グラフィック薄氷大魔王[484]「ファミコン断絶」と「清里タッチとオサムグッズ」
── 吉井 宏 ──

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●ファミコン断絶

東急東横線渋谷駅のホームでドラクエのテーマが流れてるらしい。


ドラクエとかファミコンとかに、僕は「どうしようもない断絶」を感じて、ちょっと悲しくなってしまうw ほぼ同世代の人たちだってファミコンに親しんでいたはずなのだが、僕はずいぶんちがった。

ファミコンっていつからあったんだ? すら謎だった。

調べたら、任天堂ファミリーコンピュータは1983年7月に発売。そっか。専門学校を出てデザイン事務所に就職した3か月後の発売じゃ、知らなくても無理もない。それどころじゃなかった。大学に行ってたら、2年後まで猶予があったから状況は違っただろうけど。

そのまま、フリーになる7年後の1990年夏まで、ファミコン同様にその時代の「文化」はほとんど享受してない。テレビがほぼ見れなかったから。おニャン子クラブだって知らない。

で、何度かSNSなどに書いたけど……。

細野晴臣がファミコンゲーム「ゼビウス」をモチーフにしたアルバム「スーパーゼビウス」を出した。その頃YMO関連のレコード(CDじゃないw)は、ほぼ発売日に買っていたほど好きだった。




その曲にハマッた僕は「ゼビウス」をやってみたい一心で、近所の書店で売ってた中古のファミコンを買いに走ったのでした。「パックマン」とか、数本のメジャーっぽい中古ゲームもいっしょに買ったはず。

週休1日だった時代。平日は7時15分の電車で出勤、終電で帰宅の毎日午前様。夕食すませて風呂に入ったらだいたい1時すぎ。聞きたいオールナイトニッポンがない日は、1時から4〜5時頃まで「ゼビウス」w 寝不足でふらふら。

攻略本も買い込んで、どんどん上達。ところが、ある程度以上はちっとも上手くならない。開始後20分くらいで出てくる大きな黒い円盤にやられてしまう。その黒い円盤を出すためだけに20分を費やす。

20分でやられる。また20分でやられる、を毎日深夜3週間くらい繰り返した末、全部売り払った。「こんなことやってたら人生の無駄だ!!!」

っていうか、ヘタすぎ。「パックマン」とかもぜんぜんダメだったし。そもそも、高校時代の「インベーダーゲーム」だって、滅多に2面に行けないくらいヘタ。なんでだろ?

で、「ゼビウス」にハマッたのも正確にいつだったか忘れてたけど、細野「スーパーゼビウス」発売が1984年8月だそう。ってことは、ファミコン発売後たった1年くらいだったのか。

当時、流行ってたのは知ってたけど、中古で売ってるくらいだから5〜6年前からあったんだろう的な感覚だった。「いまさらファミコンを中古で買ってまで始めるなんてオレは遅れてるヤツ」って思ってたもん。

で、気がついた。ファミコンに感じる断絶って、世代的なものじゃなかったんだ。ヘタだったことと、「ドラクエ」をやってないこと、だったのかw

・似た断絶を感じている人は多いんだろうな。「ファミコン世代」って言われてる人たちで、親にファミコンを買ってもらえなかった人なんか特に。

・ファミコン買ったとき、付属の小さいコントローラーが使いにくくて、でっかいレバーのついたのを購入した。熱中してやってたら、なんかヒリヒリぬるぬるする。と思ったら、手の豆が潰れて血だらけにw

・世界で尊敬されてるゲーム界の偉人の日本人が何人もいるらしいけど、どうスゴイか実感がなくてわからないのも断絶。

・インベーダーゲーム。お金をほとんど持ってない高校生のときは、100円玉数個を10分かそこらで使いつくし、あとは友達がやるの見てた。上手いヤツは100円で延々1時間とかやってたからぜんぜんお金使わない。友達がインベーダーやるの見ながら、自動販売機のカップスターを食べるのが好きだったw

●清里タッチとオサムグッズ

『ファンシー絵みやげは1980年代前半から1990年代前半あたりまで、10年以上もの長きにわたり日本中の観光地で主役であり続けたにも関わらず、ジャンルの名称がなかったため話題にしづらく、人々の記憶から消えていってしまいました。』

https://cakes.mu/posts/13366


へえ! 名称がなかったのか。僕は「清里タッチ」とか「清里ファンシーイラスト風」とか呼んでた。名称は大切。やっぱ、みうらじゅんは偉大だなあ。「ゆるキャラ」ってネーミングで、ああいう着ぐるみキャラの扱いが一気に日本中に理解された。

デザイン事務所にいた頃、清里タッチを練習して仕事でいろいろ描いてました。鉄道会社の広告や観光とかのパンフレットやチラシなどいっぱいデザインしてて、そういうイラストが必要だったので。

「ファンシー絵みやげ」のルーツの半分くらいは、たぶん原田治氏のオサムグッズなんだよね(あとはサンリオや少女マンガ系や鳥山明かな?)。

飛び抜けて洗練されてた。今もまだぜんぜん魅力を失ってなく、古く見えないのはすごい。

たとえば、亜土ちゃんは一度「古い絵」として廃れかけてから大復活してスタンダードになったけど、原田治氏は40年ずっと変わらないスタンダード感。

ちょうど、弥生美術館で展覧会だって!
オサムグッズの原田治展 Osamu Goods The 40th Anniversary
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html


●PRISMAについての注意

先週大はしゃぎで紹介した責任上、書いておきます。あの画像加工はiPhone内で処理されているのではなく、PRISMAのサーバに送られて、加工済み画像が送信されてくる。

Siriやしゃべってコンシェル、翻訳アプリなど、重く高度な処理が必要でサーバに送られてるサービスはいっぱいある。秘密だったり重要な画像も、処理のためサーバに送られていることを念頭に置いて使おうね、です。

また、PRISMAロゴ入りである処理済み画像は向こうが自由に使えるというのも、SNSやブログサービスなどでおなじみの決まり文句。規約などほとんど読まずにOKするのが普通になってるけど、どんなサービスでもそのへん覚悟の上で使おう、です。

詳しくは↓
http://did2memo.net/2016/07/16/prisma-terms-of-use-server-side-processing/



【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


「ハンコをお辞儀してるように傾けて押す風習」が話題になってる。昔、「逆に傾けるとふんぞり返って威張ってるように見えるぞ」って教えてもらって以来、完全真っ直ぐより微妙に(最大10度程度)前に傾けて押してるなあw 気にする必要などないことはわかってるけど、手間はゼロだから。

・「東京浅草画廊 Gei(藝)」オープン

ある会社に関係するアーチストの作品を販売する画廊がオープンしました。DMのビジュアルが僕の立体作品「Nyoro」です。僕は2点を出してます。常設展示としてしばらくやってる見込み。

DM表 http://www.yoshii.com/dgcr/Gei_DM_1
DM裏 http://www.yoshii.com/dgcr/Gei_DM_2
ホームページ http://tokyoasakusagallery.wix.com/-gei


・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/


・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


・rinkakの3Dプリント作品ショップ
https://www.rinkak.com/jp/shop/hiroshiyoshii