを外し、今回取り付けたケーブルを接続し、テストボタンを押して動くか確認。

テストボードを操作してサーボIDを書き込む。次にIDが書き込まれているかのテスト。裏蓋を改めて外し、裏蓋の代わりにパーツを取り付ける。テストボードに繋がっていたケーブルを元に戻す。 (hammer.mule)

第15号 左前腕を組み立てる

サーボケーブルに保護シールを貼る

第16号 左前腕フレームにサーボモーターを取り付ける

最初の方はIDを書き込んだ後にテストしていない

第19号 左上腕フレームにサーボモーターを取り付ける

このあたりの号から書き込んだ後に確認している