crossroads[23]任天堂復活の日/若林健一

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こんにちは、若林です。先週からサービスの始まった「Pokemon GO」、自分もすぐにインストールして試してみました。

FacebookやTwitterに流れてくる情報を見ていると、都会の方が色んなモンスターに出会える場所が多く、バーチャルの世界でも都会と田舎の差を感じますね。まぁ、田舎にはリアルに虫や鳥などの生き物がいるからいいんですけどね、ゲットはしませんけど。

海外で「Pokemon GO」のサービスが始まり、スマートフォンゲームでは今までにないほどの過熱ぶりが、任天堂の株価をも押し上げているようです。

ファミコンに始まり、一時期はプレイステーションに王座を奪われ、Wiiで復活した後のWii Uでまた落ち込んでいる任天堂。なかなか復活の兆しが見えない中で、今回の株価急上昇は任天堂の復活のようにも見えます。

でも、「Pokemon GO」で任天堂はかつての勢いを取り戻したのでしょうか?





●「Pokemon GO」を作った会社

まず、正しく理解しておかなければならないのは「Pokemon GO」が任天堂のアプリではないということ。「Pokemon GO」を開発したのは、アメリカの「Niantic(ナイアンティック)」という会社です。

Niantic, Inc.
https://www.nianticlabs.com/

Niantic社は、Googleの社内スタートアップとして始まって独立した会社で、「Ingress」という、「Pokemon GO」と同じく位置情報を使いあちこちを歩き回ることで楽しめるスマートフォンゲームを開発しています。

つまり、「Pokemon GO」はこの「Ingress」とほぼ同じゲームシステムで動作しています。

そして、「株式会社ポケモン」という任天堂の100%出資で「ポケットモンスター」のライセンス管理を行っている会社が開発に加わって、ポケモンのキャラクターを提供しています。

つまり、Niantic社が作ったプラットフォームの上に、株式会社ポケモンが管理するポケモンのキャラクターを登場させて作ったゲーム、ということになります。

私は株式などの経済活動に詳しくないので、踏み込んだ言及は避けますが、「Pokemon GO」の開発に任天堂子会社の株式会社ポケモンが関わっている、もしくは任天堂のキャラクターであるポケモンが使われていることから任天堂の株価を押し上げているものと思われます。

●任天堂の位置付け

一方、デジタルゲームの世界で任天堂は、ゲーム機本体のハードウェアを作る会社です。そして、自社のハードウェア上で動作するゲームアプリの開発も行っています。

任天堂自身が開発するゲームアプリには、コンテンツとしての意味はもちろんあるのですが、自社のプラットフォーム(ゲーム機本体)の新しい機能やユーザーインターフェース(Wiiリモコンやタッチパネルなど)を使った、体験のリファレンス(模範的な例)を示す役割があります。

それらのソフトウェアの中から、スーパーマリオやドンキーコング、ポケットモンスターなどの超メジャーキャラクターが生まれ、コンテンツプロバイダーとしての側面も大きくなったため、ゲームプラットフォームの会社であるという認識が薄れがちではありますが、それでも任天堂のビジネスはゲーム機を開発・販売し、ゲーム開発会社からのライセンス料を得る、プラットフォームビジネスであり、任天堂はプラットフォームを作る会社なのです。

●After Pokemon GO

任天堂がプラットフォームの会社であり「Pokemon GO」のプラットフォームを作ったのは任天堂ではなくNiantic社であることを考えると、「Pokemon GO」は任天堂の本質的な成功とは言えないように思います。あくまでもコンテンツプロバイダーとして生み出したものを、別の会社に(子会社を通じて)提供しているに過ぎない。

そして、「Pokemon GO」もいつかはブームが去ります。別の新しいアプリが誕生した時、人々は新しいアプリに熱狂し「Pokemon GO」は忘れられていきます。

その時、Niantic社は自社の強みである位置情報を活用した技術を使って、新しいアプリや新しい事業の開発へ向かって進むでしょう。

株式会社ポケモンもまた、ポケモンのキャラクターを利用した新しい事業の創出に向かうはずで、これらの組み合わせは未来永劫続くものではないのです。

元々ポケモンは人気の高いコンテンツであることは誰もが知っていて、「Pokemon GO」はそれが今でも健在であることを示したことに過ぎませんし、それは株式会社ポケモンの事業にはつながるものの、任天堂の事業には繋がりません。

任天堂は「Pokemon GO」でスマートフォンアプリ事業で成功したわけでなく、一時的な収益増を得ただけであって、会社全体として大きく変わったわけでもありません。

コンテンツプロバイダーである株式会社ポケモンが子会社となっているように、プラットフォーマーとコンテンツプロバイダーでは企業としての形はまったく異なります。

任天堂が、コンテンツププロバイダーへと舵を切るのであれば別ですが、ゲーム機の会社として存在し続ける以上、プラットフォーマーとして復活しなければ真の復活とは言えません。

「Pokemon GO」のブームで「任天堂と組みたい」と考えている企業も多いと聞きますが、きっと任天堂自身はそれどころではないはず。「Pokemon GO」の先に自社の復活は見えないのですから。

任天堂、個人的にはとても好きな会社です。一時は任天堂でWiiの次(Wii Uではなく)を開発したいと本気で思っていました。

「Pokemon GO」は単なるブームでしかありませんが、新しい体験を生み出すことができる、数すくない企業でしかも関西の企業なので、必ずやプラットフォーマーとして復活する日がくることを願っています。


【若林健一 / kwaka1208】
Web: http://kwaka1208.net/
Twitter: https://twitter.com/kwaka1208

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