[4187] 夏の構造美の巻

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《エヴァフォントと呼ばれています》

■わが逃走[187]
 夏の構造美の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[47]
 明朝体を20個並べて観察してみました
 関口浩之




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■わが逃走[187]
夏の構造美の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20160908140200.html

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夏が嫌いだという話は前回書いたけど、あれから二週間も経つのに一向に涼しくならない。従って汗をかく。とくに私はそういう体質につき、困る。

更年期障害なのでは? という意見も多いのだが、子供の頃からこんな調子なのでなあ。

そこで今回は夏の思い出として、この夏に出会った構造美を紹介したいと思う。『思い出』と言い切ってしまえば夏が終わるのではないか、という願望が多分にある。

というか、早く秋になってくれ。タノム。もう暑いのはイヤだ!!!

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/001

6月、信州の鉄橋

信州でしかもまだ6月。それなりに涼しいし空気もきれいだ。なので落ち着いて撮影してたっぽい。

20年前から気になっていた、オーソドックスなワーレントラス橋。隣では新しい橋の工事が完成しつつあり、この橋の行く末が気になるところ。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/002

7月、集合住宅の階段

共用庭(草ぼうぼうランド)へと通ずる階段。雑草に混じってぶどう(ただし観賞用)もやたら実っていた。

梅雨明け前なので湿度は高かったが、暑くて死ぬ〜というほどではなかったので、冷静にシャッターを切っていたっぽい。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/003

7月、中野区の坂

7月も末にもなると、歩いているだけで顔から汗がボタボタと落ちる。

子供の頃からこれがデフォルトなのだが、端からみると病気のヒトと間違えられそうかもと、最近ようやく気づいた。

ファインダーを覗く目に汗が入った。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/004

8月、世田谷の踏切

向かって左側の線路沿いは幅三尺ほどの小路になっていて、ここも草ぼうぼうランドであったが、今年になって急に舗装されて、雑草が一本も生えなくなってしまった。

風情と反射熱の影響で夏バテがすすみ、やはりファインダーを覗く目に汗が入った。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/005

8月、栃木の川

お盆直前に取材ででかけた栃木県のとある町にて。友人いわく『尻がいっぱい』。ちょうど昼時、天気は快晴で、肌が焼けるようだった。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/006

8月、とある酒蔵にて

ホースの巻きっぷりというものが気になって仕方がない。こういう何でもないものに所有者の個性が表れると思う。

まあそれを知ったからといってどうなるわけでもないのだが、旅先で巻かれたホースを見ると、つい撮影したくなってしまうオレであります。栃木の夕方はわりと涼しい。

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8月、新宿区の壁

この日も暑かった。汗をかくのがわかっていたので、水をかぶって濡れたような柄のTシャツを最初から着て出かけたことを思い出した。

8月も下旬にもなるとかなりバテてきて、「もうダメだ、呼び声が聞こえる」などと訳のわからん寝言とともに、大量の寝汗をかいていた。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/008

9月、金沢の階段

ついに9月だ。9月といえば秋。ようやく待ちに待った秋がやってきたんだ!しかし金沢は暑かった。そしてものすごい湿気。降ったりやんだりの天気の中、個性的な階段を発見して喜ぶ。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/009

9月、金沢の滑り止め集中地点

傘をさしながら散歩をしていると、いきなり強い陽射しが襲ってくるというフシギな天気の中、フシギな物件に出会う。

靴がすり減っていて、しかも路面が濡れているもので、滑り止めの有難さをひしひしと感じた瞬間。とくにオシッコを我慢しながら歩いていると、うっかり尻餅をついた瞬間タイヘンなことになってしまう危険性があると言えましょう。

ええ、そのくらい逼迫した状況でした。なぜか金沢に来るとオシッコを我慢することが多い。

https://bn.dgcr.com/archives/2016/09/08/images/010

9月、金沢の洋館

わりと普通の道を歩いているにもかかわらず、二十面相のアジトのようなかっこよすぎる建築に出会う。普通の街角に突然これだもの、やはり加賀百万石はスゴイなあ。

てな感じに夏の思い出を語りました。
早く秋の風情にひたりたいです。
ふとんかけて寝たいです。

といったわけで、みなさまもご自愛くださいませ。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[47]
明朝体を20個並べて観察してみました

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20160908140100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

みなさんは、明朝体とゴシック体、どちらを好んで使いますか?

パワーポイントでビジネス資料を作る時は、メイリオを使うことが多いのではないでしょうか。マックユーザーの方はヒラギノ角ゴを使ったり、フォントを購入してロダンを使う方もいるかもしれませんが……

ビジネス資料をMS明朝で作るケースは少ない気がします。実際、僕もゴシック体を中心に資料を作ります。

今回のもじもじトークは、日頃、よく目にしているけど、あまり観察したことのない「明朝体」にフォーカスしてみたいと思います。

まずは、僕が知ってる明朝体(および明朝体の系列)の中から20書体ピックアップして、Webフォントで並べてみました。はい、こちらです。じゃーん!
http://goo.gl/skEzjl


使用した書体は、「リュウミン・ヒラギノ明朝・イワタUD明朝・NUDモトヤ明朝・マティス・凸版文久明朝・秀英明朝・筑紫明朝・筑紫オールド明朝・筑紫アンティークS明朝・イワタ明朝オールド・秀英初号明朝・凸版文久見出し明朝・見出ミンMA3・マティスUB・テロップ明朝・筑紫オールド・丸明Shnano・モード明朝・秀英アンチック」の20書体です。

パッと見た感じでは、前半の10個の明朝体はどれも似ているような気がしますよね……

この20個の明朝体を眺めて、個人的な感想を書いてみようと思います。

・漢字の部分だけ見比べると、違いがよく分からないですね。僕も違いがよく分かりません(笑)

・漢字の部分だけみて、「この書体名は?」と聞かれて全部答えられる人がいたらすごいと思います。とりわけ、前半の書体(リュウミンから筑紫明朝あたりまで)の漢字の部分で書体名を見分けるのは難しいかもしれません。

・「ひらがな」の部分はそれぞれ特徴がありますね。「そ」や「な」は、かなり違いがあります。とはいえ、この「そ」を見て、「これは○○明朝です」と答えられる人は少ないと思います。

でも、凸版文久明朝の「そ」は他の明朝体にはない特徴があるので、答えられますね。

・I-OTF-UD明朝Pro M(イワタ)とNUDモトヤ明朝 Std W3は、UD(ユニバーサルデザイン)フォントなので、他の明朝体と比べて、字面(文字の大きさ)が大きいですよね。

ユニバーサルデザインとは「年齢・性別や障害に関係なく、あらゆる人が商品・サービス・住居・施設を快適に利用できるように配慮されたデザイン」ということです。イワタのWebサイトで詳しく解説されていました。
http://www.iwatafont.co.jp/ud/


・一番見慣れている明朝は、最初の二つ、リュウミンとヒラギノ明朝です。デジタル時代の明朝体の代表選手です。美人さんの明朝体ってイメージです。

・筑紫明朝、筑紫オールド明朝、筑紫アンティークはフォントワークスの藤田重信さんが作った書体です。この書体は独特の雰囲気がありますね。上品な色気を感じます。

・凸版印刷の凸版文久明朝と大日本印刷の秀英明朝の2書体は、独特の佇まいを感じます。日本の代表活字である、築地活字と秀英活字がルーツになっています。

・後半の秀英初号、凸版文久見出し明朝、見出ミンMA31は、骨格がしっかりした見出し用書体です。ひらがなが特徴的です。

・マティスUBは、エヴァンゲリオンで使用されて書体ですね。エヴァフォントと呼ばれています。

・最後のほうの丸明オールドと丸明Shinanoは砧書体制作所(カタオカデザインワークス)の片岡朗さんが5年がかりで作った書体です。

「丸明=丸い明朝体」ということで、うろこが三角でなく、丸いエレメントでできています。15年前に発表された書体ですが、今でも広告ポスターなどでたくさん使用されています。

・モード明朝は明朝体骨子で作られていますが、横線も太いデザインになっています。明朝体は通常、横線が細いのが特徴です。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」の番組テロップで、この書体が全面的に使われています。

・一番最後の秀英アンチックは、漫画のふきだしの中で使用される書体です。漢字がゴシック体で、ひらがな/カタカナは明朝体という組み合わせです。

あくまでも個人的な感想ですが、実際に明朝体を20書体並べてじっくり観察してみたら、結構おもしろかったです。

記憶が定かでないですが、自分が小中学校の頃(つまり45〜50年前ですが)の書籍、雑誌、百科事典などで使用されてた書体は、ほとんど明朝体だったような気がします。そんな身近な明朝体、みなさんも、たまには、明朝体のことをじっくり観察してみると新しい発見があるかもしれません。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。


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編集後記(09/08)

●「パージ:アナーキー」を見た(2014、アメリカ)。前作「パージ」がしょぼかったのであまり期待してなかったが、これは面白い。主な登場人物が五人、わかりやすくてとてもいい。あまり多いと途中で誰が誰だか分からなくなる。わたしの認識能力からいってベストなサイズなのだ。彼らがハンターたちから逃げ回り、時には反撃するというシンプルな構造で、終わりの方にはこの「パージ」なる祭典の勝ち組たちの正体が暴かれていてナルホドと思うが、本当の利得者は、このイベントを主催する国家の中枢「新しいアメリカ建国の父たち」を名乗る集団であろうと容易に想像できる。次回作で明らかになるであろう。

「パージ」の意味は「浄化」である。年に一回「すべての犯罪が合法化される夜」が政府により設定されて六年目、国民にはお馴染みの夜だ。夜7時から翌朝7時まで、すべての警察、消防署、医療サービスが停止される。なんでもやり放題の夜は、国民にカタルシスをもたらし、犯罪率と失業率は1%にまで低下し、経済状況も改善した、とされる。「パージ」一作目の映画評論家の支持は低かったが、開けてみれば大ヒットだったという。ありえない設定に文句つけても仕方がない。面白いものは面白い。こんな素晴らしい設定にもかかわらず、一作目はある家族のサバイバルという、スケールの小さな話で終わった。

とんでもない無法の夜は、一軒のハイテク邸内が舞台だった。これでは物足りない。「パージ:アナーキー」では、パージを決意した完全武装男が主役。息子を交通事故で死なせた相手を復讐に行くというのだから、「パージ」の対象としてはあまりに小者じゃないか。もっとデカいこと、ガイキチなことを企てたほうが絶対面白い。そう思ったのはわたしだけではあるまい。その途中で、殺戮者たちに追われるわけあり夫婦と、謎の集団に拉致されかかった黒人親子を拾う。五人が無法の市街を逃走、敵に反撃するスリリングなシーンが続く。五人が行き着いた先が、「パージ」を楽しむ富裕層たちの劇場だった。

ここで「パージ」の秘密が明らかになる(たぶんまだ部分。次回作でもっと露わになるんだと思う)。「パージ」は全国民にカタルシスをもたらすイベント、ではない。この夜の暴力の標的となるのは富裕層ではなかった。巨悪や富裕層は安全圏で「浄化」を堪能している。わたしだったら、警察、消防署、医療関係を標的に大火災を起こす「パージ」を企画する。ところで主役、わざわざ復讐に出向くなら、あらかじめ標的の家の近くまで行って、夜7時のサイレンを待ってたほうが確実で安全だったのじゃないのか。ところで悪役の仮面、気色悪いのが多かったが、わたしは能面女系/小面が最強・最怖だと思う。 (柴田)

「パージ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01EFBM02A/dgcrcom-22/

「パージ:アナーキー」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01EFBMDT0/dgcrcom-22/



●「明治教科書明朝」というのを知った。明治期の教科書活字をもとに、というもの。これはまだわかる。「相依為命書体」にぶっ飛んだ。「清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の実弟、溥傑が書き残した書を基にフォント化」だって……。溥傑は紫苑ゆうさんが演じてらしたなぁ。

iPhone 7とApple Watch 2の発表。Felicaや防水機能は嬉しい。買い換えるか、来年の8まで待つか。来年はiPhoneが10周年。凄いのが出るかもしれない。今のはまだ問題なく使える。毎年買い換えはしていないから、今年買ったら次は2018年以降になるしなぁ。

それよりApple Watch。GPSついたよ! これで単体でジョギングできる。喉が渇いたらコンビニで買い物できるし、負傷したら電車にも乗れる(笑)。走りながらポケモンGOできる。うぉー!

BGMかけてゲームしながらジョギングしたら、何時間バッテリー持つだろうか。通常18時間だから1/3は持つかな。予備バッテリーと磁気充電ケーブルは持ち歩かないといけないかもなぁ。

持つならミラネーゼループがいいなぁ。マグネットなので、手首だけじゃなく、二の腕なんかにもつけられて、料理する時にさらっと移動……あ、防水もついたから気にすることないのか。もしくはNikeのブラック/ボルトNikeスポーツバンド。普段使いには派手すぎるけどかっこいいなぁ。 (hammer.mule)

「明治教科書明朝」「相依為命書体」
https://www.justmyshop.com/tag/font/


紫禁城の落日
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%AB%E7%A6%81%E5%9F%8E%E3%81%AE%E8%90%BD%E6%97%A5

溥傑さんの奥さん、愛新覚羅浩は中山秀征の奥さんがやったよ

Apple Watchのラインナップは「価格を見る」ボタンから
http://www.apple.com/jp/apple-watch-series-2/