ユーレカの日々[54]SSDをめぐる冒険/まつむらまきお

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家でメインで使っているiMac(27-inch, Mid 2011)が遅い。買ったのは今から四年前。購入時は快適そのものだったはずだ。OSのアップデートなどを繰り返すうち、いつしか激重になってしまった。

昔はMacは二年ほどで買い換えていたものだが、最近は、進化のスピードもゆるやかで、気が付くと四年以上。こんなに長くメインマシンを替えていないのは初めてだ。

●どどめ色の日々

別に、この四年でアプリの性能は、劇的に上がってはいない。考えられるのはクラウドなど、バックグラウンドでやることが、ここ数年で倍増しているのだ。

Dropbox、GoogleDrive、GmailにTwitter、iCloud。Time Machineは隙あらばバックアップしようとするし、検索エンジンはインデックスサーチを行う。便利なサービスが次々と現れる。

そんなこんなで、今年になってからか、あらゆる作業が重くなってしまった。InDesignとか、起動に5分くらいかかってるんじゃないだろうか。とにかく、何をするにも待ち時間が多く、かなりの苦痛だ。

特にTime Machineのバックアップがはじまると、もう大変である。あらゆる作業がほとんど、止まってしまう始末。マウスポインタは常に虹色(Macの作業中サイン)。ユーザーの気分は常にドドメ色だ。

一年くらい前から、ぼんやりと買い替えを考えはじめたが、最近のアップル製品は昔と比べて買い替えでワクワクさせてくれない。

現行のiMac27を見てみると、20万〜25万くらい。CPUはクロックは上がっているものの、同じクアッドコアIntel Core i5だ。

Retinaディスプレイやら(老眼なので不要)、フュージョンドライブやら(いまいち評判が悪い)、はたして20万以上の投資にみあう性能なんだろうか。

うーむ。いまひとつ食指が動かない。そもそも、それほど早いMacが欲しいわけではないのだ。普通に動いてくれればいい。どうしようか。

いま大学で使っているMacBookProは、この春の入れ替えで、現行機種で爆速だ。たしかに新しいMacは速い。しかし、アプリの起動が一瞬なのを見ると、CPU性能というより、SSDの効能のような気がする。





●そうだ、SSDがあるじゃないか

SSD。名前からしてヤバい薬物のようだ。SuperSonic(超音速)Driveかと思ったらSolid State Drive、半導体記憶装置、ということらしい。

そうだ、起動ディスクをSSDにしてしまえば、うちのMacだってこんなに遅いはずがない。しかしあれは、バカ高かったり、信頼性が低いんじゃなかったっけ。

SSDを調べてみると、あら、案外安いではないか。480GBで12,780円。4万くらいするかと思ってた。ちょっと前の1Tハードディスクくらいの値段になってる。

うちのiMacのハードディスクは1TB。同等量のSSDだと、3万くらい。普通のハードディスク同様、SATAで接続すればいいみたい。

しかしである。iMacはディスプレイ一体型。開腹手術がやっかいだ。タワータイプのMacの頃なら、HDの交換なんぞ朝飯前、MacBookも何度もHD交換はやってきた。

しかし、なんでもiMacのHDは特殊で、温度センサーが接続されており、そこをうまくやらないとファンが轟音で止まらなくなるという。なんと恐ろしい。なんと面倒な。

万一失敗したらMac買い換えかぁなどと考えていて、ふと、「外付けドライブからの起動」という手があるじゃないか、と思いつく。

この10年ほど、外付けHDから起動するなんてことは、OSのインストールをする時くらいしかやってこなかったので、すっかり意識外だった。

そういえば、昔はよく、外付けHDで起動というのをやっていた気がする。すっかり忘れていた。昔のHDはばかでかく、電源も必要で面倒だったが、今の2.5インチならUSB一本でつながるじゃないか。

よしよし、じゃあUSBにSSDを繋いで、そこから起動すればOKじゃーん♪ と思ったらそうはいかなかった。うちのiMacのUSBは低速な2.0なのだ。すぐ後のモデルから3.0になったらしい。

USB2.0と3.0では、転送速度が10倍違う。いくらSSDが高速でも、USB 2.0に繋いでたら意味がないことくらい、わたしでもわかる。

●サンダーボルト作戦!

うーむ、手詰まりか…所詮iMac…とあきらめかけたが、おや、Thunderboltという端子があるではないか。

Thunderbolt。普段、ここにはサブディスプレイをつないでいるので、すっかり「ディスプレイ端子」という意識だったのだが、このThunderboltは汎用インターフェイスであり、USB3.0よりさらに5倍の2.5GB/sだそうだ。内蔵ハードディスクを接続しているSATAと同程度の速度が出るらしい。

よっしゃー、これで外付け接続できるぞ! と、ThunderboltにSSDを接続する方法を調べてみることに。Thunderbolt外付けSSD。ありました。

ありましたが、高いぞ。512GBで4万以上する。同容量のSSDが1.2万なのだから、3倍以上。ケースだけでも、1.2万くらいである。一方、USB3.0なら外付けSSDでも、ケースでも、ずっと安価だ。くやしい。

さらにAmazonを色々見ていたら、おや、Thunderbolt─USB3.0という変換アダプターがあるじゃないか。USB3.0ならハブでいろいろつなげられる。タイムマシン用のHDなどの接続も高速化の恩恵にあずかれる。

よし、Thunderbolt─USB3.0で行くか!と、製品レビューなどをよく見てみると、「起動ディスクに使えない」ものがあるということに気がつく。あかんがな〜。

もうちょい調べてみると、同様のアダプターで、Thunderbolt─eSATAというものが見つかった。eSATAってはじめて知ったが、内部ハードディスクの接続に使われるSATAの一種で、SATA同様に高速だそうだ。

eSATA接続の外部HDケースやケーブルも製品が見つかった。しかもこのアダプターは、Thunderboltから、ThunderboltとUSB3.0、二つのコネクタが出ている。これなら外部SSDに加え、拡張性の高いUSB3.0も手に入る。

最初見つけたKanexというメーカーのアダプターは、メーカーサイトに「起動には対応してないよ」とちいさい文字で明記してあった。ひー、あぶないあぶない。

いくつかの製品のレビューやメーカーサイトを見てみるが、なかなか、Macの起動ディスクに使えるよ、という明確な保証やレビューが見つからない。散々さがして、ひとつだけ、外部起動対応をうたっている商品を見つけた。

SONNET USB 3.0 + eSATA Thunderbolt Adapter 12,938円
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00TYF2AFA/dgcrcom-22/

メーカーサイトに、Mac対応、ブート対応、eSATAとUSB同時に使える、と明記されている。

これや〜! これぞワシのために存在している商品や〜!!

Thunderboltのハードディスクケースと同じくらいの値段だが、こっちはUSB 3.0も手に入る。コストパフォーマンスは高い。ようやく幸せになれそうな予感がしてきた。

じゃあ次はSSDだ。

うーむ、しばし考える。とにかく容量を喰っているのは、音楽と写真データだ。これらはSSDにおいておく必要はない。それに、内蔵ハードディスクは取り外すわけではないので、そのまま1TBの容量が空くことになる。

これらのライブラリデータを元のハードディスクに置いておけば、起動SSDは480GBあれば、充分だということがわかった。信頼性も最近はハードディスクより高いという。なんかよさそうだ。

メーカー、製品についてはよくわからんので、Amazonで一番売れていて、価格も安かったCrucialの480GBにする。

Crucial[Micron製Crucialブランド]内蔵 SSD 2.5インチ BX200シリーズ(480GB / 国内正規品 / SATA...
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B017D7H7J4/dgcrcom-22/

あとは、外付けHDケース。eSATA-SATAケーブルというのがある。しかし、ふとeSATAでは電源が足りないかも、と念のため、電源付きのeSATA接続ケースを買う。2,926円。

センチュリー シンプルBOX2.5 USB3.0+eSATA SATA6G CSS25EU3BK6G
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00OUAJV2O/dgcrcom-22/

そういえば、現在Thunderboltには外部ディスプレイが繋がっている。速度のためなら外部ディスプレイなしでもいいか、と思ったが、そういえばUSB3.0からHDMIディスプレイ端子に変換するアダプタがあったはず。よし、これも。

と、Amazonで発注してから、ふと心配になって、自分のMacの裏側をしげしげを眺めてみると、あれ? ひとつだけだと思っていたThunderbolt、ふたつついてるじゃん!

MacBook Proがひとつなので、てっきりひとつだと思い込んでいた。大慌てでディスプレイアダプタは発注キャンセル!

●ミッション開始

どれも在庫があり、翌日すぐに届いた。本当にこれでいけるのかドキドキしながら接続する。

ところがSSDが認識しない。ひやっとしたが、ケースに電源をつないだら認識した! 電源付きケーブル買っておいてよかった!

まずはフォーマット。デフォルトのジャーナリングでいいらしい。問題なくフォーマットできた。

次はOSのインストール。通常ならTime Machineバックアップを使って、元のシステムから復元すればいいのだが、起動できるかどうか不安もあるので、まずはシンプルにOSインストールしてみることに。

昔のMacはシステムディスクがついていたのだが、うちのMacの頃から、そういうものはなくなった。command + Rを押しながらMacを再起動すると、OS X復元システムが起動する。

メニューから再インストールを選ぶと、ちゃんと外部SSDにインストールできた。だいたい1時間くらいかかっただろうか。

インストールが終わったので、こちらから起動してみる。オプションキーを押しながら起動すると、システムディスクを選べるはずだが、これがうまくいかない。仕方ないので、機能拡張の起動ディスクで、起動ディスクを選び、再起動する。

おおお、うまく起動できた! スリープ→復帰も問題なくできている。再起動後もちゃんとSSDから起動するぞ! バラ色の生活まで、あとすこしだ。

ところが、そこからが長かった。移行アシスタントをつかって、内蔵HDからデータを移行させる……おっと、もともと、1TBのHDが溢れそうだったのを忘れてた。

SSDは容量が半分しかない。データで容量を食っているのは、iTunesと写真のデータだ。これらを、元のハードディスクに置いておけば、SSDの方はたいして容量は必要がなくなる。

移行アシスタントで、部分移行できるかと思ったら、ユーザーフォルダはまるごとしか移行できない。

内蔵HDで起動して(これが5分以上かかるので、今回なんどもやってほんと、辛かった……)、iTunesと写真のライブラリを、ユーザーフォルダの外に出す。

その後、SSDで起動、移行アシスタントで、ユーザーフォルダ、アプリなどを転送。330GBくらい。

●はてしなき流れの果てに

こういう長時間かかる作業、夜寝てる間にやるなり、外出するなりすればいいのだが、なんだか気になって、ついつい、Macの前でじっと待ってしまう。

「あと何時間」と予想が出るのだが、あれって、その時々の速度から割り出してるようで、状況によって一気に増えたり、減ったりする。

ディスクの転送速度や、過去のユーザーのデータなどから、もっと精度のある予測ができそうなものだが…結局、5時間くらいかかった。辛かった…

で、ようやく終了。そして運命の再起動。以前と同じ環境が起動する。おお、はやい。Safariなんぞ、ワンバウンドで起動しちゃう。Adobeもあっというまに起動する。SSD、ヤバい名前は伊達じゃなかった。今までのあの遅さはなんだったんだろう……

あとは内蔵HDに置きっぱなしになっているiTunesと写真のライブラリファイルを、それぞれのアプリからライブラリに指定。よし、ちゃんと認識できた。あれだけ遅かった内蔵HDだが、システムでのアクセスがなくなったからだろうか、機嫌よく動いてくれる。

最後にTime Machineの設定。今回購入したアダプタには、USB3.0のポートがひとつ、ついている。Time Machine用のHD(これも3.0)を繋ぐ。

ちょっと心配だった、SSDと、元のハードディスク両方のバックアップだが、これは難なくできた。元のハードディスクの方は、写真と音楽データが中心なので、バックアップされる頻度も低く、以前のようなバックアップ中のストレスも今のところ発生していない。

ひとつ気になるのは、TRIMの設定。SSDの速度&寿命低下を防ぐ設定で、やっておいた方がいいらしいが、これが設定できない。というか、システムレポートを見るとハードディスクとして認識しちゃってる。アダプター経由だからなのか……まあ、あまり気にしないでおこう。

合計28,644円。SSDと、USB3.0がiMacに追加され、ウソのようにストレスなくあらゆる作業が動いている。

一か月ほど使っているが、ほんと快適。最新のMacBookProと比べて、なんら謙遜がない。過去、たくさんのMacのハードディスクやメモリを増設したり、システムの再構築をやってきたが、これほど、効果が高かったことはなかった。これであと一年くらい延命できれば万々歳だ。

こういったミッションはとても楽しい。

ヒントを集め、謎をとき、トラップをかいぐぐり、正解をつかみとる。まるで世界の命運を左右するミッションをやり遂げた、ハリウッド映画のヒーローになった気分である。

世界平和は保たれた。あとは全デジクリ読者が涙するだけだ。


●【まつむら まきお/まんが家、イラストレーター・成安造形大学教授】
twitter:http://www.twitter.com/makio_matsumura
http://www.makion.net/ > < mailto:makio@makion.net

遅い帰宅時、電車の中でコンビニおにぎりを食べてたら、口の中に異物感。あれ、なんだこの石のようなものは? あれ、なんか口の中が変……なんと前歯が一本、折れていた。

むかし治療した部分が劣化して、ぽろっといったらしい。歯医者に行ったら幸い、根っこはしっかりしているのでそこに人工の歯を接ぐとのこと。Macもわたしも、ツギハギである。