はぐれDEATH[03]引っ越しドタバタ顛末記 その3・我慢と忍耐の世界は続く/藤原ヨウコウ

投稿:  著者:  読了時間:7分(本文:約3,000文字)



いつもなら到着直前のSAあたりで目が覚めるのだが、今回ばかりは車内アナウンスまでぐっすり眠り込んでいた。相当疲れていたようである。

足の痛みはほんの少し和らいだ気がしたのだが、この日の強行軍を考えると、とてもではないが最後までもつかどうか怪しい。更に不幸なことに、お天気は雨模様である。

幸い到着場所にラウンジがあり、二階には畳の部屋もあったので、区役所が開くまでここで大人しく待機することにした。ラウンジにはコンセントもあったので、iPadで行き先の順番やら行き方などを調べまくる。

結果、足の疲労度を勘案すると、バスでの移動が一番という結論に達した。一日乗車券なるモノが500円で売っているらしいのだが、これは3回以上バスに乗車をすれば元を取れる上に少しお得になる。

どうあがいても、最低3回は乗り換えをしなければいけないので、使わない方がアホだ。せこさ全開である。





まず京都駅から北区区役所へ。そもそも印鑑登録証そのものがどこにあるのか分からなかったので、印鑑登録と証明証を同時に申請することになった。更にバスに乗って、かつてのかかりつけ医の所へ行き、色々と診察してもらう。

疲れが残っていたのと、今後の展開が不安で仕方なかったので、血圧がかなり上がっていた。とはいえ、もともと低血圧なので、いわゆる高血圧な状態からすれば健康そのものだ。

そして京都駅へ舞い戻り、近鉄に乗って今回お世話になっている伏見の不動産屋さんへ。書類の提出とチェックをしてもらう。ここで、ちょっとしたハプニングが。

事前の打ち合わせでは、保証人の印鑑証明は後日でもよいということになっていたのだが、ここに来て一緒に提出しないと鍵が渡せないと告げられたのだ。あわてて妹に連絡をして、明日着で不動産屋さんに送付してもらうように取り計らってもらった。

この日は最初から安宿をとっていたので寝る場所は安心なのだが、問題は明日本当に届くかどうかである。取り敢えずできる手続きはすべて終わらせてしまい、妹からの文書到着を待つだけの状態で不動産屋さんを後にした。

この日の最大の山場は、実を言うと書類の提出でもなければ、お医者さんに行くことでもなかったことが、この後判明する。チェックインまでの時間つぶしである。

先にも書いたがこの日は雨。ボクは傘を差すのが大嫌いなのだ。もちろん持っていない。対策はあるけど。この日はフード付きのフライトジャケットを着込んでいたのだ。

一年を通してフライトジャケットは必須のアイテムである。というのも、ボクは冷房に弱いのだ。各種交通機関はもちろん店舗等でも、冷房がかかっているとたちまち寒くなってしまう。電車の弱冷ですら寒く感じる。

加えてこの日は雨。除湿効果も含んで、どこも盛大にエアコンをかけまくっている。おかげで体力はじゃんじゃん奪われるというワケだ。とにかく、屋根のあるところへ避難する必要がある。

幸い歩いて15分ほどの所に、屋根付きの商店街があるのは分かっていたので、そこへ移動しようと思ったのだが、既に昼前の段階で足は完全に悲鳴を上げていた。できるだけ歩かず移動しつつ、散財することなく時間を潰す、という周りからすれば迷惑この上ないミッションを遂行することになった。

まずは商店街までの移動である。不動産屋さんは京阪電車の駅に隣接しており、商店街は隣の駅なので、ここは京阪にお願いすることにした。

後は暇を潰す場所である。とりあえず目に入ったマクドで持参していた『夜のコント・昼のコント』(筒井康隆著)を読んで粘る。が、エアコンのせいで、身体は冷えるわ足の痛みは増すわで、どうにも我慢ができなくなり、ドラッグストアを探しに店を出る。もう手当てしないとどないもならん、と判断したのである。

対処が遅すぎる、というご意見は多々あるだろうが、つまらないところで我慢してしまうのがボクの悪いクセである。とにかく、強力そうな湿布を買い、すぐ近くにあったサンマルクカフェに逃げ込んだ。

が、さすがにここで手当てをするわけにはいかん。後から気がついたのだが、トイレでやればよかっただけなのだ。もうそこまで頭が回る状態ではなくなっていた。再び読書に戻り、チェックインの時間までひたすら粘りまくる。もう我慢と忍耐の世界である。

ところで、この辺のサンマルクカフェはお年寄りの憩いの場と化していて、昔の関西弁がめちゃめちゃ聞こえて、なんとなくほっこりしてしまった。今の関西弁とは明らかに違うのです。

ちなみに、ネイティブな京言葉を操る人などは、いまやほとんどいなくなってしまい(舞妓さんの話し方はまた別モノ)、そろそろ無形文化財指定でもしたらどうかしらん、などとアホなコトを考えている。

何しろ観光都市である。怪しい京言葉よりはマシな話し方を、観光業界の皆様は身につけた方が得策のような気がする。

ちなみにボクは使えません。あちらこちらの方言がごっちゃになっているので。一言で京言葉と言っても、一律ではありません。職人さんの使う言葉と、商いをする人の言葉はまったく違う。それなりにややこしいのだ。

ボクは祇園祭で大工さんとの交流が長いので、どちらかというと職人さんの言葉に寄っています。寄ってるだけで近くないのがポイントだ。

チェックインの時間が近づいてきたのだが、とてもではないが歩いていけるような状態ではなかった上に、なぜか雨も激しくなってきたのでバスで移動することにした。

一日乗車券の使用可能圏だったのだ。それでも最寄りのバス停までは歩かなければいけない。更に降車したバス停から宿屋までも歩かなければいけない。普段なら5分もかからずに歩ける距離なのだが、そんな短距離も苦痛になるぐらい足の痛みは酷さを増していた。

とにかく痛みを我慢してようやく宿に着く。濡れたフライトジャケットを乾かし、足の手当てに取りかかったのは言うまでもないだろう。

膝下は湿布だらけで、足の裏にまで湿布を貼る始末。ちょっとした湿布ミイラみたいになってしまった。お風呂に入る気力など到底なく、気絶するように寝入ってしまった。

翌朝、6時頃には目が覚めたと思う。湿布の効果はそこそこあったようだが、この後に引っ越し荷物の受け取りと荷ほどきの作業があるので、うかうかしてはいられない。幸い雨は上がっている。

9時過ぎに宿を出て、歩いて不動産屋さんへ。まだ書類が届いていないのは百も承知だったのだが、荷物を預かってもらうために一度寄ったのだ。たいした荷物ではないが、それでも負担は減らすに限る。

書類が届き、鍵の手渡しができるようになったら電話をくれるように頼み、とりあえず近鉄で京都駅へ。

京都駅行きの理由は、ぼけっと座っていられる場所が多数あるから、というそれだけの話だ。よたよたと京都駅に辿り着き、駅の外(エアコンがないから)の休憩場所でだらだらする。

どれだけ待たなあかんのかなぁ、と思っていたのだが、幸い11時半頃に連絡が入った。不動産屋さんへ戻り、鍵を受け取ってやっと新居に入れた。

やれやれなのだが、ここで気を抜くわけにはいかない。この後、荷ほどきが待っているのだ。


【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
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装画・挿絵で口に糊するエカキ。お仕事随時募集中。というか、くれっ!